#140: グループライド、粘土、コーヒー

#140: グループライド、粘土、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

今日はひとつ嬉しいニュースを。StandartがEUROPEAN MAGAZINE AWARD 2023で、2023年のBest European Indie Magazineを受賞しました!

受賞者の中には、MonocleやEsquireといった雑誌業界のレジェンドたちも名を連ね、彼らと同じ舞台でStandartも賞をいただくことができたことを光栄に思います。

賞の審査員は以下のようにコメントを残してくれました。
「ユニークなイラストとデザインで構成された雑誌です。写真も非常にプロフェッショナル。テーマ、読者、デザインが見事にマッチしていて、広告主にとって魅力的な媒体です」

コーヒー業界だけでなく、雑誌出版という広い業界で数ある雑誌の中、Standartが評価されたということに大きな意義を感じています。

Standartの長い旅路に参加してくれている読者の皆さん、パートナーの方々、そして様々な形で私たちをいつも応援してくれている業界内外の方たちに、この場を借りて感謝を伝えたいです。皆さんの温かいサポートがあるからこそ私たちはこの旅を続けていくことができますし、一歩ずつ一号ずつ、自分たちの限界を押し上げていった結果が、このような形で表れるのが本当に嬉しいです。皆さん、いつもありがとうございます。そしてこれからもどうぞよろしくお願いします!

さて今週のStandart Japanは、次号のリリース準備や次次号の制作、今年からスタートする新しいプロジェクト(まだ内緒です、、)のプランニングなどを進めていました。第24号のStandart Japan、間も無くリリースです。楽しみにしていてくださいね。発送はGW明けを予定しています。

最後になりますが、いよいよ本日20:00〜21:00にシリーズ記事「シャウト!」のスピンオフ企画をStandart Communityにて開催します読者の方はコミュニティのイベントリンクからぜひご参加してみてくださいね。

それでは今週も良い週末を!

編集長 Toshi

 

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

ストーリーのカッピング

スペシャルティコーヒー協会(SCA)が、新たなカッピングの評価基準をまとめた「コーヒーバリューアセスメント」のベータ版公開しました。2004年の発表以降、既存のカッピングプロトコルや評価シートにはマイナーチェンジが加えられてきましたが、今回の改定をもってカッピングプロトコルやカッピングフォーム(評価シート)が大きく変化します。デイリーコーヒーニュースのでは、この改定に伴い官能評価による物理的な評価だけでなく、より総合的な視点でコーヒーを評価する方向にSCAが舵を切ったと指摘されています。ベータ版では、従来の官能評価を行った後に、対象となるコーヒーのストーリー(生産地情報や認証の有無など)を基に付帯的な評価を加える、というプロセスが組み込まれています。

SCAは今回のベータ版発表前に、カッピングに関するホワイトペーパーを発表しました。そこでは、プロのカッパーを「風味の鑑定家」としてだけでなく、コーヒーの品質の発見、支援、保証など「コーヒーの価値に関わるコミュニケーション全般の担い手」と新たに定義しました。また昨年発表されたホワイトペーパーでは、スペシャルティコーヒーの定義が一新され、物理的な品質評価だけでなく、非物質的な情報も同等に捉え、評価していく方針が発表されています(詳しくは以前のニュースレターをチェック)。この一連の流れは、官能評価という物理的指標だけでなく、バリューチェーンにおける総合的なコーヒーの体験・情報もコーヒーの価値として認めるというコーヒー業界のパラダイムシフトを示唆しています。

さらに元々プロのカッパーが暗黙のうちに担っていた役割を再定義することで、将来スペシャルティ業界でのキャリアを志す人たちが、今後どんなスキルを身につける必要があるのか、といったキャリアパスの明確化につながるとのコメントも。今回の評価基準の改訂を通じて、コーヒー生産者により良い形で利益が還元されるとともに、コーヒー業界での新たなキャリアパスが生まれることに期待したいです。

 

気になるニュース

▷  SCA初となるコーヒートレーナーを対象としたカンファレンス「コーヒーエデュケーターサミット」が、5/31~6/1に韓国・釜山で開催されます。最新の研究動向やトレーニングメソッドなどが共有されるとのこと

▷ オランダの大手スーパーマーケットチェーンで、一部商品を対象に「トゥループライス」の試験運用が開始この制度は、本来含まれるはずの社会的・環境コストを価格に反映し、より倫理的な消費行動を促すというもの。今回の事例だと、牛乳を使用したカプチーノは、オーツミルクの場合よりも25円高くなります。

