#138: 石臼、民話、コーヒー

#138: 石臼、民話、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

今週は、次号の校了が無事に終わりました🙌 印刷会社へ印刷用のデータを納品した後は、もう23回も同じことをしているはずなのに全く変わらない安堵感とやり切った感が身体中を走り抜けます。次号(24号)は少し印刷の仕様なども変更したので、事前の調整などもありましたが、無事に滞りなく印刷をスタートできそうです。5月のGW明けには発送を開始できる予定なので、楽しみにしていてくださいね😉

そしてほっと一息ついたあと、今週は早速、24号のローンチスケジュールを立て、マーケティング関連の計画を立てていきました。雑誌の印刷スケジュールに合わせて制作担当のAtsushiと、次号のローンチ用の撮影手配やウェブサイト更新の準備を行っていきます。

カスタマーエクスペリエンス担当のNanakoとは、発送用の資材(封筒など)やサンプルコーヒーの手配、発送会社とのGW期間前後のスケジュール調整なども行いました。サブスクライバーの皆さんの購読更新が滞りなく行われるよう、また発送タイミングや発送先に変更がないかなど、これから発送開始までにやらなければいけないことはたくさんあります。

次々号(25号)の制作会議も進めていきました。Atsushiとインターナショナル版の制作チームと協議しながら、25号のコンテンツを練り、制作スケジュールを立て、インタビューのアポどりなども進めていきます。翻訳も並行して進めながら。

先日、「リーモートチームで日々のコミュニケーションやタスク管理はどうやっているんですか?」とご質問をいただくことがあったのですが、1週間に1度、1~2時間程度の打ち合わせと日々のプライベートな話を行い、あとは全てStandartがプロジェクトマネージメントのツールで活用しているBasecampでタスク管理やコミュニケーションをとっています。リモートチームではそれぞれが裁量を持って働くことが特に重要だなぁとつくづく感じています。少し前の記事ですが、リモートワークを成功に導く8か条 by Standartは今も変わらず私たちがリモートワークで気をつけていることです。よければコーヒーブレイクにも読んでみてください。もう3年も前かぁ(遠い目)。

それでは今週も良い週末を!

編集長 Toshi

 

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

タンクの中に、希望を加えて

チューリッヒ応用科学大学の研究機関コーヒーエクセレンスセンタのチームが、カーボニック・マセレーション特有のフルーティなアロマとフレーバーの元となる化合物を特定したと発表しました。本研究では、単一農園のパナマ産ゲシャ種を研究対象に、①ウォッシュトプロセス(乾燥前に全ての果肉とミューシレージを除去)、②パルプドナチュラル・カーボニックマセレーション(果肉を取り除いて、ミューシレージが残ったまま乾燥)、③ナチュラル・カーボニックマセレーション(コーヒーチェリー全体をタンクに入れて発酵させ果肉や果皮が付いた状態で乾燥)の3つの精製方法に分類。その後、それぞれのコーヒーを同じ方法で抽出し、成分分析と人間によるアロマ評価を実施したところ、発酵されたコーヒー特有のフルーティーなアロマとフレーバーに紐づく6つの化合物を発見しました。今回の研究の時点では、その内の3つの成分特定に成功したとのことです。

昨今人気の発酵処理ですが、実はフルーティーなアロマやフレーバーが生まれる原理について、未だ多くのことが解明されていません。この研究をきっかけに、発酵過程への理解が深まることで、より大規模な精製処理の実施や精製技術の民主化、コーヒーの品質・付加価値向上に繋がる可能性が挙げられています。しかし注意すべきは、決して全ての生産者がこうした精製処理のための設備や資金を持ち合わせているわけではないということ。また、より実験的な精製方法が求められるほど、生産者が背負うリスクと生産コストが上がってしまう現実にも目を向ける必要があります。

「新たなフレーバー」の追求は、あくまで市場における一部の需要に過ぎません。こうした研究が、新たなフレーバーの探求だけでなく、最終的に生産者コミュニティへの還元につながることが重要です。

 

気になるニュース

▷  ジャマイカの観光大臣が、国内の経済・観光産業の発展を目的とした、ブルーマウンテンコーヒーを中核とするコーヒーツーリズムの強化計画を発表しました。詳細は不明ですが、コーヒー従事者や関連ビジネスが集まる「コーヒーイノベーションタウン」建設の可能性まで示唆されています。

▷ 台湾最大手の農業企業「台湾糖業公司(たいわんとうぎょうこうし)」が、ホンジュラス産コーヒーの輸入停止を発表。先日ホンジュラスが台湾との国交を断絶し、中国との国交樹立を宣言したのがその理由とされています。

