The Weekend Brew #37でお伝えした、現在も内戦が続くコーヒーの第二の故郷イエメンを支援するプロジェクト「Amal Yemen」を応援するため、Standart Japan初となるオーディオ記事を作りました。Standart Japan第15号に掲載されたイエメンに関する記事を収録しています(制作担当Atsushiが、何度もテイクを重ねてくれました😉)。15号はすでにStandart Japanのウェブサイトでは売り切れになっているため、買い損ねたという人もぜひこちらのオーディオ記事を聴いてみてください。いろんな方にシェアしてくれると嬉しいです。
さて先月中旬ごろに定期購読者限定のサンプルコーヒーが早くもなくなってしまい、2週間ほどStandart Japan第16号の発送をストップしていたのですが、オーストラリアのBureaux Coffeeより新しいコーヒー豆が到着したので、今週ようやく発送を再開しました。すでにご予約いただいていた方や、これから定期購読をお申し込みいただく方にはフレッシュな豆をお届けしますので、楽しんでくださいね。
最新号についてくるポストカードは、以前のニュースレターでご説明した通り、お気に入りのコーヒーショップやそこで働く人たちに宛てて、ご自身の言葉でメッセージを送るために使ってほしいと思っています。ポストカードを実際に受け取った方の投稿をSNSで拝見し、わざわざ時間を作って筆をとってくれたコーヒーラバーに感謝するばかりです。僕や制作のAtsushiの元にもポストカードを送ってくださった方がいて、受け取ったときの喜びは何事にも変え難いものでした。会話のきっかけにしたり、日頃の感謝の気持ちを伝えてみたり、ぜひ活用してみてください!
今週のStandart Japanは、次号の制作の真っ只中。記事の執筆や翻訳、インタビューの文字起こしに編集、イラストや写真の手配など、皆さんが最新号を楽しんでくださっている間に次号の制作を進めています。また、Standart Japan第16号のパートナーを務めてくれたセラード珈琲の記事もブログにアップしました。
最後に、個人的なニュースですが、先日知人からもらった梅を使って人生で初めて自分の手で梅酒と梅干しを作ってみることにしました。追熟しているときの梅は、すももやバナナのような香りがして、あまりにおいしそうだったのでかじってみたんですが……完全に騙されました。皆さん気をつけて!
それでは良い週末を。
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
コンゴの新たな危機
先月25日、コンゴ民主共和国東部のニーラゴンゴ火山で大規模噴火が発生しました。Reutersは、噴火で生じた溶岩流によって約3000の住居が破壊されただけでなく、物資を運ぶための主要道路も塞がれ、少なくとも31人が死亡したと報じています。溶岩流は火山の麓に位置する北キブ州ゴマ市にはかろうじて届かなかったものの、政府は再噴火の危険性があるとしてゴマ市に避難命令を発出。現在100万人近くのゴマ市民が隣国のルワンダや、ゴマ市から北西20kmに位置するサケ市などへ避難しています。しかし避難先でも食料難やコレラなど多くの二次災害が危惧されており、国連の推定では約40万の人々が救援・保護を必要としているそうです。
Daily Coffee Newsの記事によると、今回の噴火によるコーヒーセクターへの長期的なダメージは計り知れないとのこと。ゴマ市はコンゴ東部の主要なコーヒー精製ハブとしての役割を担っており、北・南キブ州で生産された多くのコーヒーがこれまでゴマ市に集められていました。しかし主要道路の封鎖によって人と物の移動に混乱が生じており、一刻も早い道路開通が待たれます。今回の噴火を受けて、生産国の持続可能な環境作りを推進する非営利団体On the Groundは現在こちらのページから寄付を募っています。
コンゴ民主共和国では紛争や飢餓が深刻化しているにもかかわらず、国際的な支援が不足していることから、ノルウェー難民評議会は同国が「世界で最も無視された強制移動の危機」にあると位置付けました。コーヒーセクター全体として、同国への迅速な支援を行うと共に強固な国際協力の視点が問われています。
