おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
今週22、23日に2回目のSCA Coffee Retail Summitが開催されました。コーヒー小売業にフォーカスしたこのオンラインイベントでは、世界中のプロフェッショナルによるパネルディスカッションやプレゼンテーションが配信されました。すべてのセッションには参加できませんでしたが、気になっていたセッションがあったので二つ参加することに。
一つ目は、ノルウェー・オスロのFuglenのファウンダーでありCEOのアイナル・ホルテさんが登壇した「スペシャルティコーヒー業界における持続可能な経済の可能性について」のセッション。Fuglenやその親会社であったStockflethsでのビジネスを通じて培ったバリューチェーンや市場経済への理解はすべて、スペシャルティコーヒー業界が目指し実践するビジネスや取引の透明性があったからこそだというホルテさん。彼が立ち上げたコンサル会社Natural Stateは、Fuglenのビジネスで深めた業界のバリューチェーンへの理解を、持続可能な都市開発や社会経済を作っていくための仕組みに役立てているそう。コーヒーショップで学べることはもっともっとあるんだなということがよくわかるプレゼンでした(といっても話が高度すぎて情報量も多く、一回聞いただけだとピントこないことも多かったです苦笑)。
二つ目は、ヨーロッパの3つのコーヒーブランドがブランディングについて話し合うパネルディスカッション「大きなブランド、小さな会社」。スペイン・バルセロナのEl Magnifico、フランス・パリのBelleville、スウェーデン・ストックホルムのLykkeからゲストを迎え、SCAのマーケティングディレクターがモデレーターを務めました。小さなコーヒーショップにブランド戦略は必要か? ローカルとグローバル、どちらに目をむける? トレンドとどう向き合うか? 何を持って「成功」とするのか? といった、ブランディングを考える上で沸き起こる疑問をテーマに、それぞれのコーヒーブランドが考える自分たちのブランディングのあり方を議論します。ライブイベントのディスカッションの中でしっかりと自分の言葉でブランドの考えを伝えることができるのは、社内でも市場での自分たちの立ち位置やどんなメッセージをブランドとして発信していきたいかについて普段から議論がしっかりなされているという証拠。話の中で度々出てきた「Know who you are(自分が誰なのかを知ること)」という言葉はブランディングを考える上でもっとも大切なことのひとつで、個人的にも改めてStandartというブランドと向き合うきっかけになりそうです。
こういったテーマのディスカッションやプレゼンは日本であまり見ることがなく新鮮でした。実践的なアドバイスも多く勉強になることも多かったです。お時間ある方はぜひ。Standartもオンラインなのかリアルなのか、このようなフォーラム型のイベントをいつか開催してみたいなという想いがあります。皆さんはそんなイベントに興味がありますか? ぜひご意見を聞かせてください。
それでは今週も良い週末を。
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
地球が廻り、コーヒーが廻る
スイスのMastercoldbrewer社が考案したContinuous Coffee Cherryプロセスと呼ばれる新たな精製技術。Global Coffee Reportによると、この技術を活用すれば、これまで大半が廃棄されてきたコーヒーチェリーの果実ごと、コーヒー(ドリンク)を抽出できるそうです。
