おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
このニュースレターを読んでくれるくらいコーヒーが好きな皆さんなら、種類の違うコーヒー豆が少しずつ余ってしまったときにオリジナルブレンド(ごちゃ混ぜの)を作る、若干の後ろめたさをはらむ楽しみを知ってますよね?
その謎の罪悪感を感じることなく、マイブレンドを作って遊んじゃおうという面白いリモート企画が今週始まりました。「#staystrongmyblend2021」と題されたこの企画の主旨は、国内4軒のロースターから届く豆を使って自分だけのブレンドを作り、そのレシピをシェアしながらみんなで楽しむというもの。実は私も、光栄ながらゲストブレンダーとしてサンプルとなるブレンドレシピ作りに参加させていただいています。
それぞれの豆の個性や好みの味を想像しながら自分だけのブレンドを作り上げていく時間は、コーヒーをおいしく淹れるプロセスとはまた違った面白さがあります。それぞれ本当においしく個性的なコーヒーばかりでしたよ(何のコーヒーかはまだ秘密)。お友達や全国のコーヒーラバーたちと、自分のブレンドレシピを共有したり、誰かのレシピを再現したりしながら楽しめること間違いなしです。
そしてもうひとつ、面白い企画が今週立ち上がりました。湘南発のゴミ削減プロジェクトを運営するBring me Shonanが、コーヒーを通じて選挙に行くきっかけを作るTOHYO2021をローンチしました。古くからコーヒーショップは物書きや芸術家、政治家たちが議論を交わす場所として機能してきたという話はStandartの記事の中にもたびたび登場しますが、改めてコーヒーを通じて政治を身近なものにしようという試みです。
一見全く性質の異なる二つの企画ですが、コーヒーを活用して新たなコミュニケーションの形や行動を生み出し、未来を創造するという点に似たものを感じました。気になる方はぜひ参加してみてくださいね。
それでは良い週末を。
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
物語のものがたり
先日Netflixが、人気のオリジナル映画・ドラマの原作本を紹介する「Netflix ブッククラブ」をローンチしました。それに伴い、同社はスターバックスをパートナーに迎え、新たなシリーズ「But Have You Read the Book?」の配信を発表。米国各地のスターバックスを巡りながら、翻案された作品に携わったキャストやクリエーターに話を訊き、原作本が映像化されるまでの裏話をコーヒー片手に紹介するのだそうです。
スターバックスのチーフマーケティングオフィサーは今回の提携について、「長年コーヒー (やコーヒーショップ) はコミュニティを育み、本や映画についての会話/体験を共有する場となりました。この度のNetflixとのパートナーシップによって、そんなサードプレイスならではの会話をあらゆる場所に住む人々に届けることができます」とコメント。コーヒーを取り巻く豊かな空間を、コーヒー以外に着目して具現化するという、何とも興味深い事例です。他者との会話を通じて新たな視点に出会い、知っていたはずの作品が全く知らない作品に変わっていく”あの感覚”まで味わうことができるのか、ブッククラブの今後に注目です。
気温が下がるにつれて、ホットコーヒーがより味わい深さを増すこの季節。秋の澄み切った空気には、例えば行ったことのない遠くのカフェに足を運ぶなど、文字通り小さな一歩を踏み出しやすい季節のように感じます。“いつも通り”を大切にしながら、新しい本や映画に触れてみたり、興味の赴くままに何かを始めてみたりと、自分好みに彩る秋を思いっきり楽しんでいきたいですね ;)
その他の気になるニュース
▷ SCAがハリケーン「イダ」の被害を受けたルイジアナ州のコーヒービジネスに向けて、約2300万円を寄付しました。この資金はビジネスオーナーだけでなく、従業員個人にも支援金として配布される予定です。
▷ ISS(国際宇宙ステーション)では、宇宙飛行士たちが約40種類の中から事前にセルフオーダーしたコーヒーが嗜まれているそうです。ちなみに過去には、宇宙空間専用のエスプレッソマシン「ISSpresso」が持ち込まれたこともあるのだとか。
▷ NBA選手のジミー・バトラーが、コーヒーブランド「Bigface」を公式ローンチ。立ち上げ前にはコスタリカの農園を訪問しており、今年7月のエルサルバドルCOEでは2つの入選マイクロロットも落札しています。
▷ コスタコーヒーが、リユーザブルカップの持ち帰り・返却サービスの試験運用を開始。日本ではONIBUS COFFEEが「CUPLES」というお店の垣根を越えた同種のサービスを最近ローンチしました。
▷ 以前、ブラット・ピットと世界最高峰のクルーを起用したDe’LonghiのCMを紹介しましたが、どうやらジョージ・クルーニー主演のNespressoのCM (2015)の方が高い評価を得ているそうです。皆さんも自分の目でジャッジしてみては?
