早くも2020年の半分以上が過ぎました。新刊発売のタイミングではいつも「あぁ1年の4分の1がまた過ぎてしまった……」と特に理由もなく感傷に浸ってしまいますが、今回はそんな気持ちを吹き飛ばすエキサイティングなニュースがあります。
今号からStandart Japanは新しいデザイン・コンテンツと共に新時代に突入します!
いつものように中身をご紹介したいところですが、その前に、今回のリデザインの背景についてもお話させてください。
リデザインのきっかけのひとつは昨年スペインのバルセロナで行われたチームミーティングでした。毎年行われているこのチームミーティングは、フルリモートで業務を行うStandartのメンバーが一堂に会す、とても大事なイベント。いつもは1年の振り返りや翌年の計画について話合うのですが、今回は少し様子が違いました。
メンバーそれぞれがどこかフラストレーションを感じているような、ある種の停滞感が漂っていたのです。そこで一旦話を止めて全員で思いの丈を語りあったところ、各メンバーが今後のStandartについて危機感を抱いていることが分かりました。良い面を見れば、それぞれの言語バージョンのメンバーも定着し、製作業務もスムーズに進んでいました。でもその安定感ゆえに、どこかルーティーンを繰り返しているような、「このままで大丈夫なのか?」という感覚をそれぞれが抱えていたのです。
すぐさまStandartのファウンダーMichalを先頭に、全員がこれまでのStandartについて気に入っていない点や今後進むべき道について話し合い、Standartが存在する理由や、どんな体験を読者の皆さんに届けたいのかという根幹についても議論が展開されました。それぞれが住む場所に戻ってからもリモートで議論は続き、その結果が今回のリデザインとコンテンツの改変に結実したのです。
世界中のコーヒーにまつわる物語をお届けするという本質はそのままに、日々進化するコーヒー業界のようにStandartも新しいステージに上がる準備が整いました! 今この文章を読んでくれている皆さんと同じくらい、私たちチームStandartも興奮できるようなものを作るため、これからも歩みを止めることなく進んでいきます。ぜひ新しいStandart Japanもよろしくお願いします🙏
それでは生まれ変わったStandart Japanの中身を一足先にご紹介していきますよ。
Standart Japan #13
コーヒーの迷信
コーヒーにまつわる迷信をワールド・バリスタ・チャンピオンのGwilym Daviesと一緒に解いていく記事の続編(初回はStandart Japan 第12号に掲載)。今回はカプチーノやタンピング、エスプレッソにまつわる迷信とその真偽について。
ペルー
世界有数の豊かな生物多様性と美しい景観を誇るペルーは、2010年に同国産のコーヒーがSCAの品評会で「Coffee of the Year」を獲得して以降、高品質なスペシャルティコーヒーの生産国として注目を集めるようになりました。その一方で官民両セクターにはびこる汚職や腐敗から組織への不信感は高止まりの状態にあり、生産者の70%が協同組合などの組織に属さずに農業を営んでいます。そんなペルーに広がるスペシャルティコーヒーの今。
Meet Your Barista
自閉スペクトラム症の影響で中学校生活からの離脱を余儀なくされつつも、コーヒー焙煎を通じて自分の居場所を見つけたHORIZON LABO創設者の岩野 響さん。彼はどのようにして詩、写真、ファッションと、さまざまな表現手段を自在に操るようになったのでしょうか。そして岩野さんが大切にする「余白」の意味とは。
コーヒーはどこへ消えた?
気候変動の影響で2050年までにアラビカコーヒーの栽培適地が半減してしまうというコーヒーの「2050年問題」がささやかれていますが、実際に気温や降水量の変化はコーヒー栽培にどのような影響を与えているのでしょうか? この記事では1950年から2015年のハワイのコーヒー生産にまつわるデータをもとに、その実情に迫ります。
ホスピタリティ最前線
レストランやホテル、バーなどコーヒー以外のホスピタリティ業界では、今何が話題になっているのでしょうか? ウェルネスやエンパワメント、サステイナビリティをキーワードに、ユニークで先進的な取り組みを行う 5 つのビジネスに注目しました。
ボスでいるということ
福岡の人気カフェNO COFFEEオーナーの佐藤慎介さんによるエッセイ。アパレルや玩具の世界で15年のキャリアを積み、30代後半でコーヒー業界に飛び込んだ佐藤さんの仕事の哲学やコーヒーを通して実現しようとしていることについて。
シャウト!
