おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
去年同様、GWはあまり移動もできずに自宅や近隣でゆっくり過ごされた方も多いのではないでしょうか。友人たちと話していて感じましたが、近所のカフェに行ったり、家族で公園でピクニックしたり、自宅で積読していた本を読んでみたりと、これまでのGWの過ごし方とは異なるものの、案外いつも以上に羽を伸ばしてリラックスできた人が多かったのかもしれません。
Standart Japanはというと、最新号をリリースしたばかりということもあって、来週の発送に向けた準備に追われていました。特に気を使ったのは、定期購読者限定のサンプルコーヒーの輸入のタイミング。Standartでは毎号、世界トップクラスのロースターとコラボして、雑誌と共にコーヒー豆を発送しています。そのためには海外からコーヒー豆を輸入する必要があるのですが、今回は大型連休の存在がなかなか悩ましく、通関が連休明けになってしまうと発送のタイミングが遅くなってしまうということで、ずいぶんドキドキさせられました。
結果、スムーズかつオンタイムに通関が完了したことで、みなさんへの発送を無事に予定通り進めることができています。お手元に到着するまではまだまだ安心できないのが正直なところですが、あとは全国各地に発送する封筒に入れ込み配達するのみ!(これがまたなかなかタフな作業ではあるのですが)
到着したら、ぜひSNSなどでシェアしてみてくださいね!
ご感想も随時お待ちしています。
それでは良い週末を。
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
スペシャルティの再発見
今年4月、サイエンスジャーナルNature Plantsにコーヒー原種「コフィア・ステノフィラ種」に関する研究内容が掲載されました。Daily Coffee Newsの記事によると、同研究は以前のニュースレターでも紹介した仏農業研究機関(CIRAD)による調査内容をベースとしているそう。気候変動の影響で2050年までに現在コーヒーが栽培されている地域の半分近くでコーヒーを育てられなくなると予想される中、同品種はアラビカ種と同等のフレーバーとアラビカ種以上の耐熱性を兼ね備えているとして注目が集まっています。
実は初めてステノフィラ種が発見されたのは19世紀後半で、記録によれば「最高級アラビカ種に匹敵するフレーバー」と評されながら、その後100年近くその存在は確認されてきませんでした。しかし2018年、今回の研究チームがアフリカ・シエラレオネ共和国で同品種を「再発見」したことをきっかけに、高温や乾燥、害虫に強い同品種の栽培作物としての可能性が調査されてきました。官能評価では、野生のステノフィラ種の中からランダムにサンプルが摘出されたにもかかわらず、SCA基準で80.25点を記録したそうで、今後も栽培面をはじめとする調査は続いていくものの、将来のスペシャルティコーヒー(スコア80点以上)としてのポテンシャルは明らかだと言えるでしょう。
しかし改めて心に留めておくべきは、この背景に存在する気候危機という大きな問題です。今回のステノフィラ種の研究をはじめ、 コーヒー業界全体が「持続可能な産業づくり」という目標に向け、常に効果的なアプローチを生み出し、且つそれらを継続していく姿勢が必要なのだと強く感じます。
We are who we are
2019年以降の抗議デモに加え、この度のパンデミックによって甚大な被害を受けている香港の飲食業界。中でも営業制限を余儀なくされたバーを見てみると、香港全体の約35%が閉店に追い込まれているとの報告も。そんな苦境の最中、現在香港のバー業界が乗り出しているのが、夜間営業と並行して行う日中のカフェビジネス。兼業型モデルによる収益源の多様化は、先行きの見えないコロナ禍でのリスク分散を実現しているとこちらの記事で語られています。
興味深いのは、歴史的にコーヒーショップとバーには深い繋がりがあるという点です。今日馴染みのある「エスプレッソバー」は、エスプレッソマシンが初めて開発された20世紀初頭のイタリアでバールが集客拡大を見込んでマシンを導入したことがはじまりだそうで、イタリア語でバリスタがバーテンダーを意味するのも、この歴史背景が関わっています。そんなある種きょうだい関係にある両者でしたが、後に双方が専門職としての地位を確立するにつれ、現在の分業化に至ったそうです。そうした歴史的繋がりはありつつも、バーテンダーとバリスタで求められる接客スタイルの違いや、「コーヒーショップ」や「バー」といったジャンル分けを前提とする今日の消費者に向けての効果的なマーケティング施策をはじめ、兼業型モデルの確立にはまだまだ改善の余地があるようです。
しかしこの記事は、ちょうど前回のInspirationで触れた 「一つの技能を極めることが正しい」とされる社会規範の話題とも通ずるように感じました。多様なキャリアや生き方とは、草鞋の数や種類ではなく、草鞋を履く人に焦点を当ててこそ育まれる。そう考えたとき、改めて自分の心のわずかな動きや、小さくとも確かな思いを、これからも大切にしていきたいですね。
その他の気になるニュース
▷ 先日Wall Street Journalが発表したこちらのビデオ。気候変動の影響やサプライチェーン上の問題など、米国を中心に上昇し続けるコーヒー価格の背景にある構造について、明瞭簡潔に説明されています。
▷ ポーランドのスタートアップPicupが、植え付け可能な100%生分解性紙カップを開発。各カップの底のフィルターには備え付けのコーヒー/紅茶の出がらしと種が埋まっており、使用後にそのまま土に植えると発芽する仕組みになっているのだとか。
