#132: 生理用品、スプレー、コーヒー

#132: 生理用品、スプレー、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

先週、皆さんにコーヒーイベント情報のまとめがあると役に立ちそうかどうかご質問したところ、色んな方々から「嬉しい」「ぜひ!」といった声をいただきました。ご反応いただけて嬉しかったです。

近々、実験的にニュースレターにミニセクション(?)を追加して、皆さんから集まるイベント情報を掲載していきたいと思います。日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報をStandart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jp)でご連絡いただければ、できる限りシェアしていきますのでよろしくお願いします。ちなみに、今日は東京の墨田区でSumida Coffee & Sweets Festival 2023が開催されるそうですよ。晴れるといいですね!

話は変わりますが、最新号に掲載した長編記事「コーヒーの価値」を執筆されたエドワード(テッド)・F・フィッシャーさんが、今週リリースされたBoss Baristaポッドキャストのエピソードに登場していました

この記事は、最近出版されたばかりの「Making Better Coffee: How Maya Farmers and Thirdwave Tastemakers Create Value」で考察されている、コーヒーの価値の付け方や価値の優劣を決めるのは誰か、というテーマについて著者であるテッドさん自身がその見識と疑問を紐解いていくものです。

ポッドキャストでは、Boss BaristaのホストであるAshley Rodriguezさんがこの記事の核心部分でもある「スペシャルティコーヒーの経済的価値の大部分は、品質を追求するという尊い作業からではなく、豆そのものが持つ品質を裕福な消費者が喜ぶような象徴性かつ創造性豊かなドラマに変換することで創造される。品質を定義できる者が真の力を持っている。」ということを伝えていて、お2人の対話の中では記事で触れられていなかった部分もあり、テーマへの理解も深まりますので気になる方はよければぜひ。(上記のリンク先にフルスクリプトがあるのでGoogle翻訳などでも!)

そして最後に、来週3/4(土)20:00~、The Weekend BrewのゲストエディターTakayaがStandart Bookclubを開催します。初回の開催では、最新号(23号)の「味わいへの抵抗」を参加者の皆さんと共に対話してみるとのこと。ご予定合う方はぜひ!(Standart CommunityにてZoomのリンクが共有されます)

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi

 

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

格差を埋めるテクノロジー

シンガポールを拠点に食品の成分分析システムを開発するプロファイル・プリントが、グアテマラ全国コーヒー協会(通称:アナカフェ)と戦略的パートナーシップを締結しました。プロファイル・プリントは、AIを駆使してコーヒーや紅茶、穀物などの成分を分析し、収集したデータから風味などの品質を予測するシステムを開発しています。今回のアナカフェのケースでは、生豆を専用のデバイスで数秒間分析するだけで、焙煎した際のフレーバープロファイルを予測できると言います(焙煎度の違いから生まれるフレーバーの差については情報が見つかりませんでしたが)。これによって、サンプルローストやカッピングに要する時間や輸送に伴う二酸化炭素排出量を削減でき、売上サイクルが短縮化されるだけでなく、生産者を含めたあらゆるステークホルダーが客観的に品質を評価できるようになる、と同社は考えています。

多くの場合、小規模農家の大半は焙煎やカッピングの技術(そしてそれらを養うリソース)を持ち合わせておらず、自分たちが栽培したコーヒーの品質を評価することが難しい状況にあります。こうしたバイヤー・取引業者と生産者の間に存在する情報格差は、公正な取引を行う上での障壁となっていました。プロファイル・プリントのシステムが、どのくらいの精度の分析が可能かについて、引き続き情報を追っていく必要はありますが、本事例がより公正なコーヒー取引の実現につながる可能性に期待が高まります。

 

気になるニュース

▷  英国のスターバックスが生理ケアブランド、ティーオーティーエムTOTM:Time of the month)と連携し、国内の従業員に生理用品の無料提供を開始TOTMは企業が福利厚生の一環として生理用品を導入できるよう雇用者向けのサイトを設けている点も特筆すべきポイントです。

▷ コーヒー業界のサステナブル化を掲げる上海のエムティーパックコーヒー(MTPak Coffee)が、サーキュラーエコノミーを体現するコーヒービジネスへの助成金制度を発表。選出者には、約67万円(50万米ドル)の補助金、もしくは同社商品に利用できる200万円分のクレジットが授与されます。応募条件はこちらから。ちなみに、応募に当たっての国の制限はありません。

▷ 国際コーヒー機関が、コーヒー農家一世帯当たりの生活所得(衣食住+貯蓄を賄えるだけの所得)の基準値を策定するプロジェクトを開始。ルワンダ、ホンジュラス、トーゴ、アンゴラを対象に、生活所得と現状の所得の差を把握し、その改善策を立案するのに役立てていきます。