▷ オランダで植物性ミルクの大半にかかる付加価値税が、3倍近く増額する可能性が浮上これは一定の栄養基準に達していない植物性ミルクが「清涼飲料水」に分類されるためで、牛乳は「生活必需品」に分類されることから増税対象外とのこと。

▷ スターバックスの新CEO兼取締役に就任したラクスマン・ナラシムハン氏が、今後毎月一回、バリスタとして店頭に立つ方針を明らかにしました。前CEOハワード・シュルツ氏の公聴会が先月末に行われ、今後の労働組合との関係性も気になるところです。

▷ 石臼に着想を得た、最も原始的なコーヒーミルが発売。2000年の時を超えた、コーヒー体験の最先端がここに…と思いきや、どうやらエイプリルフールのジョークだった模様。正直、本当に販売してもそれなりの需要はありそうですが。

物足りないあなたへ

北欧テイストのコーヒーカプセルマシン「ウーリー」が登場。SCAがコーヒートレーナーを対象に、コーヒー関連の教育プログラムについてのヒアリング調査を開始。現在こちらから、回答を受付中です。

コーヒーイベント

 東京:中央線コーヒーフェスティバル2023 Spring が開催!(4/22&23)

▷ 福岡:福岡コーヒーフェスティバル in 海の中道が開催!(4/22&23)

日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報を募集しています! Standart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jpでぜひシェアしてください!

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

RIVERBED COFFEE BREWER&ROASTERY 岐阜(地図

明治時代(約100年前)からある土蔵を改装して作られたスペシャルティコーヒーロースターです。コンセプトとして”新しいCOFFEE LIFE STYLEの体験”を掲げています。RIVERBED COFFEEでは、それぞれ個性の違うコーヒーをその日の気分や、ロケーションを考え提案しています。現代は多種多様なライフスタイルを過ごす人々が増えました。スペシャルティコーヒーを生活に取り入れることで、日常がより豊かになることを目標として、日々コーヒーの提供をしています。

 

生産者Fazenda Guariroba(グアリロバ農園)

生産地域:ブラジル ミナス・ジェライス州 サント・アントーニオ・ド・アンパーロ(地図

品種イエローカトゥアイ

精製方法ダブルファーメンテーション

テイスティングノート
レモングラス、ヘーゼルナッツ、アーモンド、ブラウンシュガー、スパイス、長い余韻

編集長のコメント:

嫌気性発酵を2回行うダブルファーメンテーション精製で処理されたコーヒー。1回目の発酵は乳酸菌、2回目で発芽酵母を使用しているそうです。発酵中、タンク内の内圧が高まることで、ミュシレージの成分と新しく生成される化学物質が種子に浸透していくのだとか。豆を挽くと、香りから鮮やかな酸を感じさせてくれます。一口目にはブラジルのコーヒーには珍しいレモンやライムのような柑橘。スパイスのニュアンスも。そしてその心地よい酸味をすぐに包み込むようにきび砂糖のような甘さがやってきます。質感が特徴的で、滑らかでまったりと口全体を撫でていき、フレーバーが口の中によく残るな〜という印象です。後味には、ブラジルをしっかりと感じさせてくれる特徴的なナッティなフレーバーを強く感じます。そして最後、液体が口から無くなった後に鼻を抜けていくのが金木犀のような香り。以前グアリロバ農園のダブルファーメンテーションのコーヒーを飲んだことがありましたが、「これこれ〜」という感じで、発酵処理は難しい工程にもかかわらず毎回ブレのない抜群に質の高い味わいに驚かされます。飲み終えた後に思い出したのは、ターキッシュディライトと呼ばれる「ロクム」のような、精巧なナッツやフルーツのお菓子。素晴らしいコーヒーでした。ごちそうさまでした! 飲んでみたい方はこちらから

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

Standart Community限定のスピンオフ企画が、4月23日(日)に開催されます!本誌最新号の「シャウト!」に登場してくださったSOIL COFFEE & STOCKの宗島由喜さんをお招きし、女性ロースターとしての経験や、宗島さんが日本での推進役を務める女性ロースターコミュニティ「She’s the Roaster」の展望などを伺います。現在Standart Communityでは、宗島さんへの事前質問も募集中!イベント楽しみです!

