#112: 元祖、トイレットペーパー、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

金曜日までメルボルンで開催されていた World Coffee Championships を観戦していた方も多いのではないでしょうか。World Barista ChampionshipとWorld Brewers Cupが開催され、日本からは石谷 貴之さんと小野 光さんが世界の舞台で活躍されていました。素晴らしいパフォーマンスでしたね。歴代の世界・各国のチャンピオンたちが司会やコメンテーターで出てくるのも年末の特番番組みたいで個人的にテンション上がりました。皆さんはどんなところに注目しましたか?アーカイブはこちらで見られるので、ご興味ある方はぜひ。

そして今週は一つちょっぴり嬉しいお知らせがあります。これまで2年ちょっと続けてきたThe Weekend Brewでは、ご存知の通り毎週What We're Drinkingで全国のロースターさんのコーヒーをご紹介してきました。そして今週、ようやく47都道府県を制覇しました! 最後はどこのコーヒーショップだったと思いますか?(Let's scroll down and find out!)日本全国のコーヒーをこれだけ飲んだ人も珍しいんじゃないかと密かに思っています。ですが、全国にはまだまだまだまだ素晴らしいロースターがたくさんあります。ひとまず1周目を達成したということで、これから2周目に突入します。ぜひ皆さんの地域にある素晴らしいお店をご紹介ください!

話は変わりますが、広島の自家焙煎のコーヒー豆屋MOUNT COFFEEさんがフリーペーパー&ポッドキャスト YAMABONを運営されていて、先日光栄にもポッドキャストの収録にご招待いただきました。YAMABONはコーヒーが繋ぐ出会いをキーワードに主にコーヒー以外の世界で活躍されている人たちにフィーチャーしている、コーヒーショップ発のメディア。Standartで言うところのMeet Your Guestの拡張版のようなものでしょうか。コーヒーショップにはいろんな人がいるというのが本当によくわかる素晴らしい媒体で、同じメディア人として本当に尊敬します。この日はわざわざ福岡まで来てくださって、私が運営しているコーヒーショップで収録を行いました。前編でトータル3時間くらいあってとてつもなく長いのですが(笑)、Standartの始まりから、8月からスタートしたコミュニティについて、そして同タイミングで定期購読のみの出版形態(卸販売をストップしました)にシフトした経緯や思いについてもお話しています。ここまでしっかりお話したことはなかったと思います。お時間ある方はよければ聞いてください。

最後に、今週からArtists in Residenceのコーナーを少しお休みして、What's New in the Community(Standart Communityで起きていること)をスタートします。読者同士が繋がるプラットフォームとして8月からベータ版をスタートしたStandart Community。コーヒーラバーやプロフェッショナルが、Standartの読者コミュニティ内でどんなことを疑問に思ったり、議論したりしているかを覗き見しちゃいましょう。

それでは今週も良い週末を。
あ、そうだ、昨日から本日引き続き、福岡の博多駅すぐそばで、コーヒーイベント『PARK × COFFEE』やってます。福岡在住の編集長Toshiがディレクションとして関わっているので、お近くの方はぜひ。

編集長 Toshi

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

地域から巻き起こるアップサイクルの渦

ここ数年のホットな話題の一つであるコーヒーのアップサイクル。これまでニュースレターでも、スニーカーに始まり、バッテリー小麦粉まで、コーヒーの「セカンドライフ」を紹介してきました。そして今月下旬、ドイツ企業ハークレ(Hakle)が発売したのが、なんとコーヒーの出がらしを利用したトイレットペーパー光熱費・材料コストの高騰によって一時は経営難に陥った同社が、打開策として白羽の矢が立てたのが、コーヒーの出がらしだったそうです。

トイレットペーパーは製造コストの大半が、光熱費、木材パルプ、輸送費で構成されていることから、世界経済の影響を受けやすいという特徴があります。この度ロシアのウクライナ侵攻に伴って、世界的にエネルギーコストが高騰。さらに中国での木材パルプ需要の高まりを受けて、2020年以降価格が急上昇するなど、メーカーとして厳しい外部環境に晒されています。そこで同社は木材パルプの一部をコーヒーの出がらしで代替するアイディアを思いつき、9月に最初のコーヒー入りトイレットペーパーが作られました。今後はコーヒーの出がらしの比率を20~25%まで高め、環境負荷削減を実現しながら安定した事業継続を模索していくとのこと。

輸送・原材料費の上昇といった国際的な要因によって、地域のコーヒーのアップサイクルに目が向けられるという流れは興味深いですね。各地域で親しまれるコーヒーが、アップサイクルを通じてよりローカルに還元される循環が育まれることに期待が高まります。

