おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
先週ギリシャ・アテネで開催されていたWorld of Coffeeが無事に終了しました。
日本からは私とAtsushiとNanakoが参加し、他のStandartメンバーも各国から集まりました。(ダイジェストはこちら!)
今回、残念ながらクリエイティブディレクターのKirillは参加できませんでしたが、チーム10人中9人が現地に集合し、毎年開催するチームギャザリングも兼ねた5日間のチームアクティビティとなりました。3年間一緒に仕事をしながらチーム誰一人として会ったことがなかった上海在住のグラフィックデザイナーNastya、そしてまだ海外チームのメンバーと会ったことがなかったNanakoが実際に顔を合わせることができたことで、より一層、チームとしての絆や理解を深めることができたように思います。
フルリモートで働く企業として、年に一度、短い時間でもこうして顔を合わせる機会はとても大切です。イベント合間をぬって、移動時間やカフェでのモーニング、アテネの今のフードシーンを堪能したディナーを、仕事の話はほどほどに、お互いのことを知る時間として目一杯費やしました。
アテネのイケてる焼き鳥屋「Birdman」での一枚(チーム+ゲストエディターSabine)
World of Coffeeの前日には、Standart x MAHLKÖNIG の
前夜祭イベントも企画しました。
英語版の最新号で表紙やカバーストーリーを撮影したOlimpia Piccolo さんのアートワークを展示したアートスペースには、翌日から始まる展示会に参加する関係者が集まりました。こういった海外の展示会では、会場以外でも、会期中に開催されるアフターパーティでの情報収集やネットワーキングがとても大切だったりします。
World of Coffeeはというと、一般のお客さんは少なく、
コーヒービジネス関係者、世界各国の生産者の来場者が多い印象でした。エスプレッソマシンや焙煎機のメーカーなどはヨーロッパ発のブランドが多くありますが、そういった企業の代表の方々と直接お話しできる機会は貴重でした。バリスタチャンピオンシップなどの競技会も盛り上がっていましたが、観客は以前ソウルで観戦した時と比べるとずいぶん少なかった気がします。トルコ製コーヒーポット (cezve/ibrik) の大会の様子を生で見れたのは個人的にかなりテンション上がりました。上記のYoutubeリンクに大会の様子がアップされているのでご興味ある方はぜひ。
ベルベットカーテンとネオンサインで飾ったStandartのブースでは、(会場で一番小さなブースでしたが苦笑)
カーテンの後ろに設けた秘密のアトラクションのおかげで、たくさんの方に楽しんでもらえましたよ海外の読者の皆さんと会話することができて、また新しい視点や気づきを得ることができました。来年のWorld of Coffeeは釜山であるようなので、日本からも参加者が増えそうですね。
今週からは、次号のStandart Japanの校了に向けてじっくりと机とパソコンに向かう時間になりそうです。
そして最後に、来週7/9(土)
に開催されるコミュニティイベントのご紹介。最新号のShout!コーナーにご登場いただいたClick Coffee Works 古賀 由美子さんに、地域の案内人としてのコーヒーショップのあり方についてお話を伺います。ご興味のある読者の皆さんは、奮ってご参加ください。
それでは今週も良い週末を!