▷ 米国の投資バラエティ番組「シャークタンク」に、女性生産者が手がけるケニア産コーヒーを販売するスタートアップケハワが登壇し、見事資金調達に成功しました。同社はコーヒー栽培の大部分を担う女性生産者のエンパワメントミッションに掲げており、消費者はコーヒー農家にチップを支払うこともできます。

▷ コーヒー1杯分のカフェインは3プッシュ? カフェインをスプレーで添加、摂取できるポータブルデバイスが誕生。コーヒーの代わりにカフェインだけを持ち歩く様子に漂うディストピア感……。

物足りないあなたへ

チェンバレン・コーヒーの次なる一手はティーバッグソーシャルメディアスターのクリス・オルセンがコーヒーブランドをローンチ。フェローが新たなグラインダー「オーパスを発売しました。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

THE COFFEE BLANKS 島根(地図

THE COFFEE BLANKSは、神在月に全国から神さまが集まる島根県出雲市に2018年にオープンしました。主に中煎りをメインに取り扱いしています。店名の”BLANKS”はサーフボードの原型が由来で「素材」という意味合いがあります。素材にこだわることを心がけて少しづつ焙煎し、いつも新鮮なコーヒーをお客さまにお届けしています。

 

生産者 キヴベルト コーヒー社

生産地域:ルワンダ  西部県 ニャマシェケ地区(地図

品種ブルボン

精製方法フリーウォッシュト

テイスティングノート
グレープフルーツ、ブラウンシュガー、シロッピー

編集長のコメント:

豆を挽くとウッディな香りと、どんぐりの皮を剥いた時に漂ってくるような新鮮な木の実の香りがします。The Weekend Brew #127でテイスティングしたルワンダは北部県のものでしたが、今回は西部。最新号のStandart Japanで取り上げたコンゴの記事でもコーヒー生産の重要な場所として出てくるキブ湖を挟んで、ルワンダ側のエリアが西部県になります。カッピングの準備ができたところでゆっくりとスプーンで掬った液体を口に運ぶと、鮮やかでジューシーな酸がまず飛び込んできました。口の中に広がっていくフレーバーはグレープフルーツのよう。フレッシュな果実というよりも、煮詰めて濃くなった果汁のような濃厚さと液体の厚みを感じます。舌奥から喉へと広がるグンっと伸びのある味わいで、はつらつとした印象も受けました。といっても10代のような元気なイメージではなく、落ち着きの中にある内から出てくるエネルギーを感じます。柑橘の皮のような心地よいビター感もあり、絶妙なバランスがGOOD! そしてなんといっても黒糖のような丸みのある甘さにインパクトを感じます。飲み始めから終わりまで低音で鳴り響いているような感じで、飲み終わった後も長く続いていく甘さの余韻は素晴らしいです。個人的にとっても好みの味わいでした。ごちそうさまでした! 飲んでみたい方は、こちらからどうぞ

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

今週のStandart Communitでは、東京・町田市のCONZEN COFFEEの小井戸さんが、ロースターやカフェで使用するアイテムについて、質問を投げかけてくださいました。焙煎豆を小分けする容器や少し大きめのビーンセラー、焙煎後の豆を一時的に保管するバケツなど、一見店頭では目立ちにくいアイテムも、全てお店を支える大切な存在です。改めて、より良い空間/ビジネスと向き合う経営者の方々へのリスペクトが止まりません。ちなみに、CONZEN COFFEEさんは、簗田寺というお寺に併設されたロースターらしく、是非お店も伺ってみたい!

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

ケイコ 目を澄ませて

日常の何気ない景色に、最後に「心を」向けたのはいつでしょうか。眼ではなく、心に景色がうつるとき、胸の奥にじんわりと、寂しくも暖かな思いが染み出してくる、そんな感覚を覚えます。この映画は、日常に心を澄ませることの大切さに、改めて気づかせてくれる作品でした。

主人公の小川ケイコは、生まれつき聴覚障がいを持つプロボクサー。仕事と並行して下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ね、試合ではセコンドの声はおろかレフリーの声も聞こえないながら、プロとしての初の白星も勝ち取りました。しかしプロボクサーの道を続けるべきか、日に日に言葉にならない思いが募る中、突然のボクシングジム閉鎖の知らせを受け、ケイコの心に新たな思いが芽生えます。

本作品は、ろう者の日本人女性で初めてプロボクサーとなった小笠原恵子さんをモデルに、三宅唱監督が着想を得て創作したフィクションストーリー。作中でケイコの強さと言われる「目の良さ」は、生活のあらゆる場面にも現れる、彼女の澄んだ心そのものではないかと感じさせられました。過ぎ去っていく音のように、時の流れの儚さが揺蕩う映像。瑞々しい感情が音を介して伝わってくる、鋭いミット音に息遣い。ぜひ映画館という空間で、全身を澄ませて味わってほしい作品です。

