#167: 発明品、世界史、コーヒー

#167: 発明品、世界史、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

Standart Japan最新号の全国発送が今週後半よりいよいよスタートしました。ひと足さきに雑誌が到着した読者の皆さんから、ハロー!と嬉しい声が届いています今日から数日間の間にポストに届く方も多いんじゃないでしょうか

定期的に刊行する雑誌は、数ヶ月かけて作ったものが世にでまわる頃にはすでに次の号に取り掛かっていることも多く、自分たちが達成したことを振り返り、改めて祝福することを忘れがちです。仕事でもプライベートでも、目の前にある膨大な'やるべきこと'に追われて日々を過ごしてしまうことが多いのですが、ふと立ち止まって振り返り、そこまで歩んできたことに対して自分自身や共に過ごしてきた人たちを賞賛することは大切だなと感じます。

雑誌が皆さんの元へ届き、たくさんの声が聞こえてくる3ヶ月に一度のこの時期、思う存分にその喜びを噛み締めたいと思います。皆さんの声が大きな励みになります。ぜひご感想など聞かせてください。

最後に、今回のサンプルコーヒーを用意してくれたHomeground Coffee Roastersが、おすすめの抽出レシピをご紹介してくれています。すでに雑誌とコーヒーが届いた方は、ご参考にしてみてください。そして、今回は2種類のコーヒーのうちどちらか一つが同封されているのでStandartコミュニティなどで他の読者とコミュニケーションをとって、お互いのコーヒーをシェアしてみるのも楽しいかもしれませんよ!

Homegroundの共同オーナーであるエリシアさんとホーミングさんからもメッセージが届いているので、こちらもチェックしてみてください。

それにしても、全国各地で週末は楽しいイベントが盛りだくさんですね。皆さん、よい週末を!

編集長 Toshi

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

コーヒー史の新たな景色

先日、米国の生豆商社ロイヤルコーヒーが、アラビカコーヒーの発展と地理的な歴史背景をまとめたポスターセットを発売しました。制作指揮を取ったのは、同社のラボ&テイスティング・ルームの教育ディレクターであり、『Green Coffee: A Guide for Roasters and Buyers(グリーンコーヒー:コーヒーロースター・バイヤーへの手引き』の著者でもあるクリス・コーンマン氏。「約2万年におよぶコーヒーの進化の歴史を網羅する」と述べる同ポスターセットは、アフリカでの発見から地域別のアラビカ品種の発展の歴史、そして今日のアラビカ・ロブスタ種の生産の現状までが、インフォグラフィックでまとめられています。

興味深い点の一つが、アラビカ種はアフリカでの発見後、中南米地域よりも先にアジアに広まっているということです。アラビカ品種の歴史を地理的な目線から紐解くことで、さらに奥深いコーヒー史と出会えるはず。現在同社は二つの形式(デジタル)でポスターセットを販売中。気になる方は是非チェックを。

 

気になるニュース

▷  非営利団体フェアトレード・インターナショナルが、オランダのテック企業とのパートナーシップを発表。来年のEUの森林破壊規制(EUDR)の施行後に必要となるコンプライアンス証明の発行に向けて、フェアトレード認証を獲得する協同組合に属するコーヒー・カカオ農園の森林破壊リスク特定を目指します。EUの森林破壊規制については、以前のニュースレターをチェック

▷ スペシャルティコーヒー協会の下部組織で、コーヒーの品質とコーヒー生産者の生活改善を目指すCQI(コーヒー品質協会)がポッドキャストをローンチ。コーヒーの品質に関する各回のテーマに沿って、コーヒー生産者との対話が収録されます。(配信は英語とスペイン語の二言語)

▷ 米TIME誌が選ぶ「ベストインベンション2023」が発表。コーヒー関連の製品だと、壁に取り付けられるピストンレバー式エスプレッソマシン「Superkop」、豆のグラインドから始まる自動コーヒー抽出マシン「エックスブルーム(XBloom)」などが選出されています。

▷ タンザニアのコーヒー研究機関が、干ばつ耐性を獲得した4つの新たなアラビカ品種の開発に成功気候変動に起因する干ばつ被害への対策として、2023/24年度の栽培期を目処に国内のコーヒー農家に配布される予定です。

▷ 移動式カフェならぬ、本当に自転車で移動しながらコーヒーを淹れてしまう猛者が現れました。これまでエアロプレスとポータブルエスプレッソメーカー「ナノプレッソ」での抽出に成功した模様。もし彼と道で遭遇し、コーヒーを注文する場合は、危ないので最初に自転車を降りてもらうようにお願いしましょう。

物足りないあなたへ

政府系ファンド傘下のサウジコーヒーカンパニーが、ジーザーン州にモデルファームを設立ネスプレッソの新たなブランドパートナーはデビッド・ベッカム

コーヒーイベント

▷ 滋賀:「Shiga COFFEE FES. 2023」が、11/18(土)〜19(日)に草津川跡地公園de愛ひろばにて開催予定!コーヒーにフード、雑貨にジャズライブまで内容盛りだくさんです!

