#105: キャットベッド、レーザー、コーヒー

#105: キャットベッド、レーザー、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

先週お伝えしていたように、今日はStandart Japan最新号(21号)リリースのお知らせ!3か月に一度、皆さんにこうして最新号をご案内できることが嬉しくてたまりません。

実はここだけのお話、アメリカからスムーズに届くはずだった今回のサンプルコーヒーが途中で1箱行方不明になるというトラブルがあり通関が遅れていました(たまに起こるんですよね……汗)。しかも複数の送付物がある場合は全て揃うまで通関できないらしく、ドキドキしていましたがなんとか無事に到着してくれました。通関手続きも無事に終わり、来週中頃より全国への一斉発送を開始します。いつものように到着を楽しみにしていてもらえると嬉しいです!

気になる今号ですが、オリジンプロフィールになんとシチリアが登場します。イタリアでもコーヒーが作られてたの?なんて声が聞こえてきそうですが、日本同様に正真正銘の”イタリアンコーヒー”誕生のために汗と知恵を絞る人々の姿がありました。そして日本でネパール産コーヒーの普及に努めるアミットチェトリさんの物語も必読。失敗や挫折から学び、一歩ずつ未来の扉を開いていくアミットさんのストーリー、ぜひ読んでみてください。

ボスでいるということには、栃木県那須塩原市でCoffee Ontario を経営する高根沢 尚子さんが登場します。彼女の人生を振り返りながら移住や遠回りによって見えてくるものに共感したり、背中を押してもらえる方も多いかもしれません。

特集記事は、世界中のコーヒーラバーを取材する中で見えてきた、パンデミックがカフェでの長居に与えた影響について論じる「カフェでの長居」。一杯のコーヒーで人はどれだけカフェに長居できるのか? コーヒーショップを運営されている方なら必ずといっていいほどに直面するこの問いですが、作り手も飲み手も、一見シンプルなこの問いへの答えに、それぞれの国や地域の文化が色濃く反映されていることに驚くかもしれません。

すべての記事をご紹介したいところですが、長くなっちゃうのでここまで! その他の記事についてはこちらのブログ記事をチェックしてみてください。

そしていつものように、最新号をチラッと覗き見しちゃいましょう。

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

伝統と変化の歩み寄り

以前のニュースレターで、イタリア・フィレンツェの有名スペシャルティコーヒーショップ、ディッタ・アルティジャナーレ(Ditta Artigianale)で起きた“エスプレッソ事件”を紹介しました。イタリアにおけるエスプレッソの暗黙の基準価格が1杯1ユーロ(137円)であるところ、2ユーロを請求されたことに顧客が納得できず、価格表示義務を怠ったとして警察に通報。お店は1000ユーロ (13万5000円)の罰金を科されました。しかし1杯1ユーロのエスプレッソでは、農家の十分な収入とプロフェッショナルなサービスを維持できないと同店のオーナーであるフランチェスコ・サナポさんがSNS上で主張。CNNやThe Guardianをはじめとする国際メディア (とThe Weekend Brew) に取り上げられ、現在に至るまで伝統的なエスプレッソ価格の改訂について、盛んに議論が交わされています。

こちらの記事では、エスプレッソ価格の改訂にはコーヒーの品質向上と、カフェオーナー、バリスタ、そして顧客への教育が必要であると説かれています。1950年代、エスプレッソと新聞がバールで最も安価な商品だった時代を過ごしたミドル・シニア世代にとって、値上げは心情的に受け入れがたいもの。しかし、コーヒーの取引価格が高騰する中、伝統的な価格を維持すれば地元ロースター・カフェのビジネス存続が危ぶまれ、最終的にはイタリアのバール文化にさえ危機が及びかねません。だからこそ、コーヒーショップは上質なコーヒーの提供を前提に、コーヒーについての技術・知識、そして価格の妥当性を説明し、顧客の理解を得る姿勢が問われているのです。

一方で、イタリアでは町・村単位で地元ロースターが存在し、地域によってエスプレッソのフレーバーが異なるという点も注目です(イタリア北部ではアラビカ:ロブスタ = 8:2、南部では5:5の傾向があるそう)。伝統への理解と変化の必要性、その両者が歩み寄りながら、それぞれの地域に根ざした新たな潮流が必要と言えるでしょう。

気になるニュース

▷ ロックダウン解除以降、回復傾向にあった米国のコーヒーショップの売上が、ここ数か月パンデミック前を下回って停滞中リモートワークの定着による、出勤時・日中のコーヒー購入量減少が背景にあり、とくにNYのオフィスが密集するエリアではその傾向が顕著だそう

▷ 非営利団体「I’m Not A Barista」が、2組のコニカル刃を採用したマニュアルグラインダー「MOMENTEM」のクラウドファンドキャンペーンを実施中。その売りは、それぞれダイヤル式で簡単に調節できる2組の刃と、内蔵されたふるいによる挽き目のコントロール性。

