#164: 複合現実、パイプ、コーヒー

#164: 複合現実、パイプ、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

今週は、先々週から続いていた怒涛の校了Weekを終え、ようやく印刷会社へ次号の印刷用のデータを送付することができました。といっても、データを印刷会社へ送ってはい終わりというわけにもいかず、印刷会社側でのデータチェックが行われた後、色味や最終的な印刷データの確認のためのデータが印刷会社から送られてきて、それを確認・承認してからようやく印刷がスタートします。このチェックが終わってようやく、ホッとできるのです。今週はこのチェックまで終わり、来週から印刷がスタートします。印刷から製本までおよそ1週間ほどで完了するスケジュールで進行しています。

いつもであれば校了後は少し一息つけるんですが、今回は東京・青山で開催されている「TOKYO COFFEE FESTIVAL 2023」への出店(本日二日目!)を終えると、すぐに次号のリリース準備が始まることもあって、ゆっくりというわけにはいかないようです。

そんな中でも少し気分をリフレッシュするために、今週、一日デジタル機器から離れてサウナへ出かけてきました。実は次号でもサウナの話がほんの少し出てくるんですが、個人的に頭を空っぽにできる時間が気に入っています。小学生の頃から母親や父親に連れられて銭湯やサウナによく行くことがあったので、少しノスタルジーに浸れる場所なんかでもあったりします。今日の東京での宿泊先もサウナ付施設なので、いろんな意味で楽しみです。(サウナ好きのコーヒーラバーの皆さん、ぜひおすすめを教えてください〜)

来週は次号のリリースの準備やサンプルコーヒー豆の輸入手続き、次次号のコンテンツの検討を進めていきたいと思います。

最後に、Standart JournalにStandart Japan第25号のパートナーを努めてくれた今年で創業35年を迎えるセラード珈琲さんのブログ記事をアップしました日本ではスペシャルティコーヒーという言葉さえ知られていない時代に生まれ、日本へ最高品質のブラジルを中心とする中南米のコーヒーを届ける同社が、コーヒー2050年問題に向けた取り組み、そして生産国で活用できるアイデアのヒントを教えてくれます。コーヒーブレイクにでもぜひ。

それでは皆さん、よい週末を。

編集長 Toshi

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

地図に描く未来の姿

国内有数のコーヒー生産地としても知られるコロンビア・ナリーニョ県。ガレラス火山の西側山麓に位置するという地域柄から県内には急斜面が多く、その特殊な地形によってこの地ならではのテロワールが育まれています。しかしその特殊さがゆえに、交通網が十分に発達していないエリアも少なくなく、2023年の調査では、ナリーニョ県が交通インフラの未整備を背景に、県別競争力指数で28位/33県(32県+首都地域ボゴタ)を記録しました。この土地固有のフレーバーを育む特殊な地理的環境は、同時に農業サプライチェーン上の課題にもなっているのです。

こうしたナリーニョ県の交通インフラの改善に向けて、先日コロンビアのバジェ大学の研究チームは、同県の地理的データの分析を行いました。地理情報システム(GIS)と数学的モデリングを併用し、ナリーニョ県内の市町村別にアクセシビリティや他地域への接続性を算出。さらに県内の道路密度(ある地域の交通網の総距離/土地面積)をマップ上に落とし込み、地域別の物流網を可視化しました。これによって、生産エリアごとのロジスティックスの偏りやコーヒー農家の販売機会のばらつきへといった現状理解を促したのです。

産官連携が必要になるインフラ事業において、最も重要なことの一つが、その施策が政府側の一方的な取り組みになるのではなく、コーヒー生産者たちに正しく利益が還元される循環を生み出すことです。コーヒー農家の機会の平等化という課題の把握を促す今回のような研究は、状況改善に向けた非常に重要な一歩であると言えるでしょう。

 

気になるニュース

▷  現在ブラジルでは、コーヒー生豆の出荷遅れが生じています国内南部での大雨、他のコモディティ商品の取引量の拡大、アマゾン川の水位低下に伴う港の変更などを背景に、コーヒー輸出用のコンテナ容量が圧迫しているとのこと。

▷ 政府系ファンド傘下のサウジコーヒーカンパニーが、国内のコーヒー人材育成を目指すアカデミーを設立。コーヒー農家、起業家、コーヒーラバーへ向けたトレーニングコースを通じて、国内コーヒー産業の多様化を図るとのこと。

