おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
先々週からお話ししていたコーヒーイベント情報のまとめを、This Week in Coffeeのセクションにミニコーナーとして追加してみました。お住まいの地域で開催されるイベントであれば、ぜひご予定合う方は楽しんできてくださいね。遠方の方はこんなイベントやってるんだなぁ〜とか、どんなコーヒー屋さんがいるのかなぁとか、ご参考にされてみてください。
コーヒーのイベント(大小さまざま)を自分でも開催してみて思うことですが、イベントを開催・運営する方々や出店者の皆さんたちは、「お客さんが来てくれるかな?」「出店者の皆さんは満足してくれるかな?」「何も問題起こらないといいなぁ」と不安だらけです。コーヒーラバーの一人として、イベントに参加できる時は参加するし、できない時は友人や家族に薦めてみたり、SNSでシェアしてみたりと、コーヒーコミュニティ全体で楽しみ支え合う気持ちを持てるといいなと思っています。
今週は、私が住んでいる福岡でもコーヒーイベントが開催されていました(詳細はイベントセクション参照!)。初日に早速行ってみると、コーヒーファンやプロフェッショナルたちがたくさん集まっていました。出店者の皆さんは久しぶりにお会いするコーヒーロースターの方々ばかりでそれだけでも嬉しいのに、コーヒーがもうとにかくどのお店もおいしくて最高でした。お近くの方はぜひ。
今週のStandart Japanは、次号の記事の翻訳や翻訳校正、インタビュー、インタビュー後の文字起こしや編集、フォトグラファーの手配に撮影などなど、次号の制作を進める傍ら、年内の雑誌コンテンツの検討や、イベントや企画のプランニングを行なっていました。今年も楽しいことに挑戦していく一年になりそうです。楽しみにしていてくださいね!
そして最後に、最新号のパートナーを務めてくれたシンガポール発のオーツミルクブランドOATSIDEについて、新しいブログ記事をアップしました。同記事内で、第15代世界バリスタチャンピオンの井崎 英典さんが教えてくれたおいしいオーツラテの作り方も必見です。
それでは今週も良い週末を。
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
ミルキーウェイの分かれ道
先日アメリカ食品医薬品局(FDA)が発表した、植物性ミルクのラベルに関する新たなガイドライン案が波紋を呼んでいます。本草案では、ソイミルクやオーツミルクなどの植物性ミルクの商標に「ミルク」という言葉を使う場合、牛乳との栄養素の違いをラベルに記載することが“推奨”されると規定されています。あくまで表記は任意と言えど、草案が可決されれば大多数の企業が記載を改めると予測されています。
FDAは植物性ミルクを購入する消費者の多くが、「牛乳ではない」ことを理由に植物性ミルクを購入していると主張。消費者は植物性ミルクと牛乳の栄養価の違いに関する理解が乏しいにもかかわらず、植物性ミルクを積極的に購入しているため、情報の質や透明性、子どもの発育への影響といった観点から、本草案に至ったと説明します。これに対し、米・サンフランシスコを拠点とするプラントベースフード協会(PBFA)は、本ガイドラインが植物性ミルク事業者への差別的措置であり、多大な重荷を背負わせることになると反論。このガイドラインが、「植物性ミルクは本質的に牛乳よりも栄養面で劣っている」と暗示し、今後の植物性ミルク産業のイノベーションを阻害しかねないと異議を唱えています。
スペシャルティコーヒー業界を見てみると、ブルーボトルコーヒーやスタンプタウン・コーヒーロースターズがオーツミルクのデフォルト提供を開始し、23年度のワールドバリスタチャンピオンシップから植物性ミルクの使用が認められるなど、代替ミルクの受け入れが積極的に進んでいます。FDAのマクロな動きに対して、コーヒー業界はどのような反応を見せるのか。ミクロとマクロ、その双方の視点から今後も動向を追っていきたいと思います。
気になるニュース
▷ 1月に開催された米バリスタチャンピオンシップ予選大会で、ベトナム産ロブスタのみを使用したマヤ・クローリーさんが11位に入賞し、本選出場が決定。高品質ロブスタの流通活性化を目指し、本選でも同じ豆を使う予定とのこと。大会で使用されたロブスタは、期間限定で販売されています。
▷ コーヒー業界の人種的多様性向上を目指すCCREが、黒人歴史月間(2/1〜3/1)の活動の振り返りを共有。CCREが作成したPDFブックレットには、コーヒー業界における人種問題や、その背景となる歴史や社会構造に関する記事がまとめられています。
▷ 世界初のトレーニング前に飲むノンアルコールビールが登場。コーヒーに加え、麦と米からとれたタンパク質が含まれるとのこと。「普通のプロテインじゃだめなの?」と思ってしまうのは野暮なのか……?