▷ 農業を通じて不登校・ひきこもり当事者の支援を行う沖縄のNPO法人ウヤギーが、同県ナシロコーヒー園とタッグを組みクラウドファンディングをローンチ。調達した資金は、ひきこもり当事者およびその家族へのコーヒー栽培キットの提供や、コーヒー園での就労支援に使われる予定です。

▷ Standart Japan15号「ロブスタの再考」にも登場した、アメリカを拠点にベトナムコーヒーの文化を発信するブランドNguyen Coffee Supplyが、世界初のベトナム産ロブスタ100%のRTDコールドブリューを発売。

▷ 独・デュースブルク大学の研究チームが、ピコセカンド(1兆分の1秒)で点滅する専用のレーザーを放射し、約3分間でコールドブリューを作ることに成功しました。ちなみにこの研究チームは、以前超音波を活用したコールドブリュー作りに取り組んでいたらしく、コーヒー熱ハンパなそうです。

物足りないあなたへ

エアロプレスから繰り返し使えるステンレスフィルターが登場。ラピを起用したCMでも話題となったデロンギが、英国で初となるTVCMを開始。お家の猫も喜ぶミニマリスティックなキャットベッド付きコーヒーテーブルが発表されました。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

SaÏ Coffee Roastery 山口(地図

2019年4月にオープンした山口県のコーヒーロースターです。コーヒー豆の特徴を最大に活かした焙煎を心掛けています。また、エチオピアMETAD社のGotiti、Chelbesa エリアの日本唯一の生豆販売契約会社であり、2022年からは同社の生産処理にも携わり、anaerobic96h natural Chelbesa2022 をオリジナルロットで共同開発させてもらいました。美味しいコーヒーは抽出、焙煎、生産の全てのセクションが味に大きく関わるという考えの元、毎年全分野でチャレンジしております。

 

生産者 エチオピアMETAD社

生産地域エチオピア イルガチェフェ地域 ゲデオゾーン最南東部ゲデブ地区ゴチチ(アムハラ語で滝を意味)地図

品種74112(1974年の112番検体)

精製方法ウォッシュト

テイスティングノート
みかんのような爽やかな酸質が印象的なゴチチ。ストーンフルーツのような甘さと重さは、厳しい完熟基準の賜物。鼻に抜けるフレーバーにハーブやジャスミンを感じます。

編集長のコメント:

あまり国内ではみたことがなかったパッケージ(フラットボトムでくるくる巻きつけるベルトがついてる)。オランダに住んでいた時にヨーロッパのロースターではよく見かけたんですが、久しぶりに見たこのタイプのパッケージに謎にテンションが上がります。袋を開けて見えたコーヒーは豆面がとても綺麗。挽いた豆からは、マーマレードとトーストの匂いがして、すでに美味しそうです。カッピングの準備ができて一口啜ると、みかんのフレーバーが飛び込んできます。ジューシーでスーッと体に入ってくる、とても好みのクリーンなウォッシュト。緑茶のようなニュアンスやハーブのような味わいもあり、ラムネやトニックウォーターを彷彿とさせてくれます。柑橘の味わいと合わさって、まるでカクテルを飲んでいるかのようです。一つ一つのフレーバーが明確で力強く、でもしなやかに伸びていく味わいは、どういうわけかアスリートの美しい筋肉を思い出せてくれました。ホットでもアイスでも、食事やスイーツに合わせてもそのままでも、最高のパートナーになってくれそうです。ごちそうさまでした!


Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち

アーティスト: 

グレッグ・ミーナハン  

プロフィール:

キャリアを通じて社会の格差是正を目指す。過去にはグアテマラでの識字率支援、World Coffee Researchでの農耕・細胞学領域における研究/開発、Equal Originでのプログラム開発などに従事。近年は、ジェンダー平等を目指す農業改良普及事業者向けに、新たなツール「Gender Equity Indez」を共同開発する。

最新の掲載記事:

Standart Japan 第20号「潜在的リスクを暴き出すもの」

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

SHUKYU Magazine

(フットボール)ゲームの背後に存在する、選手・クラブ・サポーターからファッション・アート・建築・食まで、様々なもの/ことを、毎号独自の視点で読み解いていく2015年創刊のフットボールカルチャーマガジン。先日、京都・誠光社を訪れた時に、偶然ポップアップイベントに遭遇し購入しました。

今回購入した第9号のテーマは、「LIFE ISSUE (ライブ特集)」。この号が出版された2020年11月に至るまでの社会の動きをジャーナリスティックな視点で捉えながら、「社会におけるスポーツの価値」について深堀りされています。特に印象に残ったのが、以前のニュースレターでも紹介した、ヴィーガンフットボールクラブ「フォレストグリーンロバーズ」のオーナー、デイル・ヴィンスへのインタビュー記事です。世界で最も環境に優しいフットボールクラブとしての方針転換を決意した当時の、選手・サポーター・メディアの反応、そして現在に至るまでの変遷は非常に興味深く、「前衛的である」ことの意味について深く考えさせられました。またマッシブ・アタックのロバート・デル・ナージャが同クラブの大株主・クリエイティブディレクターであることや、Oatlyとのスポンサーシップ提携など、クラブの運営面から見える社会の動きもとても面白いです。

