#67: 古着、LEGO、コーヒー

#67: 古着、LEGO、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

先週末から今週にかけてイタリアのミラノで2021年ワールド・コーヒーチャンピオンシップ(バリスタ、カップテイスターズ、ブリューワーズ)が開催されました。以前Standartに登場してくれた深堀さんと畠山さんがバリスタとブリューワーズで、そして新田さんがカップテイスターズで、世界を舞台に戦う姿は本当に素晴らしかったです。

The Weekend BrewのNo.6465でブレンドについてのお話をする機会がありましたが、今回のWBrC(ワールド・ブリューワーズカップ)決勝の動画をいくつか観ていて驚いたのは、3名がブレンドの豆を使っていたことです(全員の動画が上がっているわけではなかったので間違っているかも)。理想のフレーバーを作り出すためのブレンドという選択は、今後競技会以外にも広がっていくかもしれません。

また、バリスタチャンピオンシップでは、トップ3がCoffea eugenioides(ユージニオイデス)種の豆を使っていました。このユージニオイデス種とカネフォラ種(aka ロブスタ)を交配して誕生したのがアラビカ種だそうで、いわばアラビカ種の親にあたる品種。カフェイン量が少ないため苦味成分が低く、とにかく甘く酸味が少ない、独特なフレーバーがあるんだとか。生産されている場所がかなり限られていて生産量も少ないようなので、すぐに次のゲシャ種というわけにはいかないかもしれませんが、新たなシンデレラストーリーが生まれるかもしれません。いつか一度は飲んでみたいものですね! ユージニオイデス種についてはこちらの記事に詳しく書かれていますよ。

World Coffee Championshipのチャンネルで配信されている世界大会の様子を見ていると、限界を押し上げていくバリスタたちの姿に感動と驚きと希望を感じずにはいられません。コロナの中、世界中から多くの人が集まり、想像できないほどの苦労が運営側や選手の皆さんにはあったはずですが、こうして開催された大会の様子や、バリスタやロースターや関係者の方々が切磋琢磨する姿を見ることができありがたい気持ちでいっぱいになりました。皆さんも世界のトップのバリスタたちの動きや表現をぜひ堪能してみてくださいね!

それでは良い週末を。

編集長 Toshi

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

広がる「一杯」の解釈

北米・欧州を中心とする医療用大麻の合法化の流れを受け、CBD (カンナビジオール) 製品の市場拡大が進んでいます。大麻植物に含まれるCBDには、 THC (テトラヒドロカンナビノール)のように”ハイ”な状態をもたらす向精神作用はなく、 リラックス作用や不眠症・慢性的な痛みへの効果があるとされています。通常オイルや飲食物として消費されるケースが多く、以前のニュースレターでもCBDコーヒーについて紹介しました。

そんな中、先日CBDコーヒーのパイオニア企業Flower Power Coffee CompanyがSCA (スペシャルティコーヒー協会)に加盟したというニュースが発表されました。CEOのシーゲル氏は、「新たな基準や機会を築くことで、スペシャルティコーヒー業界のさらなる発展に寄与したい」とコメントしています。同社の加入は、CBDコーヒーがキワモノ的な存在を超えて、コーヒー市場におけるひとつのカテゴリーとして地位を築きつつあることを示しているのかもしれません。

最近日本国内でも、「心身のウェルビーイング」を掲げるCBDブランド/カフェの情報を耳にすることが増えました。CBDコーヒーをはじめ、コーヒーの楽しみ方の幅が日々広がりを見せるとともに、「一杯のコーヒーの豊かさ」も多面性を帯びていくのだと感じさせられます。今後の市場動向も引き続き要チェックです。

その他の気になるニュース

▷ Oatlyが古着をリメイクした自社グッズを販売するイニシアチブを開始。第一弾では10人の女性アーティストとのコラボアイテムを販売しており、収益は全て女性のエンパワメントを目指すNPOへ寄付されるそうです。

▷ 米国農務省(USDA)がコーヒーさび病対策に約7億円の公的資金を投入へ。昨年ハワイで初めて感染が確認されたことを受け、ハワイ州とプエルトリコで、さび病耐性品種の試験栽培や予防策の研究が行われる予定です。

▷ 2022年中に、英国では雇用主によるチップの管理が禁止されることに。これによって従業員がチップ全額 (現金・電子マネーどちらも)を受け取る権利が法律で保障されます。

▷ Bloombergが大手チェーンPret A Managerの売上データを基に、世界4都市におけるCOVID-19や経済状況の分析を行っています。コーヒーから都市の全体像を把握するという視点が興味深い。

▷ 朝一番にコーヒーを飲みたいけど、どうしても布団を出たくない。そんな悩みを、なんとレゴブロックを駆使して解決したこちらの動画。予約タイマー付きのコーヒーマシンを買えばいいのでは.……というのはここだけの話。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

what’s!? coffee
愛知(地図

2019年にキッチンカー、2020年に店舗の運営も始め、2021年より自家焙煎で珈琲豆の販売も始めています。聴覚障害をもつオーナーが焙煎もしており、音に頼らない世界の風味を表現。浅煎りが中心です。珈琲×福祉をコンセプトに新しい挑戦を心がけています。

