#47: カビ、自販機、コーヒー

#47: カビ、自販機、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

最近は気温が高い日が続いていてもう夏なのかなと思い始めています。例年、夏はほぼTシャツで過ごすことが多いのですが、ありがたいことに毎年福岡ではCoffee T-shirt Storeというイベントが開催されます。全国のコーヒー屋さんが作るオリジナルTシャツが大集合するこのイベントは今年で6年目、個人的に夏の風物詩になっています。コーヒー好きはもちろんのこと、Tシャツ好きやコーヒーの"外"からやってくる人たちのコーヒーに興味を持ってもらうきっかけとなり、なおかつローカルや全国のコーヒーコミュニティを繋ぐ役割も担っていて、コーヒーのファンをみんなで協力して作っていこうという気概を感じずにはいられません。

コーヒーショップのTシャツを着ることは一種のアイデンティティになっていて、音楽フェスやバンドのTシャツを着るような感覚で、お店やコーヒーのファンであることを表現してくれます。あるコーヒーショップのTシャツを着ていたとき、「あのお店ですよね? 私も好きなんですよ」と見知らぬ人に声をかけられたことは1度や2度ではありません。そういう時にいつも思い出すのは、カフェで隣に座った人と自然と会話が始まるときのことです。カフェの空間やおいしいコーヒーを共にしているという安心感からコミュニケーションの壁を感じることがなく、はじめましてをすっ飛ばして始まる普通の会話が妙に心地いいんです。形は違えど、そんな感覚がTシャツにもあるんだと思います。これからもコーヒーTeeを着て夏を過ごすのが楽しみで仕方ありません! オンラインでも参加できる企画なので、遠方の方もぜひ覗いてみてください。

そして最後に、先週からようやく発送を再開したStandart Japan 第16号ですが、この1週間でありがたいことにすべて完売してしまい、現在オンラインでは8月リリースの第17号のプレオーダーの受付を開始いたしました。第16号はお取扱店にて引き続き販売されているところもあるので、そちらでお買い求めください。みなさんいつもStandartをサポートいただき本当にありがとうございます!

それでは良い週末を。

編集長 Toshi


 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

感染経路に注意

アフリカ・サハラ砂漠以南のコーヒー生産地に壊滅的な被害をもたらしてきたコーヒー萎凋病 (いちょうびょう)。1920年代の発生以降、一時はその姿を消したものの、1970年代にエチオピアのアラビカ種と東・南アフリカのロブスタ種で感染が確認され、1990・2000年代に再び被害が広まりました。現在はほとんど確認されていませんが、2011年にはタンザニアで約55,000本に及ぶロブスタ種のコーヒーノキが死滅したことから、再発防止策の必要性は明らか。先日発表された新たな研究によると、コーヒー萎凋病の原因となる真菌(カビ)が他の作物に感染する近縁種の遺伝子を獲得し、感染力を高めている可能性が見えてきたそうです。

記事によると、研究チームはラボに冷凍保管していた1950年代に採取された真菌株と先述した2000年前後の2つの真菌株を復活させゲノム解析し、後者の進化の過程を探ったのだそう。その結果、新しい真菌株の方がゲノムサイズが大きいことがわかり、さらには萎凋病を引き起こすうえで重要な役割を担っている可能性がある複数の遺伝子が特定されました。またこれらの遺伝子は、同じくサハラ砂漠以南のバナナ栽培に被害をもたらしている「パナマ病」の原因となる真菌が持つ遺伝子とも非常に近いことが分かりました。これまでパナマ病を引き起こす真菌が近縁種に遺伝子を渡す事例は確認されてなかったものの、バナナの木がしばしばコーヒーのシェードツリーとして用いられていることから、コーヒー萎凋病の原因となる真菌はバナナの木に寄生する真菌の力を借りて感染力を高めた可能性が浮かび上がったというわけです。

つまりバナナとコーヒーを近くで栽培しないことが、新たな萎凋病の予防策となりえるとのこと。現在研究チームは、復活させた真菌をコーヒー苗に感染させ、その過程や他の感染予防対策についての研究を進めています。

 