What We're Drinking
今週のコーヒー
2011年に群馬県邑楽郡邑楽町で焙煎室を開業し、2014年2月に栃木県佐野市に焙煎室を移転後、 珈琲豆と珈琲器具と抽出した珈琲を販売しています。あなたの為に、あなたの大切な人の為に、音楽と、読書と、時には自然と共に、皆さまの至福の一杯となりますように、「福伝珈琲店」は美味しい珈琲を日々追求して行きます。
生産者:Bekele Kurse
生産地域:エチオピア 南部諸民族州ゲデオゾーン チェルチェレ(単一農園) (地図)
品種:74110,74112
精製方法:ナチュラル アフリカンベッド乾燥(12〜15日間)
テイスティングノート:フローラル、オレンジ、チェリー、クランベリー、シロップ、クリーンシトラス、ロングアフターテイスト。爽やかな口当たりとシロップの様な甘さが持続します。
編集長のコメント:
エチオピアの単一農園のコーヒー。エチオピアは小規模農家が多いので、同じ地域の異なる農家が収穫したチェリーは精製所で混ぜ合わせることになり、このコーヒーのようにひとつの農園まで生産者がわかるのは珍しいです。豆袋を開けて立ち上がってくる香りを押さえ込むように鼻を突っ込んで香りを嗅ぐと、いちご畑にいるようななんとも甘くフローラルな香り。エチオピアのコーヒーを淹れるときは自然とテンションがあがっていきますが、豆をハンドグラインダーで挽きながら今回もじわじわとボルテージが上がっていくのを感じます。挽きたての粉にお湯を注ぐとストロベリーマフィンのような匂いからわかる美味しい空気。準備ができたコーヒーを口に運ぶと、たわわに実った赤葡萄が真っ先に浮かびます。どこか炭酸を思わせるような生き生きとしたフレーバーが口の中で縦横無尽に弾け、ぎゅぎゅっと詰まった果実感が広がり口を満たすーー。花火が終わった後のようなシンとした、でも余韻が体に残っているような感覚の中、上質なアポロチョコ(そんなものがあるかどうかは別として)の後味が長くそこに留まっていました。
Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち
アーティスト:
ルカシュ・ウィズボウスキー Instagram Flickr
プロフィール:
ポーランド・ヴロツワフ在住のフォトグラファー。事前の緻密なプランではなく、撮影空間や被写体の素振りに導かれながら、モデルと共に旅をするかのように撮影に臨む。
最新の掲載記事:
Standart Japan第14号 表紙・カバーストーリー
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
Wine Calling
南フランスのルーション地方を舞台に、ジャン・フランソワ・ニックら自然派ワインの生産者たちのワイン造りやフィロソフィー、ライフスタイルを追ったドキュメンタリー。自然派ワインと呼ばれる、有機栽培で育てた葡萄で添加物を使わずに(または使ってもごくわずか)作られるワインの生産者の数は、3000以上いるフランスのワイン生産者のうち全体の3%ほどなんだとか。手間と時間を惜しまず、多くのリスクと向き合いながら、自然と共に歩んでいく彼ら・彼女らの人生を垣間見ることができるこのドキュメンタリーを観ると、ワインが無性に飲みたくなります。ワインが普段提供される場所はおしゃれで洗練されていたりすることが多いですが、ワイン農家の生活はいたってシンプル。汗と土にまみれて朝早くから働き、家族や仲間達と食卓を囲み、夜な夜なワインを飲む。南フランスの美しい風景を眺めながら、彼らの言葉に耳を傾けていると、この人たちは自然を、ワインを、本当に心から愛しているんだなということが伝わってきます。「朝から晩まで働いて一年を通して休みはほとんどなくて、稼げるお金は最低賃金並み。でもそれでもいいんだ、必要以上にお金を稼ぐ必要はない」「10年間もがいてようやくギリギリの生活から一歩踏み出せるくらい」「今までのやり方に疑問を持つ。疑うことを恐れない」そんな言葉たちが強く印象に残っています。自然派ワインの生産者同士が知識や機械を共有しあって助け合う姿からコミュニティ意識が見て取れ、スペシャルティコーヒーの世界の空気感と似ているなと感じました。自然派ワインというと、従来のワインとの対比でアウトローのような印象が強いんですが、現代の知識や技術を利用しながらワイン生産の原点への回帰というのが根本にあると思っています。その中で、このドキュメンタリーではロックな音楽が多用され、反逆者・異端児のような見え方や自然派ワインのいわゆるヒップな側面がとりわけ強調されているのかな〜と思う場面もありました。とはいえ、下手すると冗長になりがちなドキュメンタリーを爽快かつ軽快に見せてくれて、最高に楽しめました!
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
10年前入社した会社でエスプレッソの研修を受けて感銘し、コーヒーにのめり込む。東京、大阪で数店舗働き、6年前に地元奈良で4坪の小さいスタンド「COCO COFFEE」をオープン。ヨーロッパのコーヒーシーンが好き。 オールドミニに乗っていて、古い建物を見たり古道具屋巡るのが好き。最近はベスパを狙っている。
セットアップ:
抽出器具: カリタ01
豆量:16g(浅煎り)
湯量:仕上がり160g
挽き目:EK43 #14.2
湯温:93℃
抽出時間:2:00
手順:
- フィルターと器具をリンスし温める
- 粉をセットし、豆量と同量のお湯を注ぎ30秒蒸らす
- 1投目を細くゆっくりと中心に、全体を立ち上げるように注ぎ、数回に分けて注ぐ
- 抽出量160gになったらドリッパーをはずす (約2分)
ポイント:
豆によって、豆の量と注ぎ方を変えています。 注ぎはじめに細くお湯を入れるもの、太く入れるもので分けています。
コメント:
今年ギャラリーとフリースペースをお店の横と前にオープンしました。より濃い珈琲体験をしてもらえたら嬉しいなぁと思います。
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第17号スポンサーの TYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、Probat x DKSH、Swiss Water、ANKOMNのサポートでお届けしました。