▷ スタートアップ企業「ガイアスター」が、粘土製の使い捨てカップを開発。原材料は、土、塩、少量の水の3種類だけで、製造に必要なエネルギーもプラスチック/紙カップ以下。今年中には、カリフォルニア州内一部のヴァーヴコーヒーロースターで取り扱いが始まります。

▷ 米・ウィスコンシン州を拠点とするコーヒースタートアップが、完全自動のドライブスルーコーヒーシステムを開発。アプリから事前にオーダーすれば、ドライバーの位置情報をもとにドリンクが準備され、到着後30秒以内に商品が提供されます。

▷ 米国発のバーチャルサイクリングサービス、ズイフトに、コーヒーブレイク機能が追加されました。グループライド中でも、3分間だけは集団から離脱せずにコーヒーを楽しむ時間を確保できるとのこと。エアロプレスならなんとか淹れられるかも……?

物足りないあなたへ

ウェバーワークショップスが、WDT(ワイス・ディストリビューション・テクニック)ツール、ムーンレイカー発売。イスタンブール発のエトキンから、2杯取り用のフラットボトム式ドリッパーが登場。

コーヒーイベント

 山口:第4回 山口コーヒーフェスティバルが開催中!(4/22&23)今日が最終日です。

▷ 東京:東京インディーズコーヒーフェスが開催! 実店舗を持たずにフリーラスで活躍する、駆け出しの若手コーヒーロースター18組が大集合するそうです。(4/28&29&30)

▷ 東京:珈琲参道2023が開催!(5/5&6)小田急線狛江駅徒歩1分のお寺で開催するコーヒーイベント。

日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報を募集しています! Standart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jpでぜひシェアしてください!

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

ROLLING ROASTERS 静岡(地図

熱海・伊豆山に2022年にオープンした鑑定書付きQ認証コーヒー専門店「Rolling Roasters」。Q systemという世界共通で認められた鑑定システムの中で、Q graderによって鑑定され、一定基準をクリアし品質が保証されたアラビカ種&ロブスタ種のQ coffeeのみを提供しています。世界生産量のわずか2%の希少価値の高いファインロブスタも体験いただけます。店内は天然木の温かみを生かしたロッジ風、テラス席は海を見下ろせる絶景で、コーヒー片手にゆったりした雰囲気を楽しめます。

 

生産者Valleys Farm

生産地域:ベトナム ラムドン省バオラム県(地図

品種ロブスタ

精製方法アナエロビックナチュラル

テイスティングノート
ラムレーズンやブルーベリーのようなフレグランスに加え、甘さを伴うウィスキーのような洋酒感、冷めるとグレープのような紫色のフルーツの酸が顔を出します。Cold Brewで飲むとダークラムのフレーバーが増し、新しいコーヒー体験を楽しめます!

編集長のコメント:

The Weekend Brew初となるロブスタの豆のテイスティングでした。近年はファインロブスタと言われる、高品質なロブスタ種が少しずつ出回るようになってきました。ロブスタはベトナムで広く栽培されている品種ですが、今回はそのベトナム産のファインロブスタ。これまで見たことがないような個性的でデザイン性の優れたパッケージで、固いポスター入れのような筒状のパッケージを開けると中からめちゃイケてる缶が出てきます。パッケージを開けるところからかなり驚かせてくれて、ここまでパッケージでテンションを上げてくれるコーヒーは初めてでした。缶を開けると、中に充満していた発酵感のある甘い熟成した果実の香りが立ち込めます。どこか懐かしいような感覚がある、あまり嗅いだことのない香ばしい香りがあり、口の中がじっとりと湿ってくるのがわかります。豆を挽くと力強いアロマが鼻を突き抜けていきました。アーモンドナッツチョコレートの香り。カッピングの準備ができて一口啜ると、プルーンや複雑さのあるナッツ系のビーントゥバーチョコレートのようなねっとり感のあるフレーバーを強く感じます。どしんと舌上に残るような味わいで、熟れたバナナのような発酵感も鼻腔に感じます。コリアンダーシードや黒糖、カカオハスクティーを思い出させてくれるニュアンスも。温度が下がってくるとラム酒を強く感じました。後味には不思議とラム酒の樽感を彷彿とさせてくれます。精製方法がロブスタ特有の味わいにうまくマッチしているのかもしれません。いやぁ、素晴らしいコーヒー体験でした。ごちそうさまでした! 飲んでみたい方はこちらから

