昨年スタートしたコーヒニュースレター The Weekend Brew は来週1周年をむかえます。来週はこれまでを振り返るような内容も織り交ぜつつ、いつもの日曜朝のニュースレターをお届けしますね。
さらに1周年を記念し、日頃SNSやクチコミでニュースレターを広めてくれているご登録者の皆さん(aka Weekend Brewers😎)に、本日7/4(日)から7/6(火)23:59まで有効の、Standart Japanのバックナンバーが50%オフになるクーポンをプレゼント!👇 バックナンバーを割引価格で買えることはあまりないので、気になる号がある人はこのチャンスにぜひ。
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Standartは、「コーヒーはトレンドなんかじゃない」というメッセージをこれまで一貫して発信してきました。5年、10年経って雑誌を開いても新しい発見があるような読み物を作りたいという想いは、Standartが創刊当初からずっと大切にしていることでもあります。誌面で取り上げるトピックは業界が長く抱える問題や課題、歴史、成功や挫折を通じて得られた教訓や人生経験など、普遍性のあるものを選択するようにしています。ただそれは、時に同じようなトピックを取り上げていくことも意味しています。それが繰り返しに感じる方もいるかもしれません。ですが、同じトピックであったとしても、必ず新しい視点で思考を巡らせることができる記事になるよう心がけています。もちろん、議論されるべき話が忘れ去られてしまわないようにもしないといけません。そこからこれまでにないアイディアや会話、行動が生まれていくでしょうし、そうなってくれればいいなといつも願っています。世界中のコーヒー業界内外のプロフェッショナルを巻き込みながら様々な視点で議論していくことが、Standartがこの業界に対して貢献できることだと考えています。
バックナンバーと聞いて「古い」イメージを持たれる方もいるかもしれませんが、きっと面白いと思ってもらえる記事があるはずです。もしかするとあなたの人生や考え方をガラッと変えてしまうものもあるかもしれませんよ。それくらい、コーヒーに情熱を持つ人たちの言葉一つ一つは色褪せず、あなたの感性を刺激してくれるはずです。
次号のリリースまでまだしばらく時間があります。暑い夏を横目にクーラーの効いた部屋でコールドブリュー(やカクテル🍸)でも片手に読んでいただけると嬉しいです。
それでは今週も良い週末を。
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
思いやりこそ、ナポリな味
世界を代表するグルメ文化やその絶景でも知られるイタリア南部の都市ナポリ。ニュースレター「Why is it interesting?」では、そんなナポリの伝統的なカフェ文化と言われる「カッフェ・ソスペーゾ (Caffè sospeso:飲み手の決まっていないコーヒー)」について語られています。
カッフェ・ソスペーゾは、1800年代後半ナポリの労働者階級の人々が集うカフェから始まり、第二次世界大戦を機に広がったと言われています。その仕組みは至ってシンプルで、カッフェ・ソスペーゾを注文した人が1杯のコーヒーに対して2杯分の料金を支払い、コーヒーを買う余裕がない人がその店を訪れた際に無料でコーヒーを飲めるというもの。Netflixのドキュメンタリー『Coffee for All』を観れば、カッフェ・ソスペーゾの実態がよく分かります。社会的連帯の象徴とされるこの文化は、リーマンショックを境に再び注目を集め、現在イタリアでは12月10日の「世界人権の日」にちなんで、この日を「カフェ・ソスペーゾの日」として祝うこともあるのだそうです。
そして今日のコロナ禍では、収入源を無くした市民に向け、カッフェ・ソスペーゾの仕組みを取り入れる書店・飲食店(以前のニュースレターでは米国の例をご紹介しました)や、バルコニーからバスケットを「吊るして(sospeso)」ソーシャルディスタンスを保ちながら食べ物をシェアする人たちの姿が報じられています。エスプレッソの聖地ナポリのカフェ文化は、他者への思いやりによって育まれているようです。
小さな負荷の大きな暮らし
今秋より英国では、食品・飲料品のパッケージにその商品の環境負荷の度合いを示す「エコスコア」を掲載する、新たなシステムが試験導入されるとThe Guardianが報じています。このイニシアチブを主導する非営利財団Foundation Earthは、英国政府に加え、ネスレやCosta Coffeeといった大手ブランドからも支援を受けており、気候変動に向けた官民一体の動きが伺えます。
エコスコアは、環境コンサルティング企業の基準沿って A〜Gのアルファベットとそれに対応する色でレベル分けされ、A(緑色)が最も環境負荷が小さく、環境負荷が大きくなる(Gに向かう)につれて黄色、赤色へと信号のように色が変わっていく仕組みです。今後ヨーロッパ全土で使用される同システムの構築に向け、今回の試験運用と並行し、9か月ほどかけて外部の研究機関と協力しながらシステムのさらなる改善に取り組むのだそう。食品産業が温室効果ガス排出量の約37%を担っていると言われる中、人々があらゆる食料品の製造過程や環境への影響に目を向けやすくなる、つまりは消費者をエンパワーするという意味で、非常に面白い取り組みです。
昨年アイルランドでは、廃棄削減に向け、低所得層や大家族らへの対応を調整しつつ、スーパーマーケットにおける「Buy One, Get One Free (一つ買ったら一つ無料)」のプロモーションを禁止する方針を発表しました。量を求めるよりも、無駄を減らして、良い選択を増やしていく。それが結果として豊かな生き方へと繋がっていくのかもしれないと、考えさせられる内容です。
その他の気になるニュース
▷ SCAが生豆の取引にフォーカスした無料バーチャルイベント「Green Coffee Summit」を開催予定。物流やファイナンス、サプライチェーンの構造、市場動向などに関するセミナー・パネルディスカッションが、2か国語 (英語・スペイン語)で配信されます。
▷ 米国の飲食チェーンやスタジアムのメニューに、Oatlyのビーガンソフトクリームが続々と登場。最近、Oatlyが英国のオーツミルクブランドに対して起こした訴訟も話題になっています。
▷ ネスレジャパンが無人販売機「食品ロス削減ボックス」の運用を開始。納品期限を過ぎ、場合によっては廃棄される可能性のあるネスカフェやキットカットなどを割引価格で販売し、食品ロス削減を目指すそうです。
▷ カフェインの有無にかかわらず、一日最大3~4杯のコーヒーが慢性肝疾患の発症および死亡リスクを軽減するという研究結果が発表されました。特に発症リスクの高い生活習慣が根付いている地域や、医療サービスの行き渡っていない低所得国で研究結果の活用が期待されます。
▷ マッチングアプリ「Bumble」がニューヨークに初の実店舗「Bumble Brew」をオープン予定。「セーフスペース」をコンセプトとするこのカフェバーでは、「野心的なコーヒーメニュー」が提供されるそうですが、その詳細は一切不明。現地在住者からのレポートを待っています!