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

草薙 聡来  

新潟県上越市出身。現在は新潟県妙高市にあるMYOKO COFFEEのRoasterとして働いています。コーヒーとの出会いはワークングホリデー先のオーストラリアメルボルン。現地での生活に苦戦していた中、癒しを求めてコーヒーショップに行くことが多く、美味しいコーヒーに心が救われていました。多忙な朝でも、笑顔で美味しいコーヒーを淹れるバリスタの姿に憧れ、当時、下山修正さんが日本人向けのバリスタスクールを開催されていたので、そちらにお世話になったことが実際にバリスタの仕事を始めた、大きなきっかけとなりました。現在は地元にほど近い妙高で、地域の人たちへコーヒーを届けられる日々が幸せです。

5 questions

今気になっている問いは?

「旅先での美味しいコーヒーの重要性」

景色も観光もご飯も最高な旅行先で、せっかくなら美味しいコーヒーが飲みたいと思いませんか? 訪れる人たちにとって、コーヒーの美味しさはどのくらい重要なことなのか。人によるかと思うのですが、きっと、思い出を彩る変数のひとつには入るはずです。私も旅先ではいつも、楽しい気持ちと一緒に美味しいコーヒーから1日をスタートしたいと感じます。私たちのお店は、自然豊かな観光地に位置しているので、地域のみなさんにはもちろん、観光で訪れたみなさんの思い出に寄り添える様な一杯を叶えてきたいですね。私は今はroasterなので、日々焙煎をしながら、このコーヒーは誰の手に届いて、どの様な景色の中で、誰と楽しむのか、旅行の思い出に寄り添えるのか、良い息抜きになるのか、などなどを思いながら焙煎をしています。

お気に入りの場所は?

「いもり池」
今住んでいる妙高市の観光スポットで、晴れた日は雄大な妙高山を間近で眺めることができる、とても綺麗な場所です。四季折々の景色の変化も日々の楽しみで。頻繁に訪れているのに、いつも見惚れてばかりいますね(笑)池の周囲をぐるっと散策している内に頭の中もスッキリしますし、思い思いに過ごす人たちを眺めながら、コーヒー片手にぼーっとする時間もなんだか癒されます。

譲れないこだわりは?

「尊重すること」

月並ですが、考え方とか、得意不得意とか、なんでも人それぞれだと思うんです。だからこそ、誰かと一緒だと思いもしなかった場所にたどり着けたり、そこで楽しい発見があったりもしますし。自分自身に関しても、あまり人と比べすぎず、自分にできる最良のスピードで目標値までたどり着くことを大事にしています。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

好きな人たちみんなに、リモートではなくオフラインで会いに行って、お互いにお気に入りのコーヒーを淹れたり、一人一人とゆっくりコーヒータイムを過ごしたいです。一体どれほどの時間がかかるのでしょうか……(笑)

あなたのギルティープレジャーを教えてください。

今まで苦手意識があり避けてきたのですが、最近日本酒が好きになりました。少ししか飲めないのですが、ほんとにお米からできているのか。と、驚かされる味との出会いばかりで。スペシャルティコーヒーに出会った頃のようで楽しいです。100種類以上のワンカップが並んでる酒屋さんを近くで見つけてそこでサササンデーと言うお酒と出会ったことがきっかけでした。好きがひとつ増えて嬉しいです。

 

Fancy a refill?
編集後記 

炊飯器が使えなくなり、久々に土鍋でご飯を炊いてみたところ、その美味しさに悶絶。米に秘められたパワーと直火の生み出す香ばしさに、土鍋と食卓をたまらず2往復。味噌汁と納豆との相性も抜群で、お腹の底から幸福感に包まれました。今こそ積読してる『一汁一菜でよいという提案』を読むべきタイミングかも、と思っているところです。そして土鍋炊きと並行し、色んなごはんのお供も開拓していきたいので、ご当地のオススメなど是非教えてください!

Takaya

 

 


今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?

バックナンバーを含め、The Weekend Brewの感想やコメントはぜひ #standartjapan のハッシュタグと共にシェアをお願いします! 質問はメールでお待ちしております。またお友達やご家族など、The Weekend Brew を一緒に楽しんでもらえそうな方にこのメールを転送していただけると嬉しいです。

Standart JapanのウェブサイトInstagramFacebookもぜひチェックしてみてくださいね。

今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第23号スポンサーのComandante、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAProbat x DKSHMiiROATSIDEのサポートでお届けしました

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)