おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
The Weekend Brewは、2020年7月12日にISSUE no. 1が発行され、このISSUE no. 51で1周年を迎えます。初回からご覧いただいている方も、途中からご登録いただいた方も、Standart JapanのニュースレターThe Weekend Brewを毎週楽しんでいただき本当にありがとうございます。
始める前は読んでくれる人がいるんだろうかと不安に思いながら準備を進め、7月12日の朝にドキドキしながら送信ボタンを押したのを覚えています。たくさんのStandartファンやスポンサー、Weekend Brewerたちやチームに支えられ、1周年を迎えることができました。また、SNSを通じてシェアしてくださる方々のおかげで、コーヒー界隈の「外」からもニュースレターに興味を持ってくれる方が増えました。コーヒーの魅力を知るきっかけに少しでもなれば本望です。
ニュースレターを始めた理由は、当時のこちらのブログに掲載しています。改めて読んでみると、今も変わらない気持ちが確認でき、初心に帰ることができました。日曜日の朝にコーヒーを淹れながら、一週間の締めくくりとして The Weekend Brew に目を通す。コーヒー情報をアップデートしつつ、その日に読みたい本や聞きたい音楽のヒントを得る。そんな習慣がこのニュースレターを通して生まれた方も中にはいらっしゃるかもしれません。1人でもそんな方がいれば嬉しい限りです。
今日から2年目ということで、ニュースレターに新しいセクションを追加しました。Standartの読書体験がユニークなのは、記事のトピックや視点もさることながら、視覚的に楽しませてくれる世界中のアーティストたちがいるから。ということで、Standartを通じてさまざまな作品を世に送り出しているアーティストたちをご紹介する「アーティスト・イン・レジデンス」がスタートします。彼らの作品を見て、皆さんの頭の中のクリエイティブジュースを溢れさせちゃってください!
それでは、記念すべきISSUE no.51を、この1年間のニュースレターを振り返りながら皆さんにお届けしたいと思います。

![]() |
![]() |
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
サードプレイスの多様化
「リモートワーク」や「テレワーク」といった言葉を頻繁に目にするようになって1年以上が経ち、徐々にその新鮮味が失われてきたように感じます。一部の企業では、コロナ禍の収束後も在宅勤務を基本とする働き方への方向転換を画策する動きが見られるほか、レストランやホテルなどの空きスペースをコワーキングスペースとして利用する新たなサービスも誕生しています。
そんな中、ロンドン大学の研究者が、カフェを働く場として活用する「カスタマーワーカー」とサードプレイスの多様化に関する論文を先日発表しました。この論文によれば、カスタマーワーカーのニーズに応じてカフェが変化した(またはしなかった)結果、現存するカフェは以下の4つに大別されるようになったそう。
- 原型:従来の顧客層をターゲットとし、そのニーズに応じた環境・サービス
- 現状維持型:特定のターゲットを想定していないのものの、従来の顧客層のニーズに応じた環境・サービス
- 譲歩型:特定のターゲットを想定していないのものの、カスタマーワーカーのニーズに応じた環境・サービス
- 仕事特化型(PTP: Performance Third Place):カスタマーワーカーをターゲットとし、そのニーズに応じた環境・サービス
従来、滞在時間が長くなることの多いカスタマーワーカーは忌避されがちでしたが、定額利用料を設けるなどそのニーズを上手く受け止める仕事特化型のカフェも増えているようです。サードプレイスとしてのカフェの多様化は、カフェが私たちにとって身近な存在になったことの表れなのかもしれません。
その他の気になるニュース
▷ 1台でグラインドから抽出までこなすタンブラー型のコーヒー器具ATONCEが誕生。付属の蓋を使うとグースネックケトルのようにお湯を注げるとのこと。7/18までクラウドファンディングキャンペーンを実施中です。
▷ 非接触技術の需要の高まりを受け、スペインの自動販売機メーカーAzkoyenが、アイトラッキング技術のパイオニアIRISBONDとタッグを組み、なんと「目」でオーダーできるコーヒーマシンを開発。
▷ ラオス初のコーヒー品評会がリモート開催へ。米農務省(USDA)のプロジェクトの一環として、カップオブエクセレンスを主催するCoffee Quality Instituteなど複数の団体が協同で運営するこの品評会の結果は、8月に公表される予定です。
▷ ブラジルの農業スタートアップAgrorobóticaが地中の二酸化炭素濃度を計測できるデバイスを開発。コーヒーをはじめさまざまな作物を育てる農家がカーボンクレジット市場に参加できるようになるかもしれません。一方、環境活動家からはまずは森林破壊を止めるべきだという反論も。
▷ シドニーにオープンしたカフェGolly Gosh Cafeは、フラットホワイトやエッグベネディクト、ベーグルなどが人気のペットフレンドリーなカフェ……というのは仮初めの姿。夜になると血糖値爆上げ必至のデザートを出すデザートバーへと変身します。
What We're Drinking
今週のコーヒー