 

気になるニュース

▷ 台風「ノル」接近に伴う大雨予報により、ベトナムのコーヒー生産への被害が危惧されています。仮に11月以降も大雨に見舞われた場合、収穫時期の遅れや豆の品質悪化を招く可能性も。

▷ スターバックスが、店舗のオペレーション圧迫やスタッフのストレス過多を防ぐべく、モバイルオーダーを複数店舗間で分散させる技術の開発を検討中。労組結成の大きな背景要因となっている業務負担増加への対策の一環と見られています。

▷ シンガポール発のオーツミルクブランド、オートサイド(Oatside)が約94億円の資金調達に成功。今年6月には、同じくシンガポール発のコーヒースタートアップ、フラッシュコーヒーとの提携も発表しています。

▷ 豆のグラインドから始まる自動コーヒー抽出マシン、エックスブルーム(XBloom)がクラウドファンディングを開始予定。手間を省くためのマシンなのに、抽出工程を味わえるのを売りにしている点が興味深いです(いっそハンドドリップしては……とちょっと思ったり)。

▷ 日本コーヒー史の元祖とも言われる名著『日本の珈琲』が、約40年ぶりに復刊。ちなみに本書の解説は、『珈琲の世界史』の著者、旦部幸博氏によるもの。

物足りないあなたへ

今年末にネスレがアニマルフリーのチョコレート・乳製品を発売予定。オーツミルクメーカー、オートリーの商品が本国内のコンビニ・スーパーなどで買えるように。カナダで人気のチェーン店ティム・ホートンズが、10/1の「国際コーヒーの日」に限定アパレルラインを発売しました。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

SEVEN STEPS COFFEE CLUB 千葉(地図

2020年7月、千葉県千葉市で開業しました。"スペシャルティコーヒーを日常に"を企業理念としまして、日々コーヒーを通しての人の繋がりを大切にしています。コーヒーの味だけをフォーカスするのでなく、私たちが考えるスペシャルティコーヒーの世界観を来てくれたお客様にお伝えしたいです。お気に入りのコーヒーショップが身近にあることで少しでも日常が豊かな気持ちになれるなら、そこに私たちが存在していたいと思い日々焙煎を進めています。

 

生産者 KIAWAMURUR

生産地域ケニア ニエリ地区(地図

品種SL28 SL34 BATIAN

精製方法ウォッシュト

テイスティングノート
オレンジ、ドライフルーツ、フローラル、クリーン

編集長のコメント:

数ヶ月ぶりのケニア。何度も書いているんですが、スペシャルティコーヒーを好きになったきっかけでもある産地でもあり、個人的に思い入れの強いオリジンです。豆を挽いた後の力強いアロマに、フレーバーの力強さを感じます。一口目の印象は、柑橘っぽさのあるジューシーな味わい。と同時に、程よく熟れた桃の果実に鼻を近づけると香ってくる、桃や花のような甘くフローラルな芳香があり、ケニアらしいパワフルで濃縮感を感じさせるフレーバーの中にその繊細さを感じとることができます。ブラックティーの茶葉やホップのようなハーブを連想させるボタニカルなニュアンスも印象的。甘さは黒糖のようで、ジューシーさと相まってアメリカンチェリーが浮かびました。温度が下がってくると、カカオティーのような味わいも記憶の中から呼び起こしてくれるようで、果実感一辺倒ではなくその複雑さが魅力的です。完全に冷めたコーヒーからは、あずきバーの味がしました。やっぱりケニアのウォッシュト好きだなぁ。ご馳走様でした!


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

今週のStandart Communityでは、Single O Japan代表の山本さんがコーヒープロフェッショナルとコーヒーラバーに対して、環境問題にコーヒー業界としてどう取り組めるかというトピックが提起されていました。出がらしのコンポスト活用にまつわる課題、生分解性パッケージの真実、タンブラー活用を促す仕組み作り、はたまた福祉の観点から見るマイカップ・マイストローの問題など、さまざまなコメントがコミュニティメンバーから寄せられています

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

『Blind』ジェイムスズー

オランダ出身の音楽プロデューサー、ジェイムスズーのセカンドアルバム。自身の音楽を「ネイティブ・コンピューター・ジャズ」と表現し、できるだけアーティストの主体性を排した音楽を作っているジェームスズーは、このアルバムの制作背景に「音楽などの芸術分野ではアーティストに重きが置かれ、どの作曲家が、ソリストが、演奏家が、といった情報への注意が耳に入るものを色づけている。そのすべてを迂回するような、能動的かつ客観的な鑑賞体験はつくれるのか?」という問いあったと語っています。

