おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
無事に通関を終え(雑誌は香港から、豆はフランスから!)、Standart Japan第20号が東京の倉庫に到着しました。GWで物流の遅れがあるかなと心配していましたが、予定通りいよいよ明日〜明後日から全国へ発送を開始できそうで、ようやく少し胸を撫で下ろしています。
でも、発送を完了して、皆さんがSNSやメールなどで到着したよ!と教えてくださる瞬間が一番安堵する時です。もうちょっとだけ待っていてくださいね。
今回最新号と一緒にお送りするコーヒーを提供してくれたパリ発Belleville Brûlerie (ベルヴィル・ブリュルリー)の共同オーナーであるDavid Flynnさんよりメッセージが届きました。また、BellevilleのヘッドロースターであるMihaelaさんが、今回お届けする豆のおすすめ抽出レシピを教えてくれました。ぜひチェックしてみてください。
思えば、2013年にパリに行った時、Davidさんが以前立ち上げたTelescopeというスペシャルティコーヒーショップに行ったことがありました。その時の旅では、あまり美味しいコーヒーに出会えていなかったので、コーヒーとクロワッサンを食べながらパリで美味しいコーヒー屋さんに出会えて嬉しかった記憶があります。その時はもうすでに経営から離れていたよう(?)ですが、こうして巡り巡ってご一緒することができ、感慨深いです。
付録のコーヒー、楽しみですね! 僕も自宅に届くのを皆さん同様に楽しみにしています。到着したら、ぜひSNSやメールで教えてくださいね。ご感想なども大大歓迎です
それでは今週も良い週末を。
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
新たな兆しは麹菌
2006年には日本の国菌に認定され、食に限らず医療品など幅広い分野での活用が期待される「麹菌」。なんと現在はコーヒー業界でも、その存在が注目を集めているのだそうです。Perfect Daily Grindのこちらの記事では、「麹発酵コーヒー」の新たな可能性についてまとめられています。
きっかけは2021年フィンランド・バリスタ・チャンピオンのパーヴォライネン氏が、競技会で使用したコロンビア産の麹発酵コーヒーでした。数年前、パーヴォライネン氏はコーヒーコンサルタントのフェラン氏、大阪の種麹専門店である樋口松之助商店に協力を仰ぎ、麹発酵コーヒーの開発を開始しました。その際、コーヒーチェリーごと麹菌に漬け込まなければならないこと、麹菌のデンプン分解作用によってより重厚なマウスフィールが生まれる(特にコーヒーのボディがクリーミーで丸みを帯びる)ことなどを発見したそうです。麹菌の培養には時間や温度の管理が不可欠ながらも、作業自体にはそこまで手間がかからず、カップスコアが1~2点アップすることから、世界中のコーヒー生産者にとって大きな可能性を秘めた精製方法だと期待が寄せられています。
またコーヒーの生産地域で米が栽培されている場合、米麹を用いることで、麹発酵がより安価で身近な発酵方法になり得るとの提案も。現在パーヴォライネン氏は、2022年ワールドバリスタチャンピオンシップに向けて麹発酵コーヒーの更なる改良を進めており、今後は競技会を通じて麹発酵コーヒーの認知拡大を目指していくそうです。
気になるニュース
▷ 現在ベトナムのコーヒー生産者たちは、農薬・燃料費高騰の影響で、収益性の高いアボカドやドリアンの栽培を強化しています。これがコーヒー栽培の投資削減につながり、来シーズンの生産量は前年比10%減となる可能性も示唆されています。
▷ 先日ノルウェーで、世界初の自律式電気コンテナ船「Yara Birkeland」の命名式が開催されました。年間トラック4万台の積載量に相当するCO2排出量の削減が見込まれており、今年中にノルウェー国内での肥料輸送時に使われ始める予定です。
▷ Nespressoの工場に送られたコーヒー豆のコンテナから、500kgものコカインが発見されました。スイス警察によると、その総額は約69億円に相当するとのこと。幸いコーヒーの品質への影響はないそうです。
▷ ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いていますが、ウクライナへの人道支援を目的としたコーヒー豆セットの販売を、山梨県の自家焙煎店6店舗が企画しています。利益は全額寄付されるそうです。
▷ とある調査によると、2021年度米国では合法大麻産業がスターバックスの北米総売上額を5000億円以上も上回ったそうです。また前年成長で見ても、スタバを上回っているとのこと。そもそもコーヒーが合法大麻の比較対象になっている点も興味深いです
物足りないあなたへ
2022年ワールド・エアロプレス ・チャンピオンシップの決勝戦の開催地がバンクーバーに決定。コーヒーブランド「Lavazza」がアーセナルFCと連携して、スタジアム周辺の地元コミュニティの若者向けにバリスタトレーニングを提供。ハリオからお茶用ドリッパー「茶茶ドリッパー・ブーケ」が発売されました。