他にも、"マッチョ"な構造が蔓延るフットボール界でメンタルヘルス問題に取り組む「FC Not Alone」、日本のホームレス当事者・経験者のサッカーチーム「野武士ジャパンへのインタビューなど興味深い記事ばかりで、是非手にとってほしい一冊です。個人的に、普段コーヒーニュースとして取り上げるトピックを、フットボールという視点から考える機会はとても新鮮でした。改めて、社会の繋がりを日々意識しながら、自分にとっての「既知の無知」の領域に積極的に踏み込んでいく姿勢を大切にしたいと思いました



Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

八木 隆充

1979年生まれ東京都出身。27歳の頃に起業、アパレルの企画やコンサルを経て2020年2月南房総の海の近く101 BEACH PARK COFFEE STOPをオープン。2021年7月にはテイクアウト専門のコーヒースタンドTINY PARADISE COFFEEを清澄白河にオープン。小さなお店を2店舗運営のほか、イベントなどの出張コーヒーサービスやカフェ開業向けの支援などを手がける。蔵前にあるバッグブランド”ETiAM”直営店のカフェ部門のアドバイザーも務める。現在は東京と千葉県南房総市を行き来する二拠点生活を送っている

5 questions

今気になっている問いは?

【子供達の未来がどうなっているか?】
自分の子供達の事ももちろんですが、スタッフのお子さん、お父さんお母さんと一緒に来店してくれるお子さんなど沢山の子供達の未来が明るいものになっているかは気になります。子供達が笑顔を絶やさず、自由に選択やチャレンジが出来、成長していける世の中になってほしいです。お店に来てくれる子供達の為に無料のキャンディやアイスを常に用意してあるんです(笑)

お気に入りの場所は?

【南房総】
程よく田舎(笑)ですし、気候も温暖、海も山もあり東京とはまた違う時間の流れが良いんです。2拠点のメリットはその異なる時間の流れを感じられる事かなと思います。

譲れないこだわりは?

【常に楽しむ事】
辛いとか苦しいとか痛いとかネガティブなことが嫌いなので(笑) 何事も楽しいと感じたり、ワクワクしたりする方へ行くようにしてます。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

【両親】
まだ自分の淹れたコーヒーを飲んでもらったことがないので。

最近何に感動した?

最近車(中古車)を買い替えたのですが、今まで乗っていた国産車の使いやすさや性能、燃費の良さは改めて凄いなと(笑)

 

Fancy a refill?
編集後記 

なんとなく苦手意識を持っていたので先日TikTokにチャレンジしてみました。

他のユーザーが投稿した動画を見てみると、冒頭のフックを強く、情報を詰め込んで、最後まで見てもらうトリックも組み込んでといった感じで皆ちゃんと作り込んでるんだなーと感心。ただそんなスキルも、キレキレのダンスムーブも持ち合わせおらず、おまけに天邪鬼な僕は何も起こらない動画を不定期で投稿してみることに。

ご存じの方も多いと思いますが、いわゆるレコメンデーションべースのアルゴリズムの上に成立しているTikTokでは、フォロワーが少なくても動画が拡散する可能性が大いにあります。

実際どうかは分かりませんが、噂によれば、新たに投稿された動画は、行動履歴に基づいてまずは少数のユーザーグループ(グループ1)のフィードに表示され、そこで好評ならばグループ1に属性が近くもう少しサイズの大きなユーザーグループ(グループ2)のフィードに表示され、そこで好評ならばグループ3、4、へと段階を踏んで拡散していく仕組みとのこと。ならば、情報量の少ない動画でも物好きがいれば、いろんな人のスマホに僕のしょうもない動画が現れるのかなと考えたわけです。

具体的には、風に揺れる雑草とか、道ばたで風に舞うビニール袋とか、切れかけでチカチカしている街灯とかその類いのものです(書いててホントしょうもないなと思いました)。すると、フォロワー0でも視聴数が1,000回を超える動画がチラホラあったんですよ。

へーと思って、その後も地道にちょこちょこ動画を上げていたんですが、ある日アプリを開いたら「コミュニティガイドライン違反が複数あったため、このアカウントの使用が永久に利用停止になりました」と……。暴力的、性的なものはもちろんありませんでしたし、人さえ映っていなかったのに……。こんなくだらないもの見せるなって怒った人がいたんでしょうか……?

こうして僕の短いTikTokライフは突如終焉を迎えました。めでたし、めでたし。

Atsushi

 


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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第21号スポンサーのTYPICA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業FAEMA x DKSHSwiss Waterブルートーカイコーヒーのサポートでお届けしました

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)