おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
最新号のシティ・プロフィールで特集しているリヴィウはウクライナの都市です。記事では、さまざまな出来事を経験しながらも、独特の魅力とプライドを失わずに幾多の困難を乗り越えてきた同都市の新しいアイデンティティを、コーヒーの視点から眺めていきました。カール・ファン・デル・リンデさんが撮影してくれた写真は、リヴィウや同国の人々の日常生活が垣間見える素晴らしいものでした。
そのウクライナが今大きな困難に直面しています。現地時間の24日に、ロシアがウクライナへ軍事侵攻しました。以前からクリミア半島やウクライナ東部では紛争が起こっていましたが、今回の軍事侵攻で侵略の意図が決定的になり、世界中の国々がロシア政府を厳しく批判するとともに種々の制裁を決断しています。詳しく知りたい方はこちらのリンクをご参照ください(1、2、3)。
暴力の行使や戦争で物事を解決しようとする行為に断固として反対します。
コーヒー業界でも、英語版 Standartのサンプルコーヒーを提供してくれたCloud Picker Coffee(ダブリン)が早速ファンドレイザーを立ち上げています。これからさらに支援の輪が広がりそうです。日本からだとなかなか身近なこととして考えづらかったりしますが、今日はコーヒー1杯を飲む時間にでも、遠い土地に住む人々や街の様子などに少し思いを巡らせる機会にしたいなと思います。
それでは、本日も良い1日を!
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
最先端の方角
主要メディアに見過ごされがちな国や地域のテックストーリーを報道するNPOメディア『Rest of World』によると、東南アジアでは、アプリを駆使したコーヒービジネスを展開する、「コーヒーテック企業」がめざましい成長を遂げているそうです。先日飲食系で東南アジア初のユニコーン企業(評価額が10億ドル以上かつ未上場のスタートアップ企業)となったインドネシアのKopi Kenanganを筆頭に、こちらもインドネシア発のJago Coffee、シンガポールのFlash Coffeeなど、特に2018年以降複数の企業が巨額の資金調達に成功しています。
共通の特徴として挙げられているのが、アプリを活用したプレオーダーやデリバリー、割引や会員サービスの提供。そしてアプリを通じて収集したデータは、実店舗のロケーション選びなどにも活用されます。ユニークな例として、Jago Coffeeではバリスタが電動カートに乗って指定エリア内を移動するため、既存のフードデリバリーサービスと比較して約半分の時間でコーヒーをお客さんのもとに届けられるとのこと。スピーディーなアプリ決済というデジタル戦略を軸に据えつつも、お店を訪れる、目の前で淹れてくれるといったコーヒーの「ローテクな体験価値」を加味したオムニチャネルの展開がコーヒーテックビジネスの肝と言えそうです。
東南アジアでのコーヒービジネスの盛り上がりは、コーヒー生産地でもあるアジアのコーヒー産業全体の地位向上を予感させます。これまでコーヒービジネスの最先端が欧米諸国の視点で語られてきた中、東南アジアのコーヒーテックの台頭が、オン・オフライン、ひいては生産国・消費国という垣根も超えていく動きになればと期待が高まります。
その他の気になるニュース
▷ 中米統合経済銀行(CABEI)と国際コーヒー機関(ICO)が、ホンジュラスとニカラグアのコーヒーバリューチェーン再構築に向けた連携を発表。近年のハリケーンやパンデミックによる被害をはじめ、自然災害、経済・人道的危機に対応し得るインクルーシブなコーヒーセクターを目指します。
▷ スターバックスがヨーロッパ、中東、アフリカでのフェアトレードコーヒーの購入量削減を発表。今後は自社プログラムを通じての購買量を増やしながらサプライチェーンの変更が背景として挙げられており、特定のブレンドコーヒーを除きフェアトレードコーヒーの取引縮小が予定されています。
▷ 韓国のコーヒー企業Coffee Chapsが、Kickstarter上で電動グラインダー「Airmill」の資金調達に成功。グラインダー内にファンを活用したエアシステムを組み込むことで、より効率的なチャフの除去を実現しています。
▷ 米国全土のコンビニでカフェイン入りドーナツが販売予定。ドーナツ一つにはコーヒー1杯弱のカフェイン量(50〜70mg)が含まれているため、コーヒーとの相性最高ですが、カフェインの取り過ぎにはご注意を。
▷ 京都のとあるホテルの屋上に置かれたポップな色合いの分電盤。と思いきや、扉を開けるとそこにはコーヒースタンド「見晴らし珈琲」の姿が。この箱は厨房機器を収納できる家具となっており、ホテルの屋上空間のアップデートを目的にデザインされたそうです。
What We're Drinking
今週のコーヒー
ROSA COFFEE
宮崎
宮崎県のロッサコーヒーの焙煎所として2021年にロッサ焙煎所をオープンしました。 文化財である古民家をリノベーションし、1965年製オールドプロバットと2020年製プロバット12kgの2台で様々な焙煎をしています。 店舗の目の前は、楠並木通りがあり。 四季を感じながら、四季に合わせた焙煎を心掛けています。
生産者:Tasfaye Degaga
生産地域:エチオピア オロミア州グジ県シャキソ村(地図)
品種:ウォリチョ、クルミ (約50:50の割合)
精製方法:ウォッシュ、マウンテンウォータープロセス(デカフェ処理)