▷ 米・ヒューストンを拠点とするディス・PKNが、ピーカンナッツから作られた「ピーカンミルク」のコーヒークリーマーを発売。ピーカンナッツは米国の固有種であることから、地域コミュニティに貢献しつつ環境負荷を抑えられるとのこと。
▷ マイケル・ジャクソンのインスピレーションの源泉は、アツアツのコーヒーカップだったかも?また一つ、この世にコーヒートリビアが生まれたかもしれません。
物足りないあなたへ
リッド要らず、かつ家庭でもコンポスト可能なペーパーカップが登場。UCCアカデミーがSCA認定コーヒースキルズプログラム(全6コース)を新設しました。
コーヒーイベント
▷ 岐阜県:柳ヶ瀬商店街でブレンドコーヒーをテーマにしたYanagase COFFEE COUNTERが開催(3/4~5)
▷ 福岡県:博多阪急 8F 催場でコーヒーメディアGOOD COFFEEがGOOD COFFEE FESを開催(3/2~3/7)
※日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報を募集しています! Standart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jp)でぜひシェアしてください!
What We're Drinking
今週のコーヒー
LIMA COFFEE ROASTERS 兵庫(地図)
LIMAとはインドネシア語で数字の5その意味はコーヒーを表現する、 「香り」「コク」「甘み」「苦味」「酸味」というコーヒー豆の5つの大切な要素を表し、ヒトの5感を刺激する特別なコーヒー豆として、 お客様の暮らしがより楽しくより豊かになるようにと願いを込めています。珈琲発祥の地、神戸のコーヒーロースターとして8年。 多種多様な方達に支えられ刺激を受け、成長を第一に進んでまいりました。今春には奥須磨にLIMA COFFEE&PLANTSをオープン予定。個性ある世界各国の高品質で味わい深いコーヒー豆を提供するのは当たり前のこと。LIMA COFFEE ROASTERSとして神戸と香川からコーヒーを通じて、 様々な楽しいことを発信できるコーヒーショップでありたいと思います。
生産者: ルイス•アルフォンソ
生産地域:コロンビア北部 セサール県 メディアルナ町 グアタフリヤ村(地図)
品種:カツーラ、ティピカ
精製方法:ナチュラル
テイスティングノート:カカオやバナナ、様々なトロピカルフルーツを思わすエキゾチックなフレーバーが特徴的です。フルシティーローストながらも、果実味溢れるフレーバーをお楽しみ頂けます。
編集長のコメント:
黒々としていて、豆面にもうっすらと油が浮かぶ深煎りのコーヒー。豆を挽くと、きな粉やスパイスを思わせる香り。お湯を注ぐとその香りも一層重厚感を増します。準備ができて早速一口啜ると、その軽やかさにまず驚きました。深煎りのビターさもありながら、すーっと入っていくクリーンで軽やかな味わい。でもバターのようなボディがあり、プルーンを思わせてくれる濃縮された果実味を感じます。後口には甘さがしっかり残り、まるでイタリアのバールで飲んだ、砂糖をたっぷりと入れたエスプレッソを飲み干した後、カップの底に残った砂糖をスプーンですくって口に入れた時のような感じ。ビターでパンチがあって濃厚で重層的でスイート。甘くてビターなチョコレートのような味わいは長い余韻に変わっていきました。そしてこのコーヒーの魅力は、温度がうんと下がってからも続きます。温度が下がると果実味が全面に出てきて、カカオのようなビターさが存在感を残しつつ一歩後ろに。熟れて柔らかくなったバナナ、そしてしっとりと舌に絡みつくようなガトーショコラを彷彿とさせてくれます。深煎りのコーヒーの見方が180°変わりそうなコーヒーでした。ごちそうさまでした! 飲んでみたい方はこちらから(これからアップされるようです)。
What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること
今週のStandart Communityでは、コーヒーを淹れる際に使用する「水」についての質問が投げかけられました。コーヒーの約99%近くを構成していると言われる水について考えていけばいくほど、コーヒー沼にさらに奥にハマっていきそうな予感。水の硬度別で同じ豆をテイスティングしてみるのもおもしろそうです。
ちなみに本誌第19号の「アルカリ度」では、水のアルカリ度がコーヒーに与える影響について特集しているので、そちらも気になる方は是非チェックを!
