おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
Standartでは毎号、ひとつの生産地にスポットライトを当てて、その国の歴史やコーヒー生産の状況などを深堀りしています。最新号のStandart Japanではイエメンを特集しました。昨年、イエメンでアラビカ種の新しい遺伝グループ「イエメニア(YEMENIA)」が発見されたというコーヒーファンには嬉しいニュースもありましたが、特集記事でも少し触れた通り同国では内戦が続いており、それによって人道的危機が発生しています。「アラブの春」と呼ばれた中東の民主化運動から今年で早10年になりますが、ノーベル平和賞を受賞したイエメンの女性活動家、タワクル・カルマン氏が年初のテレビ番組で「私たちは今も革命の途中にあり、多大な犠牲を強いられている」と言っていたのが、イエメンの現状を物語っています。
そんな状況を少しでも知ってもらい、コーヒーの歴史で重要な役割を果たした国イエメンを、コーヒーを通じてサポートしたいという考えから誕生した、「Amal Yemen」(Hope for Yemen)というグローバルイベントが4月9日に行われます。ファンドレイジングも兼ねたこのイベントは、イエメンの歴史や文化やアートを讃え、コーヒーコミュニティやさらにはその垣根も超えて情報を発信していこうというもの。ACEやIntelligentsia、Square Mile Coffee Roastersなどが音頭を取り、世界中のコーヒーコミュニティを巻き込んでイベントを開催します。Standartも微力ながらイベントに協力していますよ。日本では深夜の時間帯になりますが、もしご興味のある方はチェックしてみてください。日本でも今後、Amal Yemenに関連した企画を検討しているのでこちらも楽しみにしていてくださいね。
話は変わりますが、今月中旬に、Standart Japan最新号のスポンサーを務めてくれた兼松株式会社が、全国3都市(東京・大阪・福岡)でブラジル ダテーラ農園の特別なマイクロロット「マスターピース」のカッピングイベントを開催します。2018年のワールド・ブリューワーズカップで優勝した深堀絵美さんともリモートでお話するそうです。福岡の会場には、編集長のToshiも伺いますよ。コーヒー業界の関係者(ロースター、バリスタ、カフェ・コーヒー関連事業に関わる方など)限定のイベントで、予約制で席数が限られていますが、ご連絡いただけましたらご案内いたしますのでお気軽にお問い合わせください! 詳しくはこちらから。
「え、コーヒー関係者だけなの?」「その3都市以外の人はどうなるのよ!」と思われた方に朗報です。Standart Japanのインスタグラムで来週、そのダテーラ農園のコーヒーを約10名の方にお届けするプレゼント企画を兼松株式会社のご協力のもと実施します! コーヒーを焙煎してくださるのは名古屋のTRUNK COFFEEさん。コメントいただいた方の中から抽選でプレゼントいたしますので、楽しみにしていてください。インスタグラムのアカウントを持っていない方は、このニュースレターへご返信ください!😉
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
私の街のMC
昨年末、COVID-19の拡大やそれに伴う行動制限などの心理的な影響を把握するために厚労省が行った調査では、回答者の半数以上が何かしらの不安を感じていることがわかりました。国外でも同様の調査結果が出ており、世界保健機関もCOVID-19のメンタルヘルスへの影響を憂慮し、専用のページを開設しています。
