モダンとトラディショナルの邂逅、最先端の復刻「Adonis」

モダンとトラディショナルの邂逅、最先端の復刻「Adonis」

モダンとトラディショナルが邂逅する瞬間。Victoria Arduinoが1905年に発表した伝説のモデル「Adonis アドニス」シリーズが、時を経て待望の復刻を果たしました。

美しさと性能を両立させた「Adonis」は、カフェやレストラン、ホテル、バーなど、さまざまな空間で存在感を放ちます。伝統の美学と最先端技術が融合した一台は、現代のコーヒーシーンに新たな価値をもたらします。

最先端の技術が市場にあふれる中、トラディショナルなマシンを現代に蘇らせ、ブランドの伝統と革新を大切に守るVictoria Arduino。その哲学や思いを知るべく、本記事では日本総代理店を務めるトーエイ工業に、Adonisの魅力や復刻に込められた背景についてお話を伺いました。

 

1905年に発表された初代「Adonis」は、なぜ“伝説”とされてきたのでしょうか? その設計思想や美学が、今回の復刻モデルにどう継承されているのかも教えてください。

ヴィクトリア・アルドゥイーノは1905年、イタリア・トリノでピエール・テレジオ・アルドゥイーノによって創業されました。機能性と芸術的デザインを融合させたエスプレッソマシンで革命を起こし、ヨーロッパの高級カフェシーンを象徴するブランドとしてその名を広めていきます。
その伝統を受け継ぎ、2001年にヌォーヴァ・シモネリがブランドを買収した後、最初に開発されたモデルが2007年登場の「Adonis」。ギリシャ神話の“美の象徴”にちなんで名づけられたこのマシンは、洗練されたフォルムと高い抽出性能を兼ね備え、ヴィクトリア・アルドゥイーノの美学を見事に体現しています。

内部構造には、当時の「Aurelia」と同じテクノロジーを採用。ボイラー容量とヒーター出力の最適なバランス、PID制御による安定した温度管理が、高い再現性を支えています。また、抽出前にコーヒーを軽く湿らせるHEES(High Efficiency Extraction System)は、AureliaのS.I.S.(Soft Infusion System)に相当し、コーヒーの持つ甘みと香りを最大限に引き出す仕組みです。
当時は、「洗濯の染み抜きだって、最初に濡らしてからじゃないと落ちないだろう」と教わったものです。さらに、「S.I.S.があればタンピングを忘れても大丈夫」と笑い話のように語られることもありました。それほど、このテクノロジーの登場は衝撃的だったのです。

クラシックなデザインの中に革新を宿し、美と機能を両立させた「Adonis」。その存在は、時代を超えてなお、エスプレッソマシンのひとつの理想を示し続けています。

 

なぜ今Adonisが復刻されたのですか? 今回の復刻にあたって、Victoria Arduinoはどのような現場の声やニーズを反映させたのでしょうか。

ヴィクトリア・アルドゥイーノは、BLACK EAGLE MAVERICK、EAGLE ONE、EAGLE TEMPO、E1 PRIMA、VA388 BLACK EAGLE、PUREBREW+、そしてMYTHOSグラインダーなど、スペシャルティコーヒーのお客様に向けた革新的なプロダクトを次々と発表し、スペシャルティコーヒーシーンをリードしています。一方で、「VENUS BAR」や「ATHENA LEVA」といったヘリテージラインの製造も今なお継続しており、ブランドの伝統を大切にしています。

新しいモデルが登場するたびに最新テクノロジーが搭載され、機能が増えていくこともあります。例えば、MYTHOSグラインダーは一時期、回転数まで調整できる仕様になっていましたが、誰もが全てを自由に操作する必要はなく、必要な操作に集中できることが使いやすさのポイントです。

テクノロジーが進化する中で、現場からは「必要なものだけを、より美しく、シンプルに使いたい」という声も増えていました。Adonisの復刻は、そうした声への応答でもあります。クロームアクセントや光を受けて輝く流線型のサイドパネルなど、エレガントな造形がカフェ空間を引き立て、モダンとクラシックが調和するデザインはまさに“タイムレス”。イタリアンエスプレッソ文化の精神を、現代に蘇らせたモデルです。

 

Adonisシリーズの全モデルには、高効率抽出システム・HEES テクノロジーが搭載されています。この技術はどのように抽出プロセスへ作用し、味わいや再現性にどんな違いをもたらしますか?

HEES(High Efficiency Extraction System)は、抽出前にコーヒーパック全体を軽く湿らせることで、粉の膨張を均一化し、チャネリングを防ぎます。その結果、よりクリーミーでバランスの取れたエスプレッソが抽出されます。バリスタが多少タンピングを変えても安定した結果を得やすく、再現性の高さにもつながっています。

 

Adonisは、レストランやホテルバーなどエスプレッソを主軸としない業態にも多く導入されています。そうした現場における有用な機能や、使い勝手の工夫にはどんな特徴がありますか?

Adonisは、美観と機能の両立を目指して設計されています。特に人間工学(エルゴノミクス)の観点から、操作性と安全性に配慮しており、バリスタが長時間使用しても快適に効率よく作業できる設計になっています。

 

Victoria Arduinoは、Eagle OneやMaverickといった革新的なモデルから、Adonisのように伝統と最先端を融合させたモデルまで、多彩なラインナップを展開し続けています。そうした常に進化するブランドと向き合う中で、日本の総代理店として御社は本国とどのようにコミュニケーションを取り、製品の背景や思想を理解・共有しているのでしょうか?

私たちが取り扱うブランドの中でも、シモネリグループは特に開発への情熱が強く、常に新しいテクノロジーを生み出し続けています。開発スピードが速い分、私たちも常に学び続ける必要がありますが、彼らは製品の背景や思想をセールス・技術トレーニングの中で丁寧に共有してくれます。

年に何度も彼らが日本に来て研修を行い、私たちもイタリアへ足を運ぶことで、彼らの意図を理解し、ディストリビューターとしての経験を積みながら、互いに理解を深めてきました。今では強い信頼関係のもとで、日本国内でのシモネリブランドを育てています。

 

日本市場でVictoria Arduinoを展開する上で、難しさや工夫している点はありますか?

開発意図と実際の市場ニーズが異なることも少なくありません。たとえば、海外では特定の競合モデルを意識した設計でも、日本では別の層に支持されることがあります。そのため、私たちは「聞くが、鵜呑みにしない」姿勢で製品を理解し、日本の文脈に合わせて伝えるようにしています。

とはいえ、シモネリはマーケティング面でも非常にしっかりとブランドをリードしてくれる存在です。自由度のある中で、ブランドイメージを損なわないよう慎重に展開しています。

 

この記事はStandart Japan第33号のパートナー、Victoria Arduino X トーエイ工業の提供でお届けしました。Adonisに関する詳細は、こちらのリンクよりご確認ください。