#121: 自然放牧、フォレスト・ガンプ、コーヒー

#121: 自然放牧、フォレスト・ガンプ、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか? 

先日、車で出かけた際にタンブラーに入れたばかりにコーヒーを忘れてしまい悔しい思いをしたことがありました。途中でどこかでコーヒーを飲もうにもなかなか寄れるところがなく仕方なく我慢したのですが、おいしいコーヒーがサッとテイクアウトできる場所があるとありがたいですよね。これは、まだ小さい子どもたちを連れて出かける時なんかもよく感じることがあります。

そんなことがあってしばらくして、5THWAVEのポッドキャストでコーヒーのドライブスルーについてのエピソードがあり興味深く聞きました。アメリカやイギリス、そしてオーストラリアでコーヒーショップのドライブスルー形態が増えてきているというお話。グローバルにカフェ事業や器具事業を行うCEOたちや歴史家のインタビューを交えて、ドライブスルー形態のビジネスが増えている背景やこれからの展望を語っています。コロナ前からドライブスルーは伸びていたそうですが、コロナ後にそれが加速し、この数年でさらに増加していくだろうとのこと。ドライブスルーはチェーン店が多いですが、スペシャルティシーンでもこれから数年間で間違いなく伸びてくるだろうということをポッドキャスト内で語っていました。

日本国内では、おいしいスペシャルティコーヒーが飲めるドライブスルーはあまり聞いたことがないのですが(読者の方でご存知の方がいたらぜひ教えて欲しいです)、これほどインディペンデントなコーヒーショップがいろんな場所に増えてきているのにも関わらず、なぜドライブスルーはないのか?と思うくらいありませんよね。都心部ではなく、郊外のエリアでは高い需要がありそうだなと感じます。最近では飲食業界以外にもドライブスルー事業をスタートした魚屋や葬儀屋などの話も聞きますし、これから国内での展開も増えていくかもしれません。またドライブスルーではありませんが、高速道路のインターなどでチェーン店以外の選択肢があると個人的に嬉しいなと感じます。ぜひ皆さんのお考えも聞かせてください。

今週から12月になりましたね。1年の終わりが近づいてきました。何かと忙しい時期ですが、気温もグッと下がって寒くなってきているので体調など崩されないようお気をつけください。

そうだ、最新号のサンプルコーヒーを準備してくれたBlue Tokaiからフレッシュなコーヒー豆が先日届きました。ご購読を検討されている方はこの機会にぜひ。年末年始にゆっくり読んでもらえるといいなと思います!

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi

  

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

ストーリーは、もっと身近に

国内で2、3例目となるスペシャルティコーヒー認証を獲得するなど、盛り上がりを見せる沖縄のコーヒー生産。なんと先日、コーヒーメディア、パーフェクト・デイリー・グラインドで、そんな沖縄産コーヒーについての記事が公開されました。日本が消費国としてだけでなく、生産国としても少しずつ世界から注目を集めていることに、コーヒーラバーとして胸が高なります。

元来沖縄で生産されるコーヒーは、商品作物としての意味合いは薄かったものの、ここ120年で徐々に規模が拡大し、現在の農園数は約30にのぼると言われています。多くのコーヒーはシェードグロウン(日陰栽培)、もしくはマンゴーやバナナの木に沿って間作され、品種としてはイエローブルボン、ムンドノーボが人気。チェリーの収穫時期は主に10〜4月ですが、沖縄の特徴的な地形や気候の影響で、毎年味わいが大きく異なる、言い換えればその年だけのフレーバーが育まれるのが沖縄産コーヒーの特徴とのこと。しかし気候によっては収穫量がほぼ見込めない年もあるため、農園によっては見学会や収穫体験と言ったアグローツーリズムに積極的に投資することで、収穫高に左右されづらいビジネスモデルを構築しています。消費者はコーヒーのサプライチェーンへの理解を深められ、農家は収益源の多様化を図れる、そんなwin-winの関係性が沖縄のコーヒーシーンでは見られているようです

人々がコーヒーの生産過程に気軽に触れられる場所として、沖縄のコーヒー生産・アグロツーリズムのポテンシャルの高さを感じるニュースです。私たちがコーヒーの生産地について考えるとき、ついつい「どこか遠く」を連想しがちですが、実はずっと身近で、コーヒーのオリジンストーリーは育まれているのかもしれません。

 

気になるニュース

▷  ビーンレスコーヒーを展開するアトモコーヒーが、小売業への本格参入に向けて役員メンバーを増員へ。オーガニックフードブランド、パタゴニア・プロビジョンの元共創業者、植物由来の代替肉・ミルクを手がけるインポッシブル・フードの元マーケティング責任者を迎え、事業拡大を目指します。

▷ ヨーロッパ26か国、585人の栄養士を対象に行われた聞き取り調査によると、回答者の約60%以上が、(適切な)コーヒー飲用が何らかの健康的利益をもたらすと考えているのだそう。代表的な作用として、覚醒作用、ムード改善、スポーツにおけるパフォーマンス向上などが挙げられています。

▷ ネスレが、サウジアラビアへの10年間の大型投資計画(総額約2,600億円)を発表RTD商品の製造施設や現地人材育成に向けた拠点の設置などを通じ、双方の利益最大化を図ります。

▷ トム・ハンクスが、退役軍人とその家族の支援を掲げるコーヒーブランド、ハンクス・フォー・ワン・トゥループローンチ。同ブランドの売上は全て、退役軍人らの支援を行う財団に寄付されます。一瞬『フォレスト・ガンプ』が頭をよぎりました。

▷ 東京・吉祥寺に、クラフトミルクスタンド武蔵野デーリーがオープン。100年続く牛乳屋が、自然放牧にこだわった各地の牧場牛乳を提供しています。3種飲み比べセットや、Light Up Coffeeとのコラボ商品「シングルオリジンコーヒー牛乳」も気になるところ。

物足りないあなたへ

スターバックスが限定リユーザブルカップを無料提供する毎年恒例の「レッドカップデー」に合わせ、全米各地の従業員が大規模なトライキを実施。クッキング系オンラインマガジン・テイストの編集長がお薦めする韓国・ソウルのコーヒーショップ広島県の老舗コーヒーショップ・ニシナ屋珈琲が、瀬戸内海で育ったコーヒーチェリーを使ったアイスクリームを開発

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー
 

今週は編集長Toshiが少し体調を崩していて、100%コーヒーを楽しめていないのでお休み!

