#159: 目安箱、白酒、コーヒー

#159: 目安箱、白酒、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

今週も主に月末開催のSCAJの準備と次号の制作を進めていました。今年のCoffee Villageでも、昨年好評だったThe Weekend Brewの「号外」を配る予定です。現在まだまだ制作中で、果たして納期に間に合うのか怪しいところまで来ていますが、追い込まれても決して諦めないバスケットボール男子日本代表のように、自分たちを信じて手と頭を動かし続けています(実はかなり焦ってます)。ご来場の方は、号外が間に合ったのかどうか、ブースに足を運んでいただいてぜひご確認ください😅

ちなみに、今年もCoffee Villageのメインビジュアルのアートワーク作成を担当させてもらいました。海外のイラストレーターと協業しながら制作を行っていて、楽しいビジュアルができたのでこちらも会場でチェックしてもらえると嬉しいです。

次号は順調に英語版からの記事の翻訳作業が終わり、現在校正中。校正結果は翻訳者の方々にフィードバックすることで、双方のアウトプットの質を高めていくことができます。日本語版オリジナルの記事は、撮影の手配やインタビューの書き起こし〜編集を進めました。関東を直撃した台風の影響で撮影日が急遽変更になるというトラブルもありましたが、こうした調整や各方面とのコミュニケーションも編集業務の大きな一部を占めています。

9月もこのまま駆け抜けていきたいと思います。

それでは皆さん、良い週末を。

編集長 Toshi

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

使い捨てできない未来のために

これまでのニュースレターでも度々取り上げてきた、使い捨てペーパーカップを取り巻く環境被害。紙カップ内部に施されたプラスチック塗装が原因でその大半が埋立処理されている現状や、コーティングに含まれるマイクロプラスチックが液体に溶け出すという健康被害が問題視されていました。そんな中、先日スウェーデン・ヨーテボリ大学の研究チームが発表したレポーによると、埋め立て処理された紙コップが、プラスチック製の使い捨てカップと同等の毒性を持っていることが分かったそうです。

まず研究チームは、それぞれのカップを水槽の水もしくは水中の堆積物の中に4週間放置し、化学物質の溶出を行いました。その後、各水槽にユスリカの幼虫を加えて成長段階や羽化数を比較しながら、化学物質による汚染度合いを調査。その結果、双方の水槽でユスリカの成長が阻害された(毒性があった)ことが確認されました。研究チームは、毒性の元となったコーティング成分は企業側が主成分を公開しないため、またプラスチック製品の製造過程では意図しない化学反応が起こる可能性があるため、物質の特定は困難だと述べています。さらに化学物質は特定の組み合わせで毒性を帯びる危険性もあり、個々の物質の規制は環境負荷の削減には効果的ではないとのコメントも。

研究チームはこうした現状を踏まえ、まずは使い捨てカップを使用しないことを推奨しています。以前のニュースレターで、使い捨てカップに代わる食べられるコーヒーカップ粘土でできたカップなどを紹介してきましたが、改めて既存の消費サイクルからの脱却は喫緊の課題と言えるでしょう。

 

気になるニュース

▷  スペシャルティコーヒー協会が、カッピング白書「バリューアセスメント」の正式リリースに向けたアンケート調査実施中。先日のベータ版で追加された、コーヒーの付帯的な評価(生産地情報や認証の有無など)に関する基準のブラッシュアップが、本調査の目的とのこと。

▷ 中国最南端の海南省では、2022年度のコーヒー生産量が昨年比225%増加を記録東南アジアの原産国が近いという地理的条件と自由貿易港を目指す同地域の政策的条件を活かし、今後コーヒー産業でも生産、加工、流通面での発展が予想されています。ちなみに、海南省は「一帯一路」戦略の拠点都市に位置付けられています。

▷ ドイツのスペシャルティコーヒー協会が、コーヒーサプライチェーンにおける人権・環境問題を匿名で投書できるオンライン目安箱をローンチ2024年1月から事業上の人権リスクを取り締まるサプライチェーン法の適用範囲が拡大され、対象となるコーヒー企業が増えたことが施策の背景として挙げられます。

▷ 中国で、大手コーヒーチェーン「ラッキンコーヒー」と白酒(パイチュウ)ブランドがコラボした「白酒入りラテ」が、発売初日だけで販売数542万杯以上、売上高で約20億円越えを記録。通常白酒のアルコール度数は50度近いですが、このラテの度数は0.5度以下だそうです。

▷ ロッテルダムのコーヒーショップ「マン・メット・ブリル・コーヒー」が、世界初のコーヒーホテルを建設中一般客向けのホテルとしてはもちろん、国外のコーヒープロフェッショナルを対象とした短期プログラムの滞在先としても利用されます。ホテルにはカフェやレストラン、バーや運動施設も完備。次回のロッテルダム旅行の宿泊先はここで決まり!

