#94: マグネット、強度試験、コーヒー

#94: マグネット、強度試験、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

ようやく読者の皆さんの元に最新号のStandart Japanが届きはじめているようですね。SNSを通じて皆さんの声が聞こえてくるようで、この数ヶ月の努力が報われたような気持ちになります。まだこれから読み始めるという方も多いかと思いますが、ご感想聞かせてくださいね。

↓ハッピーサブスクライバーたち✌️👀

今週は、Standart全体のレビューミーティングがありました。最新号がリリースされた後、異なる国・地域に拠点を置くチームメンバーが英語版の最新号を受け取り、配送から読書体験までを総括して評価するための時間です。

記事に関する気づきや疑問、ビジュアル面やレイアウト、配送状況や雑誌の手触りなど、それぞれが感じたこと、体験したこと、考えたことをざっくばらんに話し合いました。こういった時間から色んな学びがあり、新しいアイディアが生まれるので、Standartの読書体験を少しでもより良くするためにとても大切な時間になっています。

また、皆さんから毎号いただくTrustpilotレビューもレビューミーティングで参照し、フィードバックを誌面作りやサービスの向上に役立てています。最新号の配送後、しばらくするとメールでレビューのお願いを毎号行っているので、お時間ある方はぜひ率直なご感想お聞かせくださいね!

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi



 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

火種は一杯のエスプレッソ

先日イタリア・フィレンツェのコーヒーショップで、ある大事件発生しました。エスプレッソの価格を知らずに頼んだ顧客が2ユーロ (約270円)の料金に憤慨して警察を呼び、同店は価格表示義務を怠ったとして1000ユーロ(約13万5000円)の罰金を科されたのです。ちなみに、QRコード読み取り式のデジタルメニューには価格が記載されていました。

「被害」のあったお店は、イタリアで3度もバリスタチャンピオンの座に輝いたフランチェスコ・サナポ氏率いる有名ロースター「ディッタ・アルティジャナーレ(Ditta Artigianale)」。しかも問題のエスプレッソは、メキシコの小規模農園で高地栽培された、シングルオリジンのデカフェだったそう。イタリアではこれまで、エスプレッソ1杯1ユーロ (約135円)が暗黙の基準価格となっていたものの、近年のコーヒー価格上昇を背景に、約70%のバールが値上げを実施。Ditta Artigianaleも例外ではなく、オープン当時から高いと言われていたエスプレッソの価格1.5ユーロ (約202円) を、現在の2ユーロに値上げしました。以前のニュースレターの中でも、イタリア国民がエスプレッソの値上げに対して怒りを露わにしていることを紹介したとおり、慣れ親しんだ価格とのギャップが今回の事件の火種になったと推測できます。

サナポ氏は、「(値段表示義務の)法律を変えないと、国内の大半の飲食店が罰金被害に遭う」と、自身のInstagramで主張。 メディアとのインタビューでは、エスプレッソを1ユーロで提供すると、コーヒー農家が十分な賃金を得られず、プロフェッショナルなサービスも維持できないと訴えています。

 

気になるニュース

▷ ベトナム農業・農村開発省が、2025年までに計10万7000ヘクタールにおよぶコーヒー農園で植え替え・接ぎ木を行うと発表。実施後には、コーヒー農家の1ha 当たりの所得が約1.5〜2倍増加する見通しです。

▷ サウジアラビア政府が100%出資する公的投資基金 (PIF) が、国産コーヒーの推進を目的にコーヒー企業を設立今後サウジアラビア産コーヒーのサプライチェーン全体を支援し、10年間で収穫量約8倍増を目指します。

▷ スターバックスがNFTを活用したロイヤルティプログラムの導入を発表。今年度末には最初のコレクションが公開予定で、NFT保持者のみがアクセスできるコミュニティの創造などが検討されています。

▷ Acaiaが今夏に新たなグラインダー「Orbitを発売予定。電子スケールLunar 2021と連携すると、挽きたい豆の量に合わせてグラインド量を調節できるとのこと。マグネットで手軽に装着できるのも魅力です。

▷ 現在Comandanteが開発中の遠征用グラインダー「X25 Trailmaster」。先日その強度試験の様子が、Instagramで公開されました。思わず見てるこっちが痛くなる(価格を考えるとなおさら)ほどの頑丈さです。