そんな中アメリカのシカゴに住むChristopher LeMarkさんは、自身が運営するカフェを通じて、地元の人々のメンタルヘルス向上を目指しています。「Coffee, Hip-Hop & Mental Health」と名づけられたこのカフェでは売上の一部を使って、シカゴに住む人々に無料のセラピーを提供しています。今年の目標はシカゴに住む250人の人々にひとり当たり5回のセッションを無料でプレゼントすること。LeMarkさんも過去にメンタルブレイクダウンを経験し、その時の自分を救ってくれたヒップホップとセラピーを、コーヒーという身近なアイテムを通じて人々に届けたい、そしてメンタルの不調をスティグマ化せずに誰もがセラピーを「普通のこと」と捉えるような世界になってほしいという想いからこの取り組みを始めたそうです。
AIG総研が日本で働く人たちを対象に行ったメンタルヘルスに関する意識調査でも、回答者の約半数が治療にかかる費用や病そのものに対するネガティブなイメージなどから精神科・心療内科の受診に抵抗を感じていることが明らかになっており、LeMarkさんの取り組みが問題の核心をついているように映ります。それと同時に、いつもながら「○○×コーヒー」の可能性の大きさに驚かされます。
空飛ぶコーヒー
最後に飛行機に乗ったのはいつだったか、そして機内で飲んだコーヒーがどんな味だったかみなさんは覚えていますか? 今となっては遠い昔のように感じますよね……。Standart Japan第10号「高度8,000フィート」でも触れた通り、質については厳しい意見が飛び交いがちな飛行機の中で出されるコーヒーですが、機内に搭載されたコーヒーマシンとは一体どんなものなのでしょうか。
こちらの記事では、なぜ機内のコーヒーマシンが何十万円、ときには何百万円もするのかについて書かれています。そもそも飛行機の設備については安全のために種々の規制が敷かれており、コーヒーマシンでいえば過大な電流が流れたときに回路を切り離すサーキットブレーカが搭載されているか、また棚から落ちないようにラッチが付いているかなど大小さまざまなルールが設定されています。そのくらいのことか、と思われるかもしれませんが、過去にはコーヒーマシンの不調によって遅延が発生するなど、航空会社にとってはわずかなリスクも大きな損失につながる可能性があるため、そのニーズに応えられるマシンは自ずと価格が高くなってしまうようです。
安全第一のコーヒーマシンもいいけど、いつものようにお気に入りのコーヒーを楽しみたい! というコーヒーフリークのあなたには、European Coffee Tripの機内でエアロプレス動画をどうぞ。上空でエアロプレスを使うMile High Aeropress Clubの一員になるべく、今のうちに技を磨いておきましょう。
その他の気になるニュース
▷ Simonelli Groupがオンライン教育プラットフォーム「Coffee Knowledge Hub」をローンチ。官能評価やコーヒーの化学などをテーマにした30のコースがすでに提供されており、年内にはコースの数を60にまで拡充予定とのこと。
▷ 革新的な航空機のインテリアのコンセプトに贈られる Crystal Cabin Awards。今年の受賞コンセプトのひとつはなんとカフェ型。これなら移動中でも仕事に集中できること間違いなし。
▷ コーヒーの果肉が熱帯林再生を促進するという研究結果をBritish Ecological Societyが発表。精製後に残る果肉を荒廃した農地に敷き詰めたところ、2年で熱帯林再生が劇的に進んだとのこと。こちらの記事の写真でその効果が見て取れます。
▷ オーツミルクブランドOatlyがヨーロッパで展開するスローガン「It’s like milk but made for humans(牛乳みたいだけど人間用)」の商標登録をめぐって議論が紛糾。最終的には炎上事件を受けて、その独自性が評価され登録されることに。
▷ カップの中でコーヒーを抽出できる、金属フィルター付きストロー「JoGo」が誕生。4/14からクラウドファンディングキャンペーンがスタート予定。その手軽さはこちらの記事の冒頭の動画を観れば一目瞭然。難点は温かいコーヒーをストローで飲むことへの慣れ……?
