おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
今週は、少しコーヒーを離れてビールの世界へ。 5月に開催されるイベントに向けて(これはまたご案内します!)、イベントとタイアップしたビールを作ろうよという企画が立ち上がり、福岡のクラフトビール酒屋さんと地元のブリュワリーさんが進めるビールの醸造仕込みに参加させてもらいました。
以前オランダに住んでいるときにハイネケンのミュージアムやローカルブリュワリーでビールの醸造工程は見たことがあったのですが、実際に体験するのは初めてでした。コーヒーの精製とも似ている工程があり、それを意識しながら見れたおかげで、以前よりも解像度高めで体験することができたように思います。
ステンレスタンクにお湯を溜めて、麦芽からビールのもとになる麦汁を作る仕込みの工程からスタート。水のミネラル分も測定して、作りたいビールのスタイルに合わせてミネラルを追加していました。コーヒーと同じく、ビールにとっても水は命。そして、水の温度が高くなったところで細かく砕かれた麦芽を投入。これ、やらせていただきました。脚立を登ってタンク上部の窓からざざっと注ぎます。結構な力仕事。タンクの中で攪拌されお湯と混ざり合うことで、麦芽のデンプンが糖に変わっていきます。途中で麦汁を飲んでみるととても甘く、サトウキビジュースや果汁のようなフルーティな味わいを感じました。
続いてホップの投入。タイミングを測りながら、ビールの苦味を作るホップを入れました。今回は2種類のホップを使ったのですが、ホップ自体の香りを比べてみたのは初めてでした。使うのはネルソンソーヴィンとモテウカと呼ばれるホップで、ネルソンはワインの白葡萄のような香り、モテウカは少しトロピカルでマンゴーのようでした。どちらも刺激のある強い香りを放っていて、口に入れてみると一瞬甘くて、その後めちゃくちゃ苦かったです。そして香りをつけるホップを別のタイミングで投入し、しばらくしてから麦汁を冷やします。この時点でもテイスティングしましたが、ホップのおかげですでに麦汁にはビールっぽい風味がありました。炭酸が抜けて緩くなったビールのよう。
冷却された麦汁は発酵タンクに移され、酵母が投入されます。これから1週間ほど発酵させるそうです。この酵母が麦汁の糖を食べることで、アルコールと二酸化炭素(炭酸ガス)、そして香りのもととなるエステルが生成されます。発酵が終わったビールは貯蔵タンクに移されて、2週間ほど寝かせたら完成。瓶や缶詰めへと進めます。(ビール関係の方、上記細かいところ間違っていたら訂正お願いします。)
全体として3~4週間ほどで完成するそうです。仕込みは半日かけてやりましたが、待っている時間が長いので、醸造長いわく仕込みをしているより掃除をしている時間の方が長いそう。醸造施設をきれいに保つ作業は、コーヒーを提供する現場のクレンリネスにも通づるものがあります。
コーヒーを精製する過程では、発酵が関わっています。最近は麹や酵母を使った精製方法が誕生したり、発酵工程をうまくコントロールすることでコーヒーに付加価値を加えたりと、さまざまな試行錯誤が行われています。コーヒー以外にもいろんな飲み物や食べ物に興味を持つことで、世界がより広がりそうです。
それでは今週も良い週末を!
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
スペシャルティの普及と変化
先日全米コーヒー協会(NCA)が、2023年版米国コーヒー消費者レポートを発表しました。米国に住む18歳以上の約1500人が参加したこの調査のハイライトは以下の通り。
調査前日にコーヒーを飲んだ人の割合
65%(22年:66%、21年:58%、20年:62%)
(調査前日に飲んだコーヒーを)どこで飲んだか:
83%:自宅(20年1月:79%)
35%:自宅外(20年1月:41%)
(調査前日に自宅で飲んだ)コーヒーの淹れ方:
41%:コーヒーメーカー
28%:カプセル式コーヒーメーカー
過去一週間に、どんな種類のコーヒーを飲んだか:
61%:品種や生産地などが限定されていないコーヒー
52%:スペシャルティコーヒー(22年:43%、21年:36%)
人気のスペシャルティコーヒーのメニュー:
ラテ、エスプレッソ、カプチーノ(一位タイ)
コーヒーメディアのフレッシュカップやデイリーコーヒーニュースも言及しているように、スペシャルティコーヒーの消費増加は特筆すべきトレンド。また自宅でコーヒーを飲む人の割合もパンデミック以前を上回る水準を保っており、“おうちコーヒー”の定着度合いを示しています。今後のコーヒー体験は、一体どのように変化していくのか。引き続きニュースレターを通じて、未来のコーヒートレンドの兆しとなるようなニュースを届けていきたいと思います。
気になるニュース
▷ サウジアラビアの国有石油会社と、政府系ファンド傘下のコーヒー企業が、国内のバリューチェーン全体の支援に向けた覚書に署名しました。サウジ産コーヒーのブランド競争力強化を目標に、ジーザーン州、アシール州のコーヒー農家に向けてのトレーニングも提供予定。