コーヒーライター、クリエーターとして活躍し、ジェンダー平等のメッセージが込められた虹色のカッピングスプーンの開発者としても知られるウメコ モトヨシさん。ウメコさんは今、コーヒーの「品質」の捉え方について、怒りを抱えているようです。彼女のありのままの叫びに耳を傾けてみましょう。
コーヒー界のニューロダイバーシティ
スペシャルティコーヒー業界には、さまざまな趣味趣向や能力、背景を持った人たちを受け入れられる力が備わっています。 そんな業界で、ADHDや自閉スペクトラム症といった学習症を持つ「ニューロダイバース」な人々は日々どのように生活し、それぞれの症状と向き合っているのか。そして職場は、どのようにニューロダイバースな人たちを支えているのか。この長編記事では「脳の多様性」がもたらす利点や才能に光をあてつつ、コーヒー界のニューロダイバーシティの現状を追います。
はじまりはいつも夢の中
コーヒーの世界はアイコニックな建築物や空間デザインで溢れています。気づかないうちについスマートフォンを掲げて写真を撮ろうとしてしまっていた、なんてことが誰にもありますよね? このフォトエッセーでは無数にあるそんな施設の一部を取りあげ、それぞれの空間のコンセプトや狙い、設計図、そして夢が現実のものとなった姿をご紹介します。
24/7
コーヒープロフェッショナルの一日を写真で追うシリーズ記事。初回は和歌山県の小さな集落でロースターカフェTHE ROASTERSを営む神谷 仁子さんの一日に密着しました。
Meet Your Guest
昆虫食専門ブランドANTCICADAの代表を務め、22 年もの昆虫食歴を誇る篠原祐太さん。今や各種メディアにも登場する篠原さんですが、つい数年前までは昆虫を食べているという事実さえ公にしていませんでした。本当の自分をさらけ出せずに長年ストレスを感じていた彼がカミングアウトに踏み切ったきっかけや食べることと知ることの関係、さらには昆虫食を提供する魅力について聞きました。
最後の手紙
かつて愛した人から遠く離れ、都会での生活を始めたある男のショートストーリー。自分の存在をうやむやにしてくれる都会の喧噪を心地よく感じながらも、拭い切れない寂しさからコーヒーを軸に新たな出会いを夢見る日々を送る主人公。そんな彼が別れた恋人に送った最後の手紙。
ウシュウシュに魅せられて
エチオピア生まれコロンビア育ちの「ウシュウシュ」という珍しいコーヒーに恋い焦がれたコーヒーラバーが、このコーヒーを求めて14か月の間に4か国9軒のロースターを巡った旅の記録。
ミュンヘン
ドイツ・バイエルン州の州都には、ビールとオペラ以外にもたくさんの魅力が。コーヒー片手に、中世の通りとモダンなスポットを巡る旅へ出ましょう。
SPONSOR&PARTNERS
今号のメインスポンサーは、競技バリスタにもファンが多いブラジルのコーヒー企業Daterra。特集記事では、2018年のワールド・ブリュワーズ・カップで深堀絵美さんに優勝トロフィーをもたらしたローリナ種の開発ストーリーを軸に、コーヒーの研究開発について話を聞きました。
さらに創刊からStandartを継続的にサポートしてくだり、リデザイン後第1号となる今号にも参加してくださったVictoria Arduino、独自技術で風味豊かなディカフェコーヒーを生産するSwiss Water、さらにはStandart Japanのウェブサイトでも製品を販売しているコーヒーアート企業Department of BrewologyがStandart Japan第13号のパートナーを務めてくれました。ありがとうございます!
サンプルコーヒー
第13号のサンプルコーヒーは、オーストラリアのArtificer Coffeeのもの。6月末まで実施していたCOVID-19で影響を受けたお店をサポートするGive & Getプログラムに共感いただき、今回のサポートを決断してくれました! コーヒーの詳細はコーヒーページでご覧いただけます。