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
トレーサビリティの希望と混乱
以前のニュースレターでも紹介したように、欧州連合(EU)では、2024年12月から森林破壊に繋がるコモディティ商品の輸入が禁止される予定です。この新たな法律に伴い、今後EUへの対象商品(カカオ、コーヒー、パーム油他)の輸出に際しては、その商品が2020年以降森林破壊に起因していないことの証明が求められます。気候危機へのラディカルな対応に期待が高まる一方、実はこの法律への対応を巡って、現在ベトナムのコーヒーセクターでは大きな混乱が生じているそうです。
主な問題となっているのが、輸出に際して必要となるコンプライアンス証明です。今後コーヒー豆の取引において、農家や事業者はコーヒー豆のトレーサビリティ情報や農場単位でのGPS情報の登録などが求められることになります。しかし、国内のコーヒー生産全体の90%を担う小規模農家の大半は、点在する3〜4区画の農地で栽培を行っており、それらすべての環境調査や情報管理だけでも多大な労力を要します。加えて、同法律の規定が既存の認証システムと比較しても非常に厳しいことや、法律の対応についての詳しいガイドラインが公開されていない点などからも、現在コーヒーセクター全体で対応が追いついていない状況とのことです。
記事では、こうした複雑な手続きやペーパーワークによって、森林伐採に起因しているか否かにかかわらず、輸出の難航や生産コスト上昇に繋がる危険性があるとの声も。気候危機への対応というポジティブな動きが、持続可能なコーヒー産業の未来につながるよう、EU当局の早急な対応が求められています。
気になるニュース
▷ ブラジルのコーヒー研究機関が、天然のデカフェコーヒーの栽培実験を開始。同機関は過去20年以上にわたって、カフェイン含有量の限りなく少ないアラビカ品種の開発に取り組んできたとのこと。収穫時期は約2~3年後。果たして歴史的瞬間となるか?
▷ ケニアがEUと経済連携協定に批准し、今後EUへの(コーヒーを含む)農作物の輸出に伴う関税撤廃が保証されることに。EUは、同国にとって最大の輸出取引市場であることからも、その経済的インパクトが伺えます。
▷ スコットランドの人気沿岸ツーリングルート「ノースコースト500」内で、リユーザブルカップシステムのパイロット版がローンチ。ルート内の加盟店舗間であればカップの貸出・返却ができ、最大2週間は無料貸出が可能。加えて政府は、同エリアのポイ捨て問題改善に向けて、不法投棄に対しての罰金額の引き上げも予定しています。
▷ 自動抹茶マシンを手がける「CUZEN MATCHA(空禅抹茶)」が、約5億円の資金調達に成功。今後は同資金を元手に、業務用抹茶マシンの開発や、オフィス空間への抹茶マシン展開に注力するとのこと。
▷ 映画監督タイカ・ワイティティが、フィンランドの缶コーヒー企業「タイカ」のクリエイティブディレクターに就任。インスタグラム上には、クセの強い就任発表の動画も。「タイカ」同士、きっと波長が合ったに違いない。
物足りないあなたへ
モザンピークが国際コーヒー協定(ICA)に加盟。ドイツで、2022年の焙煎豆の売上が歴代最高を記録。特にホールビーン領域の伸長が顕著に。ヨーロッパ・スペシャルティ・ティ協会 (ESTA)が、お茶の基礎知識・抽出技術に関する認定プログラムを立ち上げ。
コーヒーイベント
▷ 東京:OGAWA COFFEE LABORATORY 下北沢で、7/5(水)にブリューイングデバイス「Paragon」の体験イベントが開催予定。
▷ 東京 :Coffee aid チャリティーイベント vol.3が、7/9(日)に中野セントラルパークで開催予定。プロジェクト支援はこちらから!
▷ 和歌山:10/7〜9に、和歌山県立近代美術館・博物館野外広場でWAKAYAMA COFFEE MARKETが開催予定!前夜祭も催されるそうなので、先にスケジュールを押さえておきましょう!
※日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報を募集しています! Standart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jp)でぜひシェアしてください!
