#14: 常識を見極める力

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

突然ですが、頭の中に科学者の姿を思い浮かべてみてください。——どんな姿を想像しましたか?

Draw-a-Scientist Test(科学者の絵を描くテスト)と呼ばれるこのテストからは、回答者が持つステレオタイプについて知ることができます。科学者の絵を描いてごらんと言われて描いた絵には、無意識的なバイアスが投影されるということです。もしかすると、白衣を着た男性の科学者を想像したのではないでしょうか。

なぜこの話をしたかというと、今週のはじめに調べごとをしていた際に読んだ記事と、以前Standartに記事を執筆してくださった大山崎 COFFEE ROASTERSの中村 佳太さんが一昨日ツイートしていたジェンダーステレオタイプに関する実体験がタイムリーにリンクしたためです。

Standartではこれまでコーヒー業界のジェンダー問題について取り上げてきていたものの、海外のケースをご紹介することばかりだったので、「男女ふたりでお店をしている場合、責任者は男性の方である」という偏見によく直面するという中村さんのお話は、改めてこの問題に関してコーヒーの文脈で考える良い機会になりました。

育ってきた環境や文化などの影響で、無意識的になんらかのステレオタイプを持つことはほぼ避けられません。前述の記事にも書いてありましたが、それを自覚して、自身の判断がその固定観念に影響されないように自問することが大事なのだと思います。

Team Standart Japan

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

社会の「シングルオリジン」を問い直す

10月1日の国際コーヒーの日、非営利団体の「1951 Coffee Company」が短編ドキュメンタリー映画「No Single Origin」のプレミアムオンラインイベントを開催しました。難民の雇用促進や経済的安定を目標にバリスタトレーニングを提供する同団体。この作品では 1951 Coffee Company CEO Doug Hewittさんと、トレーニングプログラムの卒業生3名へのインタビューを中心に、移民の国アメリカで難民や庇護申請者 (Asylum Seekers)が直面する苦悩が描かれるとともに、 教育や生活援助が保証され、人々の真の繋がりが育まれるコミュニティの重要性が訴えられています。
 
「移民の国アメリカ」の単一的(シングル)なイメージだけが先行し、その中で実際に暮らす移民・難民の人々の抱える問題が軽視され社会に分断が生まれているのではないか。SDGsの掲げる「誰一人取り残さない (Leave no one behind)」という視点に立ったとき、今日のスペシャルティコーヒーの中核とも言える「顔の見える」関係性、つまりトレーサビリティの重要性をより強く感じます。私たちコーヒーラバーがコーヒーを入り口に、日々社会との間に「顔の見える」関係性を深く築いていくことこそ、社会の変革の大きな一歩と言えるのではないでしょうか。
 
1951 Coffee Companyは「あなたの一杯のコーヒーが世界の誰かの人生を変えるきっかけになる」という啓発活動を行っており、日本から彼らの活動支援の方法として、募金やグッズ購入の他、現在「No Single Origin」のスクリーンホストを募集しています。是非この機会に応募してみてはいかがでしょうか。

 

何度 (で) 淹れても変わらないフレーバー

10月5日に発表されたSCA(スペシャルティコーヒー協会) のレポートによると、ドリップコーヒーの抽出に使用するお湯の温度は、最終的に出来上がるコーヒーの濃度(TDS)と収率が同じであれば、何度であろうがフレーバープロファイルにほとんど影響を与えることはないとわかったそうです。
 
実験では3種類の温度 ( 87℃, 90℃, 93℃)のお湯でコーヒーを抽出し、専門家が試飲・官能評価を行いました。また、それぞれのコーヒーのTDSと収率を揃えるため、粉の粒の大きさや抽出時間などは事前に調節されました。そして専門家がそれぞれのコーヒーを味わったところ、3つを区別できなかったそうです。つまり目的地(=TDSと収率)が同じであれば、そこにたどり着くまでの道(=お湯の温度)はあまり関係ないと言えそうです。

今回の研究は、SCAが関連研究団体のCoffee Science Foundationと取り組んでいる、抽出にまつわる3年間の研究プロジェクトの一環として行われ、今後は温度の差を広げた場合やコーヒーの種類を変えた場合の実験、さらにはコールドブリューを抽出する際の水温に関する研究なども考えているとのこと。

 

その他の気になるニュース

▷ SCAの新しいバーチャルイベントBLOOMが開催中。イベントはオーディエンス参加型の講演・パネルディスカッションで構成され、まだ10/14のメキシコ回 (スペイン語)、10/28のイギリス回 (英語) に参加可能です。

▷ マクドナルドがリユーザブルカップをイギリスで試験運用へ。従来の使い捨てコーヒーカップは内部プラスチック塗装が原因でリサイクルが進まない現状が問題視されており、去年からドイツでは30店舗ほどが既にデポジット制のリユーザブルカップの導入に成功しています。

▷ コーヒーにまつわるグッズやアパレルを通して社会問題への意識の変革を目指すDepartment of Brewologyがオリジナルコーヒー豆の販売を開始。透明性向上のための#GIVEBACKTOCOFFEEという新イニシアチブの一環として、コーヒー豆の売上の10% (2ドル)が農園に直接届けられます。

▷ 食料・農産物企業のオラル社がキオスクを使ったサンプル豆送付システムの試験運用を開始。生産者がサンプル用生豆を宅配ボックスのようなキオスクに預けると、オラルがテストや値付けを行い、最終的にそのコーヒーは同社のデジタルプラットフォーム「Olam Direct」で販売されるとのこと。