物足りないあなたへ

元マグロ定食屋「エンゼル」の店内・屋号を継承する神奈川県三崎のみやがわエンゼルパーラーカリフォルニア発の”世界で最も二酸化炭素排出量の少ない”全電気式コーヒー焙煎機を提供する「ベルウェザーコーヒー」が、グランフロント大阪の無印良品に焙煎システムを導入

コーヒーイベント

▷ 京都:「Enjoy coffee time in 京都ビル」が開催中。本日最終日です!

▷ 愛知:10月14日(土)に名古屋市で「珈琲博覧日が開催予定!当日はコーヒーグッズが当たるスタンプラリーも開催されるそうです!

日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報を募集しています! Standart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jpでぜひシェアしてください!

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

FILTER SUPPLY 福岡地図

FILTER SUPPLY は珈琲豆販売とハンドドリップ抽出に特化したブラックコーヒーの専門店です。築50年の古民家を改装し、店内は茶室をイメージした空間となっており、銅板などを随所に用い、まさに和と洋が融合したような作りとなっています。コーヒーは浅煎りから深煎りまで常時5~7種類ご用意しています。豆のご購入の際・1cup でのご提供の際、お好みをお伺いし、可能な限りお好みに合うようお勧めしています。ゆっくりと流れるような時間の中、香り、音、味わい、空間、繋がりを感じて頂けると嬉しいです。

 

生産者アスマン・アリアント氏(リバン・ガオ・ムサラ協同組合)

生産地域:インドネシア アチェ州(地図

品種アビシニア、アテン、ガヨ1・2、ティムティム 

精製方法ナチュラル

テイスティングノート
グレープ、ワイニー、レーズン、リッチなボディ感

編集長のコメント:

これまでWBに登場したことがないアチェ州のエリアから。Filter Supplyさんが産地を訪問して買い付けてこられたコーヒーだそう。昨年開催されたCoE(カップオブエクセレンス)の10以内に、このコーヒーが生産されたRIBANG GAYO MUSARA 協同組合から5名もランクインした、と聞くとその品質に期待が高まります。前のめりでカッピングしました。豆を挽くと、甘酸っぱさを感じるアロマが広がります。さらにカッピングボールへ鼻を押し込んで香りを嗅ぐと、なんとも不思議なんですが、肉肉しさと黒酢を彷彿とさせ、肉まんを思い出しました。気を取り直して一口啜ると、「ズキュンッ」とくる甘酸っぱさ。イチゴのグローブでパンチされたような、力強いフレーバーを口いっぱいに感じます。鼻からは、そのイチゴやブルーベリーのような香りがホワホワ抜けていきます。甘さをしっかり感じながらも、その甘さがサラッとしていて軽やかで、ロゼワインのようなキュートな甘酸っぱさがとにかく魅力的です。そしてハーブやスパイスのような複雑さを感じた後に、存在感のある、でも嫌味のない絶妙な塩梅の発酵感が駆け抜けます。そこから感じる洋酒のニュアンスは長く甘く柔らかな余韻へと変わっていきました。いやぁ、美味しい。ごちそうさまでした! 飲んでみたい方はこちらから

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

今週のStandart Communityでは、エチオピア拠点のインポーター・生産者であるモプラコ・トレーディングとのコラボレーション記事をシェアしました。

コーヒーラバーの多くが心ときめくエチオピア産コーヒーの美しいフレーバープロファイルは、大規模な森林破壊により現在危機に瀕しているといいます。その現状を何としてでも変えたいという想いを、モプラコ・トレーディングのメンバーがアニメーション動画にしてStandartチームにシェアしてくれました。

記事の中では問題の背景にある原因などについて、モプラコ・トレーディングのメンバーが私たちの質問に答えてくれました。産地で起きている問題は、私たちが日々飲むコーヒーのカップの中で起きている問題でもあります。ぜひ多くのStandart読者にお読みいただけたら嬉しいです

 

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

コーヒーを飲みましょうか?

ノ・ジョンウクが監督を務めるバリスタを志す新人が師匠に弟子入りしてコーヒー、そして人間について学ぶ、2021年公開の韓国のヒューマンドラマ。見たことがある人も多いのではないでしょうか?