物足りないあなたへ

物流の混乱は未だ終わりが見えず、世界で稼働している約9,000艘のコンテナ船のうち、約2割が寄港待ちの状況、その内の3割が中国沖に停泊しています。ビーンフリーコーヒーを展開するVoyage Food が、シリーズAラウンドで約46億円の資金調達に成功石谷さんと井崎さん、バリスタチャンピオンおふたりのお茶目なやりとりに思わずにんまり。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 


COFFEEMAN good 青森(地図

青森市の街中にひっそりと佇む、小さなコーヒースタンド・ロースター。青森市出身の店主と、横浜市出身の妻の2人がお店を営んでいます。地元の方をはじめ、県外や海外から青森を訪れる方も多く、1杯のコーヒーを通じて緩やかな繋がりが生まれる、街のコミュニティスタンドのような場所になればいいなと思っています。
コーヒーは浅めから深めのローストまで幅広く取り揃え、Q Graderの店主が素材を厳選して少量ずつ焙煎。丁寧に抽出しています。様々な食材とスペシャルティコーヒーを合わせた季節のドリンクも人気があり、『あおもりカシスとオレンジのコーヒートニック』や『津軽味噌キャラメルのカプチーノ』など、様々なオリジナルドリンクも提供しています。

 

生産者: Diego Samuel Bermúdez

生産地域コロンビア カウカ県ピエンダモ(地図

品種ゲシャ(ゲイシャ)

精製方法
ダブルアナエロビック ウォッシュト

テイスティングノート
ジャスミン、ピーチ、ティーライク、ロングスイート

編集長のコメント:

甘い香水の香り。ふっと鼻先をかすめた金木犀の優しい香りに思わず体の動きが止まります。アナエロビック精製されたコーヒーでたまに遭遇する独特な香り。繊細で甘く、どこか切ない香りがお湯を注いだ瞬間にあたりを漂います。香りだけで心が落ち着いていくのがわかります。はやる気持ちを抑え、スプーンでゆっくりと掬い上げた液体を啜ると、金木犀の香りが鼻に抜け、口の中には甘さの強い桃のフレーバーが広がりました。緑茶のようなニュアンスも。数年前の夏に甲府で食べた、上品でとても甘いのに味わいにキレがあり、フレーバーのメリハリが最高に素晴らしかった桃が頭をよぎりますさらりとした口当たりではなくしっかりとしたボディと質感があり、粘質を感じる甘さがあります。とても好みの焙煎度合いで、「あぁ、これは、、美味しい。」思わずそんな声が漏れ出てしまうくらい。飲み込んだコーヒーからは、小学生の頃によく食べていたさくらんぼ餅の味がしました。口いっぱいにあの味を味わいたくて、当時はついつい爪楊枝で何個も突き刺して食べてましたが、このコーヒーも何口も飲んでいたらあっという間になくなっていました。素晴らしいコーヒーでした。ごちそうさまです!


Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち

アーティスト: 

ジョシュア・スティーブンス InstagramTwitter

プロフィール:

半ノマド生活を送るフォトグラファー兼ライター。米国出身、イタリア(シチリア島)育ち。現在はバンコクを拠点に、日中はポッドキャスト『FIlter Stories向けにバンコクのコーヒー史に関するエピソードの制作に取り組みながら、市内のライフスタイルマガジン『Koktail』向けに近隣諸国のビーガン食事情について執筆中。夜はバンコクを舞台に、ネコや中国屋台、夜な夜なセパタクローに興じる地元の移民労働者の姿を写したフォトエッセイの制作に勤しむ。著書に『The Dogwalker』(Melville House, 2015)。

最新の掲載記事:

Standart Japan  第18号 「バンコク」 

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

北海道と京都と その界隈

北海道在住、京都好きのデザイナーと編集者が発行するリトルプレス。先日、栃木県の那須塩原市に行った際に訪れたアンティーク店タミゼの店頭で見かけ、大胆なグラフィックと新聞のようなつくりに惹かれて第14号(2021年4月発行)を購入しました。中身はというと、道民が慣れ親しんだ地域のおやつのつくり方や食べ方、京都の街角で見つけた看板の写真、両地域に住む人が書いたエッセーなど、極めてニッチかつローカル。ただそのローカルフォーカスゆえに、関係性が希薄に思われる北海道と京都との間に不思議と繋がりが見えてくる気がし、編集の妙が味わえます。幼少期、香川県に住んでいた頃、母の本棚から盗み読んでいた『恐るべきさぬきうどん』のことを思い出しつつ、地方紙の普及率低下が叫ばれて長いなか、情報だけでなく情緒を発する媒体という貴重な存在について考えさせられました。



Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

阪村 菜々子

初海外でオーストラリアへ。メルボルンで、それまでは全く興味がなかったコーヒーやカフェ空間に魅了され、バリスタを志す。夢叶い、約4年程滞在。その後、ノルウェー/オスロへ渡欧し1年間滞在。JAVA,MOCCA,KAFFAにてコーヒーに携わる。現在は、東京都北区王子に位置する apollon にて、マネージャーとして日々奮励中です。

5 questions

今気になっている問いは?

【誰かに淹れてもらうコーヒーは何故こんなにも美味しいのか】
自分で淹れて飲むコーヒーよりも、誰かに淹れてもらうコーヒーの方が数倍美味しい。仕事中も、スタッフに淹れてもらう賄いコーヒーが一番美味しいんです。みなさんも感じたことはないでしょうか?自宅で淹れて楽しむのも良いのですが、やっぱり誰かに淹れてもらうコーヒーが美味しくて沁みます。

お気に入りの場所は?

【とあるカフェのドア寄り壁側の席】
定期的に行く、とても好きなカフェがあります。そこは、全てを忘れて時間の許す限りリラックスできる場所。正午頃には、そこの席に陽の光が差し込み、何とも言えない素敵時間を過ごせるのです。
職業柄なのか普段、カフェへ行くとどうしても店員目線でお店をみてしまう癖があるのですが、ここのお店だけはソレがなく、純粋にまっさらな気持ちでカフェを楽しむことが出来る、私にとって特別な場所。

譲れないこだわりは?

【イヤーカフは必ず右耳に】
この質問がとても難しくて、というより、譲れないこだわりというものがなかなか見つからなくて。ありそうでないですね、、絞り出した答えが、〈イヤーカフは必ず右耳に〉でした。理由は何故だかわからないのですが、左耳に着けるとソワソワしますし、右耳でないと落ち着かないんです。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

【初めて雇ってくれたカフェのオーナー】
当時の感謝を伝えながら、一緒にゆっくりとコーヒーを味わいたいです。あの頃の楽しかった気持ちが、今も私がコーヒーを続けている理由のひとつだと、伝えたいです。

とっておきのレシピは?

【素パスタ】
イタリア人の友人に教えてもらった究極のズボラ飯です。具はなし。細めのパスタを茹でて、塩とオリーブオイルで味付けして終わり。もし、冷蔵庫にパルメザンチーズがあれば仕上げにふりかけると、良き。これがめちゃくちゃ美味しいので、ズボラしたい日は是非。

 

Fancy a refill?
編集後記 

最近は旧友たちとの嬉しい再会ラッシュ。たまたま2年以上も会っていない友人たちからの連絡が続き、近況報告や昔話に花が咲きました。はじめはどこか緊張感がありつつも、心の奥底は終始リラックスしている、そんな不思議で豊かな時間が最高でした。

特に印象的だったのは、自分が過ごしてきた2年とは全く別の時間を旧友たちが過ごしたという実感でした。ものすご〜く当たり前のことなのですが、かつて同じ場所で過ごした仲間たちが、今は別々の場所でそれぞれの人生を歩んでいることを目の当たりにすると、スッと視界が広がった感覚があったんですよね。多分それは、自分が自分自身を固定的な価値観や時間軸で縛っていたことへの気づきであり、例えるなら大きな背伸びをした直後みたいな感じです。知らぬ間に背負っていた肩の荷を下ろしたような感覚で、改めて友人の存在は偉大だな〜としみじみ。

何かに夢中に打ち込むことも大切にしつつも、手ぶらでフラッと出かけるような心の軽さも大事にしたいです。改めて最高の友人たちに感謝。自分から誘うのは苦手なので、引き続きお誘いお待ちしてます。

Takaya

 


今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?

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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第20号スポンサーのFAEMA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAProbatセラード珈琲MiiRのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)