今日はいつもの嬉しいニュースをご報告です。いよいよStandart Japan 16号がリリースとなります! 発送はGW連休明けの10日の週後半を予定。楽しみにしていてくださいね😉
今号のキーワードは「台風」「スコーン」「コーヒー」。私たちの母国日本でコーヒー栽培に挑戦する人々の物語や「コピ・ルアク」の意外な真実、大阪府Lilo Coffee Roasters所属のアーティスト・セキネユカさんが抱えるモヤモヤ、Fuglen日本代表の小島賢治さんのこれまでの歩みについてなどをお伝えします。今号の長編記事「猫カフェは本当に『カフェ』なのか」も面白さ満載。猫カフェの歴史や成り立ち、そこから見えてくる都市生活の変化について。人々は何を求め猫カフェを訪れるのか、そこで”働く” 猫たちは一体どこからやってきたのか、そもそも猫カフェは「カフェ」なのか、といった問いについて考えながら、猫カフェや私たち自身についての理解を深めます。
表紙は、仏クーリエ・インターナショナルや英ガーディアン紙など世界的メディアへの掲載歴がある写真家のシン・ノグチさんによる撮り下ろし。鎌倉にあるお寺の境内に建つ純日本家屋のご自宅の縁側で、ご家族をモデルに撮影いただきました。毎朝必ず豆を挽いて5杯分ドリップし、ジャズレコードに針を落としてから写真の編集をスタートするというノグチさんの作品が気になる方は、インスタグラムをチェックしてみてください。またその魅力的な「床の間」がオーディオ・テクニカのグローバル・プロジェクト「Analogue Foundation」のウェブサイトで紹介されています。
気になるサンプルコーヒーは、ワールド・エアロプレス・チャンピオンシップの創設者の1人で、Standart Japan第9号「ボスでいるということ」にも登場してくれたTim WilliamsさんがCEOを務めるオーストラリアBureaux Coffeeのもの。Timさんおすすめの抽出レシピはこちらから。
(急かすわけではありませんが……)13号から15号まで完売していることもあってか、ありがたいことに定期購読者が急増しています。在庫がなくなり次第販売終了となりますので、ご了承くださいね。
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
多様性への責任
現在、米国・ダラスのとあるコーヒーショップで問題となっている「ベトナムコーヒー」の表記問題。こちらの記事によると、ベトナム系米国人Voさんが、本来「フィン」と呼ばれる金属製の筒状ドリッパーを用いて淹れられるベトナムコーヒーが、同店ではコールドブリューを使って提供されていることに気づき、レビューサイト上で指摘したことが事件の発端。コーヒーショップ側は、同メニューが社外に委託して作られたということやオープン以降一度も問題になっていないことを主張した上で、今後メニュー名もしくはレシピの変更を検討すると述べています。
本誌第15号『ロブスタの再考』の中でも、ベトナム産スペシャルティコーヒーを扱うNguyen Coffee Supplyの創設者Nguyenさんが、 近年のベトナムコーヒーブームに対し警鐘を鳴らしています。なぜなら今回のケースと同様に、間違った形でベトナムコーヒーの消費者体験が広まることで、本来尊重されるべきベトナム文化が実際は蚊帳の外状置かれた状態になってしまうからです。 Voさんは、「ベトナムコーヒー」という名称を使って(意図的かどうかはさておき)商業的な価値を生もうとする今回の事件は「文化の盗用 (Cultural Appropriation)」に当たると述べています。
また今回Voさんが声をあげた背景には、以前のニュースレターでも取り上げてきた、米国内で深刻化するアジア系国民への差別被害があるのだそう。文化とは、長い歴史の中で人々の手によって紡がれてきたもの。多様な文化に触れる機会に溢れた今日だからこそ、その尊さを受け止め、発信において自分がその文脈を理解・体現できているのか、常に謙虚さを持って向き合う姿勢を大切にしていきたいです。
その一瞬を求めて
近年オンライン会議などで身近な存在になりつつあるウェブカメラ。その世界市場は、2020年度で約67億ドルに及ぶと予想されており、今後10年間で特にセキュリティ監視システムを中心に需要拡大が見込まれています。でも、実はその起源にコーヒーが深く関わっていたということを知っていましたか?