▷ 茨城県:「つくばコーヒーフェスティバル2023」が11/18(土)〜19(日)に開催!

▷ 神奈川:「YOKOHAMA COFFEE FESTIVAL 2023」が11/24(金)〜26(日)に横浜ハンマーヘッド1F CIQホールにて開催!

 

日本各地で開催されるコーヒー関連のイベント情報を募集しています! Standart CommunityやInstagramのDMやメール(hello@standartmag.jpでぜひシェアしてください!

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

LUSH-COFFEE 東京(地図 

東京都足立区北千住に位置するArabica/Robusta Q グレーダーが監修した東ティモール専門のコーヒーショップです。東ティモールの集落単位のコーヒーをお楽しみいただけます。

 

生産者無し(集落内で集めており単一農園ではないため)

生産地域:東ティモール レテフォ ゴウララ村(地図) 

品種ティピカ、ハイブリットティモール種

精製方法ウォッシュト

テイスティングノート
レーズン、ドライベリー、ハーブ、ウォルナッツ、ベジテイティブ

編集長のコメント:

東ティモールのコーヒーはThe Weekend Brew初登場です。これまで何度か飲んだことはありましたが、あまり見かけることもないのでかなり久しぶり。綺麗な豆面の豆たちを眺めながら期待が高まります。挽いた豆にお湯を注ぐとナッツや爽やかな果実の香り。一口目は香りから想像していたカシューナッツのような味わいがあり、少し温度が下がるとレモンのような果実感が顔を覗かせます。レモンキャンディを思わせるような甘酸っぱさがとても心地いいです。味わいの中盤にはホクホクに蒸した大豆のような優しい甘さやコクを感じるようになり、ナッツのようなフレーバーは長い余韻に変わっていきました。これが東ティモールのコーヒーのテロワールなのでしょうか。毎日の朝の味噌汁を思い出す、素朴だけど体の中から欲してしまうような魅力があるコーヒーでした。飲んでみたい方はこちらから

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること


 

Standartの読者にはお馴染みの記事「シャウト!」。この記事ではコーヒーやカフェにまつわるモヤモヤをコーヒープロフェショナルを中心に叫んでもらっています。今回はそのコミュニティ版ということで、コミュニティメンバーにそれぞれがモヤっとすることを叫んでもらいました!

カフェのサービスやコーヒーに対するモヤモヤ、さらにはご自分に対するモヤモヤまで、それぞれの思いの丈をシャウト!叫んだら案外すっきりしたなんて言うコメントもいただきました🤲

コミュニティではあなたのモヤっとをまだまだ募集中💁💁‍♂️後も不定期開催しようと思うので、いつでも叫びに来てくださいね!

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

ハッピー・オールド・イヤー

無性にタイ映画が観たくなり、つい最近観たばかりの映画。ストーリーは、主人公のチュティモン・ジョンジャルーンスックジン演じる、スウェーデン留学から帰国したデザイナーのジーンが自宅のアパートを改装してデザイン事務所にするため断捨離をするところから始まります。ミニマリストを自称するジーンは、ものが溢れかえった自宅や自身の部屋にあるものをどんどん捨てていくのですが、友人からもらったプレゼントを捨てようとした時に、たまたまその場にいた友人から「あんた、私があげたこのCDも"いらない物”なんだ?」と気まずい雰囲気に。そこからだんだんと雲行きが怪しくなっていきます。さらには、家族を捨てて随分前に家を出た父親のピアノや、元彼から預かったままのカメラや当時の思い出が詰まったフィルムなども見つかり、いまは使っていないものにもさまざまなストーリーがあることに改めて気付かされていきます。そして断捨離が思うように進まなくなったジーンは思い出の品を元の持ち主に返すことにするのですが、そのプロセスを通じて、家族や友人や元彼を巻き込みながら過去と向き合い、さまざまな苦悩を経て成長する姿が描かれています。それにしてもジーンはなかなか自分勝手で、なんでそんなにミニマリズムに固執するのか理解に苦しんだのですが(文化的なものなのか、ただ単に断捨離がなかなかできずに部屋が散らかっている私には理解できなかったのか……)、ただ物を捨てれば過去の思い出や出来事、さまざまな関係性が清算されるということではない、というメッセージはとても共感できました。動いた心や記憶は、そう簡単には忘れ去ることができませんよね。東南アジア映画特有の静けさの中にある独特な雰囲気と湿り気、日本と似てるようで似ていない街並みの美しさが、素晴らしい映像美に集約されています。チュティモン・ジョンジャルーンスックジンの表情で伝える感情の変化も見どころの一つです。エンディングも予想に反してとてもいい終わり方で、余韻が長い映画でした。しとしとと降る雨の日の昼下がりにおすすめです。

