#16: Oneness

#16: Oneness

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

Weekend Brew がスタートしておよそ4か月が経ちました。SNSが情報発信の主流になっている中で、ニュースレター(メルマガとも)という一見古臭いフォーマットがどれくらい受け入れられるのか、はじめは少し不安でした。

ですが、ニュースレターを読んでくれている方から、「日曜朝の習慣になっている」「国内外のコーヒー情報がまとまっていて助かる」「インスピレーションの源や英語の勉強になる」「全国のロースターやバリスタを知れて嬉しい」など、毎週たくさんのコメントをいただいて、コーヒーの魅力を雑誌とはまた異なる形でお伝えできているのかなと感じています。

以前、Standart JapanのEditor’s Letterで、「自分が共感できるカルチャーについて知り、そしてそこで尽力する人たちからものを買って支援することで、自らもカルチャーの一部となる」ということを書きましたが、毎週お届けするWeekend Brewがそのきっかけになれば良いなと心から思っています。

今週のStandart Japanは、次号の制作がほぼ完了し、まもなく印刷スタート。校了後の1週間ほどは少しリラックスムードで、一息つける時でもあります。読みたいと思っていた本や映画を見たりして過ごしています。リリース情報はまた近いうちに発表するので、楽しみにしていてくださいね。

そして明日26日まで、Instagramでプレゼントキャンペーンをやっています。大切なお友達をコメント欄にタグ付けしてもらえれば、抽選で3名の方にStandart Japanの13号をプレゼントします。誰かの1日をハッピーにしちゃってください!

編集長 Toshi

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

富は土壌から

スペイン語で「富める海岸」を意味するコーヒー名産国コスタリカ。小国ながらサステイナビリティを中核とした国策が世界で高く評価され、2019年には脱炭素化経済実現への取り組みによって国連の最高環境勲章である  UN Champion of the Earth を受賞。コーヒーに関してもICAFE(Coffee Institute of Costa Rica)を中心にNGOや海外政府と協力しながら持続可能なコーヒー産業の発展に努めるとともに、無料の農作支援アプリ「CR-CAFÉ」などコーヒー農家への支援も強化しています。
 
中でもコロナ下で発生したピッカー (コーヒーチェリーを摘む人)不足への対応は目を見張るものがあります。これまで同国ではピッカーの約70%が近隣国からやってくる季節労働者で構成されていたものの、国境閉鎖や移動制限によって十分な人手を確保できずにいました。そこでICAFEは国内のNGOと連携し、コーヒー生産に興味のある学生を貧窮農園に派遣するボランティアのピッキングプロジェクトを開始。この取り組みによって農家は生産過程で最もコストが高い人件費を今後の投資に回すことができ、若い世代はコーヒー生産に関する知識と経験を得られるというわけです。国民が自国を代表する産業の魅力に触れ、国内消費が増えればコーヒーの地産地消が促進する可能性もあります。このように官民一体となって国の土壌を作る姿勢が持続可能な産業の実現に必要なのではないでしょうか。
 
国内産コーヒーは遠い話のように聞こえますが、実は「ジャパニーズコーヒー」も存在します。沖縄県の安田珈琲は2016年に初の国産スペシャルティコーヒー認定を受けたほか、味の素AGFは2023年までに徳之島コーヒーを商品化すると発表しました。日本の新たな富、国産コーヒーにも目が離せません。

 

閉ざす国境、消えゆくフレーバー

今年、化学物質汚染を背景に日本と韓国でケニア産コーヒーの受け入れが拒否されたと報じられています。さらに以後3年間両国への輸出が禁じられたという情報も出ていますが、韓国のメディアでは7月に起きた受け入れ拒否以後、検査態勢が強化されたものの輸入制限は行っていないとされており、今後の展開を注視する必要がありそうです(現在のところ日本のメディアでは関連報道を確認できていません)。実は現在ケニアのコーヒー産業は下降傾向にあると言われています。共同組合のガバナンス問題や大企業の参入による農家の利益圧迫を背景に、80年代後半には約13万トンだった生産量が今日では4万トンにまで減少し、大多数の小規模農園では年間35キロ/本の生産能力に対し、実際の生産量が年間2キロ/本を下回るほどに落ち込みました。
 
