#106: 海底、プライバシー、コーヒー

#106: 海底、プライバシー、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

今週は、最新号の全国一斉発送を開始しました! もうお手元に到着した方も多いようで、SNSで皆さんがシェアしてくださる様子をみながらチーム一同、ほっと安堵しているところです。お盆休みでゆっくりされている方もいらっしゃると思うので、ぜひ届いたばかりの雑誌のページをめくってもらえると嬉しいです。ONYX COFFEE のサンプルコーヒーも、抽出レシピをこちらに公開しているので、ぜひお試しください。

今週公開したジャーナル記事でご案内したのですが、Standart Japanはこの最新号から印刷地を日本国内に移しました。(これまでは香港で印刷していました)

Standartはクライメイト・ニュートラル認証を2021年に取得し、私たちの活動によって生み出される二酸化炭素量を測定・相殺していますが、今回の印刷地の変更もその取り組みの一つです。この夏の気候や近年の異常気象(異常と呼ぶのか、今後は普通と呼ぶのか……)、そしてコーヒー農家や科学者たちの悲鳴からも、気候変動が差し迫った危機であることは間違いなさそうです。

私たちのような小さな出版社が削減できる二酸化炭素の排出量は、出版業界全体で見るとすずめの涙に過ぎないことは承知しています。それでも私たちは、リモートワークやFSC認証を受けた印刷紙を使うことで、排出量を削減し、この問題に取り組み続けています。

毎号Standartを楽しみにしてくれている読者の皆さんがいるからこそ、雑誌を作り続けながら、こうした取り組みにも挑戦していくことができています。いつもありがとうございます!

そして、上記の記事内にもあるように、先日、Standart Japanのチームで東京にある印刷会社を訪問しました。はじめてStandartが日本で印刷される瞬間に立ち会うことができ、感慨深いものがありました。しかも、昨年Nanakoがチームにジョインしてからチーム全員で集まるは実ははじめて! 個人的には三人で久しぶりに食事ができたのがたまらなく嬉しかったです。そして記念写真をパシャリ📸👇

                       左からNanako、Toshi、Atsushi

ジャーナル内では印刷会社での様子も写真でお見せしているので、コーヒーブレイクにでもご覧ください!

今週のStandartは、少しお休みしてリラックス中。来週後半から次の号の制作を再開します!

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

バッチブリューの新たなサイクル

オニキス・コーヒー・ラボ(Onyx Coffee Lab)やイクエイターコーヒーズ(Equator Coffees)をはじめ、米国のカフェ・コーヒーショップを中心に導入が進むバッチブリューマシン「Ground Control」。昨年度テスラの元CEOらが創業したVCを中心に、シリーズAラウンドで約5.6億円の資金調達に成功し注目を集めました。このマシンの最大の特徴は、3~4回繰り返し抽出して1バッチができあがる抽出プロセス。各サイクルでそれぞれ異なるフレーバーや官能特性に焦点を当てて抽出することで、36リットル近い大ボリュームでも、バランスの取れたフレーバーを実現するといいます。

通常一度に大量のコーヒーを抽出する場合、抽出時間 (お湯とコーヒー豆の接触時間)が長くなるため、それぞれの豆が持つ特性がうまく反映されない、苦味が際立つといった課題があります。Bloombergの記事によると、Ground Controlは各サイクルでお湯の温度・攪拌の設定を最適化することで、より繊細なフレーバー表現を実現。それぞれのサイクルで抽出されたコーヒーは内部のバキュームシステムによってマシン上部の透明なタンクに吸い上げられ、最終的に全てのコーヒーが均等に混ぜられた状態でできあがるというわけです。

さらにホットコーヒーのみならず、コールドブリューやアイスラテ、お茶やチョコレートドリンクにも対応しているとのこと。導入店の中には、カカオニブ入りコーヒーなどのスペシャルドリンクを作っている事例もあるらしく、新メニューの開発も進みそうです。

気になるニュース

▷ 英国で、ソーシャルディスタンス確保のための暫定措置であったテラス席の設置を、恒久化する法律が成立しました。一方、以前アムステルダムでは、道路混雑を理由にテラス席の廃止が発表されてました。

▷ カナダのコーヒー・ドーナツチェーン、ティムホートンが、アプリを通じて1年以上にわたりユーザーの位置情報を無許可で取得していたことが当局の調査で判明。同社はユーザーへの謝罪として、無料のホットコーヒーとドーナツ(=総額約900円)の配布を検討しているそうです。

