#92: 歯ブラシ、市長、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

今日は、3ヶ月に一度のとっても嬉しいお知らせ。いよいよStandart Japanの5周年を記念する第20号のリリースです🥳  今月中旬ごろから全国への一斉発送を予定しているので、いつものように到着を楽しみにしていてもらえると嬉しいです!

今号では、生産国におけるジェンダー不平等解消に向けた取り組みついてや、イタリア・フィレンツェでバリスタとして活躍する山田 藍さんの物語、日本で生まれ育ちイスラム文化を発信するクリエイターのラハマリア・アウファ・ヤジッドさんのインタビューなどを掲載。異なる文化や考えに触れることで、新しい価値観への気づきがあるはずです。

特集記事は、歴史の片隅に追いやられてしまったコーヒーの真の成り立ちを見つめ、脱植民地化を目指す「コーヒーの歴史の脱植民地化」。植民地主義の搾取的システムに立脚したコーヒー貿易が何世紀にもわたって続いた結果、実は今日でもその多大な影響を業界の構造や性質に見て取ることができます。過去の過ちを正すために今私たちにできることとは何でしょうか?

とはいえ、コーヒーの歴史や不正義は一つのエッセイだけでは到底語り尽くせるものではありません。別の記事では、シンプルな3つの波に例えられることの多いコーヒー業界の発展の歴史にも新たな光を当て、これまでとは異なる視点から歴史を紐解いていきます。

フォトエッセイでは、若年層のスタッフが多いこのコーヒー業界で、お客さまに喜ばれ、憧れられる存在でありたいと願う5 人のベテランバリスタの生き様を、ポートレートを通してご紹介。そして最後には、スロベニアの首都リュブリャナへ、皆さんをお連れします。

いつものように、最新号をチラッと覗き見!

定期購読者の限定サンプルコーヒーは、今年日本に上陸したパリ発Belleville Brûlerie (ベルヴィル・ブリュルリー)。 ワイン造りから着想を得たという同社のシグネチャーブレンドChâteau Belleville(シャトー・ベルヴィル)を、今回特別にパリで焙煎してもらい皆さまにお届けします。コーヒーの詳細はこちらでチェック。お楽しみに!

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi



 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

素朴さとレジリエンス

オーストラリアで最も権威のある肖像画賞と言われる「アーチボルト賞」の今年度のファイナリストに、コーヒーと歯ブラシで描かれたセルフポートレート絵画が選出されました。作品を手がけたのは、クルド人難民のアーティスト、モスタファ・アジミタバルさん。The Gurdianの記事によると、アジミタバルさんは、母国での迫害を背景にオーストラリアに逃れたものの、約8年間も難民収容所やホテルで囚われの身となりました。当時の過酷な環境下で、心理的な平穏を求めて、手元にあったコーヒーと歯ブラシで絵を描き始めたのが、作品制作のきっかけだったと言います。

また拘留期間を終え、初めて本物の画材での作品制作に臨んだものの、すぐに元のコーヒーと歯ブラシを中心とした制作スタイルに戻ったそうです。アジミタバルさんにとって、コーヒーと歯ブラシという2つの画材は、素朴さとレジリエンス (回復力) を表しているとのこと。監禁時代と同じ画材を用いることで、囚われの状態を生き抜き、その後の人生が続いていることを作品内で表現していると語られています。今回アーチボルト賞の入選作品となった作品のタイトル『KNS088』は、監禁時代に政府から与えられた識別番号であることからも、作品に込められた当時の記憶が強く感じられます。

現在アジミタバルさんは、オーストラリアでチャリティ活動に参画しながら、作品制作を続けているとのこと。5/13にはアーチボルド賞の最優秀賞が発表予定です。

 

気になるニュース

▷ 米・NYのスターバックス・リザーブ・ロースタリーで、国内直営店18軒目となる労働組合が結成されました。現在米国全土で労組結成の流れが広がっており、4月初頭にはAmazonの物流倉庫で同社初の労組が結成。今後一部アップルストア店舗でも、投票が行われる予定です。コーヒー業界における労働組合の歴史については、こちらの記事チェック。

▷ アムステルダム中心部で、パンデミック中に許可されていたバーやカフェの追加テラス席の設置が禁止されることに市長は道路混雑による市民の生活への影響を理由としていますが、一部の飲食店らは市長の訴訟を検討しているようです。