生産者:エドアルド・アルべレス

生産地域:エルサルバドル サン・サルバドル サンサルバドル火山周辺 (地図

品種:ブルボン

精製方法:ウォッシュ、天日乾燥・日陰乾燥+アフリカンベッド

テイスティングノート:ブラッドオレンジやアプリコットジャムのような、明るい酸を伴う豊かな甘み。オレンジブロッサムのような華やかな香り。

編集長のコメント:

コクのあるジューシーなコーヒー。この表現がこれほどぴったりくるコーヒーはなかなか出会えないなと思うほど。甘味を伴った質のいい酸味は、まるでポンカンのようで、甘さの輪郭をはっきりとさせてくれます。しっかりとした厚みのあるボディを感じ、カカオや小豆が頭をよぎります。あとこれはおそらくかなり個人的で共感しにくそうですが、フレーバーの奥の方にわずかにゴートチーズのようなニュアンスを感じました。昨日食べたっけ?と思いながら首をかしげる場面も。飲み口は柔らかく、口に含むと感じる質感のある丸み。飲み始めから終わりまでバランスの取れた一体感があり、飲み終わった後にもう少し飲みたいなと思わせてくれるコーヒーでした。


Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち

 アーティスト: 

山田 憲史 Instagram ウェブサイト

プロフィール:

日本・韓国を拠点とする写真家。株式会社スタジオエビス勤務後、2014年に独立。コマーシャルワーク・雑誌を中心に活動しながら、2021年自身初となる個展 [FORM]を開催。

最新の掲載記事:

Standart Japan第17号 「ボスでいるということ - Noboru Ueno」

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

『「あいだ」の思想』高橋 源一郎・辻 信一

自己と他者、自国と他国、母語と非母語、加害と被害、善と悪など、当たり前のように切り分けられるものごとの「あいだ」について語りあう、小説家・高橋 源一郎と文化人類学者・辻 信一の対話集。「あいだ」という言葉からは、どこかグレーで宙ぶらりんな、ポジティブとは表現しづらい印象を受けますが、環境破壊や差別、孤独など、現在世界各地で問題となっている事象の根幹は、対話や他者・自然環境を慮る気持ち、いわばあいだの欠如と捉えることもできます。そんなあいだのレンズを通して社会を見てみると、自立した個人という理想像がいかに欺瞞的で、実際のところは、かつて哲学者の和辻 哲郎がいったように人はあいだにしか真の意味で存在できない、または自由になれないのではないか、という気持ちが湧いてきます。よくカフェの性質を表現する際に用いられる「サードプレイス」も、考えてみれば家庭(ファーストプレイス)と職場(セカンドプレイス)のあいだにある場を指しています。今私たちが必要としているのは、慣れ親しんだカフェのような空間を日々のやりとりや、自らの思考の中に確保することなのかもしれません。



Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

南波 美紅

いつかコーヒー屋さんをやりたい!という夢から、4年ほどいくつかのお店で学び、今はコーヒーショップ店長の傍ら、 独立に向け個人的にイベント出店やワークショップなどコーヒーの魅力を伝える取り組みを行う(@dotmiku)。現在は焙煎も特訓中。コーヒーをきっかけに人と人が繋がれる場所を作ることが夢。 陶芸(コーヒーを楽しむための器作り)とお花にハマっています!

セットアップ:

抽出器具: HARIO V60セラミック
豆量:15g
湯量:240ml
挽き目:中細挽き
湯温:90 ~ 91℃
抽出時間:2:15 ~ 2:30

手順:

  1. ペーパーをセットしてお湯でリンス。この時にサーバーとドリッパーをしっかりと温める
  2. 40g注ぎドリッパーを軽く回して40秒蒸らす
  3. 0:40 120gまで注ぐ
  4. 1:00頃 180gまで注ぐ
  5. 1:30頃 240gまで注ぎ落ち切るまで待つ

    ポイント:

    ▷ 浅煎り〜中煎りにおすすめのレシピです。 最初の蒸らしの1投目はやや細めに優しく注ぎ、残りの3投は真ん中から外側のふちまでやや太さめにしっかり注ぐ。
    ▷ 一定の太さでお湯の当たる箇所にムラがないようにしっかり全体にに注ぎましょう。

    コメント:

    コーヒーを淹れること、飲むことを楽しむ気持ちがなによりも大切です!お気に入りの器具を使って淹れたり、コーヒーをお気に入りのマグカップで飲むのもおすすめ。


     

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    今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第17号スポンサーの TYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業Probat x DKSHSwiss WaterANKOMNのサポートでお届けしました。


    LOVE & COFFEE✌️
    Standart Japan
    (執筆・編集:Takaya & Atsushi)