しかし汚染問題は何も化学物質に限ったことではありません。この記事によると、近年ケニア内ではハイグレードの高品質コーヒーを狙った武装強盗が再び相次いでいるのだそう。盗まれたコーヒーは東ウガンダに届けられた後にNYの取引所で高品質のウガンダコーヒーとして取引されているケースが多く、その裏には政治・ビジネス界の大きな力が潜んでいると記されています。工場マネージャーによる汚職、子どもを巻き込んだ密輸など様々な社会問題がケニアのサプライチェーンの汚染を進めているのです。
 
また気候変動による長期の干ばつや不安定な降水量がコーヒー生産を難航させていることから、比較的栽培が容易なアボカド生産へと移行するコーヒー農家も現れています。世界で起きる様々な社会問題が今回私たちの前にケニア産コーヒーの危機を引き起こしています。消えゆく芳醇なフレーバーを守るべく、まず我々がこの現状を知ること、そして発信することが大きな一歩となるのではないでしょうか。

 

その他の気になるニュース

▷ アメリカのコーヒーチェーンPanera Breadの「飲むコーヒーサブスク」が大人気。月額$8.99 (約940円)で最短2時間おきに好きなサイズとフレーバーのドリンクを注文できる同サービスはコロナ下でも大きな話題を呼び、現在では有料購“飲”者が約50万人に達しています。

▷ 豪華なWCC (World Coffee Championship)のオンラインオールスターイベントが開催。コーヒー競技会の優勝者・ファイナリストたちが、毎週世界中からそれぞれのパフォーマンスをライブ配信で披露します。次回は日本時刻10月27日(火)11pm~のエピソード2。参加は無料ですが事前登録が必要なのでご注意を。

▷ コーヒーのオールスター旋風はNBA内でも。オールスター、MVP選出歴のあるマイアミヒートのJimmy Butlerはホテルの部屋で移動式コーヒーショップを展開。価格はサイズに関わらず$20と高額ですが、「オールスターによるオールスター価格のオールスターコーヒー」といったところでしょうか。

▷ 9月のブラジルのコーヒー輸出量が過去最高を記録しました。コンテナ不足が続いている一方で、9月は現地通貨のレアル換算で対前年比31.7%の売上増を記録。同国のコーヒー農家は対ドルのレアル急落に伴い、コーヒー輸出に対し積極的な姿勢を見せています。

▷ 朝一番のコーヒーはメタボリズムに悪影響を及ぼすという研究結果が発表されました。同研究では睡眠が阻害された後の糖の吸収率を朝食前にコーヒーを飲んだ、飲まなかった場合で比較。朝食前にコーヒーを飲んだ場合はその後の糖の吸収率に約50%もの変化を引き起こしたそう。謎解きは夕食後、コーヒーは食後が良いみたいです。

 

What We're Drinking
今週のコーヒー
 

Social Good Roasters

障がいのあるバリスタや焙煎士が活躍するロースタリーカフェを併設した福祉作業所。障がいの有無に関わらず、働く人の成長を一番に考え、1人1人が自信と誇りをもって働ける職場を目指す、ソーシャルグッドなコーヒー屋さん。

生産国:
ブラジル、コロンビア(トリマ・ASOPEP農協)、エチオピア(イルガチェフェ)

品種:
イエローブルボン、イエローカトゥアイ、カトゥーラ、カスティージョなど

精製方法:
ブラジル【パルプドナチュラル】、コロンビア【ウォッシュド】、エチオピア【ウォッシュド】

テイスティングノート:

シトラス、フローラル、ブラウンシュガー、チョコレート、ナッツ。
甘み・酸味・苦み、珈琲のもつ全ての要素が詰まっていますが、飲みやすくバランスの良さもさることながら、そこにはそれぞれの豆のもつ個性と深みがあります。口いっぱいに広がる甘みは、一度飲んだらくせになること請け合いです。ブラックはもちろん、ミルクとの相性も格別ですので、カフェオレやアイスコーヒーにもどうぞ。

編集長のコメント:

スプーンですくい上げたコーヒーを口元に持っていくと、オーブンから出てきたばかりのレーズンパンを頬張る瞬間のような香ばしさと果実感がほわりっと鼻に入ってきました。そのまま啜ると、思ったよりも軽めな口当たりでジューシーさがあり、しっかりとしたボディと後に続く甘みが心地いいです。特に個人的に大好きな、質感が少しざらりと舌に残る感じがたまりません。「うわぁ、ちょうどいい」と思わず漏らすくらい、バランスが整いまくってます。九州の人には馴染みの深い黒棒が頭に浮かびました。パッケージもかなり好みのデザインで、額に入れてずっと眺めていたくなります。


Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

Guji Freestyle - Bartholomew Jones
YouTubeウェブサイト

コーヒーブランドCxffeeblackのファウンダーであり、ヒップポップアーティストとしても活躍するBartholomew Jonesさん。Cxffeeblackは、本来であればコーヒー文化の発展と共に繁栄する「はずだった」アフリカにルーツを持つ人たちの文化を取り戻すため、コーヒーの起源から続く歴史を見直し、未来につながる社会的な変革を目指すソーシャルベンチャーです。具体的には、コーヒーやアパレルの販売、音楽活動やイベントなどで得た収益を黒人コミュニティに循環させるためのに事業活動を行っています。今週リリースされたGuji FreestyleのMVからも、コーヒーや黒人文化、家族やコミュニティへの愛を強く感じます。ちなみにBlxck Like Meもおすすめ。ウェブサイトにある「Cxffeeblackは、コーヒー農家と焙煎士と消費者が、値段が高過ぎるコーヒーを囲んでサイファーしているようなもんだ」というJonesさんの言葉からは、お互いをリスペクトしながらもそれぞれの想いを伝え合う人々の姿が見えてくるようです。 - Toshi


 
Jacob Collier deconstructs a Stevie Wonder classic
YouTube

その道のプロが何かについて熱く語っている姿って(たとえ話の内容を100%理解できなかったとしても)引き込まれるものがありますよね。この動画はイギリス出身のミュージシャンJacob Collierが、彼自身も大ファンだというStevie Wonderの「Sir Duke」という曲の魅力について色んな角度から語るというもの。「このコードがニクい」「この音が入るから曲にスパイスが加わるんだ」と嬉々として話す姿はもはや愛らしくさえ感じます。そして対象が音楽であれコーヒーであれ、知ることで楽しみの範囲が広がるということがとてもよく伝わってきます。 - Atsushi


Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

川本めぐみ

広島市内にある、KIRO 広島 THE SHARE HOTELS 1階「cicane liquid stand」メインバリスタ。 広島とコーヒーの窓口案内人。ジンジャエールを選んでいた場面はコーラにシフトするくらい、クラフトコーラを飲んでからコーラにハマり中。

セットアップ:

抽出器具:ORIGAMI ドリッパー
豆量:15g
湯量:210g
挽き目:中細挽き
抽出温度:92℃
抽出時間:2分15秒〜2分30秒


手順:

  1. ペーパーをリンス、ドリッパーを温める
  2. コーヒー粉を入れ、50gお湯を注ぐ(40秒蒸らし)
  3. 70g注ぐ(計120g)
  4. 2投目が落ちきったら90g注ぐ(計210g)
  5. お湯が全て落ちきったらカップに注ぐ

        ポイント:

        ▷ ペーパーフィルタはKalitaウェーブフィルタ155使用。
        ▷ 磁器製のドリッパーはしっかりと温めることで抽出中の湯温のブレが少なくなります。
        ▷ ORIGAMIドリッパーを使うと私の好きな薫り高く綺麗なコーヒーが表現できます。

        一言:

        広島を拠点に「mgm coffee」として活動中。店舗を持たないスタイルのフリーバリスタです。 美味しいコーヒーは空気が大事。 レシピも大事ですが良い空気の中で淹れることも重要です。 広島市内にご宿泊の際は是非KIRO広島へ。


        今週のThe Weekend Brew はいかがでしたか?

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        今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第13号スポンサーの Daterra、パートナーのトーエイ工業Swiss WaterDepartment of Brewlogy のサポートでお届けしました。

        LOVE & COFFEE✌️
        Standart Japan

        (執筆・編集:Takaya & Atsushi)