公務員受験に失敗してしまった主人公のカン・コビ。落ち込むなか、たまたま入ったコーヒーショップで飲んだコーヒーに衝撃を受け、その日のうちにコーヒーでキャリアを積むことを決意します。コーヒーショップの店主に弟子入りを申し出るも、はじめは何度も断られます。しかし毎日店に通い続け熱意を伝え続けた結果、弟子入りが認められることに。

「人生を変えるコーヒーを淹れる」という目標実現のため、コビは修行に励みます。次第にコーヒーの抽出スキルだけではなく、人間を知り、その人に寄り添った1杯を淹れることが人生を変えることに繋がるのだと、師匠との時間を通じて気づき始めます。

実はこのドラマ、昨年の公開時に一度見たのですが、英語版のStandart Communityで話題に上がったため、改めて見返してみました。バリスタという仕事がコーヒーを淹れるだけではない、そしてコーヒーショップがただコーヒーを飲むだけの場所ではないと気づかせてくれるドラマです。プロフェッショナルもコーヒーラバーも、コーヒーと出会った頃を思い出させてくれる必見の作品。現在、日本ではHuluでの限定配信です。

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

遠藤 拓也  

千葉県生まれ千葉県育ち。新卒で一般企業に就職。本当は自営業がしたかったのですぐに飲食業へ転職。普段の生活とは違う繋がりのできる場を作りたくなり喫茶店を28歳で開業。 喫茶店の場所に亀戸を選んだのは東京都内との距離感がちょうどよかったから。

  

5 questions

今気になっている問いは?

「長続きさせるコツ」
僕らのお店は長い期間をかけて完成するようなイメージで作りました。 開業した時点ではペースなんて考えないで突っ走るのが正解と思ってました。 常に全力疾走だとどこかで力尽きますし、ペース配分考えるのは苦手ですし。 と考えていますがどうなっているかわからない何年後かのことは その時に考えようと開き直ったところです。 皆さんは仕事でも趣味でも長続きさせるのはどうしてるのでしょう
   

お気に入りの場所は?

「平井大橋」
通勤ルートで毎日通ってます。 遠くにビル群がみえて横にスカイツリーがあって、住んでる千葉県から東京に向かってる感がスイッチの切り替えになります。 晴れの日にバイクで走る爽快感は言葉で説明できない最高の通勤になっています。

 

譲れないこだわりは?

「所有するバイクたち」
ビンテージバイクを日常で使い分けてます。現在にはないデザイン、造りもシンプルで必要十分です。便利すぎる世の中、普段の生活が少し楽しくなる最高の乗り物たちです。バイクで繋がった人もいますし、普段行けないところも気軽にいけるようになって生活の幅はかなり広がりました。今は1番のお気に入りが修理中です、治しながら使うのもまたいいですね。

 

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

「友達、お客さん全員!」
8月末にコーヒー豆が変わりました。深煎りなのにすっきりしていてめちゃくちゃうまいから飲んで欲しいです。残暑にピッタリ爽やかなエチオピアです。お店来てくれた人たちとアイスコーヒー飲みながら、みんなでまだ暑いわ~って言って夏の終わりを迎えたいですね。

 

最近感動したことは?

「ポスティングの反響があったこと」
地元亀戸にはまだまだお店が知られてないようで、最近地道にポスティングをしています。地味な作業が実ったこととチラシだけで来たいと思ってもらえたことが嬉しかったです。喫茶店は小さい感動の積み重ねがやりがいになってる気がします。

 

Fancy a refill?
編集後記 

先日ぴあフィルムフェスティバルの特別企画で上映された、山中瑶子監督の『あみこ』と『おやすみ、また向こう岸で』を観に行きました。主人公あみこのスクリーンに火花が散りそうなほどの葛藤と危うさにこれでもかと魅了された一作目。続く『おやすみ、また向こう岸で』では、ずっしりとした質感と不穏さが漂う夏の湖畔のような空気感に、こちらも思いっきりのめり込みました。両作とも最高過ぎる。

上映後には、山中さんと俳優の古川琴音さんのトークイベントも開催。監督・俳優陣がほぼ自分と同じ年だと知って刺激を受けつつ、そこで語られていた映画業界の構造的な問題については、同世代として胸にこびりつくようなモヤモヤを感じました。問題を認識しつつもその変化を次世代に押しつける風潮は、どの世界でも共通するものがあるんだろうなと。目の前のできることをやるしかないのは重々承知しつつ、「次世代は現代の負債の受け皿ではない」と声を大にして言いたいですねー。

Takaya

 


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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第25号スポンサーのPostCoffee、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAセラード珈琲Probat x DKSHSYU HA RIのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi & Nanako)