▷ コーヒー器具ブランド・クルーヴから、ラテアートに特化した取っ手の無いミルクピッチャーが登場。カップサイズや描きたい絵柄に応じて、3種類の注ぎ口を使い分けられる優れ物。円滑なスチーミングのためのデザインや内側の目盛りも嬉しいポイントです。
▷ 先日約26億円の資金調達を実施した、コーヒースタートアップ・ブランクストリートコーヒーのNY内26店舗で労働組合が結成されました。企業が急成長する中でも、現在の労働環境を守りたいという思いから、従業員が労組結成に踏み出しているとのコメントが。
▷ ロシアのハッカーが、ウクライナ国内のコーヒーショップに設置された防犯カメラをハッキングし、店の前の道を監視しながら支援物資の運搬状況について情報を集めていると、アメリカ国家安全保障局が発表。
▷ 「自転車での世界一周の最速タイム(女性)」でギネス世界記録を樹立したジェニー・グラハムさんが、当時の体験を綴った『Coffee First Then the World(はじめにコーヒー、そして世界)』を出版。著書のタイトルは、ライド中に飲んだ数えきれないほどのコーヒーに由来しているそうです。
物足りないあなたへ
カルチャーと気候変動がテーマの雑誌「アトモス」が、気候変動と経済危機に直面するコロンビアの小規模コーヒー農家のインタビュー記事を公開。NPO団体ゴーファンドビーンズが、米・ポートランドで開催されるスペシャルティコーヒーエキスポに伴い、負担増加が想定される開催エリアのバリスタに向けて無料の食事を提供予定。さらに今年はファンドレイジングイベントとして、イベント後の打ち上げパーティー「コーヒープロム」も企画されています。
コーヒーイベント
▷ 東京:中央線コーヒーフェスティバル2023 Spring が開催!(4/22&23)
▷ 福岡:福岡コーヒーフェスティバル in 海の中道が開催!(4/22&23)
▷ 東京:東京インディーズコーヒーフェスが開催! 実店舗を持たずにフリーラスで活躍する、駆け出しの若手コーヒーロースター18組が大集合するそうです。(4/28&29&30)
※日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報を募集しています! Standart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jp)でぜひシェアしてください!
What We're Drinking
今週のコーヒー
宮の森アルケミストコーヒー 北海道(地図)
北海道札幌市のスペシャリティコーヒー専門焙煎所。コーヒーカウンセリング=淹れたてのコーヒーを試飲し、飲み比べをお楽しみ頂きながらお客様にピッタリな銘柄をお探しするコーヒー豆屋。
生産者:シンビ・コーヒーウォッシングステーション
生産地域:ルワンダ 南部州フエ、シンビ地区(地図)
品種:ブルボン
精製方法:ナチュラル
テイスティングノート:〝伸びやかな甘さ〟があり、まるで梨やブドウのように軽くて甘い、ジューシーな風味。ナチュラル製法独自の果実が熟した感じとは少し違う、上品で伸びやかなコーヒー体験
編集長のコメント:
挽いた豆からはほのかに熟れた果実のような甘い香りがあります。一口目、軽やかに口に流れ込んできた液体からは、和梨やキウイのようなジューシーで爽やかなフレーバーを感じます。心地よい風のふく広い草原、新緑が芽吹くような情景が浮かびました。ギュンと伸びのある味わいで、ワインや緑茶を飲んだ時にもたまに感じる「出汁感」を思い出させてくれます。甘さもしっかりと感じ、みかん飴のニュアンスも。まるでウォッシュト精製とナチュラル精製の間の子のようなコーヒーだなぁと思い、いただいたコーヒーの情報を見てみると、テイスティングノートがとても的確にこのコーヒーを表現されていました。まさにこの通りの味わい体験で、一人で「おぉ〜すげ〜」と唸るのでした。ごちそうさまでした! 飲んでみたい方はこちらから。
What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること
今週のStandart Communityでは、Standart Japan第19号「ボスでいるということ」にも登場された、コーヒーのサブスクリプションサービス「The Coffeevine」の創業者アレックス・キテインさんのポッドキャストについて紹介されました。英語版コミュニティと連携し、グローバルのコーヒー情報が共有されるのもStandart Communityの醍醐味の一つです。余談ですが、Standartの創業者マイケルがエピソード#4のゲストとして登場していますよ👀
※Standart Japan定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
『All This Time』
ハンブルク出身の仮面ピアニストLambertの最新作。一曲目の、疾走感のあるドラムとドラマチックな展開が印象的なジャズ・ジャズトラック「Bummel」でいきなり虚を突かれました。というのも、2年程前にご紹介したアルバム『Stay in the Dark』を含め、過去作における彼のシグネチャーだったストイックでネオクラシカルなサウンドから一転、本作では幅広いジャズの世界を展開していたからです。