▷ スコットランドの手挽きグラインダーメーカーKnockが、完全プラスチックフリーのAergrindを発売元々プラスチック素材を利用していたアーム部分のノブはウォールナット材に変更され、今年度中には他のオプションも追加予定です。

▷ 伊藤園がシルバースキン(コーヒー豆を覆う薄皮)を配合した紙ストローを開発グループ会社タリーズコーヒーの焙煎工場で生まれる廃棄物をアップサイクルしたこのアイテムは、5月より直営店・タリーズ一部店舗で導入予定とのこと。

▷ ストリートブランド「NEIGHBORHOOD」が、コーヒー器具メーカーカリタとのコラボ商品を発表。同じタイミングで、台湾発のブランドhxo design、魔法瓶メーカーTHERMOSとも、アウトドア利用を想定したコラボ商品を発表しています。

物足りないあなたへ

今年4月よりオーストリア全土で、電化製品の修理費の半分 (上限200ユーロ)が税金で賄われる制度が発足2020年にウィーン市が、衣類や電子機器、自転車などを対象に、上限100ユーロで同様の制度を実施した結果、35,000回以上の利用を通じてCO2排出量約850トンの削減に繋がったそうです。修理店での支払いのタイミングで減額される点も同制度の魅力となっています。世界的に進む「修理する権利 (Right to Repair)」の先行事例と言えるでしょう。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 


MICHELLE 埼玉(地図

私たちの店は“コーヒーロースター”であり“ベイクショップ”です。それぞれの専門店として、コーヒーと焼菓子を楽しむ文化がもっと根付いていくよう、地域の中で機能していけたらと思います。

 

生産者3500名18集落の生産農家(運営GREENCO)

生産地域ブルンジ カヤンザ県カヤンザ地区地図

品種
ブルボン

精製方法
ナチュラル

テイスティングノート
ブルーベリー、ピーチ、熟した果実の甘さ、ジャスミン、丸みのある口当たり、甘い余韻

編集長のコメント:

去年の3月(Th Weekend Brew #28) 以来となる久しぶりのブルンジでした。一口含んだ途端に分かる、酸と甘みのバランスの良さ。まるでしんと静まり返った口内にスルスルと線が伸びていき、その上を自信に満ちた様子で安定感のある綱渡りをするサーカス団員を眺めているよう。一瞬で惹きつけられ、舌の味蕾が逆立ちます。白い花や黒葡萄が浮かんだかと思うと、アメリカンチェリーのようなジューシーかつ凝縮した果実感を感じます。コーラっぽい甘さも。液体が喉を流れていった後に鼻に抜けていく感じが、ブランデーや果実を漬け込んだお酒を彷彿とさせてくれました。味わいは柔らかく、それでいてクリーンで、どこか安堵感を与えてくれるコーヒー。とっても美味しかったです。ごちそうさまでした!


Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち

アーティスト: 

ジョナサン・ピヴォヴァル ウェブサイトInstagram

プロフィール:

イリノイ州エルバーン出身のフォトグラファー。米国郊外に根ざすコミュニティや労働者の姿を写し出す。現在はNY・ブルックリンを拠点に活動中。

最新の掲載記事:

Standart Japan 第19号 「海を超えて」

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

消えた16mmフィルム(原題: Shirkers)


Netflixで何気なく予告を観て、「これは面白いはず」とどこか確信に近いような気持ちで観たドキュメンタリー映画、猛烈に当たりでした。シンガポール出身のサンディ・タン監督による、「青春 x ロードムービー x 謎解き」の要素を詰め込んだようなドキュメンタリー映画。2018年にサンダンス映画祭でプレミア上映されて、ワールド・シネマ・ドキュメンタリー監督賞を獲得した作品です。

監督であるサンディ・タンは18歳の時、映画学校の教師ジョージ・カルドナの勧めで、自らが脚本を書き主演を務める自主映画「Shirkers」の制作に着手することに。そこに友人二人(ジャスミンとソフィー)も加わり、完成していればシンガポールの映画史をガラリと塗り替えることになっていたかもしれない映画を撮影します。「完成していれば」という前置きで分かる通り、映画は完成しませんでした。というのも、彼女たちの青春の全てが注ぎ込まれたフィルムはジョージが持ち去り、それ以降彼女たちの前に彼が姿を現すことはなかったからです。激しい喪失感と怒りと疑問が彼女たちを襲います。失われた時間や傷ついた心を思うと胸がズキズキ痛むようです。彼女たちは幽霊のように付き纏う感情や記憶の断片を抱えたまま大人になりながらも、あの事件を忘れる努力をしてそれぞれの道を歩んでいました。が、20年後にフィルムが発見されたことで、彼女たちはさらなるミステリーを探る旅に出ることに!

