#162: 日本酒、紛失、コーヒー

#162: 日本酒、紛失、コーヒー

 

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

先週は東京ビッグサイトで開催された、年に一度のコーヒーの祭典 SCAJ2023に参加してきました。Standartは今年もスモールブースが立ち並ぶCoffee Villageエリアに出展していました。

今年は来場者数がおそらく過去最大の約69,000人。会場は全国から集まったコーヒー関係者とプロフェッショナルたち、そしてコーヒーラバーの熱気に包まれていました。残念ながら制作のAtsushiは体調を崩してしまってお休みでしたが、昨年に続いてNanako&Takaya&Toshiが、Standartのブースに訪れてくれたコーヒー業界内外の友人たち、沢山の読者の皆さんと、素晴らしい時間を過ごすことができました。ブースにお立ち寄りいただいた読者の皆さん、Weekend Brewerの方々、本当にありがとうございました! 

ギリギリまで準備が間に合うのか不安だったニュースレターの号外(リアルペーパー版Weekend Brew)も大人気で、3日目の早い時間になくなってしまいました。ゲットできた方は楽しんでもらえましたか? クロスワードはきっとコーヒーのお供になったはず。
 
そしてSCAJで一番イカした顔ハメも、みんな喜んでくれて嬉しかったです! 「結構すぐに折れ曲がっちゃうので気をつけて」と印刷会社さんに念を押された後に、東京の満員電車の中をA2サイズの顔ハメボードを持って歩き回ったかいがあったなぁと、顔をハメる皆さんをしみじみ眺めながら感傷に浸っていました。
 
フルリモートで働く私たちにとって、リアルな場所で読者の皆さんやパートナーのブランド、コントリビューターの皆さんに会える時間は、かけがえのないものです。改めて、会場でお声がけくださった皆さん、ありがとうございました。イベントの様子はこちらのハイライトからご覧いただけますよ!
 
ようやく今週はゆっくり……というわけにもいかないのが定期刊行物たる宿命。今週から次号の制作が怒涛の校了ウィークが始まっています。そんな中で、来週後半はイタリアのミランで開催されるHost行ってきます。フライト中やトランジットで、誌面の校正がはかどりそうです。会場でお会いできる方がいましたら、ぜひお声がけくださいね。
 
最後に、来週13日(金)にStandart Communityでイベントの開催です。第25号にご登場いただいた「注文に時間がかかるカフェ」の主催者、奥村 安莉沙さんをゲストにお話を伺います。詳細は以下のCommunityセクションでご案内しています。ご都合合う方はぜひ。
 
それでは皆さん、良い週末を。
 
編集長 Toshi

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

ブラックボックス化する労働環境

先日のガーディアンの記事で、インドのコーヒー生産現場に蔓延する債務労働の現状について取り上げられていました。債務労働とは、労働者(時にはその家族共々)が自らの借金又は承継した借金を返済するため使用者の下で非自発的に行われる強制労働のこと。同国では、1976年に債務労働制廃止法が施行され、"表向きには"債務労働は禁止されました。しかし昨年国際労働機関(ILO)が発表したインドの強制労働に関するレポートを見ると、その実情が大きく異なることは明らかです。

インドのコーヒー生産の約3割を担うカルナータカ州ゴダグ地区にて、コーヒー栽培に従事する人々はおよそ20万人。そのうち債務労働を強いられるのは、8,000世帯以上に及ぶと言われています。同国の法律では、本来債務労働を強いられた労働者は賠償金と居住地が保証されるはずですが、実際に保証された事例はわずか100世帯ほど。同国の貧困層の多くは銀行からの融資が難しいことを理由に、雇用主から借金を行うケースがほとんどです。その結果、雇用主から不当な金利を提示され、世代を超えて返済に苦しめられるという悪循環に陥っているのです

この現状の改善に向けて、人権団体AHSSは労働者の人権保護に乗り出しており、これまで1500以上の人々が違法な労働環境や借金から保護されたと報告されています。こうしたポジティブな動きをより大きな流れへとつなげていくとともに、業界全体の迅速かつラディカルな変革が求められています。