Mastercoldbrewer社は、元々Spin Cold Brewと呼ばれるデカンター型遠心分離機を用いた抽出技術を使って、コールドブリューを製造・販売していました。この手法では、浅煎りのコーヒー豆を粉末状にし、水に沈めて遠心分離機を回すことで、たった数分間でより多くのアロマやフレーバーを閉じ込めたコールドブリューの抽出に成功したそうです。その後、数年に及ぶ試行錯誤の末、同技術を応用して開発されたのが、焙煎豆の代わりに新鮮なコーヒーチェリーをそのまま抽出するContinuous Coffee Cherryプロセスです。この技術によって、精製後の水や果実といった廃棄物を大幅に削減できるだけでなく、通常の粉末コーヒーの25倍とも言われる抗酸化作用を持つドリンクを作り出せることから、健康促進効果も期待されています。 現在はヨーロッパの施設に生産国からチェリーを冷凍輸送しているものの、規模が拡大すれば生産地に施設を置き、バリューチェーンの改善を目指すとMastercoldbrewer社CEOのローラント・ラウフ氏は述べています。
そして同社が並行して取り組んでいるのがCo-Extractionという手法を使った商品開発。水の代わりにフルーツのような水分量の多い食材と、焙煎豆もしくはコーヒーチェリーを遠心分離機にかけることで、今までにない色やフレーバー、高い栄養価を含むコーヒー(ドリンク)の製造・実験を進めているそうです。ある種コーヒーが一つの食材ともなる未来、コーヒーは「回り回って」どのような姿・味へと変化していくのか。要チェックです。
はじまりはカフェから
先日、米国・サンタモニカにオープンしたLA LA Land Kind Café。テキサス州・ダラスで生まれたこのカフェブランドのオーナー、レイハニ氏は、2021年度のForbes 30 Under 30 (世界を変える「30歳未満のソーシャルインパクター30人」)に選ばれました。このカフェの最大の目的は、フォスターユース (foster youth)のエンパワメントにあるのだそう。
フォスターユースとは、児童養護施設や里親制度といったフォスターケアを受けて育つ子どもたちや、一定の年齢に達しそれらのシステムから離れた若者たちの総称を指します。こちらのサイトによると、特に児童福祉制度からの移行期にある16〜24歳のフォスターユースたちは、大人の支えを欠いていることが多く、学業やキャリア上の困難に直面しやすいとのこと。問題の解決に向け、LA LA Land Kind Caféは、フォスターケアの年限を超えた若者を従業員として雇用したり、約8週間のインターンシップとともに、安定した職務内外の生活を支援するメンターシップ制度を提供したりしています。また参加者全員が、インターン期間終了後も住居や教育、セラピーに関するサポートを永続的に受けられるのだそうです。
オーナーのレイハニ氏はあるインタビューで「私たちのやっていることを無茶だと評する人もいます。うちみたいな小さな店が社会構造を変えることなんか本当にできるのかって。でもやるべきことをやっていけば、何かしらの変化を生み出せると信じています」と語っています。できない理由を探すのではなく、眼前の問題に対して自分に何ができるのかを模索する彼の姿勢からは学ぶことがたくさんありますね。
その他の気になるニュース
▷ スイスのスタートアップが新たに開発したロボットバリスタSmyzeは、コーヒーやノンアルカクテルなど全60種類のドリンクを全自動で提供可能。すでにスイス国内で3台のSmyzeが稼働中とのこと。
▷ 一足につきコーヒーの出がらし15杯分を再利用したコーヒーブーツ「XpreSole Pantos」がKickstarterにて資金調達中。防水で家庭用洗濯機にも対応。靴の随所にコーヒーの出がらしを利用することで、防臭、抗菌、吸湿性も兼ね備えているそう。
▷ 東京のthe Hive Jinnanにて、飲む文庫本「珈琲文庫 | 」が期間限定販売。6テーマ・36種類の私小説がスリーブの裏に綴られており、気になるタイトルを選択すると、テーマに合わせたブレンドコーヒーと共に一読一服を楽しめます。「コーヒー x 小説」だと、今年はじめにローンチしたコーヒーと小説のサブスクサービス「ものがたり珈琲」も要チェック。
▷ 1971年の米国は、スターバックス、ディズニーワールドがオープンし、選挙権が18歳に改定するといったまさにビッグイヤー。日本では、『仮面ライダー』の放送開始やマクドナルド第一号店が銀座にオープンした年だそうです。
▷ ウクライナから3年前に移住した、25歳のダンサー兼バリスタのアマチュアサイクリストが、この度イスラエルの自転車競技選手権で優勝しました。水分補給はやはりコールドブリューだったのでしょうか……?