▷ コーヒーテック企業M-CultivoがACEと連携し、エチオピアCoEで国際審査に進まなかったマイクロロットを直接購入できるプラットフォームをローンチ。昨年度ブラジルCoEで行ったパイロットプログラムに続く導入です。

▷ 最新の研究結果によると、青銅器時代のヨーロッパ地域の人々は、乳糖を分解するための酵素(ラクターゼ)を欠きながらも、約2600年にわたり腹痛に苦しつつ牛乳を飲んでいた可能性があるそうです。今後研究チームは、アフリカ、アジアなど地域別に、人類がラクターゼを獲得した進化の過程を調査する予定です。

▷ 以前のニュースレターで紹介したコーヒーシュミレーションゲーム「Epsresso Tycoon」に、新たなプロローグ: 海底カフェ編が追加。シドニー沖の海底にオープンしたカフェのオーナーとして、コーヒーシーンに新たな"ウェーブ"を巻き起こすのはそう、あなたです。

物足りないあなたへ

英国を拠点とするメディア・イベント企業「William Reed」が、London Coffee Festivalを買収フードサイエンティストがありとあらゆる植物性ミルクについて解説するYouTube動画をWIREDが公開。Boss Baristaのボーナスエピソードでも扱われていた、インテリジェンシア初の労働組合の結成が決まりました。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

Days Coffee Roaster 新潟地図

新潟で2021年オープンの自家焙煎コーヒースタンド。常時14種類以上の豆を取り扱う。全て試飲することができ、味を確かめてから豆購入またはテイクアウトができる。『心に火をつけ、情熱的な出会いを生み、共有する』を企業理念に好奇心くすぐるコーヒー豆の取り扱いを意識し、コーヒーを介したポジティブなコミュニティを創造している。

 

生産者 Homero Aguiar Paiva

生産地域ブラジル ミナスジェライス州サントアントーニオドアンパロ、カンポダスヴェルテンテス(地図

品種トパージオ

精製方法ダブルアナエアロビック

テイスティングノート
焙煎したてはスパイシーさ全開で山椒、ナツメグ、カルダモンのようなハーバルな味わいです。しかし、エイジングをかけていくとマウスフィールが柔らかくなり、ラベンダーやレモングラスのような華やかさが顔を出します。また、ホットとアイスでも全く違った表情を見せてくれるのもこの豆の特徴です。いつ飲んでも、何回飲んでも、飲むたびに新しい発見をくれる好奇心溢れるそんな豆です。ぜひお楽しみくださいっ!

編集長のコメント:

初登場の品種トパージオ。カトゥアイ種とムンドノーボ種の交配種だそうです。豆を挽くと、山椒や胡椒を練り込んだサラミのような「meaty ミーティ」な香りがします。ダブルアナエアロビック精製でも、最近ニュースレターに登場したものとはまた違い、スパイス感が強いコーヒーです(もともとこの豆はこんな感じ?)。カッピングの準備ができて一口含むと、シナモンやカルダモンのスパイスを感じ、ライムのような鮮やかな口当たりもあります。そしてレモンの砂糖漬けを彷彿とさせてくれるレモンフレーバーと爽やかな甘味が特徴的です。スパイスが全面的に主張しているわけではなく、まるでクラフトコーラのように一体感のある味わい。後味に長く続く黒糖のような甘さの余韻も素晴らしいです。爽やかさやスパイス感、そしてしっかりとしたボディがとてもバランス良く整っていて、ゆっくりと温度変化によるフレーバーの移り変わりを楽しみたいコーヒーでした。アイスもきっと相性良さそう。とっても美味しかったです。ごちそうさまでした!


Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち

アーティスト: 

ピーター・ディセーナ  

プロフィール:

王立歴史学会の副会長、ハートフォードシャー大学の准教授、ロンドン大学歴史学研究所のシニアフェロー。歴史教育を専門に、文化的多様性とインクルーシブな教育についての研究・出版を重ねる。最新の著書に、『Decolonising the Curriculum: contexts and strategies’ in Teaching History for the Contemporary World (教育カリキュラムの脱植民地化: 現代社会における歴史教育の文脈と戦略)  』。

最新の掲載記事:

Standart Japan 第20号「コーヒーの歴史の脱植民地化」

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

No Reino Dos Afetos

コーヒーの産地として有名なブラジル・ミナスジェリス州から東北に進んだところにあるアラゴアス州出身のブルーノ・ベルのデビューアルバム。木陰で肌をなでるそよ風のような歌声と、決して派手ではないけど、なぜかすぐにひきつけられてしまうキャッチーさを併せ持つ心地良い12曲が収録されています。

正直1曲目の「Até Meu Violão」を聴いたときは、気持ちいいけどこういうのよくあるよねーくらいの印象だったんですが、グッとR&B感が増す「Quero Dizer」、「Guardo Em Tuas Mãos」で予想を裏切られ、「Beat 1」の波音ともノイズとも判別できない音の上で漂う歌声に口元が緩み、ギター1本で歌い上げる「O Nome Do Meu Amor」で緊張がとけた体が、強いエフェクトがかかったざらついたサウンドながらもフィールドレコーディンを含め一つ一つの音粒が埋没せずに美しくながれる「Som Nyame」で動き出しました。

コーヒーよりもカイピリーニャが欲しくなる一枚。



Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

天野 キャサリン aka キャサリン

愛知県出身。 2014年、オーストラリアでコーヒーが人々の生活に溶け込んでいるコーヒー文化に魅了され、シドニーでバリスタとしてのキャリアをスタート。約5年間滞在、現在は名古屋でTop of top のコーヒーを提供し続ける「GLITCH COFFEE NAGOYA」、より生産者に近くsustainableな取り組みを行う「SHRUB COFFEE NAGOYA」、Q認証コーヒーのみを提供する熱海の「ROLLING ROASTERS」にて活動。 Qアラビカ・Qロブスタグレーダーを取得し、Qグレーダーとして20を超える鑑定にも携わっている。

5 questions

今気になっている問いは?

「あなたが飲んでるコーヒーが持つストーリー気になりませんか?

皆さんが普段何気なく楽しんでいる1杯のコーヒーの裏には、農園の方の思いや取り組み、どのようなプロセスを経て感動する美味しさを作り上げているのか? そのストーリーも含めて楽しんでもらえたら、 より美味しい1杯へと昇華するのではないかと、そしてそのストーリーを伝えるのもバリスタの大切な役目の1つだと思っています。

お気に入りの場所は?

「ニュージーランドのクイーンズタウン」

南島にあるサザンアルプスの山々に囲まれた翡翠色のワカティプ湖畔に広がる小さな街ですが、本当に絶景でその美しさに圧倒されて時間を忘れてずっと見ていられます。 Fergburgerを食べながらのんびり過ごすのもオススメです。

譲れないこだわりは?

「毎朝のコップ1杯の白湯」

極度の冷え性なので、身体の中から温めます。 1日活動するためのスイッチみたいなものですね。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

「オーストラリアでの私のコーヒーの師匠達」

オーストラリアのコーヒーのいろはとバリスタの基礎を教えてくれたTony。カッピングの重要性や忙しい状況下でのクオリティ担保の大切さを叩き込んでくれたJames。味の取り方や抽出についてより深く指導してくれたHiro。 皆違うお店での師匠達ですが、改めて感謝の想いを伝えたいです。

あなたのギルティープレジャーを教えてください。

メールシロップをひたひたになるぐらいかけたホットケーキ(笑)パンケーキよりクラシックなホットケーキ派です。

 

Fancy a refill?
編集後記 

最近、友人に勧められてちょっとずつカセットテープで音楽を聴いています。世代を言い訳にできないのですが、これまであまりカセットに触れる機会がなく、ケースのジャケットだけでなくカセット本体にもイラスト・カラバリがあることを買うまで知りませんでした。少しちゃちなボディから滲み出るガジェット感、思わず2〜3個買うとそこそこ懐が痛くなる感じ、収集欲をモロに刺激されてます。

ストリーミングが主流の時代を生きる自分にとって、カセットでアルバムを聴くのはとても「フィジカルな体験」でした。上手く表現できないのですが、アーティスト・作品の明確な区切りの中で、音楽に集中して向き合える感覚です。その瞬間、逆にストリーミングでの音楽体験って何かに近いな、となにか心がモヤっとしました。この前分かったのが、ストリーミングで曲が半永久的に再生され続けてる感覚が、リモートワークで昨日の今日の境がなくなる感じと近い、ということでした。

Takaya

 


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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第21号スポンサーのTYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業FAEMA x DKSHSwiss Waterブルートーカイコーヒーのサポートでお届けしました

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)