#60: 静寂、植毛、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

先週、関東の友人からポストカードが届きました。最新号のStandart Japanには前の号と同様にポストカードをつけていて、そのポストカードで手紙を送ってくれました。デジタル空間で容易に繋がることができる今の時代だからこそ、不意に届く自分宛の手紙や贈り物などは、とても嬉しく感じますよね。

また別の日には、なかなか会えない遠方の友人とそれぞれが住む地域のロースターの豆を送り合っているという方にお会いしました。お中元やお歳暮といった習慣とはまた少し趣が異なるオフラインのコミュニケーション、素敵ですよね。昔参加したことがあるThird Wave Wichtelnというコミュニティプロジェクトを思い出しました。世界のどこかの誰かにコーヒーの贈り物をすると、また別の世界のどこかの誰かからコーヒーのお返しが届くというプロジェクトです。今はCOVID-19の影響で物流が滞る地域もあるので開催していないようですが、2013年から続くこのプロジェクト、再開を待ち望んでいる方も多いようですよ。

ちなみに、冒頭に出てきた最新号のStandart Japanについてくるポストカードは、オランダのユトレヒト在住のアーティストPhilip Lindemanがデザインしたもの。紙面用に描いてくれたボリビアのコーヒー農園のイラストをポストカードにしています。コミカルでエネルギッシュ、ポップな色使いの作風が特徴的で、個人的にも大好きなアーティストです。ポストカードは、日頃おいしいコーヒーとカップいっぱいの愛情を届けてくれるバリスタやロースターのみなさんへ、ご自身の言葉でこの前飲んだコーヒーの感想や日頃の感謝の気持ちを伝えてみることに使って欲しいと思っています。以前、ポストカードの使い方についてインスタグラムで説明しているので、よければご覧になってくださいね。

最後に、株式会社リクルートが注目するトレンドやアイデアを発信するメディアMeet Recruitで、光栄ながらStandart Japanを取材していただきました。制作担当のAtsushiと一緒に、Standartとの出会いやチームについて、編集業務や広告などにも話題を広げてお話しています。普段取材する側が取材を受けるとこうも話せなくなるのかと内心ドキドキしてましたが、素敵な記事に仕上げていただきました。お時間ある方はコーヒーのお供にでも。

それでは良い週末を。

編集長 Toshi

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

小さな隙間に大きな注目

New York Magazineのこちらの記事で紹介されているのが、現在ニューヨークで急成長中のコーヒースタートアップ「Blank Street」。その特徴は、完全モバイルオーダー式の小さなコーヒーカートと、お手頃価格のスペシャルティコーヒー。立地やアプリオーダーの利便性を理由に大手チェーンが選ばれやすい現状や、サードウェーブの価格面でのハードルの高さに一石を投じるべく、同ビジネスの形態に至ったそうです。

まず同社は民間の地主との契約の下、各コーヒーカートを私有地に設置しています。これによって、高額な公道での販売許可証が不要になり、固定費の大幅削減に成功。さらにコーヒーの抽出・販売に関しては、自動抽出機械とモバイルオーダーを導入することで、最小人数でのオペレーションを可能にしました。地元ロースターから高品質コーヒーを仕入れつつも、固定費の削減とオートメーション化によって、スペシャルティへのハードルを下げる形で店舗拡大に成功しています。ちなみに同社は、今後フードカートの運営者であり、経済的に困窮する不法移民たちの最低賃金の保証に向け、テクノロジーやマシンの導入支援も検討しているそうです。

今後Blank Streetのように業界内でのオートメーション化が加速したとしても、それがバリスタやロースターの存在意義の消失を意味しないことは、私たちコーヒーラバーが一番良く知っているはず。テクノロジーとの共創とは、機械か手動の二者択一ではなく、むしろ各々が望む未来に向けて、その2つの間で描かれるグラデーションのように感じます。テクノロジーと共にコーヒーを取り巻く全ての空間がより豊かになる、そんな未来を心から願っています。

その他の気になるニュース

▷ オハイオ州立大学の研究チームが、コーヒーのマウスフィールには特定の化合物群が関係している可能性があると発表。今後マウスフィールを意識したコーヒーの栽培・焙煎方法の研究が進むかもしれません。

▷ スターバックスは今年度第3四半期、コールドビバレッジの売上が過去2年と比較して約10%伸び、総売上の約74%を占めたと発表。その背景にはミレニアム・Z世代を中心とした、コールドビバレッジ(と代替ミルク)の売上拡大が関係しているそう。

▷ 9月13日より台湾水保局が日本全国40店舗のロースターとコラボし、台湾内13軒のコーヒー農園を紹介するキャンペーンを開催。参加ロースターの中にはStandartお馴染みのお店もちらほら。コーヒーの提供・販売は数量限定のため、お求めの方はお早めに。

▷ コーヒー豆を使用しないコーヒー企業Compound Foodsがシードラウンドでの資金調達に成功。同社は微生物を使ってコーヒーのアロマとフレーバーの元となる分子を取り出し、環境負荷を限りなく抑えた“コーヒー”を製造しています。

▷ De’Longhiがブラッド・ピッドを起用し、同社初のグローバルキャンペーンを展開中。オスカー受賞監督、『ラ・ラ・ランド』のクルーが手がけたこちらのビデオでは、典型的な「ブラピの日常」が描かれているそうですが……流石にカッコ良過ぎでしょ!