What We're Drinking
今週のコーヒー
熊本県八代市にて開業し5年目を迎えました。 焙煎機は、フジ1kg直火ステレスドラムとold probat 1960 5kg を使い、日々楽しみながら焙煎しています。
生産者:レイモンド ディマス サンタナ フィーリョ
生産地域:ブラジル ミナスジェライス州アラポンガ (地図)
品種:イエローカトゥアイ
精製方法:ナチュラル
テイスティングノート:アプリコット、甘さのある酸味、ウェルバランス、シロップのようなスムーズなマウスフィール
編集長のコメント:
とれたてのサトウキビをかじって甘い汁が口に広がるようなフレッシュな甘みが印象的。綺麗で優しい酸を感じ、よく熟れたグリーンキウイが思い浮かびました。口に含んだ時には果実味を感じつつも、ブラジル特有のナッティなフレーバーが後からゆっくりやってきて、ヘーゼルナッツを彷彿とさせてくれます。とにかくバランスのいいコーヒーで、毎日飲んでも飽きが来ない魅力を感じました。少しとろみを感じる質感のあるこのコーヒー、アイスとの相性が抜群!
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
The Modern Mann
ウェブサイト
月に1度配信されるマガジン型ポッドキャストのThe Modern Mann。「マガジン型」たるゆえんは、ホストのオリー・マン、オリー・ピアート、アリックス・フォックスの3人がそれぞれコーナーを受け持ち、幅広いテーマを扱う点です。毎エピソード1時間超におよぶ番組の構成は、オリー・ピアートさんが流行りものを体験するコーナー「The Zeitgeist」でスタートし、メインホストのオリー・マンさん(彼のファミリーネーム「Mann」が番組名の由来)によるインタビューが続き、アリックス・フォックスさんの性にまつわるトーク「The Foxhole」で番組を締めくくるというもの。ポップな内容の「The Zeitgeist」と「The Foxhole」に挟まれたインタビューでは、ジンバブエで3m級のクロコダイルに襲われた人や、ポリアモリーとして共同生活を送る3人、フランスのロックダウン中にホームレス状態の人のシェルターになったホステルに務めていた人など、心温まるストーリーから、聞き終わった後にため息がでるほど重い話までさまざま。笑いあり、涙ありのバラエティに富んだ内容で、1時間もの長さに気づかないほどサッと聞くことができます。番組の制作費は主にリスナーから贈られる「ビアマネー」でまかなわれているというのも面白い点。イギリスに住む3人らしく、1パイントのビールの平均価格3.69ポンド(600円弱)から番組をサポートできるので、気に入った方はぜひ3人にバーチャルビールをおごってあげてください。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
大阪で10年間Bar ISTA を経営、3年前から自家焙煎もスタート。Japan Coffee In Good Spiritsで2度優勝し、World Signature Battle 2018でもチャンピオンに。最近、休日に妻と晩酌しながらドラマの見逃し配信を一気に観ることにハマっている。
セットアップ:
[コーヒーカクテル用ブリューレシピ&アイリッシュコーヒーレシピ]
抽出器具 : クレバーコーヒードリッパー
豆量 : 30g
湯量 : 160g
挽き目 : EK43s で11
湯温 : 96℃
抽出時間 : 4:00
手順:
- クレバーコーヒードリッパーにペーパーをセットし、湯通しして温める
- 粉を入れ、お湯をいれフタをして4:00待つ
- その間に、耐熱グラスにウイスキー20ml、シュガーシロップ20ml(砂糖なら10g)を注ぐ
- グラスの上に直接クレバーを置き抽出し、全てをしっかり混ぜる(※しっかりがポイント)
- 上からゆっくり生クリーム40mlを浮かべるように注ぐ(ご自宅なら手間なので泡立てなくても良いです!お店なら3〜5分立てくらいにしましょう!)
ポイント:
生クリームをフロートさせるにはカクテルの表面にスプーンをセットし、スプーンで衝撃を吸収しながら注ぐと良いです。スタンダードな味わいのレシピですので、お好みで抽出レシピ・ウイスキーの量・シロップの種類なども変えて試してください!
コメント:
今回は誰でも簡単に作れるようクレバーにしましたが、また機会があれば色んな抽出器具でのコーヒーカクテル・モクテル用ブリューレシピをご紹介できればと思います! Enjoy! Creative Coffee & Cocktail!!
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第16号スポンサーの TYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、セラード珈琲、カラベラコーヒーのサポートでお届けしました。
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Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)