#55: 家庭の味、フィールドレコーディング、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

少し前にリリースされたWiredの最新号をようやく読み終えました。昔から好きな雑誌で、サブスクしているのでデジタル版の雑誌が読めるんですが、じっくり読みたいなと思うトピックや手元に置いておきたいと感じるビジュアルの号は雑誌も購入しています。毎号、素晴らしい内容と幅広い視点に尊敬の念を禁じえません。

最新号は「ネイバーフード」というトピックを扱っているのですが、テクノロジーや建築、文学や政治などといった観点からネイバーフードという概念を紐解いていく本誌を読む中で感じたのは、コーヒーショップは、おいしいコーヒーを届けてくれる場所であることに間違いありませんが、物理的にそこにあって地域に住む人たちに集まる場を提供し、お互いを思いやるきっかけを作ってくれる場所なんだということ。

パンデミックによって制約が生まれ、これまで外へ向けていた意識を内に向けることが増えています。都市の役割や構造にも変化が起きていて(外的要因の結果、起こらざるを得ないということなのかもしれませんが)、日々の生活やその生活を拠点としたネイバーフードという考え方を改めて見直している人が多い中で、このトピックを深堀りする意義は大きいと感じています。コーヒーショップの地域の役割についても考える機会となり、また紙面デザインにもインスピレーションをもらいながら、隅から隅まで楽しみました。おすすめです。

そして今週のStandart Japanは、最新号の発送準備に駆け回っていました。コロナの影響は物流にもいまだに出ていて、なかなか届くものが予定通り届かないという状況ではあったのですが、無事に最新号とコーヒー豆が届き、みなさまへの発送準備がお盆休み前にできました。Woohoo!🥳🎊 到着を楽しみにしていてくださいね。

なお、お盆休みのため9日~18日は発送手配ができません。8/8中までのご注文は休み前の発送対応が可能です。ご希望の方はお早めにどうぞ! お盆休み中のご注文は、19日より随時発送を再開いたしますのでご了承ください。

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

行動でしか語れないこと

持続可能な国際投資に特化した研究機関コロンビア持続可能投資センターが、先日とあるレポートを発表しました。その内容は、ネスレ、JDEピート、スターバックスなどのグローバルコーヒーブランド10社による経済的持続可能性への取り組みが、ピッカーなどを含む広義の生産者の生活収入・賃金(living income/wages)へどう反映されているかというもの。同レポートでは、調査対象となった10社に、生産者の生活収入・賃金を保証できている企業は1社もないとされています。

このレポートでは、生活収入を(農園主などのビジネスオーナーが)「十分な生活水準を確保するために必要な手取り収入」と定義し、それには「健康的な食事、良質な住宅、基本的な医療、教育、交通手段、緊急事態に備えた貯蓄」が含まれるとしています。また生活賃金は(ピッカーなど)「特定の場所で働く労働者が標準的な労働時間で受け取る、その労働者の適切な生活水準を満たすために十分な賃金」と定義されています。調査対象となった企業のほぼ全てが、フェアトレードやレインフォレスト認証といったサステイナビリティに関する一定の取り組みを行っているものの、それらだけで生産者の生活収入を保証できている証拠はないと指摘されています。もちろんコーヒー以外の作物から収入を得ているケースや自給作物を栽培しているケースもありますが、平均してコーヒー生産のみで貧困ラインを超える収入を得ている生産者がいるのは10か国中2か国(ブラジル、ベトナム)のみという調査結果からも、この指摘の重要度は明らかです。

さらにこれらの分析を通じて、取引価格の公開や価格の引き上げ、ビジネスモデルの転換を改善策として提示されています。近年さまざまな側面の持続可能性に注目が集まる一方で、「グリーンウォッシング」などの見せかけの取り組みが指摘されることも増えてきています。改めて企業はその報告において「コミットしている具体的な内容」を提示し、社会的インパクトを言葉ではなく行動で示す必要が問われています。

 