What We're Drinking
今週のコーヒー
Sapta 広島(地図)
広島駅から徒歩約6分、最も近いコーヒーロースターです。地域にしっかり根ざしたコーヒーショップとなるべく2023年3月にオープンしました。気軽に立ち寄ることができるコーヒースタンドとして朝8時から営業しています。1日の始まりに、もしくは広島に来られた始まりのお店として、皆様のご来店を心よりお待ちしています。
生産者:アレハンドロ・マルティネス氏
生産地域:メキシコ ベラクルス サン・ホセ&サン・アルフォンソ農園 (地図)
品種:ムンド・マヤ
精製方法:ウォッシュト
テイスティングノート:カシューナッツ、キャラメル、ブラットオレンジ、スムース
編集長のコメント:
2年以上ぶりとなるメキシコ。産地のラインナップとしてメキシコは比較的珍しいということなのでしょう。しかも前回のWB#27 でご紹介したエリアとは異なる州からのコーヒーで胸が高鳴ります。豆を挽くと、すっきりと瑞々しさを感じる竹のような香りの奥に、プラムやマンダリンオレンジの果実感をぎゅっと感じます。そしていよいよカッピング。ジューシーな伸びのある綺麗な酸としっとりと続く甘みに、ついついニヤけます。鼻から抜けて行くのは、うっすらと金木犀?のようなパフュームライクな花の芳香。和梨のような瑞々しい果実とハーブのニュアンスも。味わいの後半にかけて、ブラックティーやネーブルを彷彿とさせてくれます。ちょうど最近訪れたばかりだからか、地中海に浮かぶ島でさんさんと太陽を浴びたネーブルが木にたわわと実る情景が浮かびました(メキシコ産なんですが笑)。陽気な音楽も頭に流れてくるようです。そして少し温度が落ちてくると、ナッツのようなフレーバーが顔を出します。ウォッシュトならではの輪郭がくっきりした綺麗な味わいが魅力的で、フルーティでもあり、ナッティでもあり、「いいとこ取りでずるいなぁ」と思わせてくれる、にくいコーヒー。毎日手の届くところに置いておきたい美味しさでした。ごちそうさまでした! 飲んでみたい方はこちらから。
What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること
7月8日(土) 20:00より、Standart Communityにてオンライントークを実施します!今回は毎号開催しているShout! スピンオフ企画として、第24号にご登場いただいたClick Coffee Works 古賀 由美子さんに、地域の案内人としてのコーヒーショップのあり方についてお話を伺います。
また今回は古賀さんのお話を聞くだけでなく、The Weekend BrewのエディターTakaya も交えて、コミュニティーメンバーとの意見交換の時間も設ける予定です。古賀さんに聞いてみたいことがある方、意見交換に参加されたい方はこちらのフォームからご連絡ください💁♀️
皆さんのご参加、お待ちしています!
※Standart Japan定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
『トムボーイ』
『燃ゆる女の肖像』、『秘密の森の、その向こう』を手がけたセリーヌ・シアマ監督が、2011年に発表した長編第二作。夏休みに郊外に引っ越してきたロールは、新たに知り合った友人たちに「ミカエル」と名乗り、男の子としてグループの一員になろうと試みます。自身の身体的な性を隠しながらグループに馴染みたいロールは、男の子になるための努力も惜しまず、好意を寄せるリザとの距離も近づいていきます。しかしその日常も長くは続かず、新学期を前にある変化が訪れます。
本作において特筆すべきは、子どもたちが一人の人間として、大人が知らない世界を経験している存在として描かれている点です。ここには、セリーヌ・シアマ監督が『秘密の森の、その向こう』のインタビューの中で答えているように、「子どもは常に次世代の、未来の市民として描かれていて、現在進行形の部分が軽んじられている。」という思いが込められているように感じました。母親が着せるワンピースと、それを脱ぎ捨て、歩みを進めるロール。その姿からは、心や頭で感じる思いに率直である子どもの尊さと、「大人とは何か?」という問いを感じずにはいられませんでした。ロールが直面するさまざまな日常の障壁を、夏の日差しの下繊細なタッチで描く本作。今の時期におすすめしたい一作です。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
小林 純也 aka じゅんじゅん
山梨生まれ山梨育ち。家業がお蕎麦屋さんの家に生を享けるものの、彼が目指したものはコーヒーのバリスタだった─── 大学卒業後はコーヒー専門店や新規コーヒースタンドの開店、企画運営を経験し、2022年7月から祖父の代より続くお蕎麦屋さんを間借りする形で、定休日にのみオープンする個人ブランド「SOBA COFFEE ROASTER」として活動中。 お蕎麦屋さんのフィルターから、コーヒーを表現するべく、ここから自家焙煎にも初挑戦。 焙煎機のaillio bullet を使って更なるコーヒー沼への扉を開きました。順調に溺れています。
5 questions
今気になっている問いは?