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

今週のStandart Communityでは、コミュニティメンバーの桐山さんが、普段使用している/今気になっているドリップスケールについて質問を投げかけました。定番のHario V60スケールにはじまり、コメント内ではTimemore、acaiaの使用率/人気が高い印象を受けました。使用感についての実際の声はとても参考になるだけでなく、コーヒーラバーの方々の手元(の道具)を垣間見れたようでとても興味深いです!

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

ウクライナ日記』『ウクライナ日記2

高円寺カンフーカメラの店主、児玉浩宜さんが現在も戦争が続くウクライナを撮影・取材で二度訪れた際に残した日記をまとめたZINE。

報道に見られる「第三者的」な立場からではなく、児玉さんが出会った人、見た景色、抱いた感情などあくまで彼個人の視点からつづられるウクライナの状況で目に留まるのは日常性です。避難先の街にあるスケートパークでスケボーに興じる若者、シェルターでTikTokの動画を撮る少女、冗談を漏らす警備隊、空襲警報が鳴り響く街で現像サービスを提供し続けるカメラ店のスタッフ——戦争という非日常によってぶつ切りにされても止まることのない日々の生活。そして日常が続くのはウクライナ市民だけではありません。著者の児玉さんも、メッセージングアプリや(驚くことに戦時中も機能している)配車アプリを駆使しながら、取材を含むさまざまな仕事をこなし、見かけた売店で空腹を満たし、駅でコーヒーを飲み、空襲警報がなればシェルターへと走る、という日々を過ごしていました、まるでニュースの世界と日常を行き来するように。

中でも印象に残っているのが『ウクライナ日記2』の終盤に出てくる、オデーサにあるアートスペースで行われたパーティーの様子です。どの都市でも見られるように、お酒を片手に一心不乱に踊る地元の若者たち。その空間を包み込むように大音量で流れる音楽が気になった児玉さんは、曲名をチェックするためDJに話しかけたところ、フロアを沸かしているのはロシアの歌謡曲のリミックスだと知らされます。混ざり合った文化や習慣は戦争をもってしてもすぐに消し去られることはないという事実に勇気をもらえる一方、その状況の不安定さからは一抹の不安が漏れ出すのを感じずにはいられません。そして人々の日常があまりに普通であるからこそ、戦争の恐ろしさ、忌々しさが際立ちます。

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

成澤 敬介 aka なるちゃん

大学在学中、部室内でコーヒーを振る舞ったり、味わいを共有することで、コーヒーに興味を持ってもらえたことに幸せを感じ、コーヒーを仕事にすることを決意。セミナー・ワークショップを通じて、コーヒーの「楽しさ」や「面白さ」を伝えることに励み、2019年よりThe Rising Sun Coffeeの立ち上げから参加。ここ2,3年でサーフィンとバイクとゴルフを始めたせいで忙しい。

5 questions

今気になっている問いは?

「心地よい接客とは」
心地よい接客に触れると気持ち良いものですが、それを自分たちが真似しても同じようにはいかない。100人いれば100通りの接客があるだろうし、それは相手やシチュエーションによっても大きく変わる。ふとしたきっかけで無口だった常連さんと仲良くしゃべるようになったりすることもある。難しくも楽しい問いです 。

 

お気に入りの場所は?

「長野の佐久と上田にあるおばあちゃん家」
あたたかい場所。なくなる命もあるけど、新しい命も集まってくる。変わらない景色と匂い。たくさんの思い出の場所。

譲れないこだわりは?

「人の”好き”を否定しないこと」
自分自身の原動力も”好き”という気持ちなので、人の好きなモノ・コトを絶対に否定しない。 自分の好きなものに興味を持ってもらえることがすごく嬉しい。なので、人の”好き”にも興味をもって、積極的に触れてみるようにしています。人が”好き”を熱弁している時間も好きなので、会ったときに小さいことでもいいので”好き”を教えてほしいです。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

「家族」
今もそうだし、これからも。

最近、何に感動した?

「グミを大量に喰う」
1袋や2袋ではないし、今後もやめることはない。 たまーにしかしていないので許してほしい。

 

Fancy a refill?
編集後記 

個人的なことですが、先日ZINEを作りました。販売だけでなく物々交換も行っていて、はじめましての人や、しばらく連絡をとっていなかった人、知ってはいるけど直接連絡するのは初めての人などとやりとりをするうちに、物という言い訳があるだけで普段とは違った交流ができるものなのだなと実感しました。

近況や今後やりたいことを教えてくれたり、悩みを打ち明けてくれたり、こちらが新しいプロジェクトへの活力をもらったり。単なるメッセージの交換や会話だけでは生まれなかったであろう、そんなコミュニケーションの機会ができただけでもZINEを作ったかいがあったなと。

Standartも雑誌そのものだけでなく、Standartを介した出来事を通じて「あってよかった」と思ってもらえたら嬉しいですね。

Atsushi

 


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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第22号スポンサーのCROWD ROASTER、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAETZINGER x BREWMATICPhilocoffeaのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)