What We're Drinking
今週のコーヒー
G☆P COFFEE ROASTER 東京(地図)
東京初台の路地裏にひっそりと佇む深煎り専門店。 苦味の中の甘みを追求した深煎り珈琲が自慢。
生産地域:インドネシア スマトラ島 リントン地区(地図)
品種:ティピカ
精製方法:スマトラ式
テイスティングノート: マンデリン トバコ。深く、深く、さらに深く。独特な風味とガツンとくる苦味。アーシーでスパイシー、エキゾチックな珈琲。マンデリンを飲むとつくづく感じる。珈琲とは、大地から生まれた自然の恵みなのだと。
編集長のコメント:
インドネシアのスマトラ島側のコーヒーは初登場。そして久しぶりのガツンとくる深煎りでした。艶々と濡れているようにも見える美しい豆を挽いてお湯を注ぐと、きな粉や大福のような甘い香りが立ち上ります。スプーンにすくい上げた黒々としたコーヒーを啜ると、一瞬すっと入ってきたかと思うと、目を大きく見開くのと同時にドカンと広がったのは質の高い100%カカオチョコレートのようなワイルドで複雑なビターフレーバー。まるで焚き火に当たっているような、スモーキーな味わいがたまりません。すぐに砂糖のような甘さが追いかけてきます。キャラメル?いや、これはコーヒーヌガーのよう。タバコや胡椒のようなスパイスのニュアンスもあります。そして、このコーヒーの1番の特徴は、その重低音が鳴り響くような長い余韻。びっくりするほど長く続きます。一口二口と飲んでいくと、さらにそれはどんどん反響して増幅していくよう。深淵が広がり、体がどこかに沈んでいくような感覚。温度が下がってくると、まろやかなテクスチャーを感じられるようになり、水羊羹を思い出しました。……30分後。まだ感じるフレーバーの余韻。不思議な心地よさは、サウナの後のソレに似ているなぁと感じました。なんでこんなに甘く感じるんでしょう? 本当に美味しかった。ごちそうさまでした!
Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち
アーティスト:
ルイス・オティス ウェブサイト|Instagram
プロフィール:
バルセロナを拠点にイラストレーター、アニメーター、アートディレクターとして活動中。主なクライアントに、Apple、El País、Die Zeit、Culture Trip、 Fast Companyなど。
最新の掲載記事:
Standart Japan 第17号 「燃えさかる問い: 謎多きエスプレッソマシンのオリジン」
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
『5X5 ZINE』
イラストレーターの小川哲さんを中心に制作される季刊の音楽ガイドZine。昨年の東京アートブックフェアをきっかけに出会いました。毎号3名のゲストセレクターと小川さんが、ジャンルや新旧、メジャー/インディーの枠にとらわれず、その号のテーマに沿った16枚のアルバムをイラストと文章と共に紹介していきます。自分が過去に購入した号だと、『for Morning』、『Piano』、『SOUND LINE 2000-2009』など、手にする側が直感的に選びやすいテーマながら、毎号未知なる音楽との出会いが詰まった一冊となっています (未知すぎて世界の広大さを感じることもしばしば) 。セレクターの言葉と共に新しい音楽に没入するひとときは、ストリーミング上でリコメンドされた音楽を聞くのとは質感の異なる、「出会い」を感じられる瞬間だと個人的に感じます。また毎号小川さんが手がけるイラストでは、5X5のマス目を用いてアーティストのポートレートやアルバムジャケットを表現。幾何学形でシンプルな構造ながら、バリエーションに富んだ表情がとても愛らしく、絵本を読んでいるかのように次のページをめくりたくなります。自分用にはもちろん、「このテーマならあの人に」と、大切な人への贈り物にもオススメです。
先日たまたま入った高円寺のAmleteronというお店で、持っていなかった5X5 ZINEを発見しました。即決してレジに持っていくと、なんとその号のセレクターの一人が対応してくださった店主の方であることが発覚。まさか過ぎる偶然の出会いに感謝。今度お店に伺った際に、アルバムについてお話できたらいいなぁと思っています。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
小池 翼(夫)/ 小池 綾(妻)
大分県大分市出身。高卒で工場勤務を3年後、ワーキングホリデーでオーストラリア・メルボルンへ。海外特有のバリスタとお客さんの距離感の近い接客に魅了されバリスタとして働く。管理栄養士でもある妻の綾は同時期メルボルンのカフェのキッチンで働く。2021年9月に夫婦で朝食とスペシャルティコーヒーに特化したカフェSEBASTIAN COFFEEを大分市の郊外にオープン。
5 questions
今気になっている問いは?