途中、あまりに映画のような現実の話すぎて、「あれ、これドキュメンタリーだよね?」と何度も確認したくなる衝動に駆られます。少女たちは大人になり、こうして映画にならなかった幻の映画がドキュメンタリーという形で映画となったことで、作品としての魅力に多面性と奥行きができたように感じます。登場人物のキャラクターは個性的で、映像の色合いやカットも素晴らしいです。当時撮影されたShirkersの映像に映る彼女たちは若く、エネルギーに満ち溢れていて、眩しく輝いています。Shirkersの当時の映像を交えながら、90年代風のポップやアートを感じさせつつ、現代のミステリアスなドキュメンタリー展開に落とし込んでいく編集力に圧巻の一言。これは観なきゃ損です。



Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

永田 碧 a.k.a MiDORI

シドニーのカフェで勤務したことがきっかけでコーヒーにハマり、メルボルンへ移住。その後、メルボルンのコーヒーに魅了され、バリスタ、焙煎士、バリスタ講師として業界で9年間修行を積む。Cartel coffee roastersで焙煎士として勤務後、Founder coffee Co.で焙煎チャンピオンのAnne Cooperに師事し、メルボルンの焙煎大会で2位を受賞。現在は初心者のためのバリスタスクール、South of Japan Coffee Classをメルボルンで運営している。世界30カ国を旅した好奇心旺盛な性格。実は日本ではコーヒーが苦手だったタイプ。

5 questions

今気になっている問いは?

海外でバリスタになりたい夢がある人たちに対して、私ができる最善なサポートの在り方はどんなものなのか?
理由は、バリスタレッスンを開講する中で、その願望が実現するためにコーヒーのスキル意外でも大切なマインドセットを伝えていきたいと思うようになったから。

お気に入りの場所は?

ギリシャのサントリーニ島の北にある一面が白と青の町、Oia(イア)。断崖絶壁の古城から見る夕焼けを見た。そのひと時は、過去に経験してきた辛かった出来事が帳消しになった気持ちになって、「世界で一番幸せを感じてるなぁ」と思った!

譲れないこだわりは?

ファンデーションやベース化粧品は基本使わずほぼすっぴん生活。顔が重くなる感じがするから苦手。薬には基本頼らず、食べ物と自然治癒力を大切にする生き方。小さい頃からそれで育ってきて自分に合ってると思う!

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

大分の由布院で1日1組の温泉民泊をやってる幼馴染と宿の縁側で。メルボルンのフィルターコーヒーを片手に、一緒にほっこり時間を楽しみたい。

最近、何に感動した?

世界自然遺産のフレーザー島へロードトリップ。3週間、浜辺で年越しキャンプをした時、自然の美しさに感動した。砂浜の白さ、空の蒼さに魅了された。紺碧の海に沈む夕焼けに心が熱くなって涙腺崩壊した。感受性が豊かな方だと思う。

 

Fancy a refill?
編集後記 

先日、積読していた『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』を読み終えました。貧しい作家や詩人たちに食事やベッドを提供するパリの伝説の書店シェイクスピア・アンド・カンパニー。そこに偶然住み着くことになった元新聞記者の著者が、変わり者の店主や居候たちと過ごした数ヶ月の滞在経験をもとに執筆したノンフィクション作品です。ついつい持ち歩いて外で読みたくなるようなオススメの一冊です。

以前パリを旅行したときにお店に行っておけば〜と悔やんでいるとき、ふと現地のカフェ店主に言われた「There is always “next time” in Paris. (パリには"また次に"があるからね。)」という言葉を思い出しました。どんな文脈で言われたかは忘れましたが、仮に何かできなかったことがあっても、それは後々の楽しみになり得る、と考えてみるのも悪くないかも。

次回パリを訪れる楽しみができたということで。

 

Takaya

 


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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第20号スポンサーのFAEMA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAProbatセラード珈琲MiiRのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)

#92: 歯ブラシ、市長、コーヒー

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