トレンドを取り巻くトレンド

オーツミルクをはじめ、近年飛躍的な発展を遂げる植物性ミルク。その成長ぶりは、約124億ドルの世界市場 (2019年)が、2027年には約230億ドルに達すると言われるほど。しかしここで改めて注目したいのが、そのトレンドを取り巻く市場規模約7190億ドルの乳業の世界です。Courierのニュースレターでは、今日乳業市場の現状と新たなビジネスモデルの動向についてまとめられています。
 
まず世界の乳製品消費量の約40%を占めているのはアジアで、生産量の20%以上をインドが担っているとのこと。アジアやラテンアメリカにおける中流階級の拡大を受けて今後も需要は増え続ける見通しで、現在ブラジルにある農場の25%が乳業に使われている一方、中国では2030年までに生乳の生産能力が3倍になると予想されています。一方ミルクの消費量が低下する米国や英国では、農場のビジネスモデルが大手企業への卸売から直接消費者に届けるD2Cモデルへと転換し、環境配慮やトレーサビリティの徹底、再生型酪農といったメッセージを打ち出しつつ、消費者との深い関係を構築しようとする事例が見られます。一般向けのビジターセンターを設置する農場や、微生物を使って牛なしで牛乳のタンパク質を増殖させる技術など、興味深い実例もぞろぞろ。

Standart Japan最新号の「Meet Your Guest」の中で、スペシャルティコーヒー専用の牛乳を生産するBrades Farmのオーナー兼マネージャーJoeさんが、エシカルな消費が拡大するなかでスティグマ化される乳製品の今について語っています。両者の意見に一旦耳を傾け、それを踏まえて自分はどう考えるのか、そのきっかけをくれる記事です。

 

その他の気になるニュース

▷ 非営利団体Fairtradeグループが、世界のコーヒー農家に向けて気候変動への対応策や環境負荷削減の手段についてまとめた「Climate Academy Guide」の提供を開始。PDF版動画版が公開されています。

▷ ドイツのフードテック企業が粉末状のオーツミルクを開発。その利点は輸送時に発生する環境負荷の軽減。パッケージも100%リサイクル可能なプラスチックで作られています。

▷ EVA (欧州自動販売協会)がバーチャル展示会プラットフォーム「Vending & Coffee Solution Hub」を開設。オンライン空間での展示やウェビナーを通じ、業界の最新動向がチェックできるほか、コーヒー・小売企業とのネットワークも構築できるそう。

▷ 11日間の戦闘を経て停戦状態に入ったパレスチナ自治区ガザ地区。こちらの記事には、交戦開始の6日前にガザ地区でオープンしたコーヒーショップのオーナーへのインタビューが掲載されています。

▷ ミシガン州立大学の研究チームは、寝不足のときにカフェインを摂取すると単純なタスクはこなせるようになるものの、複雑なタスクではその効果があまり見られないことを発見しました。つまりコーヒーでは睡眠を代替できないということ。みなさん、しっかり寝ましょう。

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

cafeみちくさ
佐賀

佐賀にあるスペシャルティコーヒー豆専門店cafeみちくさです。コンセプトは「昨日より今日のコーヒーがおいしくなること」。コーヒーがおいしくなるっていうことはきっと何かいい方向に行っているっていうことだと思っています。

生産者:Danny Gabriel Moreno Leiva

生産地域:ホンジュラス サンタバルバラ(地図

品種:カツアイ&パカス

精製方法:ウォッシュト

テイスティングノート:ハチミツや水あめのような甘さと質感。シャンパン、マスカットのような華やかさ。冷めていくごとにパイナップルやマンゴーといったトロピカルフルーツの印象が強くなってきます。

編集長のコメント:
挽いたばかりの豆に鼻を近づけてみるとほんのりカレー粉のようなスパイスの複雑な香りがありました。お湯を注ぐと、台所にある砂糖の入った容器を開けた時のような甘さが凝縮された空気がぽわんと立ち上ります。カッピングスプーンからすすった一口目は、ジューシーという言葉がこれ以上ないくらい似合う、口から溢れんばかりの瑞々しさ。デラウェアのような甘さと酸味を感じました。少し温度が下がってくるとアメリカンチェリーのニュアンスも。蜂蜜を少したらしたカモミールティーのようなふんわりと甘い香りの口中香も心地よかったです。暑い季節、アイスにしても抜群に美味しそうなコーヒーでした。