▷ 最新の研究によって、人々は血圧の高さに応じて無意識にカフェインの安全摂取量を自己調整していると判明したのだそう。つまりカフェイン許容量は遺伝的なメカニズムに基づいている可能性が高く、コーヒーを飲みたいという心の声は信じて良いそうです。
▷ 米国のコーヒーロースター計481店を対象とした統計調査が公開。焙煎豆の平均売値やSNSのフォロワー数、ロースターが運営するコーヒーショップの平均数など、あまり語られないロースタービジネスの分析が行われています。
▷ スターバックス店員Josieが受けたあまりに細かすぎるカスタマイズ注文への嘆きツイートに、多くの共感(と同じような被害届け)が寄せられています。これだけのカスタマイズが一杯に収まっていることへの驚きはさておき、次回このレベルのカスタマイズを試みる前には、一度Josieたちのことを思い浮かべてみましょう。
What We're Drinking
今週のコーヒー
2013年から愛知県豊田市でスタートしたコーヒー豆専門店。世界中のユニークなコーヒーを、日常に馴染むようなMAQUETTEらしい焙煎を目指す。
生産者:オスカー・ダニエル・ラミレス・ヴァレリオ
農園:エル・ラウレル
生産地域:ホンジュラス エル・パライソ県、ダンリ、ラス・デリシアス(地図)
品種:パライネマ
精製方法:ウォッシュト
テイスティングノート:スミレのようなフローラル感。プラム、赤いグレープを思わす風味。明るくて、“コシ”のある酸味の心地良いのど越しが魅力的です。
編集長のコメント:
赤ワイン(特に連想したのはマスカットベリーA)のような甘い香気が立ち上る、どこか色気さえも感じるコーヒー。酸味と甘みのバランスがとにかく素晴らしく、飲み口の軽快さは大好きなぶどうのクリムゾンを摘んで食べているかのよう。コシのある酸味とはよく言ったものだなと感心するほど。一口二口飲み進めていくと果実味が凝縮された旨みを感じ、パインキャンディやよく熟れたプラム、メイヤーレモン、そしてわずかに抹茶のようないい意味での渋みのニュアンスも。これはいくらでも飲めます。美味しい!
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
Patti Smithのニュースレター
ウェブサイト
ニューヨークパンクシーンの生ける伝説Patti Smithが最近発刊したニュースレター。シンガーソングライターとしてだけでなく、作詞家・詩人としても有名な彼女が綴る思い出のワンシーンや最近の考え事を読んでいると、ショートフィルムを見ているような感覚になります。また時折送られてくる音声には、詩の朗読やポッドキャスト風の近況報告も。ここまで待ち遠しくなるニュースレターに出会ったのは久しぶりです。ちなみに有料会員になると昨年4月から彼女が書きためてきた「The Melting」と題された手記を毎週受け取れます。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
GLITCH COFFEE&ROASTERSで3年間バリスタ・ロースターを経験。 昨年11月より、同店の先輩である塚田健太氏率いるACID COFFEEの立ち上げ、運営に携わる。最近ハマっているのは70〜80年代シティポップ。特に、大貫妙子、吉田美奈子は最高。 元々好きなジャズやR&Bとの親和性も高くて、プレイリストを作ってApple Musicで公開しています(アカウントは@erikakun)。
セットアップ:
「KONO名門フィルターで作る”冷やしコーヒー”(アイスコーヒー)のレシピ」
抽出器具:KONO
豆量:16g
湯量:260g
挽き目:中細挽き EKグラインダーで7.5、ウィルファーでフィルターの1~2細かく
温度: 86℃
抽出時間: 2:30~2:40
手順:
- 0:00 60g スプーンで軽く攪拌
- 0:30 100g
- 1:10 70g リブの粉を落とす
- 1:50 30g
※抽出したコーヒーを熱いうちに瓶やタンブラーなどの密閉容器に移し、冷蔵庫で冷やす。 飲むときは、氷を入れたグラスに注いで。
ポイント:
なんと、ホットコーヒーを湯気ごと密閉して冷やすだけ! アイスコーヒーのための特別なレシピも、手間も要りません。 苦くも酸っぱくもなく、スペシャリティコーヒー特有の、個性豊かなフレイバーの違いを一番感じられるアイスコーヒーです。 KONO名門ドリッパーを選んだ理由は、側面にリブがないのでペーパーがぴったり張り付きお湯の抜けを防げるから。 特に、ナチュラルプロセス、アナエロビックプロセス、中南米のコーヒーとの相性がよく、他ドリッパーに比べて、とろみを感じるドリップコーヒーを抽出することができます。
一言:
お家でも、さらに簡単に冷やしコーヒーを楽しめる新商品を開発中です!お楽しみに。 今年の夏は、冷やしコーヒーを家でも外でもお楽しみくださいませ。
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第16号スポンサーの TYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、セラード珈琲、カラベラコーヒーのサポートでお届けしました。
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Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)