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

AKASH CAFE
大阪(地図

Akash cafe (アカシカフェ)の“akash”とはベンガル語で“空”という意味。バングラデシュの両親を持つオーナーが、日本でもっと気軽にチャイが飲めたらと思い、チャイの専門店をオープンしたのが始まり。厳選したスパイスを使用しており、チャイの特徴である「煮出しにこだわることでスパイスの効いた本場の味に仕上げている。伝統的な、チャイを高くから注ぎ淹れて提供するスタイル。オーナーのフレンドリーなキャラに沢山のファンがつき、お店は憩いの場となっている。

生産者:blended by Akash Cafe

生産国:インド

生産地域:アッサム(地図

品種:アッサム ブラックティー

精製方法:CTC (Crush, tear, curl)

テイスティングノート:シナモン、カルダモン、クロブ、ジンジャー

編集長のコメント:

The Weekend Brew初のチャイの登場です。小さなダンゴムシのように丸まった茶葉はCTCと呼ばれる製法で作られたもの。短時間で紅茶を淹れることができるように生まれた製法なんだとか。パッケージのQRコードを読み取ると作り方のインストラクションが見れます。お湯で茶葉とスパイスを2分程度煮てからミルクを注いで3分ほど煮出すと出来上がり。砂糖はお好みでとあったので、まずは一口砂糖なしで味見してみましたが、砂糖を入れて飲んだ方がフレーバーに厚みがでてスパイスが際立つように感じました。パッケージに描かれているように高いところから注ぐことでお茶に空気を加え、スパイスのインパクトやお茶のテクスチャーを変化させるそう。チャイのフレーバーをあまり意識しながら飲んだことがなかったのですが、スパイスや茶葉、そしてミルクの味わいや香りを感じるタイミングがそれぞれ少し違うんだなということに気づきました。パンチのあるクローブや軽快なカルダモンをガツンと最初に感じ、シナモンやジンジャーが後からやってきます。それから茶葉のフレーバーを感じ、ミルクがそれらを優しく包み込み一体感を生み出します。ナッティなフレーバーも。クローブのピリッとした刺激とミルクのリッチな味わいの余韻が長く続きました。すべてが混ざっているようでそれぞれバラバラのようで、それはまさしく秩序あるカオスのよう。パワフルなスパイスたちのフレーバーと香りに完全にノックアウトされる、美味しいチャイでした。

 


Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち

 

アーティスト:チェ・ヘリョン Instagram

プロフィール:韓国出身のアーティスト。学生時代は授業時間すべてをキャラクターの創作に費やし、完成後は親友にプレゼントしていた。日常的なシーンを哀愁と皮肉と共に鮮やかな配色で描く彼女の作品は、アーティスト仲間やファンから「白昼夢」と表現される。

最新の掲載記事:Standart Japan第15号「コーヒー企業のサスティナビリティ戦略」

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

『静寂を求めて – 癒しのサイレンス -』- パトリック・シェン

United People配給のもと、2018年に日本公開された本作は、静寂、音楽、騒音問題など、21世紀を「音」に焦点を当て、ノイズに溢れる現代社会とそこで生きる私たちのあり方について問い直しています。作中の映像の美しさもさることながら、自然の景観や山々の静けさ、森で感じる時の流れなど、私たちが無意識的に「聴覚」を通じて味わっている世界の広大さに気づかされる作品です。実は監督自身も静寂を体感すべく、6ヶ月の編集期間中はネットはおろか、家族とさえも連絡を遮断していたそうで、文字通り「静寂」の中から生まれた作品なのだとか。
個人的に作中で心に残った一言に、「静寂は言葉より深い対話である」という一節があります。現代社会では、会話が弾むことや場が盛り上がることなど、言葉のキャッチボールが円滑に行われることが重要視されています。しかし実際は交わされた言葉の数だけではなく、言葉で取り繕うことのないありのままの自分で共にする時間にこそ、より深い関係性が育まれるのではないかとも感じました。自分の口から発せられる言葉も、また一つの音。大切な人たちとの時間において、一つ一つの言葉を、丁寧に、等身大の自分で奏でる姿勢をこれからも大切にしたいと思います。ちなみに話は逸れますが、音関連だと「全てのノートは全てのコードに当てはまる」というジェイコブ・コリアーの言葉が個人的にとてもお気に入りです。



Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

中島 希

事務職時代にお茶汲みに喜びを感じカフェ、コーヒーを学ぶために上京。いくつかのカフェで働いた後、移動カフェの経験を経て、2019年より現在のスタンドスタイルへ。本を読みながら街の風景を観察することが趣味。

セットアップ:

抽出器具:Kalita wave 185
豆量:14g
湯量:230cc
挽き目:中細挽き
湯温:94℃
抽出時間:2:20

手順:

  1. ペーパーをリンスしサーバー温める
  2. 30ccで25秒蒸らす
  3. 2cc/秒のペースで真ん中に細く注ぎ続ける
  4. 160ccあたりから少しペースを上げる
  5. 230ccまで注ぎきったら、ドリッパーとサーバーを揺らすように一周させ粉とお湯を馴染ませる

ポイント:

すーっと沁みるデイリーなコーヒーを飲みたいとき向け。注ぐことだけに集中しすぎない。飲む人の背景に意識を向ける。

コメント:

コーヒーの提供を通して、街を平和にするのが目標です。


 

今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?

今日のShoutout!はSUNMOON COFFEEさん。MOMOS COFFEEのサンプルコーヒーを淹れる風景をご機嫌なショートクリップで見せてくれました。Sounds onでご覧ください。ありがとうございます!

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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第16号スポンサーの TYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業セラード珈琲カラベラコーヒーのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)

#60: 静寂、植毛、コーヒー

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