 


Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

Van Weezer - Weezer
オフィシャルストアYouTubeSpotifyApple Music 

今年5月にリリースされた、アメリカのバンドWeezerによる15枚目のアルバム。Weezerは中高生のころから聞いていたものの、徐々に音楽の方向性が変わり5枚目以降のアルバムは正直あまり聞いていませんでした。新しいアルバムが出るたびに試聴してはモヤモヤした気持ちを抱えたまま購入にはいたらず、ということを繰り返していたのですが、この最新アルバムにはハッとするものがありました。メンバーの青春を彩ったKissやVan Halenなどを彷彿とさせる(タイトルがVan Weezerなので、さもありなんですが……)曲が多く、原点回帰の印象を受けたことがその要因かもしれません。60~70年代のハードロックやメタルが好きな人であれば、「この曲○○に似てない?」というイースターエッグ的な楽しみもあります。個人的には初期のWeezerの荒々しくローファイなサウンドや、泣くようなギターソロ、それに反してナーディーな歌詞の融合が好きなので、最新アルバムが必ずしも自分の期待していた作品というわけではないのですが、「やっぱりこういうのやりたかったんだよね」と思わせる不思議な納得感がありました。と同時に、ここに至るまでの旅路をきちんと追えてなくて申し訳ないという勝手な罪悪感も……。


Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

佐藤 昂太 aka Kota

2016年ジャパン・ハンドドリップ・チャンピオン。 東京のUNLIMITED COFFEE BAR、dotcom space tokyoでバリスタとして活躍後、フリーランスとしてセミナー講師、バリスタとして活動中。 また、2021年4月〜プロアマ問わずコーヒーが好きな人が集うコーヒーコミュニティサロン@_crazycityをスタートさせ、さらにコーヒーの楽しさを伝えるべく奮闘中。 病気がちだったのをきっかけに、化学調味料をほぼ使わない自炊で毎日、健康維持しています! ナチュラルワインにハマり中。

セットアップ:
抽出器具 : ハリオV60 01
豆 : 13g
湯量:215g
挽き目:中細挽き(コマンダンテ23クリック)
温度: 93℃
抽出時間: 2:40〜2:50程度

手順:

  1. 0:00〜 30g
  2. 1:00〜 75g
  3. 1:30〜 55g お湯をかけた後、ドリッパーを回して縁の粉を落とす
  4. 1:50〜 55g 軽くドリッパーを回して粉をフラットにする
  5. 2:40〜2:50程度で落ちきり

                ポイント:

                粉を挽いた後、ブロアーなどで風を送り、シルバースキンを除去するとよりクリアな味わいとなりベターです! 2湯目、3湯目、4湯目ともに、4〜5センチ程度の高さから、ゆっくりと円を描きつつ注ぐことによって、粉がお湯によって適度に攪拌されフレーバーが引き出されます。 ドリッパーの縁付近には、お湯をかけないですが、スピンによって縁の粉を落としてます。

                      コメント:

                      高めの湯温と長めの蒸らしによってフレーバーと甘さを引き出すことを意識したドリップです✨浅めのローストの豆でトライしてみて下さい😊


                       

                      今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?

                      バックナンバーを含め、The Weekend Brewの感想やコメントはぜひ #standartjapan のハッシュタグと共にシェアをお願いします! 質問はメールでお待ちしております。またお友達やご家族など、The Weekend Brew を一緒に楽しんでもらえそうな方にこのメールを転送していただけると嬉しいです。

                      Standart JapanのウェブサイトInstagramFacebookもぜひチェックしてみてくださいね。

                      今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第16号スポンサーの TYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業セラード珈琲カラベラコーヒーのサポートでお届けしました。

                      LOVE & COFFEE✌️
                      Standart Japan
                      (執筆・編集:Takaya & Atsushi)