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

阿部 由佳 (aka 火星人)

2000年、地球に着陸。大学入学後、Starbucks SHIBUYA TSUTAYA店での勤務を経てスペシャルティコーヒーの存在を知る。以来、アットホームなスタンドスタイルから、トップスペシャルティ専門店などジャンル問わず飛び込みもまれる。出席そっちのけで出勤したため、卒業の危機に瀕し、血迷ってフリーターになろうとしたが、無事に卒業し、雲南スペシャルティコーヒートレーダー(MOUNTAIN MOVER LTD)に就職する。  

5 questions

今気になっている問いは?

スペシャルティコーヒーはマグロみたい?
世間でスペシャルティコーヒーの認知が広まりつつあるいま、業界ではコーヒーの価格がかつてないほどに高騰しています。生産者にとって、高値で売れれば一攫千金です。しかし、高価なコーヒーを生産するには膨大なコストが必要であり、失敗するリスクも背負わねばならず、まるでマグロの一本釣りのようだと思いました。いつの間にか、「高いコーヒー=おいしいコーヒー」という固定観念が出来上がったように感じます。高いコーヒーの色眼鏡をかけると、素晴らしい品質であっても、相応な値段のコーヒーが見向きもされなくなってしまいます。生産者の生活を支えるのはゲシャなど費用と人手を必要とする品種よりも、安定して生産できる品種が大半です。私たちが、よりおいしいコーヒーを求めるほど、生産者の生活が不安定になるというスパイラルができてしまったのではと懸念しています。改めて美味しいコーヒーが飲めるのは、作り手の安定した生活あってのものだと、飲み手にも伝えたいです。
   

お気に入りの場所は?

道端とジム」
よくおっとりしているといわれますが、実は頭の中では、嵐のように思考が渦巻いています。じっと一か所にとどまっていると、深く考えこんだり、落ち込んでしまうので、筋トレとただひたすら歩くことで、自分を落ち着かせています。

 

譲れないこだわりは?

日課はのらねこさがし」
この世で最も愛しているのは猫です。毎日家を出てから帰宅の途につくまでずっとねこを探しています。彼らの存在に日々癒され、バイタリティをいただいています。自分の本能や直感に従いつつ、うまい具合に世の中を渡り歩く彼らのたくましさと柔軟さに魅了されています。

 

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

コーヒー生産者」
コーヒーを飲む場所はカフェやおうちが多いかと思いますが、私は現地で生産者の方と一緒にコーヒーを飲んでみたいです。以前、Abu農園のホセさんにゲシャのプロセス違いをサーブしていただく機会がありました。作り手と対面でいただくコーヒーは、おいしいでとどまらず、生産者のコーヒーへの熱量や愛情が伝わる体験で非常に感動しました。いずれは自分も、現地でチェリーの収穫からプロセスまで行い、私が焙煎したお豆を作り手の方とじっくり味わいたいなぁと夢見ています。

 

あなたのギルティプレジャーを教えてください。

「中華を食べる」
お野菜やお肉など素材の味が好きなので、料理は基本薄味にしていますが、時々ご褒美に激辛中華を食べに行きます。台湾に生まれたからか、猛烈に中華料理を求めて血が騒ぐ時があります。普段はコーヒー業務のため我慢していますが、お休みの日に四川料理や湖南料理など、地域別に狙いを定めて、涙を流しながらご飯を食べるのが幸せです。

Fancy a refill?
編集後記 

この前、「The Local Pub 竹の湯別館の常連の方々に誘っていただき、今話題のモルックに初挑戦。フィンランド生まれのモルックは、ーリングとビリヤードとダーツが合体したようなゲームで、戦略を練りながら身体を動かし、大人数でもプレーができてめちゃめちゃ楽しい。性別や年齢を問わず、いろんな人たちが一緒に遊べるインクルーシブな仕様もすごくよかったです。予想の3倍上をいく面白さでした、またやってみたい。

Takaya

 


今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?

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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第26号スポンサーのFaema、パートナーのPhilocoffeaVictoria Arduino x トーエイ工業株式会社BARATZA x BrewmaticOPTION-O x R&D ESPRESSO LABHeirroomのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi & Nanako)