ウェブカメラの発明者Quentin Stafford-Fraser博士の話によると、当時のケンブリッジ大学のコンピューターサイエンスラボでは、多くの研究者が各部屋やフロアに別れて研究に勤しんでいました。しかし肝心のコーヒーポッドはたった一つの部屋にしかなく、コーヒーを求めて研究者たちがその部屋を訪れても、ポッドの中身が空、もしくは淹れてから時間が経ってしまっていた、ということがよくあったのだそう。この問題の解決に向け、博士の研究チームが開発に乗り出したのが、スクリーン上で別室のコーヒーポッドの状態を確認し、どの部屋にいようともコーヒーが淹れたてのタイミングを知ることできる「コーヒーポッドカメラ」。これが原型となり、完成から2年後の1993年、世界初のウェブカメラの誕生に至ったそうです。
ちなみに初期のコーヒーポッドカメラはドイツの企業に買い取られたものの、もう使われてはいないだろうと博士は述べています。なぜなら「今の私たちと同じく、もっとおいしいコーヒーを味わっているだろうから」だそうです。世紀の大発明が、まさかコーヒーをきっかけに誕生したとは、なんとも「味わい深い」物語。コーヒーラバーのクリエイティビティの源は、いつもコーヒーのようですね。
その他の気になるニュース
▷ Oatlyが米国で新規株式公開 (IPO)の申請を行なったと発表。上場後の時価総額は約$100億ドルに及ぶと予想されています。
▷ コロンビアで攻撃性の強い9つのコーヒーさび病菌の変異株が見つかったとの報告が。国内での蔓延を避けるべく、コロンビアのコーヒー連盟は生産者にさび病耐性のある品種の栽培を促しているとのこと。
▷ Harioが2013年ワールドバリスタチャンピオンPete Licata氏とのコラボドリッパーW60を発表。Kurasu Kyotoのこちらの記事では、その他新商品を含む使用レビューが紹介されています。
▷ パンクバンドGreen Dayがパンク、TV番組、コミュニティフォーラムの要素を融合したヴァーチャルプラットフォームOakland Coffee Houseをローンチ。地元アーティストの紹介や有料コンテンツを通じたチャリティ支援等が組み込まれている模様。
▷ オーストラリアのとある企業の採用面接で鍵を握るのは、なんと飲み終わった後のコーヒーカップ。候補者が面接前に社内キッチンで手にしたカップを、面接後に洗うか否かが採用基準の一つになるのだそう。手洗い、うがい、コーヒーカップの洗浄をお忘れなく。
What We're Drinking
今週のコーヒー
「おいしいコーヒーをもっと普通に」を掲げ2019年7月に創設。 人と人、仕事と仕事、1日と1日の「間」に、日常に溶け込む存在としてコーヒーと食体験を通して人々の生活を物質的な部分のみならず精神的な面でも豊かにしていけるようなコーヒー屋であること。そしてたくさんの笑顔を生むこと。 あなたのこだわりに寄り添える店であり、誰かの新たなこだわりを生み出したい。 普通のコーヒー再定義革命を掲げ、コーヒー好きの方もコーヒーにこだわりのない方も当たり前においしいコーヒーを飲んでいるような世の中を創ることを使命に掲げている。
生産者:
Ataさん/Pupaeさん( アカ・ヒル族 Becheku Family)
生産地域:タイ チエンラーイ県 ドイパンコン村
(地図)
品種:Red & yellow Catimor / Caturra / Bourbon / Typica
精製方法:ナチュラル
テイスティングノート:洋酒のような複雑さ、黒糖、グレープ、シルキー
編集長のコメント:
The Weekend Brew #12以来、久しぶりのタイのコーヒーでワクワク度高めで豆袋を封を切りました。中を覗くと、袋にこもっていた苺のようなアロマがブワッと飛び出してきます。以前、苺狩りのビニールハウスに入った時の記憶が蘇り、空気にねっとりとした甘さを感じました。お湯を注ぐとレモングラスやスパイス、そしてここにもストロベリーが。タイマーが鳴り、スプーンですくって一口。よく熟した桃や洋梨のフレーバーに、質感のある甘み、さらにほんの少しミルキーウーロンのようなニュアンスを感じます。タイのコーヒーのクオリティに、驚きを隠せませんでした。この生豆を取り扱っているオランダのThis Side Upの日本語版ウェブサイトに、産地や農家に関するより詳細な情報があります。Nordic Approachなどもそうですが、ソーシングを行う会社が透明性のある情報をしっかり伝えてくれることで、農家や産地、コーヒーの情報について深く理解できますね。
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
働くことの人類学
YouTube|ポッドキャスト(Anchor)
文化人類学者の松村圭一郎さんが他の文化人類学者をゲストに迎え、世界中のさまざまな民族の話を通して「働くこと」についての理解を深めるポッドキャスト。たまたま聴いた第2話がとても面白くて、現在他のものもチェックしています。第2話のゲストは、アフリカ南部のカラハリ砂漠に住む狩猟採集民を研究する津田塾大学の丸山淳子さん。政府の開発プロジェクトなどによって狩猟採集民の生活もここ半世紀ほどで「近代化」し、学校に行く人や農業や畜産業に従事する人が増えているそうですが、それでも狩猟採集はやめない人が多いとのこと。その理由を尋ねられた丸山さんは少し間をおいてから、(理由はさまざまだろうけど)私たちには新しいことを採り入れると古いことをやめるという、ある意味特異な考え方が染みついていることに気づいた、と答えます。さらに現地の人たちは開発プロジェクトを進める役人のことを「一つのことをする(ヤツら)」と揶揄することがあるのだとか。これが結構衝撃的で、ある一つの技能を極めて成長していくことを「正しい」ことと見なす考えが自分にも染みついていることに気づかされました。何かに興味を持ってそれが楽しいから深めているのか、何かのプロになることが「正しい」と感じるから深めているのか、これは考える価値のある問いではないでしょうか。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
小野 光
aka ONO SAN
香港のBrew Bros Coffeeオーナー。今期から船橋の粕谷・梶氏率いるPhilocoffea、株式会社コーヒーのあるところ、にも所属する。引っ越しと部屋の掃除にハマり中。
セットアップ:
抽出器具:ハリオV60 02サイズ
豆量:18g
湯量:300g
挽き目:28-30 コマンダンテ
温度: 90℃くらい
抽出時間: 2:30-3:00
手順:
- ドリッパーにペーパーをセットしリンスする。ぴったりフィットさせるため水多めでリンス
- コーヒーをドリッパーにセットする
- 注ぎ始める。計5回注ぎを30秒間隔で(60gx5)
- done!
ポイント:
▷ 最初2回の注ぎはゆっくりと。(7.5g/sec)
▷ 残り3回の注ぎは少し速めで。(10g/sec)
▷ 味調整はグラインドサイズで調整してください。
一言:
日本に帰ってきました!
今年もよろしくお願いします。
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第16号スポンサーの TYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、セラード珈琲、カラベラコーヒーのサポートでお届けしました。
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Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)