 

気になるニュース

▷  スターバックスが同社傘下のコーヒー農家を対象に、気候変動対策として新たな6種のアラビカ苗の配布を開始10年以上にわたる勾配実験の結果、特にアラビカ種栽培において危惧されるコーヒーさび病耐性の高い品種の開発に成功したとのこと。 

▷ コスタリカでバリューチェーンの公正化を目指す非営利団体ビーンボヤージが、昨年に引き続き、コスタリカでコーヒーサプライチェーン全体の女性のエンパワメントを目指すコーヒーサミットを11月に開催予定。

▷ コーヒーウェブメディア「コーヒーギーク」が、ツイッター/Xのアカウントの削除を発表今後はソーシャルメディア発信の中心を分散型SNS「Mastodon(マスタドン)」へと移行するとのことです。

▷ エアロプレス専用のスタンドオーガナイザーが登場。これさえあれば、ふとエアロプレスでコーヒーを淹れたくなったときにありがちな、ペーパーとフィルターの紛失事件も未然に防げますね。

▷ 群馬県のコーヒー企業と酒蔵がコラボし、日本酒に漬け込んだコーヒー生豆を使用したドリップバッグ「SAKE珈琲」が限定発売商品説明によると、「1杯のコーヒーで日本酒とコーヒーの香りが、部屋一杯に広がります」とのことです。

物足りないあなたへ

ベトナム大手コーヒーチェーン「チュング・エン・レジェンドカフェ」が米国初出店。現在エチオピア出国時のコーヒー持ち出し可能量が2kgに制限されている模様

コーヒーイベント

▷ 新潟:「新潟コーヒーマルシェ」が10/14(土)〜15(日)に初開催!県内外10店舗のコーヒーショップが集まります!

▷ 東京:「TOKYO COFFEE FESTIVAL」が、10/21(土)〜22(日)に開催!STANDARTも出店しますよ!

▷ 岩手:岩手県盛岡市で「盛岡珈琲フェスティバル」が10/21(土)〜22(日)に開催!ネルドリップに特化したコーヒーフェスだそうです!

▷ 神奈川:「YOKOHAMA COFFEE FESTIVAL」が11/24(金)〜26(日)に開催予定!ホームページからも気合いが伝わってきます!

 

日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報を募集しています! Standart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jpでぜひシェアしてください!

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

BAGTOWN COFFEE 広島

広島市中区袋町にあるコーヒー豆を焙煎、販売しているお店。浅煎りから深煎りまで、コモデティからスペシャルティまで取り揃えています。

 

生産者Antonio Medina

生産地域:グアテマラ チマルテナンゴ県サン・マルティン・ヒロテペケ (地図

品種パカマラ 

精製方法ウォッシュト

テイスティングノート
オレンジ、ストーンフルーツ、ブラックティー

編集長のコメント:

バッグから豆を出すとゴロっと粒の大きな豆が出てきました。パカマラだ!とすぐに分かるほどの存在感。豆を挽くと果物とチョコレートが混ざったような香りがします。お湯を注ぐとレモンなどの柑橘系の香りもしてきました。口に含むとその透き通るような味わいの液体が、スーッと体に入ってきます。美味しいウォッシュト特有の旨味のある出汁感を感じます。じんわりと広がる控えめだけど存在感のある甘さがたまりません。頭に浮かんだのは、和食割烹のような洗練された味わいと構成で、すっと入ってきてジュワッと広がるのはネクタリンのような果実味、あとを引く瑞々しさです。甘さがソロリソロリと追いついてきて、ずぅーんと口の中に残るドライチェリーや微かなチョコレートっぽさの後味と混ざり合っていく。味わいのバランスが素晴らしく、慈悲深い味でした。これは何杯でもいけそうです。ごちそうさまでした! オンラインでの販売は現在準備中とのことで、現在はSNSのDMにてご注文受け付けているようです。飲んでみたい方はぜひ。

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること


 

Standart Communityで恒例となったShoutスピンオフ企画。第4弾の今回は「注文に時間がかかるカフェ」の主催者、奥村 安莉沙さんから吃音当事者がスタッフを務めるカフェについてお話を伺います。
 
日時:10月13日(金) 20:00~
場所:Zoom(Community内に記載のZoomリンクよりお入りください
 
ご都合の合う定期購読者の皆さんは、ぜひStandart Communityへお集まりください!ご参加、お待ちしています!