(綾)「今海外に行くなら何をしたい?」
またオーストラリアに行きたいね、来年あたり行けるかな?と、この頃夫婦で話すのですがお店を始めた今、行けるとしたら何をしたいかなー?と良く考えます。もちろんカフェ巡りは欠かせないのですが、その他には? これまでどちらかというと行き当たりばったりな旅ばかりしてきたのですが、こういうこと勉強したい!と目標を立ててリサーチして出発するのも有意義なんじゃないかなと、日々あれこれ妄想しています。
お気に入りの場所は?
(翼)「明野アサヒ温泉の内湯」
大分の良いところはどこでも安く温泉に入れるところなのですが、ここは小学生の頃から父と通っていた温泉で、幸い妻も気に入り今では週3.4で通っています。毎日の営業の疲れがぶっ飛びます。心身共に健康である事が第一、といろんな飲食業の先輩方に言われてきたのでそれは心掛けるようにしています。その一つが明野アサヒ温泉ですね。
譲れないこだわりは?
(綾)「怖い話は見ない、聞かない」
子供の頃に興味本位で見た怖い映画がトラウマになって以来、どうせ後悔するからホラー系は絶対に見ないと決めています。映画の予告やテレビで流れてくる動画もいち早く気配を察知して目を瞑ります。聞くだけでも映像を勝手に想像しちゃうので、できれば耳も塞ぎます。周りが言う「そんなに怖くなかったよ〜」も絶対に信じません!
今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?
(翼)「当店に通ってくれてるお客さん」
普段はこちらは仕事、向こうはお客さんとして接客したりお話はしますが、隣で対等にコーヒー片手に話す機会って無いので他愛もない話がしたいです。好きな音楽、趣味、どうしてこのお店に通ってくれるのかとか。向こうも僕たちに聞きたいこととかあったら嬉しいですね。なんならコーヒーと言わず一緒にお酒が飲みたいです。
最近のやらかしたエピソードを教えてください。
(翼)恥ずかしい話なんですけど、よく行くラーメン屋さんに家の鍵を忘れて。数時間後帰ろか〜てなり「ハッ、無い…」と思い出して、ラーメン屋は営業終了してたんですが一応連絡してみようと思って電話したら、わざわざ店主が待ってくれてて急いで取りに行きました。本当に申し訳なくてたくさん謝って受け取りました。そこから帰りにまた電話かかってきて何かと思えば「渡した鍵僕のでした!」って言われて、握ってた鍵をよく見たら全然知らない鍵で(笑)また戻って、すみません…いや僕もすみません…みたいな。今では良い笑い話ですね。
Fancy a refill?
編集後記
GW中に編集長のトシと2年半ぶりに再会しました。少なくとも週一回は動画通話で顔を見ているので久しぶりという印象はなかったんですが、変な感動がありました。
この感覚何かに似てるな……と思いながらもその正体には近づけず、彼と別れてからとある音楽を聴いたときにハッとしました。学生時代、長年音源やライブ映像を通して触れていたアーティストのライブに初めて参加したとき、僕の頭を支配していたのは音楽でもライブパフォーマンスでも、周囲に漂う汗の臭いでもなく、「そのアーティストが実在するんだ」という感動だったんです。目の前で肉体を持って動くトシを見た僕は(程度にはかなりの差があるものの)それに近いものを感じていたようです。
最近はディープフェイクやボイスクローンをはじめとした、視覚・聴覚のバーチャル技術が進化し、さらには味覚や嗅覚、触覚で感知する刺激さえ再現できるようになりつつあります。そう考えると、物質に宿るオーラ的なもの、ひいては未知なものにはメディアを経由せずに心を動かす力があるのでしょうか。少なくとも僕はそう信じたいんでしょうね。
Atsushi
今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第20号スポンサーのFAEMA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、TYPICA、Probat、セラード珈琲、MiiRのサポートでお届けしました。
LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)