ブラックボックス化するコーヒーショップ
現在欧米を中心とするスターバックスで大きな問題となっているバリスタの激務化。The Guardianのこちらの記事では、感染防止策の徹底やオンライン注文の増加を受けて業務過多に陥りつつあるバリスタの現状がまとめられています。
大きな要因として挙げられているのが、多様化する注文方法です。パンデミックの影響でドライブスルーやモバイルオーダー、UberEatsをはじめとするデリバリーサービスなどの整備が進み、利用者は自分の好きな時間に最適な方法で欲しいものを注文できるようになりました。しかしその結果オーダー数が増加するとともにオペレーションが複雑化し、その負担がバリスタにかかってしまっているのです。さらに近年、TikTok上でスターバックスのオリジナルカスタマイズレシピがトレンド化し、作るのに時間がかかる込み入った注文も増えているのだそう。このように業務は複雑化しているにもかかわらず待遇やスタッフの人数が変わらないことから、スタッフの離職が進んでいるそうです。
加えて、顧客にマスクの着用を求めたバリスタが暴言を浴びるといった感染防止策に絡むハラスメント被害も各地で大きな問題となっています。リアルとデジタルが融合した顧客体験が一般化しつつある今だからこそ、一杯のコーヒーを取り巻く空間があらゆる人々の支えによって築かれているという事実を、改めて心に留める必要があるのではないでしょうか。
その他の気になるニュース
▷ 多くのコーヒーラバーが待ち焦がれたワールド・エアロプレス・チャンピオンシップがリモート形式で開催決定。使用コーヒーが最大18gまでというオンラインフォーマットならではのレシピ制限など、新たなクリエイティビティが問われる予感。日本大会の情報はこちらから。
▷ 昨年10月からCOVID陰性証明付きで海外渡航者を受け入れているパナマ。近年チリキ県のコーヒー農園では、農園ツアーと大自然でのアクティビティをパッケージ化するなど、ツーリズムを通じた観光地の保全・発展を目指す「リジェネラティブ・トラベル」の動きが見られるのだとか。
▷ 今月21日、東京・日本橋に分身ロボットカフェDAWN (ドーン)がオープン。難病や重度障害で外出が難しい人々が、分身ロボットを遠隔操作しサービススタッフとして働く常設実験店なのだそう。一般向けの営業開始は翌日22日から。
▷ インスタントコーヒーと豆腐を使ったフランのレシピが公開。みなさんのオススメお家コーヒー(クッキング)レシピを是非教えてください :)
▷ お客さんの丁寧さに応じてコーヒーの価格が変動する米バージニア州のとあるカフェ。注文の際「Small coffee」だけだと5ドルのコーヒーが、「Hello, small coffee please」だと1.75ドルになるそうですが、例えお金に換算されなくとも、常にバリスタや周りの人々へのリスペクトは大切に。
What We're Drinking
今週のコーヒー
2013年9月、滋賀県彦根市の彦根駅構内にオープン。駅を利用する通勤・通学の方、観光の方に気軽に寄ってもらえるコーヒースタンドを目指して開業しました。コーヒーを飲む猫がトレードマークです。常時6〜7種類のシングルオリジンスペシャルティコーヒーを取り扱い、焙煎して1週間以内の豆のみを販売。フジローヤル直火式3kg窯で毎日少しずつ焙煎しています。豆の販売、ハンドドリップ・エスプレッソマシンでドリンクを提供。店内には英国からの直輸入雑貨も並んでいます。 今ではわざわざ遠方から来てくださる方や県外からの通販も増え、お客様の「おいしい!」が嬉しい毎日です。
生産者:カミーロ・メリサルデ
生産地域:コロンビア カウカ県ポパヤン(地図)
品種:ティピカ
精製方法:フリーウォッシュド
テイスティングノート:トロピカルフルーツを思わせるフレーバー、ジューシーでキャラメルの様な甘み
編集長のコメント:
カップにお湯を注ぐと同時にふんわり香ってきたのは、鼻腔をくすぐるバナナ香。それも、熟れすぎてないバナナのモッタリとはしていない爽やかな香りです。ウォッシュトでもこんなトロピカルな香りがするんだなと驚きました。口に含むと、ジューシーな果実味を感じた直後にブラウンシュガーのような強い甘さがどっと押し寄せてきます。カカオニブのようなニュアンスもあったかと思うと、甘さの波が強くなっていき、間も無くして口全体を包み込んだのはまさに上質なコーヒーヌガー。微かにまだ鼻奥に感じるバナナ香と相まってチョコバナナを連想させてくれる後味に、思わず顔がほころびました。ちなみに、これまでに2度、このThe Weekend Brewで同じ地域&生産者のコーヒーを飲ませていただく機会がありました。まったく異なるフレーバーで、精製方法や焙煎などでこんなにフレーバーが異なるんだということを改めて感じる貴重な機会でした。
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
『手の倫理』 - 伊藤亜紗
書籍情報
私たちが日々無意識的に使い分ける「さわる」「ふれる」という2つの動詞。この本の著者は、おのずと「ふれ合い」に通ずる人間的なかかわりを指す「ふれる」に対し、「さわる」は特徴や性質を確認する物的なかかわりを想起するといいます。本書では、そんな「ふれる」と「さわる」の違いを入り口に、「接触面の人間関係 (物理的な接触以外も含む) 」について考察していきます。興味深いのは、本書が「他者とは」といった一般化された言葉からではなく、「他人の体にさわる/ふれる」という具体的な行為を通じて、手の倫理について探求しているという点です。著者自身が行った障がい者へのインタビューやブラインドマラソン体験をはじめ、あらゆる実体験を起点に話が展開されていく本書の構成がとても読みやすく、同時に第1章で述べられている倫理の目的 ——考えるための道具を与え、考え方の可能性を広げる——を強く実感できる一冊となっています。元々日本ではハグや握手といった接触に馴染みがないことに加え、この度のパンデミックによって一層接触の機会が減っていることから、私たちは「ふれる」という行為の価値について今一度捉え直す必要があると感じさせられます。ちなみに著者伊藤亜紗さんのウェブサイトでは、読者から「さわる/ふれる」に関するエピソードを募集する「私の手の倫理」プロジェクトのページが開設されており、そちらのアーカイブもオススメです。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
田村 麻里子 aka ジェンダーレス焙煎師まこ
19歳でコーヒー業界に飛び込み、去年の12月に夫婦で高円寺にMÖWE COFFEE ROASTERSをオープン。焙煎とバリスタを担当。 近代文学、アート、ファッションに興味がある。
セットアップ:
抽出器具 : HARIO V60
豆 : 15g
湯量:250g
挽き目:細挽(EK43s #9.0くらい )
温度: 92℃
抽出時間: 2:30-3:30
手順:
- コーヒー豆をセットしたら10秒かけて50gのお湯を注ぎ、ドリッパーを3回スピンしてお湯を行き渡らせる
- 1分後中心から外、外から中心へと全体にバランスよく100gのお湯を10秒かけて注ぐ
- 1分40秒から2投目と同様に10秒かけて100gのお湯を注ぎ、最後にドリッパーを3回スピンして壁面の粉を落とす
- 2分半から3分半程で落としきって完成
ポイント:
1投目は粉の上にお湯を乗せるようなイメージで優しく注ぐ。愛情をたっぷり込める。
一言:
MÖWE COFFEE ROASTERSではカウンターを介して店員とお客様やお客様同士で気軽に交流でき、文学やアート、音楽などさまざまなテーマで談義できる17世紀のコーヒーハウスがコンセプトとなっています。 コーヒーが好きならどんな人でもウェルカムなジェンダーレス、ボーダーレスなお店です。 ぜひ遊びに来てください!
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第16号スポンサーの TYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、セラード珈琲、カラベラコーヒーのサポートでお届けしました。
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Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)