※Standart Japan定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
『Ninh Binh Brother's Homestay』
バンドMONO NO AWAREからスピンオフしたアコースティックユニットMIZのファーストアルバム。このアルバムはベトナム北部のニンビンにあるゲストハウス「Ninh Binh Brother's Homestay」で録音され、タイトルもそこからとられています。
キーのズレた笛が心地良い不協和音を鳴らす一曲目の「Afternoon in Ning Binh」でいきなり異国へとトランスポートさせられますが、続く「春」には日本語の歌詞がついているため、さっきまで頭の中に描かれていたどこか遠くの田舎の風景が一気に歪む、というか一曲目で連想される風景も実は慣れ親しんだ場所だったんじゃないのかと記憶が遡及的に更新されるような感覚に。
アルバムを聴いていて考えたのが、音で温度が伝わるのかということ。 この作品について知ったのは昨年の秋口で、そのときは「春」や「パレード」がどこか北欧のフォークロアを連想させ、音の合間から隙間風が吹き込んでくるような気がしたんですよね。でも春めいてきた気候の中で聴き直すと、きらめくギターの音が芽生えを思わせ、隙間風が吹いていたはずの休符の穴からは、代わりに陽光が差し込んできたように思えたんです(もちろん温かくなってきて気分が上がっていることも関係しているのでしょうが)。
環境によって解釈が変化するさまは、庭園設計で取り入れられる借景の考えにも近いものを感じます。じゃ何がその感覚を生み出しているのかと考えると、それぞれの曲の簡素さにあるのかもしれません。ささやくような2人のボーカルとコーラス、2本のギター、ベトナムの環境音。派手なフックがあるわけでもなく、めまぐるしく展開が変わるわけでもない。そこにある隙間を頭が埋めようとしているのかなと。
それは僕の音楽に対する理解の浅さの表れなのかもしれませんが、分からないけど楽しいという音楽の原体験を想起させてくれるアルバムでした。レコード版についてくる、録音の足跡を追ったブックレットも良い。あと、何回も通しでアルバムを聴いたのが久々だったので、そういう意味でも印象に残った作品。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
石口 哲平 aka てっぺー
山口県下関市出身。職業訓練校を卒業後自動車関連の会社に就職。結婚後、夫婦で一緒に働きたくて何をしようかと模索する中、映画『シェフ 三つ星フードトラック始めました』を観てキッチンカーに興味を持つ。夫婦で通い詰めていたカフェで「キッチンカーってどう思う?」とオーナーさんに相談したら思いの外盛り上がり、全面的にサポートを受けて飲食経験ゼロで2019年にコーヒー専門のキッチンカーを起業。2023年1月よりシフォンケーキとコーヒーのお店もオープン。お店とキッチンカーを夫婦2人で切り盛りしている。
5 questions
今気になっている問いは?
「あなたのお店のオススメはなんですか?」
これ実は某飲食経営者向けYouTubeチャンネルで問いかけられていたものなんです。「これからはあなたのお店でなくてはいけない理由ががなければ生き残れない。それは商品だけではなく雰囲気や接客を含めて」といった内容だったんですがものすごくズシンと響いちゃって。
お気に入りの場所は?
「コーヒーカウンターの中。(お店もキッチンカーも両方)」
お客様と少しの会話を楽しみながらコーヒーを淹れる時間は好きですね。元々人と会話をすることが好きなんです。よくバス停とかで「天気がいいですね〜」なんて声かけてくるおじさんいるでしょ?僕多分あんなおじさんになりますよwでも今はまだあの域には達することができないのでコーヒーカウンターを介して何気ない会話をお客様と楽しんでます。
譲れないこだわりは?
「映画を観る時は没頭すること。」
部屋を暗くして、ちょっといい外付けのスピーカーでボリュームは大きめ、スマホはできれば電源オフで思いっきり入り込みます。たまにスマホで観る時もありますが大きな画面がいいですよね。今気になってるのはVRゴーグル。
今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?
「妻と。」
一緒に仕事をしてるのでよく2人でコーヒーは飲みますが、仕事以外では最近ゆっくりとコーヒーを飲んでないんですよね。どこか誰も知り合いのいないお洒落なカフェにゆっくりとコーヒーを飲みに行きたいです。
あなたのギルティープレジャーを教えてください。
実はジブリの音楽が大好き。久石譲さんの。映像無しでジブリの音楽にどっぷり浸りたくなる時があります。
Fancy a refill?
編集後記
先日、とある大手カフェチェーンを訪れたときのこと。そのお店には何度か行ったことがあったんですが、どうやらその日が最終営業日で閉店するようでした。
僕はそのお店にも、店舗があるエリアにも特別な思い入れがないので、あまり関心を抱いていなかったのですが、注文を終えて受けとったトレーの上には、ドリンクと一緒に店長の感謝の気持ちが込められたメッセージカードが添えてありました。席についてあたりをうかがっていると「いつも朝ここで新聞を読んでたから残念だ」とか「お昼はいつもここに来てました」と店員に伝えるお客さんがチラホラ。
僕はつい個人店の跡地にチェーン店ができると残念な気持ちを抱いてしまいがちですが(かつ、それ自体に負の側面があるのは確かですが)、それも大部分はエゴなんだなーとその様子を見ながらしみじみ感じていました。いわゆる「コミュニティ」は別に個人店、チェーン店云々に縛られることなく、個人の間で築かれるものなのかなとか、その地域で生活を営む人間とそこを通り過ぎる人間の観点の違いとか、そんなことを考えつつ。
Atsushi
今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第23号スポンサーのComandante、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、TYPICA、Probat x DKSH、MiiR、OATSIDEのサポートでお届けしました。
LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)