What We're Drinking
今週のコーヒー
旅人たちが行き交うホステルの一階から生まれたコーヒースタンド「BERTH COFFEE」。そこで生まれた多くの人々との繋がりを生かし、この度「Haru」という名で新たにロースタリーを始めました。
生産者:オルランド・アリータ
生産地域:ホンジュラス オコテペケ県 ラ・ラボール リオ・チキート (地図)
品種:CATUAI, IHCAFE 90
精製方法:ハニーアナエロビック
テイスティングノート:トロピカルフルーツのような甘味。パッションフルーツを思わせる明るい酸味とバナナのようなフレーバー
編集長のコメント:
グラインドされたばかりの豆からは蜂蜜のような香りが漂い鼻孔をくすぐります。アナロビックファーメンテーション(嫌気性醗酵)とハニープロセスの掛け合わせということで、発酵感を感じる派手なフレーバーを想像していましたが、地に足のついた味わいで親しみが持てます。ジューシーさと柑橘系のニュアンス、しっかりとしたボディを感じ、上質なブラックティーのよう。印象的だったのは、果実味を感じた後に続く質感のある甘さとわずかなミルキー感。フレーバー全体を包み込むような包容力のある後味は、ずっと飲んでいたいなと思わせてくれました。Standartの仕事を始めて以来、東京を訪れるとほぼいつもBERTH COFFEEさんのあるホステルCITANに宿泊していました。コーヒーを飲みながらその時の記憶や感情がドッと流れ込んでくるような感覚があり、自分の中にあるフィーリングですが、まるでコーヒーがそれを運んできたような、旅に連れて行ってくれたような、そんな時間を味わうことができました。
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
『ひび割れた日常 — 人類学・文学・美学から考える』伊藤亜紗、奥野克巳、吉村萬壱
書籍情報
人類学者、小説家、美学者の共著者3名が、パンデミックという未曾有の危機を前に、人類が向き合うべき「問い」を持ち寄り、リレーエッセイ形式で思考を深めていく本書。予め決められた構成に沿うのではなく、他の人から渡されたエッセイという名のバトンを握りしめ、自分の知見や心の動きを文章へと昇華させていく過程が、まるで共著者の「会話」を聞いているようでとても新鮮でした。その相互作用を眺めていると、私たちが普段の会話の中で繰り返す「聞く」「話す」という行為にどれだけの可能性があるかに気づかされます。
本書でも語られるように、私たちはこれまで、未来のある地点から逆算して現在の行動を決めるなど「引き算の時間」をベースに物事を考えてきました。しかしパンデミックが引き起こした「引き算の不能」によって、今できることを少しずつ積み上げて足していく、不均一で、より生理的な「足し算の時間」が私たちの日々の中で育まれはじめたのかもしれません。今の自分にとって、昨年のパンデミックの時期に書かれた本や当時の日記を読み直すことは、あの時の「足し算の時間を過ごした自分」に戻っていける大切な瞬間。これからの日々の中でも、押し引きならぬ足し引きの思考を養っていきたいと思います。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
18歳からコーヒー業界に携わる。大阪市内の複数のコーヒーショップで経験を積み、渡豪。メルボルンのKrimper、Higher Groundでバリスタとして働く。帰国後、奈良のCHAMIでヘッドバリスタとして勤務し、焙煎業務も行う。 登山、ピクニックなど自然に触れることが好き。
セットアップ:
抽出器具:ORIGAMI dripper
豆量:14g
湯量:220g
挽き目:中細挽き
湯温:90℃
抽出時間:2分前後
手順:
- フィルターをセットしリンスする
- 0:00〜 お湯40gを注ぐ
- 0:30〜 お湯40gを注ぐ
- 1:00〜 お湯140gを注ぐ
- 1:25〜 ドリッパーを軽く回し縁についている粉を湯に触れさせ、落ち切る前に切る
ポイント:
- 全て円を描くようにゆっくりと回し注ぎます
- 1湯目を注ぐときは粉がお湯に触れていない箇所がないように注ぐとコーヒーの成分がしっかり出てくれます
- 愛情を込めてゆっくり注ぐことが一番大切です。
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第16号スポンサーの TYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、セラード珈琲、カラベラコーヒーのサポートでお届けしました。
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Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)