その他の気になるニュース

▷ 台湾で史上初となるコーヒーのプライベートオークションが8月31日に開催予定。台湾国内のコーヒー農家の栄誉を称えると共に、世界に向けた台湾コーヒーの認知拡大を図ります。出品ロットの詳細はこちらから

▷ 米Coffee BrosがACEと協力しCoE入賞者のNFTアートを販売。コーヒーを飲み終えた後も生産者との関係が続くようにと制作に乗り出したそうです。収益の20%はCoEとWorld Coffee Researchの活動費として使われとのことですが、生産者への分配については明記されていません。

▷ アメリカのデザインスタジオがローンチしたコーヒージャーナル。オリジン情報やフレーバーチャート、これまで飲んだコーヒーの生産国が一目で分かる世界地図など、毎日のコーヒー習慣がさらに楽しくなる予感。

▷ 日本人がカレーに加える隠し味ランキングで堂々の第1位に輝いたのはインスタントコーヒー。家庭の味を影で支えているのはコーヒーと言えるのかも?

▷ 東京五輪の豪州の選手村では毎日専属のバリスタチームによっておいしいコーヒーが振る舞われ、その数は約600杯/日にも及ぶのだそう。この「家庭の味」が最高のパフォーマンスの秘訣に間違いなし。ちなみに専属バリスタのジョンソンさんは、豪州出身で現在は北海道でバリスタとして働いているとのこと。

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

suzunari coffee
大分

2015年7月、大分県臼杵市に suzunari coffeeをオープン。suzunari coffee は、大分県は南部国宝臼杵石仏の鎮座する地よりコーヒー豆を焙煎し、販売、新鮮なコーヒーをご用意しております。 臼杵ならではの四季折々の空気を感じながら、 個性的で様々な風味を持つコーヒーと出逢っていただき、日常生活の一瞬が少しでも明るくなるような体験をしてみませんか?

生産者:Hernado Cataño

生産地域:コロンビア バジェデルカウカ県ヨトコ(地図

品種:ゲシャ/ゲイシャ

精製方法:ウォッシュト

テイスティングノート:
フローラル、マスカット、マンダリンオレンジ
洗練された液体の中に潜む
柔らかく長く続く上品な甘さは和三盆
質感は透き通る露の様
エレガントで気品に満ちたコーヒー

編集長のコメント:

木々の間から陽光が差し込む緑緑しい森の中でピクニックをしているような、はたまたそんな情景で飲みたいと思うような、洗練されつつも暖かく、どこかアンニュイな雰囲気を持ったコーヒーでした。口に含んだ液体からは、ピンクグレープフルーツや甘夏が浮かびます。違和感なくスッと口から入って体に染み込んでいく様子は、まるで暑い夏の日に飲むポカリスエットの一口目。体が求めていたと喜ぶ絶妙な甘みと酸味を感じました。後味にはレモングラスやジャスミンティーのようなニュアンスがあり、ただただ気持ちの良い味覚体験にうっとり。

 


Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち

  

アーティスト:小林 真梨子 ウェブサイトInstagram

プロフィール:日本大学芸術学部写真学科を卒業後、写真家としての活動をスタート。エディトリアルやファッションなどの分野で活躍しつつ、OMOTESANDO ROCKETやラフォーレ原宿などでの展示活動も行う。2017年には初の写真集『ふれる、ゆれる。』を発表。