テイスティングノート:デカフェとは思えないぐらいコーヒーの風味が素晴らしいです。 南の島の黒糖を食べた時の様な複雑味と甘さ、程よくフルーティーな酸味も感じます。 焙煎度合いはエスプレッソでも使える様に深煎りにしています。 エスプレッソにしても黒糖を感じミルクとの相性も良く、どのシーンにおいてもバランス良い豆だと思います。
編集長のコメント:
ニュースレターで実は初めて登場するデカフェ。カフェインの除去は「Mountain Water Process(マウンテンウォータープロセス)」で行っているそう。科学的な溶媒を一切使用せずに、コーヒーの持つ本来のアロマやフレーバーを保持しながら、ケミカルフリーに安全にカフェインを除去するシステムです。テイスティングノートにもあるように深煎りのコーヒーでしたが、カカオニブのかかったベイクドアップルを食べているような、ビターなロースト感とフルーティな酸味の絶妙な掛け合いが印象的。そして深煎り特有のねっとりと感じるような甘さは、デーツを思い出させてくれます。いちじくもチラリと頭に浮かびました。不思議と重たさをあまり感じず、冷めても青リンゴのようなジューシーさがあります。これがデカフェかぁと驚きながら、エスプレッソも飲んでみたいなと思うのでした。
Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち
アーティスト:
進士 三紗 ウェブサイト|Instagram
プロフィール:
京都市立芸術大学美術学部油画専攻を卒業後、関西を拠点に画家・フォトグラファーとして活動を始める。常に形を変え続ける自然をモチーフに作品制作に取り組む。ギャラリーでの展示を行うなど作家活動をする傍ら、コマーシャルやエディトリアルなどでクライアントワークも行っている。
最新の掲載記事:
Standart Japan 第18号 『ボスでいるということ - Yuko Itoi』
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
『香港日誌』 児玉 浩宜
高円寺にある中古カメラ店カンフーカメラの店主、児玉 浩宜さんの手記が収められたZINE。2019年に始まり、一時は香港市民の4人に1人以上が参加したとも言われる民主化デモの様子をカメラに収め続けた児玉さんが綴る現場の様子は、緊張感が漂いつつも悲壮感には支配されておらず、自由を守るために闘う市民たちの姿に勇気づけられます。そしてこのデモを対岸の火事のように捉えてしまっていた自分の想像力の欠如を指摘されているような気持ちになりました。
現地の様子をすべてフィルムカメラに収めていた児玉さんが、海外通信社のカメラマンから「フィルムカメラなんかで撮れるの?」と声をかけられるシーンでは、同じ現場にいるとはいえ、ほぼ無限にシャッターを切れるデジタルカメラと、柔軟性や撮影枚数、連写能力に制限のあるフィルムカメラの差が浮き彫りになり、(本当の理由は分からないものの)児玉さんの選択からは、逮捕をいとわずに自らの身体をもってデモに参加する市民への敬意が想像されます。また催涙ガスが漂う路上で、日本にいるお客さんからかかってきた問い合わせの電話に応える場面は、世界中が繋がりあった現代だからこそ発生しうる断絶や壁のようなものを象徴しているように感じられました。
結局、私も児玉さんの文字や写真を通して、デモの一部を追体験しているに過ぎませんが、状況を俯瞰したニュースでは気づけない切迫感や市民ひとりひとりの熱が伝わってきて、身体性や近接性のひずみのようなものについて考えさせられるZINEでした。『香港日誌』は販売されていないようですが、当時の香港の様子は写真集『NEW CITY』や『BLOCK CITY』に収められているのでこちらをどうぞ。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
川上 めばえ かわかみ めばえ
北海道札幌市出身の22歳。 レコールバンタン東京校カフェバリスタ科で珈琲の基礎知識を学びながらMIAMIATokyoにてバリスタとして活動中。 休日は映画、小説、お菓子作りにハマってます。
セットアップ:
抽出器具:カリタウェーブ
豆量:16g
湯量:240g
挽き目:中細挽
湯温:91℃
抽出時間:2:3
0
手順:
- ペーパーをリンスしドリッパーにコーヒー粉をセット
- 40g注ぎ、40秒蒸らし
- 真ん中から回しながら40g注ぐ
- 落ち切り後また40g注ぐ
- これを240gまで繰り返す
ポイント:
しっかりと満遍なくお湯が行き渡るように間を埋めるようにしっかりとクルクルとお湯を注ぐ。
コメント:
私にとってコーヒーはすごくすごく平和なものだと思っています。背景や文化が違ってもコーヒーが好きという思いが人を繋いでいき、生産者からロースターまで全ての人の愛を受けてできたコーヒーをこれからも沢山の人に届けて行きたいです。 コーヒーを美味しく淹れるコツは''誰かを想って淹れること''と''誰かに愛情込めて淹れてもらうこと''!
今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第19号スポンサーのTYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、カラベラコーヒー、Toddyのサポートでお届けしました。
LOVE & COFFEE
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)