▷ スターバックスが2017年に発表した雲南シングルオリジンコーヒー誕生には、1.7万人もの農家への教育プログラム提供など現地コミュニティへのコミットメントが欠かせなかったと言われています。今年、同社は中国の貧困緩和を目指す財団、CFPA (China Foundation for Poverty Alleviation)と提携し生産者コミュニティの生活改善に努めています

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

OBROS COFFEE
福島

福島県郡山市で生まれ育った兄弟が2016年よりはじめたお店。2019年にはロースタリーもスタートしました。コーヒーを生鮮食品として扱い、鮮度の良いまま、焙煎・抽出をしてゲストの皆様に提供することで、コーヒーとの「思いがけない出逢い」を創ってくれます。

生産者: 
ルイス・カンポ

生産国:
コロンビア カウカ県トトロ郡ラ・エステラ村(地図

品種:
カスティージョ

精製方法:
ウォッシュト

テイスティングノート:
ライチや洋梨のような果実味と、煮詰めたチェリーのような甘さと質感

編集長のコメント:
口に含んだ時に感じる酸味は柔らかく、すぐにふわっと甘さが優しく包み込んでくれます。ジョナゴールドをかじった時のような感覚。長く続くその甘さは緩やかに余韻に変わっていきます。スプーンに残った最後の一口のフランボワーズ・ガトーショコラを舌でこそぎとって、はぁ〜となる感じ。これ以上にないというくらいのバランスの良さに、思わずうっとり、ぼんやりと宙を眺めていました。毎日飲んでいたいコーヒーです。


Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

娘は戦場で生まれた - Waad Al-Kateab
予告インタビュー

内戦が続くシリアを舞台に、戦場で生まれた娘のためにカメラを持って家族が生きた証を残し、真実を全世界に伝えようと決心した母親のドキュメンタリー。アサド政権に対する抗議活動が始まった2011年から5年間に渡ってカメラをまわし、シリア内戦の様子を伝える市民ジャーナリストとなったWaad al-Kateabさんが、この映画の主人公兼監督です。爆撃や戦車の砲弾が飛び交う街の凄惨な日々が記録されていて、こんなにも簡単にすぐそばにいる人が命を落とすのかと胸が締め付けられる思いでした。私がオランダに住んでいた頃はシリア難民の問題を少しは身近に感じることができていましたが、物理的な距離もあり日本ではこれまであまり深く意識することもありませんでした(恥ずかしながら)。難民問題の背景を知り、自分に何ができるのかを考える機会になりました。Waad al-Kateabさんが「このドキュメンタリーが、ただ観て忘れてしまうものではなく、観た人に行動を促すような変化を起こすツールになることを望んでいる」とThe New York Timesのインタビューに答えていたのも印象的でした。 - Toshi



Magazine for Young Girls
ウェブサイトInstagram

シンガポールに住むスタイリストのWei Ting Wong と、ニューヨーク在住デザイナーのJi Soo Eomが始めたファッション&ポップカルチャー雑誌。キックスターターのキャンペーンを経て今年の夏に創刊号が発売されました。東・東南アジアの人々を想定読者とし、取材対象者や制作に参加するイラストレーターやフォトグラファーを含め、”輸入型”ではなく自分たちの文化に根付いたアートやファッションを志す人々に光が当てられています。この編集方針の背景には、メインストリームな女性ファッション誌における多様性の欠如やそこから生まれる疎外感、「キラキラしてわかりやすい、ともすれば読者を子ども扱いしたような内容」に対して感じていたフラストレーションがあったと共同創刊者のWeiさんはインタビューで答えています。ちなみにタイトルにあるYoung Girls(=少女)とは「冒険心に溢れ、自分を隠さず、夢見る力を持った」概念的な存在を指しているそうで、僕のように少女とはまったく重なる部分がない人も楽しめます。 - Atsushi


Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

緒方 望夏

下関のデニム縫製工場の一角で、バリスタ兼デザイナーとして活動中。カフェスペースの中に作業場があり、製作活動を行いながら、お客様が来たらコーヒーを淹れ、会話をたのしむ場所として活用しています。現在、古いお家を自分でリフォームしようと思い、YouTubeを観て勉強中です。詳しい方どうぞ教えてください…!

セットアップ:
抽出器具:エアロプレス
豆量:14g
湯量:190cc
挽き目:細挽き
抽出温度:86℃
抽出時間:合計 60秒


手順:

  1. インバートの状態のエアロプレスにお湯のみを注ぐ
  2. 湯温を調節し、コーヒー粉をいれて攪拌する
  3. コーヒー粉を投入してから30秒たったら、逆さまにして抽出する

        ポイント:
        ☆エアロプレスとペーパーフィルターは湯通ししておく
        ☆豆を挽いた後に微粉を取り除いておく
        ☆コーヒー粉を投入してからはなるべく早く攪拌し、短い時間で攪拌を終わらせる

        一言:
        製作活動は主にエプロンやトートバッグ、コースターなどの雑貨を、セミオーダーで受注製作しています。コーヒー屋さんや飲食店に限らず、個人向けのオーダーも承っていますよ。 基本的に全てひとりで手作業で製作するのでお渡しまでに時間がかかってしまうのですが、なかなか理想通りのものに出逢えない!という方のお手伝いができればと思い、生地選びから完成まで、ひとつひとつご要望をききながらカタチにする活動をしています。デザイナーアカウントはこちらから。


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        今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第13号スポンサーの Daterra、パートナーのトーエイ工業Swiss WaterDepartment of Brewlogy のサポートでお届けしました。

        LOVE & COFFEE✌️
        Standart Japan

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