▷ コーヒー生豆商社「カフェインポート」が、ピンクブルボン種に関する自社レポートを発表。同社が実施したDNA調査によると、ピンクブルボンはブルボン種の血統ではなく、エチオピア原種の血統に属することがわかったそうです。

▷ 英国のプロダクトデザイナーが、コンセプチュアルグラインダーおよびコーヒーストレージ「Silo/Mill」を発表。ストレージは農作物の貯蔵を行う穀物サイロに、グラインダーは穀物製粉を行う風車にインスピレーションを受けているとのこと。傘のような蓋が特徴的です。

▷ コーヒーを専門とするデジタルクリエーターが、なんとコーヒー専用のパイプを開発。その日の気分に合わせて、シャグとなるコーヒー豆の焙煎具合を選ぶのが粋な使い方かも。ちなみにこのコーヒーパイプは、禁煙席での使用はOKなのでしょうか……?

物足りないあなたへ

イギリスの通信企業BTが、スマート冷蔵庫やコーヒーマシンなどのキッチン用品の販売に着手Meta社のVRヘッドセットを装着した複合現実でコーヒーの注文を行う猛者が出現

コーヒーイベント

▷ 群馬:群馬県前橋市にて「前橋コーヒーマーケット2023が開催中!本日最終日です!

▷ 東京:「ルミネ新宿コーヒーフェスティバル」が、10/28(土)〜29(日)に開催予定!

 

日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報を募集しています! Standart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jpでぜひシェアしてください!

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

STORY BOX & coffee roaster 神奈川(地図 

神奈川県大和市にあるコーヒーロースターです。 店名の通り背景の物語も楽しんでいただけるような店づくりをモットーにしてます。

 

生産者アカシアヒルズ(レオン・クリスティアナキス)

生産地域:タンザニア ダア(地図

品種ケント 

精製方法ウォッシュト

テイスティングノート
レモングラス、カシューナッツ、グリーンアップル

編集長のコメント:

1年以上ぶりとなるタンザニアです。コーヒー豆や挽いた豆の香りで直球勝負のようなウォッシュトを感じさせてくれて、ウォッシュトファンとしてしては口の中がジワリと湿っていくのがわかります。お湯を注ぐと、ナッツや微かに若草のような香り。一口啜ると、レモンのようなハリのある酸味を感じた後、ジューシーで伸びのある果実味が口の中でイキイキと踊ります。リンゴの果実を彷彿とさせるような甘さとフレッシュさ。そしてナッツをかじってパキッと実が割れた時に感じる甘さのあるナッティなフレーバーがジワ〜と口の中に広がっていきました。それは長く心地よい余韻に変わります。柔らかい弾力とつるりとしたうどんのような口当たりで、とにかく優しく、体に溶け込むように喉奥へ滑り落ちていきます。二口目、三口目と飲み進めると、とにかくその素朴だけど平凡ではなく、個性的だけど親しみやすい、このコーヒーのとびきりの魅力を気づかせてくれます。こんなコーヒーがずっと飲みたかったと思えるほどに、素晴らしい体験でした。ごちそうさまでした! 飲んでみたい方はこちらから

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること


 

Community担当者がカフェイン切れのため、このセクションは今週お休みです。来週には戻ってくるはずですので、それまでお待ちください。 皆さんもカフェインの取り忘れにはご注意を!
 

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

街の上で

『愛がなんだ』『his』などの作品で知られる今泉力哉監督による、「文化の街」下北沢を舞台にした男女の友情と恋愛についての物語。先月のSCAJの後、久しぶりに下北沢の街を少しだけ歩いて、4〜5回くらいしか行ったことがない街なのに「この辺も変わったな」なんて感情を抱かせてくれた下北沢。そんな哀愁が漂い文化の香りがそこかしこに感じられるこの街に住む住人たちの他愛もない会話が、とにかく素晴らしい映画がこの「街の上で」。古着屋の店長である主人公・青を演じたのは若葉竜也さんで、映画の中の彼のゆるい空気感は、下北沢がそうさせるのか、劇中の青のキャラクターなのか……なんだか観ていて常にニヤつかせてくれる魅力があります。そして彼の(元)彼女や、自主映画の監督やスタッフ、古本屋の店員、バーやカフェのスタッフなど、個性的な俳優たちが、もうとにかくチャーミング! 出てくるキャラクター全員がどこかなんかぬけていて、なんだか憎めない。笑ったり、共感してグッときたり、ドキドキさせてくれたり、男女のなんてことはない(!?)日々がこうもドラマチックになるのかと、素晴らしいユーモアと感情の起伏のバランス感覚に、今泉監督作品の大きな魅力を感じます。住んだこともない街だけれど、こんな街なら住んでみたいなぁと思わせてくれるほどに街の良さが随所に描かれていて、この街が人を育てるのか、そこに集まる人がその街を作るのか、どっちなのかなと考えずにはいられませんでした。金曜の夜におすすめです。