リラックスしたコードストロークを叩き潰すように高速ドラムが鳴る「For drummers (and guitarists)」や、メカニカルなドラムに重なり合うブラスやシンセの音の壁が迫ってくる「Philip」などを聴いていると、最初は意味不明で不快にさえ感じられる音の組み合わせから、メロディやそれぞれの楽器の旋律が徐々に浮かび上がってくる感覚を味わえます。まるで抽象画を前にして、段々と色の塊から像が浮かんできたり、過去に見たことがあるものとマッチする色の組み合わせを見つけ出したりするように。つまるところ、心地よく並べられた音を受動的に聴くのではなく、先述のコメントの通り自ら音を見つけにいく能動性が鑑賞者に求められているような印象を受けました。

1番のお気に入りは、7曲目の「How do i shape-shift?」。映画監督アレハンドロ・ホドロフスキーの声をたどるシンセ音からは、言語に潜む音楽的な美しさを味わえます。見えないものを見せてくれるその表現は、先日観たNetflixシリーズ『Abstractに登場したアイスランド系アーティスト、オラファー・エリアソンのアプローチにも近いものを感じました。最近聴く音楽がマンネリ化している人はぜひご一聴ください。

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

藤城 はづき

中学生の時に出会ったコーヒーと人々の繋がりに衝撃を受け、バリスタを目指す。大学時代はVERVE COFFEE Roastersで学び、卒業後、ウェディング業界に就職。接客や営業についてを学んだ後、再びコーヒーと向き合うと決意し退職。現在は Common で出会い・繋がりを大切にコーヒーを淹れる。

5 questions

今気になっている問いは?

「この人のコーヒーの入口は何だったのか」
店頭で出会うお客さんや街中でコーヒーを飲んでいる人を見かけると、つい気になってしまいます。人それぞれアプローチが異なり、その人の歩んだ道が垣間見えるので、とても面白いです。いつか私の淹れたコーヒーが誰かの入口になること、叶えたい夢の一つです。

お気に入りの場所は?

「STARBUCKS COFFEE  西武高田場店のテーブル席」
初めてコーヒーに感動した場所でもあり、受験勉強や就活など学生生活の半分を過ごした想い出の席です。長居してしまい申し訳なかったのですが、店員さんはいつも気にかけてくださり、この感動体験が今の自分の接客に活きていると思います。なかなか行きづらい場所ですが、初心に戻りたいときに立ち寄ります。

譲れないこだわりは?

「忌み言葉」を日常から使わない。
ウェディングの仕事で、「忌み言葉」というものを知りました。言葉のバリエーションを増やしたいので、常に別の言い方ができないか考えています。小さいことですが、心地よい言葉遣いができるように日頃から心がけています。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

「父親」
いつも応援してくれる深煎り好きの父へ、自分で選んで淹れたコーヒーを一緒に飲みたいです。ありがとう」と「まだまだ頑張るから見ててね!」と気持ちを込めて。

最近、何に感動した?

「白川郷で受け継がれる 結の心」
先日初めて白川郷を訪れました。もちろん建物や景色は圧巻でしたが、村の人々の温かい心に感動しました。自分の家を開放することも、一軒の為に村人全員で修繕したりと、都心の生活では見かけない光景でした。また数年後、ふと思い出して必ず訪れるでしょう。

 

Fancy a refill?
編集後記 

先日「秘密の森の、その向こう」を観てきました。本作の監督を務めるのは、セリーヌ・シアマ氏。前作の「燃ゆる女の肖像」が個人的に大当たりだったので、これは絶対観なければ!と心に決め、週末布団にこもろうとする自分を叩き起こし映画館へ。

ファッションはフランスの生活の一部、と言わんばかりの衣装デザイン。過去と未来を室内の壁紙で表現する時間軸の軽やかな演出。数日間のひと時が紡ぐ、三世代の喪失と癒しの物語に思わず見入っていると、73分という上映時間があっという間に過ぎていきました。

ネタバレになるので内容には触れませんが、「2人の子役めちゃめちゃ似てるなぁ」と思っていたら、なんと実の姉妹であることがパンフレットを読んで判明。二人の自然体な演技の背景には、そんなキャスティングがあったのか、と改めて映画を見直したくなりました。オススメです。

Takaya

 


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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第21号スポンサーのTYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業FAEMA x DKSHSwiss Waterブルートーカイコーヒーのサポートでお届けしました

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)

#112: 元祖、トイレットペーパー、コーヒー

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