今回はStandart Japan第14号のパートナーMiiRをご紹介します。同社のことはステンレス製のタンブラーやカップのブランドとして、ご存知のかたも多いと思います。
20歳のときにスキー事故で九死に一生を得た創業者のブライアン・ぺぺさんは、雪原に横たわって救助を待っているときに「もしこのまま死んだら、周りの人は葬式で自分についてどんな風に語るだろう?」と自らに問いかけ、それが彼自身、そしてMiiRの、人と環境を最優先するという哲学へ発展していきました。
その考えは、株主利益の最大化ではなく、従業員やコミュニティといったステークホルダーへの配慮を仕組み化している企業に与えられる「B Corp」認証の取得という形でも表れています。
そしてMiiR最大の特徴でもある、製品と開発プロジェクトを結びつける「Product to Project」について、MiiRの日本総代理店であるサンウエストの立川さんにお話を伺いました。
——こんにちは立川さん。早速ですが「Product to Project」というMiiRの取り組みは一体どんなものなんですか?
これは「取り組み」というよりもMiiRのビジネスの根底にある仕組みのことを指しています。MiiRは毎年収益の3%をさまざまなプロジェクトの支援に拠出しているんですが、私たちの製品を購入してくれた人が自分のお金がどのように使われたかを確認・追跡できるようにもなっているんですよ。だから製品を購入するという行為がプロジェクトの支援になる、つまりは「Product to Project」ということです。
——「プロジェクト」とは具体的にどんなものを指しているんんですか?
私たちのフォーカスは、「綺麗な水」「 健康的な大地 」「強く て公正なコミュニティ」です。なのでこの3つの実現に向けて活動されている方々を応援しています。例えば昨年は、起業家精神の育成を通して貧困撲滅を目指すルワンダのKulaという団体に支援金を贈り、若い女性に仕立の技術や農業ビジネスについて教えるLiddy Women’s Centerの運営にその資金が活用されました。他にも、アメリカのイエローストーン国立公園の保護プロジェクトや、ネパール、インド、中国などに安全で清潔な飲み水を届けるプロジェクトなどを支援してきました。
——MiiRの製品を購入した人はどのようにその様子を確認できるんですか?
MiiRが製造・販売するすべての製品に「Give Code」というコードが記載されているので、購入した人はそのコードをウェブサイト内のプロジェクトページで入力すれば、その製品に結びついたプロジェクトの概要を確認したり、進捗を追跡したりできます。
Give Codeの3ステップ
まずは製品に記載されたコードをチェック
こちらのページからコードを入力すると……
——これまでどのくらいの数のプロジェクトを支援されてきたんですか?
2010年の創業からこれまでに、4万5000人ほどのGiving Members(MiiR製品を購入した人たち)と共に26か国、71プロジェクトを支援してきました。支援金総額は150万ドル(約1.6億円)にのぼります。
詳しくはImpact Reportに掲載されていますが、2019年だけでも5か国、13プロジェクトを支援し、3250人の生活に何かしらの変化をもたらすことができました。
——特に印象に残っているプロジェクトはありますか?
先ほど少しお伝えしたKulaですかね。実はMiiRのメンバーが昨年、ルワンダに行ってKulaファウンダーのSarah Buchanan-Sassonさんにお話を聞いてきたんですよ。
Kulaはルワンダで活動を始めた当初、コーヒーの生産量拡大や品質向上に向けたトレーニングを現地で提供していました。ただその後、高品質なコーヒーをたくさん生産できるようになったけど、それをただ売るだけでいいの? という新たな疑問が生産者コミュニティの中で生まれたそうなんです。 そこからファイナンスや予算組みといったビジネスの基礎知識について学ぶビジネスフェローシップをスタートさせました。MiiRはその2019〜2020年の運営資金4万ドル(約400万円)を支援したんです。
——Kulaのようなプロジェクト運営サイドからはどんな反応があるんですか?
もちろん活動資金が得られて助かるという声もありますが、Buchanan-Sassonさんにお話を聞いてわかったのが、MiiRの短期的なリターンを期待しない姿勢が大事だということです。
彼女たちのフェローシッププログラムは修了までに少なくとも15か月かかりますし、教育の効果ってすぐにはわからないものじゃないですか。MiiRのミッションステイトメントである「Empower people for a better future(より良い未来を目指す人々をサポートする)」にもある通り、ブランドとしての目線は常に遠い未来に向いているので、そこに支援先の方々も共感してくれているようです。
私たちのカスタマイズサービスをご利用いただいているお客様も、製品としての魅力だけでなくそういったMiiRのあり方を評価してくださっている方が多いように感じます。
——そういえば日本でもさまざまなカフェとコラボされていますよね。よくSNSなんかでみかけます。
ありがたいことです。営業日は限られていますが、私たちのショールーム&ストア(毎週木〜日営業)でもMiiR製品を実際に手にとってご覧いただけるので、ぜひご興味のあるはお越しください。
ショールーム&ストアではカリフォルニア州オークランド発のBicycle Coffeeを味わえるので、まずはコーヒーを飲みに行ってみる、という方も大歓迎です。
——立川さん、ありがとうございました!