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

今週のStandart Communityでは、近年話題の「インフューズドコーヒー」についての議論が行われました。インフューズドコーヒーとは、精製過程の生豆をコーヒー以外の食材(イチゴ、マンゴー、ココナッツなど)のフレーバー液に漬け込んで生産されるコーヒーのこと。新たなフレーバー体験やそれぞれの地域で採れる果物などを使用することで、広義の「その土地の味」を生み出す可能性も挙げられる一方、生産情報が不透明なまま流通した場合、アレルギー問題といった食の安全性が脅かされる危険性も孕んでいます。今回のような答えのない問いに対して、消費者を中心に建設的な議論が行われることは、より良いコーヒー産業のあり方を考える上で非常に意義のあることだと感じました。

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

水中の哲学者たち』 ー 永井 玲衣

BRUTUSさんで永井さんのインタビュー記事を読み、哲学対話に興味を持ち購入した本。哲学対話というのは、参加者が輪になって問いを出し合い、一緒に考えを深めていくという対話のあり方のことです。自由に考えを巡らせ他者と対話することで、自分の価値観を形成・認識し、他者の価値観を尊重することが出来るようになるためのきっかけを与えてくれます。本書では、永井さんのこれまでと現在歩みと、哲学との関係、哲学することや哲学対話についてなどが、エッセイでまとめられています。一話ずつブログのように読むことができて、笑えて、悩ませて、悲しませ、首を傾げさせ、うんうんと頷かせてくれます。どこか心を落ち着かせてくれるような柔らかな文体で、言葉で頭の中をそそっとくすぐらせてくるような遊び心を感じる表現も多く、読んでいてとても心地がいいです。哲学ってなんか面白いと思わせてくれる本でした。この本を読むと、永井さんに会ってお話してみたいなと感じますよ!

     

    Brewing with…
    あの人のコーヒーレシピ 

     

    竹下 亮 aka 留年コーヒー

    1996年生まれ26歳。元バックパッカー。総渡航国数は40ヶ国。 20歳の誕生日をエジプト・ピラミッドで迎える。奇しくもその時期は大学の中間テスト中であり留年が確定。「留年コーヒー」という屋号を掲げバリスタを始める。様々なコーヒー文化に触れ、留年起業家としてコーヒーカス再生紙CAFFE Paper (カフェペーパー)を立ち上げる。現在はバリスタをしながら、コーヒーカスの再利用やコーヒー2050年問題の認知拡大に努めている。

    5 questions

    今気になっている問いは?

    「コーヒーカスを再利用して何かを作ること自体の価値」
    今はコーヒーカスを用いて何かに再利用するだけで賞賛されますがやがて技術革新や法整備が整えばそれが当たり前になるでしょう。その時に真に価値のあるコーヒーカスの再利用とはなんだろうと日々考えています。

     

    お気に入りの場所は?

    「同志社大学」
    7年間お世話になったアナザーブルーです。

     

    譲れないこだわりは?

    「昼ごはんを食べない」
    昼ごはんを食べると体が動かなくなるので、最近は大豆ばかり食べています。

     

    今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

    「スペシャルティコーヒーを覚えたての自分」
    自分がバリスタになって何を得たのか、無知の自分とコーヒーを飲んで思い出せたら最高の体験だと思います。

     

    やらかしエピソードを教えてください。

    バックパッカー中にクロアチアでパスポートをなくしたことです。パスポートがないとゲストハウスにも入れず、警察署をたらい回しにされ、散々でした。そのおかげでクロアチアのバリスタチャンピオンのお店を紹介してもらったりクロアチアコーヒーを楽しめたので結果オーライ!

     

    Fancy a refill?
    編集後記 

    翻訳家・エッセイストの岸本佐知子さんの随筆が好きで、旅先や散歩のお供によく持ち歩いています。日常のふとした景色が、実は違う世界の入り口であるようなユーモアさを持つと同時に、現実の裏側を覗き見しているような不気味さをも内包し始める。この世界観をなんと表現したらいいのだろうか、と思っていたときに、偶然『たまふりの人類学』の中に、岸本さんのエッセイについて言及している一編と出会いました。著者の石井美保さん曰く、岸本さんの随想は「都会のフォークロアといった趣」があり、「現実世界の人間よりも異界の純人に親しみを覚える子どものみた白昼夢のような、独特の質感と切実さに満ちている」とのこと。この表現があまりにフィットし過ぎていて、逆にこのフィット感を表現することばが見当たらないほど。よく分からないけど小躍りしたい気分です。

    Takaya

     


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    今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第23号スポンサーのComandante、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAProbat x DKSHMiiROATSIDEのサポートでお届けしました

    LOVE & COFFEE✌️
    Standart Japan
    (執筆・編集:Takaya & Atsushi)