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

あいたくてききたくて旅にでる

約50年にわたって東北の村々へ足を運び、人々の心の奥に息づく民話を訪ね聞いた民話採訪者の小野和子さん。本書には、小野さんの旅日記を軸に、民話採訪を通じて手にしたさまざまな資料と小野さんの思いを編んだ全18編、そして映画監督の濱口竜介さんをはじめとする若手表現者3名の寄稿がおさめられています。小野さんが、採集や採話ではなく、民話の「採訪」という言葉を用いる所以は、「聞く」という営みが、全身で語ってくださる方のもとへ「訪 (おとな)う」ことに他ならない、という思いからだと述べられています。

この本に出逢う以前、「民話」と聞くと、人々の間で代々受け継がれた、ある種の華やかな物語という印象を持っていました。しかし、本書に綴られる民話とは、その地を生きた人々の記憶であり、民の歴史そのもの。小野さんがその地を「採訪」していなければ、この世から失われていた人の記憶(物語)は、まるで日差しがなければ見過ごしていたガラスの破片のようです。しかし、小野さんが東北の村々を訪れ、全身で聞いたその物語は、なんと生命力に満ち溢れたものなのか。読んでいて、鳥肌と涙が止まりませんでした。本編、寄稿、装丁まで、人から人へ、時代を超え、ことばとともに編まれたこの本に出逢えたことに、心からの感謝を。そしてこの本が、一人でも多くの人に届くことを願っています。

     

    Brewing with…
    あの人のコーヒーレシピ 

     

    赤坂 なつき aka なっちゃん

    こんにちは!赤坂なつきです!【spook coffee&bake】という店舗のないコーヒーと焼き菓子屋をしています。元アパレル→カフェ業界で働き10年以上バリスタをしています。人と話すことがすきでコーヒーを通じたくさんの方と繋がり、ファッション、音楽、あらゆるカルチャーに出会い、毎日楽しいです! ご縁のある場所で間借り出店をさせてもらったり、楽しくておもしろいコト・すてきなモノを作っている友だちがたくさんいるので一緒にイベントをしたりしています。地元大阪に、自身も皆さんの繋がりやキッカケができるようなかっこいいお店をもつという夢の実現のため活動しています。おばけとコーヒーのアイコンが目印です~。

    5 questions

    今気になっている問いは?

    花粉症がつらい、花粉なくしたい! くしゃみがとまらなかったら接客業もつらいし、鼻がつまってコーヒーの味もわからなくって、致命的です(笑)

    お気に入りの場所は?

    「京都がすきです!」
    私のカフェ人生において影響が大きかった2大店舗があるから。1つは @mememecoffeehouse さん。もう1つはパン屋さんなんですけど @land_bakery さん (今は閉店しちゃった)。どちらもほんと、おいしくって店主さんの人柄もお店の雰囲気もすきすぎて、ここに語りきれないくらいすきです!

    譲れないこだわりは?

    「自分のすきなものに囲まれて生活したい!」
    家にはたくさんのアメリカントイやレトロトイがあります!ET.シンプソンズ.キャスパーとか!(spookにちなんでおばけグッズも集めてます) あとカラフルでかわいい柄ものの古着とか雑貨もすきです。

    今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

     spookを応援してくれている家族や友だちやお客さまがたくさんいるのですが、みんな大集合してコーヒーをのんで、お菓子も振る舞いたいです! (【今】ではないですが自分のお店が出来たらが理想です) そこで友だち同士がみんな繋がってまた新しいものが生まれたらさいこーに楽しい! ほんと自慢したい友だちがいっぱいなんですよっ。

    最近、何に感動した?

    1年半ほど前から、大阪吹田にあるマンション内の建物で月1回ほど間借り出店をしていました。平日にもかかわらずたくさん常連のお客さまができ、お菓子の感想をくれたり応援してもらい一緒にお店を育ててくれていました。去年末にその建物の閉店により出店が終わろうとしていたところ、マンションの住人様や常連様のお声のおかげで近くの建物で出店させていただけることになり、さらには毎回出店の際にはたくさんのお菓子やコーヒー豆の予約をしていただき、優しいお客様たちに応援してもらい支えていただけているのだなあと感激しました。仲良しのお客様もたくさんいます!

     

    Fancy a refill?
    編集後記 

    先日蕎麦屋で湯桶(蕎麦湯入れ)を見たときに、思わず感動が込み上げてきました。というのも、iPhoneを代表するあらゆるツールが、あれもこれもと複数の機能性を際限なく追求する一方で、「蕎麦湯を注ぐ」という一つの用途のためにここに存在する湯桶って、なんて贅沢なんだろうかと。「便利さ」が溢れる時代にこそ、利便性を追求するがゆえに失っている豊かさや、モノと機能性の距離感について、改めて考えていきたいと、蕎麦湯を片手に思いました。実はこの日財布を忘れており、少し冷や汗をかいていたのですが、お店がPayPay対応のおかげで命拾いしたのは、ここだけの話。

    Takaya

     


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    今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第23号スポンサーのComandante、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAProbat x DKSHMiiROATSIDEのサポートでお届けしました

    LOVE & COFFEE✌️
    Standart Japan
    (執筆・編集:Takaya & Atsushi)