最新の掲載記事:Standart Japan第16号 「ボスでいるということ:Kenji Kojima」


Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

『Release - Track by Track』by SOULS
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イギリス・シェフィールド出身のミュージシャン、デイビッド・グレッドヒルが5年に及ぶ制作期間を経てSOULS名義で2016年にリリースしたアルバム。最大の特徴は、民族音楽研究家のアラン・ローマックスが1930〜1940年代にアメリカで集めたフィールドレコーディング(スタジオなど専用の録音環境ではない場所で録られた音源)のサンプリングを軸にすべての曲が作られているところ。このアルバムには楽曲のみが収録された通常版『Release』と、グレッドヒルのコメンタリーが収録された『Release - Track by Track』の2種類があり、初めて聴くときは断然後者がおすすめ。サンプリングはヒップホップをはじめさまざまなジャンルの音楽で採用される手法で、曲のフックやトラックの一部として使われることが多い一方、グレッドヒルはサンプリングされたフィールドレコーディングを主役として捉え、それらを輝かせるためにひとつひとつの曲を作り上げていったそう。フィールドレコーディングの魅力についてグレッドヒルはあるインタビューで「どこかの誰かが、金や名声など現代に生きる私たちがとらわれているものを気にもかけずにただ歌っていた。その事実に心を動かされる。リアルで何の意図も隠されていない、ある意味もうこの世界には存在しないものがフィールドレコーディングの中にはある」と語っています。しかし残念ながら声の主に関する情報は限られており、名前と「刑務所に入っていた」という情報だけが残っていたものや、名前さえ記録されていないものも少なくなかったようです。さらにアルバムに含まれるほとんどの曲にアフリカ系の歌い手の音声が使われていることから、グレッドヒルはSaturday Morningと協力し、アメリカ・ワシントンDCにある国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館での展示を企画していました(新型コロナの影響で残念ながらまだ実現していません)。音楽としての魅力だけでなく、グレッドヒルの先人や異文化への敬意が感じられる作品です。


Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

松村 恵佑 aka k-sk

5年前のTHE LOCAL主催「若手バリスタ向け勉強会」参加し、スペシャルティコーヒーに魅了される。カナダのビクトリア島へ渡り、BOWSXARROWSでコーヒーの抽出焙煎、生産、流通の背景について深く学ぶ。その後メルボルンに渡りバリスタとして数店舗勤務、帰国後は地元千葉にてROUTEMAP COFFEE ROASTERSを開業。RIP SLYMEの活動再開に期待しながらインスタライブを逐一チェックしている。

セットアップ:

抽出器具: ORIGAMI S/abaca paper filter (リンスしておく)
豆量: 15g
湯量: 240g
挽き目: 中細挽き
湯温: ケトル①94〜90℃帯/ケトル②89〜85℃帯
抽出時間: 2:00〜2:30

手順:

  1. 0:00〜/ケトル①で45g注ぐ
  2. 0:40〜/ケトル①で45g注ぐ
  3. 1:05〜/ケトル②で150g注ぐ
  4. 1:30〜/やさしくRaoスピン
  5. 2:00〜/2:30までに落としきる

                    ポイント:

                    ▷豆のコンディションによって、2-3投目の温度差を調節。(ナイーブな豆ほど温度差を縮め、コンプレックスな豆ほど温度差を拡げる)
                    ▷2-3投目の注ぎ始めは雑味が出ないよう、湯線をなるべく細め、粉と湯の間に生じるストレスをコントロールします。
                    ▷遊び心を持ってコーヒーと向き合うこと。

                           


                           

                          今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?

                          今日のShoutout!は、以前誌面でもご紹介させてもらったGood Coffee Farmsが取り組む、コロナ禍で大きく打撃を受けたコーヒー生産者たちを支援するクラウドファンディング。トウモロコシを栽培できる畑を新たに借り、肥料や種とともに支給し、Good Coffee Farmsに所属する生産者たちが自給自足をしたり副収入を得たりすることのできる環境を整えるんだそう。日本各地のロースターでGood Coffee Farmsのコーヒーを飲んだことがある方は、彼らのSDGsの取り組みや、ずば抜けた高品質のコーヒーをご存知の方も多いはず。

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                          今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第16号スポンサーの TYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業セラード珈琲カラベラコーヒーのサポートでお届けしました。

                          LOVE & COFFEE✌️
                          Standart Japan
                          (執筆・編集:Takaya & Atsushi)

                          #55: 家庭の味、フィールドレコーディング、コーヒー

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                          コーヒー豆の付録

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