 

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート


タイトルとポップな表紙に目を引かれて思わず手に取った人気作家、吉本ばななさんの作品。仕事、家族、時間、お金、人間関係など、私たちの人生を構成する要素の中には、直感的には「違う」と感じても義理やしがらみでついつい違うことをしてしまう、なんていうことが多々あるはずです。自分の人生を豊かに生きるにはどうしたらいいのか-そのヒントがこの本にはたくさん散りばめられています。

個人的に印象的だったのは、「自分を生きたからって、悲しみはなくなるわけではないし、つらさが減るわけでもない」という当たり前のことにも思えるフレーズ。自分のネガティブな感情を愛おしいと思えたら、人生の豊かさが増すんだろうなと思ったり。ポジティブな感情を生み出すために努力をすればするほど、ネガティブな感情を抱いた時に自己嫌悪に陥る私には沁みる言葉でした。よく「感情をコントロールする」なんていう表現がされますけど、それって自分の意に反する行為であって「違うこと」だったりするのかもしれませんね。思わずそんなことを考えた、等身大の自分に戻れる1冊です。

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

杉本 秀幸(SUSANG)

 

1990年に福井県福井市にてバーを開業。その後1992年にレストランバー、1995年にストリートセレクトショップSQUALをスタートさせる。2022年にSQUAL四世紀の歴史に幕を閉じ、マスターピースにコーヒーをプラスしMARVIN CORNERをスタート。

  

5 questions

今気になっている問いは?

「アンチデジタルですか?」
アンチという考え方は持ち合わせていないです。ただ無駄と思われる動きに魅力を感じたりするのでアナログ的な行為の方が好みです。コーヒーは提供するのも飲むのもアナログだなと思うので、コーヒーショップはいつまでもアナログな場であり続けたいです。
   

お気に入りの場所は?

「アラスカ(特に初夏の)」
幾度もスノーボードで訪れた場所で、特に6月ごろのアラスカは残雪でたっぷり滑りを楽しんだ体をからっとした空気とこれでもかという大自然が包み込んでくれるのがたまらないです。そうやって通っているうちにアラスカに出来た友人たちもいるので

 

譲れないこだわりは?

「音」
DJとしてどんな空間でも音は人と物との間の重要な存在と思っています。なので店で流れている音楽は単なるBGMではなく、コーヒーの為の演出だと思っていて手があいてる時はレコードを流します。さらに音楽だけじゃなく豆を挽くコーヒーを淹れるなど全ての音が素晴らしく、音がない世界は物足りないです。

 

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

楽しかった時間を共有した人とその後すぐに。

 

明日地球がなくなるとしたら誰と何をする?

家族と日常の1日を過ごします、早寝早起きで。

Fancy a refill?
編集後記 

終了公開間際に滑り込んた『バービー』最高でした。誰かと語り合いたいことばかりですが、個人的に忘れられないことの一つが、映画前にテンション上がって買ったキャラメルポップコーンのキャラメルコーティングが薄すぎで、ほぼ無味のポップコーンを食べる羽目になったこと。TO◯Oシネマズさん、キャラメルの分量気をつけた方がいいです。

Takaya

 


今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?

バックナンバーを含め、The Weekend Brewの感想やコメントはぜひ #standartjapan のハッシュタグと共にシェアをお願いします! 質問はメールでお待ちしております。またお友達やご家族など、The Weekend Brew を一緒に楽しんでもらえそうな方にこのメールを転送していただけると嬉しいです。

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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第25号スポンサーのPostCoffee、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAセラード珈琲Probat x DKSHSYU HA RIのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi & Nanako)