愛媛県松山市、町外れの住宅地でコーヒーや焼き菓子を提供しています。 食の楽しさや大切さを日常的に感じてもらえるような場所でありたいと思っています。
生産者:ハイメ ベンチュラ
生産地域:ホンジュラス ラパス県サンタエレーナ エル・カイマン農園 (地図)
品種:カトゥアイ
精製方法:ナチュラル
テイスティングノート:マンゴー、ベリー、黄桃
編集長のコメント:
「お、お?」と、今鼻先をかすめていった香りがなんだったのか、自分の感覚を確認するように2度3度鼻をひくつかせながら嗅ぎ直す。輪郭がはっきりしてきて見えてきたのは、「サラミ」のような旨みを含んだミーティなアロマ。ジュッと口の中が少し湿ってくるのがわかりました。一口すすると、熟したマンゴーやメロンを感じる芳醇でジューシーさが口に広がります。フルボディな甘さに酸味も感じ、味わうように口に中で転がしていると、アメリカンチェリーを強く感じるように。そこでまた記憶がフラッシュバック。昔働いていたホテルの結婚式で、当時の総料理長が作っていたアメリカンチェリーのフランベが浮かびます。甘く煮た肉厚なアメリカンチェリーは輝きながらブランデーの青い炎に包まれ、あたりに漂うぎゅっと詰まった濃厚な果実の香り。バックヤードに残ったチェリーを人目を盗んで頬張ると、甘酸っぱさと芳醇な香りが口に広がり両頬を刺激します。ノスタルジーと共に、このコーヒーの持つ魅力を存分に感じることができました。ゆっくり誰かと飲みたいコーヒーです。
Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち

アーティスト:Mario Carpe - ウェブサイト|Instagram
プロフィール:スペイン出身で現在はチェコのプラハにスタジオを構えるアートディレクター/イラストレーター/グラフィックデザイナー。幼少期から絵を描くことに夢中で大学卒業後、イラストレーター兼デザイナーとしての活動をスタート。画面や紙から飛び出してきそうな勢いさえ感じる、カラフルでポップな作品が特徴。
最新の掲載記事:Standart Japan第9号
「人工知能の時代にコーヒー焙煎家は必要か?」
「ブランドデザインの大原則」
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
『京大的アホがなぜ必要か − カオスな世界の生存戦略』 - 酒井敏
書籍情報
ふと自宅の本棚にあったタイトルが目に入り、大学のゼミの以来、久々に読み返しました(ちなみに京大卒ではありません)。タイトルにある「京大的アホ」とは、京大生のことではなく、「常識」や「マジメ」に背を向け、徹底的に既成概念から逸脱して(=アホになって)自分の「おもろい」を追求する人々を指します。国や企業が合理性に基づいた「選択と集中」を推し進める一方で、成功のノウハウが書かれた本を読んだ人がもれなく成功するわけではないように、私たちが住む世界は合理的に説明できない予測不可能でカオスな世界であることが20世紀後半から明らかになりました。著者は、人類がそんなカオスな世界を生き抜くためには、すぐ役に立つ (利益を生む) 研究や成果への「集中と選択」ではなく、 未来が分からないことを割り切り、いろんな役に立たないこと (アホなこと)に手を出し「発散と集中」することこそが必要であると説いています。キリンの首が長くなったのは、突然変異で生まれた首の長いキリンがたまたま環境に適応して生き残った「結果オーライ」であるという本書の説明には、周りから求められるあるべき姿への固執が、結果的に自分の首を締めることになるかもしれないのだなと考えさせられます。何歳になっても自分が「おもろい」と感じることにとことん夢中になる。そんな無邪気な人であり続けたいと思える一冊です。と同時に、人類で初めてナマコや納豆、コーヒーを口にした人など、開拓者と呼ばれるあらゆる「変人たち」へのリスペクトが止まらないです。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ

山本 史弥 a.k.a EVEKES
2018年に脱サラし渡豪。メルボルンでコーヒーを学び2020年帰国。同年12月、石川県金沢市に店舗を構える。バイクが好き(愛車は84年式ショベルヘッド。もう4年乗ってません)
セットアップ:
抽出器具:ORIGAMI DRIPPER S
豆量:15.0g
湯量:225g
挽き目:EK:12 / COMANDANTE25:click
湯温:89℃
抽出時間:2:50 - 3:10
手順:
- 0:00~ 30g注いで、スプーンでアジテーションを3回
- 0:30~ コーヒーサーバーをチェンジ!!
- 0:40~ 70g注ぐ
- 1:20~ 125g注ぐ
- 2:50~3:10 落ち切りを目安
ポイント:
- 塩味や酸味をカットするために、1湯目を注いだ後にサーバーに落ちたコーヒー(数グラム程度)は使用しません。そのためにサーバーをチェンジします!
- 前半は手数が多いので、前日の夜からイメトレして臨みましょう。
今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?
バックナンバーを含め、The Weekend Brewの感想やコメントはぜひ #standartjapan のハッシュタグと共にシェアをお願いします! 質問はメールでお待ちしております。またお友達やご家族など、The Weekend Brew を一緒に楽しんでもらえそうな方にこのメールを転送していただけると嬉しいです。
Standart JapanのウェブサイトやInstagram、Facebookもぜひチェックしてみてくださいね。
今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第16号スポンサーの TYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、セラード珈琲、カラベラコーヒーのサポートでお届けしました。
LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)