『お蕎麦屋さんという空間から、どうコーヒーにまつわるストーリーを伝えていくか。 また日頃から現地へ還元できる手段は、小さいお店として何ができるのか。』
生産者の方やご家族、精製などに携わる人々、運搬や商社と本当に多くの人の手が、想いが関わるコーヒーという農作物だからこそ、美味しさと一緒に、そこにまつわる表情や風景の情報もお伝えしたい。 焙煎をするようになってから、よりこの想いは強くなりました。
お気に入りの場所は?
『富士山の見えるところ』
小さい頃から、地元から見える富士山がとても大きな存在でした。 毎日のように見ていますけれど、大小どこからでも見ているだけで感動し、近くに行けば大きさに驚愕。 いざ山頂を目指せばその過酷さに圧倒されました。 山を越えて河口湖へ入ったところで、目の前に広がる大きな富士山には、いい歳しても毎回「おぉー!」と声をあげてしまいます。
譲れないこだわりは?
『「いただきます」「ごちそうさま」は必ず、 お茶碗のご飯は最後の一粒まで。』
幼少の頃から聞かされた、大好きな祖母の教えです。 ご飯の一粒一粒まで、お百姓さんの努力や思いが込められてるから、残さず食べるんだよと。 いのちをいただく事への感謝も忘れずに。 もちろんコーヒーにも通じるものがあると思いますね。 日本人に当たり前にあった教えが、便利に、豊かになりすぎて希薄になってきてはいないか。 心まで贅沢になってはいけないな、と思います。
今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?
『小学校の恩師2人と』
卒業してから20年くらい経ちますが、 在学中から年越し蕎麦を毎年欠かさず買いに来てくださったり、今でもこの頃の先生や友人との繋がりが1番あるんです。 「先生、今日は僕からのサービスです。」って、そんなセリフをいつの日か。
最近、何に感動した?
先日、山梨の「寺崎coffee」さんで行われた、Nordic Japanさんのカッピング会。 光栄ながらお声掛け頂き、集まった県内ロースターの数は20を超えました。 そこではNordic Japanさんのサンプルカッピング約20銘柄に加えて、最後に参加した皆様のお店で出されているコーヒー豆もカップする、持ち寄りカッピング会まで行われ、自宅に着く頃には日付を超える素晴らしい熱気に包まれました。
日頃の忙しい営業の中、Nordic Japanさんと日程の調整や各ロースター宛にメッセージを送って下さった寺崎さん、営業でお疲れのところ、笑顔で準備や片付けをしてくださった寺崎coffeeスタッフの皆様。 助っ人として会場や雰囲気の撮影をして下さったアズミさん。 そしてNordic Japanのミサコさん、山梨まで沢山の素晴らしいサンプルの数々、興味深いお話、本当にありがとうございました! 色んな方々の、様々な角度からのコーヒーへの想いを感じられて、胸が熱くなりました。
Fancy a refill?
編集後記
買い出しの帰りにポストを開けたら、カスタマーサクセスのNanakoさんからWorld of Coffeeのお土産が!!Mahlkonig EK43のピンバッジにフレーバーウィール風の扇子など、ギーク感満載のアイテムばかり。テンション爆上げです。
Takaya
今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第24号スポンサーのTYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、Swiss Water、Faema x DKSH、Fellow x Kiguのサポートでお届けしました。
LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi & Nanako)