二曲目の「All This Time」では以前からの物悲しいアルペジオは健在ながらも、「Pants」では雲の上の世界を連想させる陽気な指運びが心地よく響きます。「Loud」ではネオン街を横目に夜風を切りながら高速を走り抜けるがごとく、ファミコン時代のレースゲームを思わせる電子音が鳴り響き、それに続くジャズのスタンダードナンバー「Cry Me a River」からは、ナイトキャップを求めてバーを訪れるLambertの姿がうっすらと描きだされます。 彼は幼少期にクラシックピアノの教育を受けながらも、青年期はジャズピアニストを目指していたことから、今作は新境地というよりも、むしろ今まで仮面の奥に隠されていた彼の顔が垣間見えた作品の模様。 自作以降がますます楽しみになる一枚でした。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
巌 泰成
高校生の時に初めて浅煎りのスペシャリティコーヒーを飲み、衝撃を受けてからコーヒーの世界に入り込んだ。約1年半前に、お客として通っていたGluck coffee spotのスタッフに。現在は、コーヒー屋のスタッフ、ビストロのサービスなどを掛け持ちしながら、個人の屋号「tata」として間借りの喫茶営業をしている。
5 questions
今気になっている問いは?
「『おいしい』とは何か。」
コーヒー屋でコーヒーを淹れ、ビストロではワインを注ぎ。そんな中で「おいしい」とは何か。それが常に頭の中をぐるぐるしています。好み、その場の環境、雰囲気、受け取る側の感情や過去の思い出。様々な要因で味わいというのは提供する側と受け取る側とで、認識にかなりのギャップがあるということを改めて感じています。1つ、答えには成りきれていませんが、自分がおいしいと思うこと、それを伝える、または伝わるように努力すること。今はそれしかないと思って仕事をしています。
お気に入りの場所は?
「自宅」
約1年前に越して来ました。広くはない部屋ですが、コンパクトに自分の好きなものが詰まっていて、どんどん愛着が湧いています。自然がすぐ近くにあるので鳥のさえずりや虫の音が聞こえ、風も光も沢山入ってくる気持ちの良い場所です。ゆったりコーヒーを飲んだり、ご飯を食べたりする時間が幸せです。
譲れないこだわりは?
「素直でいること」
自分に優しくいたいと思います。良くも悪くも自分にストッパーをかけず、するすると淀みのない気持ちで生活したいからです。そうしていれば自分の生み出すものも、人付き合いもすんなりと受け入れられる気がしています。
今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?
「友人と」
先日、久々に会うことになった友人の元へ行く際、コーヒー豆、簡単な道具、そしてお菓子を拵えて行きました。友人と雑談をしながら、コーヒーを飲み、お菓子を食べ、充実した時間を過ごしたとき、「あぁ、これだからコーヒーが好きなんだ」と再確認。そういう時間を大切にしたいです。
あなたのとっておきの料理レシピは?
「天然酵母のカンパーニュ」
働いているビストロ「クラシク」から分けて頂いた酵母を使ってたまに焼いています。粉と酵母、水、塩だけのシンプルなパン。そのまま焼いて食べたり、何か塗ったりと。パン好きの自分には欠かせないものになっています。
Fancy a refill?
編集後記
最近長尺のポッドキャストを聴くのにも慣れてきたので、もしかしたら……と思い、オーディオブックに再挑戦しています。以前試したとき、自分に合わないと感じたのは以下のような理由からでした。
- そもそも僕はながら聴きというものができない
- 自分のペースで“読めない”
- 気になったところに戻って参照しづらい
- エコーやBGMなどがわずらわしい、ナレーターの声や調子が好みではない
この辺は正直今も変わらずに感じるんですが、寝る前に聴くのは結構いいんですよね。本や電子書籍の場合どうしても読書灯をつけたり、スクリーンを見つめたりする必要がでてきますが、オーディオブックだと目が疲れないし、真っ暗だから視覚情報で注意が逸れることもないので。
思えば電子書籍にも長らくアレルギー反応を示していましたが、いつのまにか(本の種類によっては)日常的に読むようになりました。習慣を理由に新しいものを拒絶しないためにも、色んな種類の本を一通り聴いてみて、またご報告します。
Atsushi
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第23号スポンサーのComandante、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、TYPICA、Probat x DKSH、MiiR、OATSIDEのサポートでお届けしました。
LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)