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

井元 風斗 aka Futo

1996年生まれ。九州出身、東京在住。 鹿児島で浅煎りのコーヒーに出会い衝撃を受け、その世界に入り込む。 大学院在籍中に、コーヒーを始めるきっかけとなったバリスタが店長を務める鹿児島BLUE BEANS ROASTERYで働く。 2021年上京後、本業であるエンジニアの傍らでPOP UPバリスタとして活動中。 コーヒーシーンの拡大と、各空間や人との調和を目指し、様々な場所でコーヒーを初めとするビバレッジを提供している。
  

5 questions

今気になっている問いは?

コーヒーを取り巻くコミュニティと自身がサーブするコーヒーとの親和性」
コーヒーに限らずですが、飲食を取り巻く、あるいは併存するような空間でうまれるコミュニティには様々な種類があり、生活の中で遍在していると思われます。美味しいを追求する人達、会話に重きを置く人達、そこから新しいものを創造する人達…。 "どうやったらそれぞれの空間で自分の扱うコーヒーを楽しんでもらえるだろう?" そんな人達の集まる空間の文脈を読み解き、その場に調和してコーヒーをサーブすることが、自分の好きなコーヒーが浸透していく良いきっかけになるのかなと感じています。 私はよく、コーヒー愛好家が集まる空間だけでなく、あまり馴染みのない人が集まる空間でもコーヒーをサーブするのですが、そういった人達に上手く伝わって褒められた時の感動は格別です!POP UPという動きをする上でこれからも考え続けたい問いだと思います。
   

お気に入りの場所は?

「九州」
24年間移り住んでいた自分にとって欠かせないルーツとなる場所。魅力的な人、物、場所に富む、とてもあたたかい所です。東京に来てからの活動の中でもよくフィーチャーしていて、将来的に相互を繋げる"橋渡し"のような役割を担えればと考えています。

 

譲れないこだわりは?

「好奇心と探究心を絶やさないこと」
飲食、音楽、文学、人々、空間…様々なカルチャーに惹かれ、興味が止まりません!特に上京してから、各分野に長けた友人に囲まれて過ごすことで、たくさんの刺激を受けていてそれが仕事にも繋がっています。また、化学を専攻していたこともあって、当該分野で解明できるような現象(特にコーヒーに関して)に対する興味は絶やさないようにしています。

 

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

「コーヒーを通して出会えた友人達」
私は、コーヒーに大きく人生を変えられました。また、それ以上にコーヒーのおかげで出会えた人達が自身を日々成長させてくれています。 「これから生涯共に過ごしていきたいな、一緒に何か仕事がしたいな」と思っているような友人たちに感謝の気持ちを伝えつつコーヒーを楽しみたいです。

 

最近何に感動した?

「コーヒーの生産地に対する解像度が少しだけ上がったこと」
これだけ日々コーヒーが身近にあって、「生産者は…プロセスは…」と説明していても、肉眼で見たことのない私にとってはまだまだ不明瞭なことだらけです。しかし、近年における周りのロースターが生産地を訪れて報告してくれる動きや、先日のSCAJでの生産者たちとの対面などを通して、少しずつその解像度が上がってきた気がしています。更なる感動に近づくためにも、近いうち現地に赴きたいです!

Fancy a refill?
編集後記 

TOKYO COFFEE FESTIVAL 2023」の2日目の本日も、ブースにてお待ちしてます!そして、ちょうど会場から徒歩圏内の西武渋谷店 Movida館 7Fで、プロダクトデザイナーの友人がDESIGNART TOKYO 2023に「Nomadic Collective」として出展しているので、そちらも合わせて是非!会場情報はこちらから

Takaya

 


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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第25号スポンサーのPostCoffee、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAセラード珈琲Probat x DKSHSYU HA RIのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi & Nanako)