What We're Drinking
今週のコーヒー
「試飲や接客を通して新しいコーヒーの魅力に出会えるお店」を目指し、富山市古沢に2016年開業した自家焙煎のスペシャルティコーヒー専門店。
コーヒー:
ブレンド
生産国:
①エチオピア
②エクアドル
生産者:
①ネンセボ地域の700〜800名の小規模生産者
②アベル・サリナス
生産地域:
①西アルシ、ネンセボ
②ロハ
品種:
①在来種
②ティピカ
精製方法:
どちらもウォッシュト
テイスティングノート:
青リンゴ、プラム、スイートアフターテイスト
編集長のコメント:
久しぶりのブレンドでした。華やかという言葉がぴったりで、レモンやマスカットのようなフレッシュなジューシーさと綺麗な酸味が印象的。桜ブレンドの名前の通り、春の明るく広がる花畑の風景を彷彿とさせてくれます。後味にあんこのようなニュアンスも。花見の時に感じる気持ちを表現したこのコーヒーは和菓子にぴったりとのことで、hazeru coffee本店の隣にある和菓子屋の梅大福をいただきました。梅の酸味とコーヒーの酸味が見事にマッチし、なだらかに甘さに変わっていくメローな味わいの変化がたまらない幸福感を感じさせてくれ、思わずため息が出る美味しさでした。
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
ペイシェンス
リンク
アイズナー賞&ハービー賞やPEN賞受賞作家であり、アカデミー賞ノミネート脚本家でもあるダニエル・クロウズによるアメリカンコミック「ペイシェンス」。サブタイトル「永遠の愛の原始的無限空間を目指す宇宙的な時を超えた死の旅」からぼんやり予想できるように、物語はタイムトラベル系のSFサスペンスラブストーリーで、ハードボイルドな主人公が時空を超えて愛を貫く様がポップなアートのぶっ飛んだ世界観で描かれています。ダニエル・クロウズというと、ティーン女子二人の会話や日常感がたまらないゴーストワールドが有名ですが、新作のペイシェンスは嗜好を変えたストーリー展開は映画のようで、タイムトラベルという使い古されたテーマをパンチの効いたタッチの絵とユーモアでぐいぐい読ませてくれます。人間の自分勝手な醜い部分と、愛らしくも感じられる愚直なまでの純粋さが同時に描かれ、タイムパラドクスさえも愛は乗り越えるのかと、最後の1ページを閉じ終わるとディープな読了感に浸れます。すでに映画化が決定しているらしく、映画版のゴーストワールドも素晴らしい作品だっただけに待ち遠しいです。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
中村 靖彦 aka YASU
幼少期の2年間、留学期間の2年間のドイツ滞在を経て、2005年以来、ドイツ、ヴュルツブルクに在住。SCAのバリスタ部門、プロフェッショナルレベルを保持し、現在はニュルンベルクのスペシャルティコーヒーロースターの老舗Machhörndl Kaffeeで店長、そして全店舗のキッチン&ベーカリーのメニュー開発、兼責任者を担当。2018年より定期的に来日し、関西を中心に各地でゲストバリスタとしてのコーヒーの提供、セミナーやワークショップなどを行っている。実はコーヒーよりもDJとしてのキャリアの方が長く、音楽が大好き。
セットアップ:
抽出器具:アメリカンプレス
豆量:16g
湯量:255ml
挽き目:中挽き /今回はナイスカットミルの3.5
抽出温度:89℃
抽出時間:2:30
手順:
- 挽いたお豆をポッドに入れ、軽く振り、粉が均等に行き渡るようにする
- 熱湯をアメリカンプレスの容器に注ぎ込み、設定温度に達するまで待つ
- 容器にポッドをセットした後、ポッド上部からお湯が出始めるところまでポッドを下ろし、そこで止めて1分間その状態で蒸らす
- 1分後、ポッドをもう少し押し、上部のフィルターが隠れそうになるところで止めてさらに50秒間その状態で蒸らす
- 40秒かけてゆっくりと最後までプレスする
ポイント:
普段は豆ごとにレシピを作るので、どのお豆にも完璧に通用するレシピかは分かりませんが、フルーティーな浅煎りのお豆であればある程度美味しくできるはずです!
一言:
ドリップだと、レシピ通りにしても、どうしても注ぎ方などに個人の特徴や癖があり、同じ味が再現できないことが多い気がします。その点、この抽出器具アメリカンプレスはレシピさえあれば、プロがしても子供がしても極力同じ味が再現できる唯一の抽出器具ではないかと思います。
今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第15号スポンサーの 兼松株式会社、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、Paradise Coffee Roasters、Prana Chai、Typicaのサポートでお届けしました。
LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)