#98: 茶会、配管、コーヒー

#98: 茶会、配管、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか? 

いつも楽しみにしている、酒や酒カルチャーを伝えるメディアPUNCHのニュースレターで、気になる記事が紹介されていました。「It’s Time to Decolonize Wine」と題された記事で、ニューヨークでワインプロフェッショナルとして働くMiguel de Leon氏によって書かれたものです。

ジョージ・フロイド氏の死をきっかけに全米や世界を巻き込んで起こったBLM運動の真っ只中に投稿されたもので、フィリピン生まれのアメリカ人として、ワイン業界に根強く残る人種差別を訴え、業界の脱植民地化を願う言葉を綴っています。そこには黒人以外の人種や性別的な差別(BIPOCやLGBTQ+)の切実な声が掲載されていて、コーヒー業界で今議論されているようなことがワイン業界にもあるのだなと、当たり前のようなことを改めて認識しました。

最新号のStandart Japanには「コーヒーの歴史の立つ植民地化」、「コーヒーを(再び)ブラックに」、「新たなオリジンストーリーを求めて」といったコーヒーの歴史を振り返りながら、現在の業界の構造や現状を少しでも理解するための記事を掲載しています。コーヒー業界は、生産方法から品質の評価、そして販売方法まで、ワイン業界を年上の兄弟姉妹のように慕い尊敬していますが、同時代的な目線や考えで二つの業界を眺めると気づいていない同様の課題が浮かび上がってくるのかもしれないなと感じています。

このニュースレターを読んでくださっている皆さんは、コーヒー業界だけでなく、さまざまな業界で活躍されていると思います。Standartを読んだり、異なる視点に触れることで、ご自身が活躍される業界でも新しい気づきやひらめきが生まれるかもしれませんね!

ちなみに、ジェンダーの話題では、ひつじ珈琲の珈琲研究室のOmoriさんが彫刻家・西村大喜さんとStandartとジェンダーをトピックにディスカッションしてくださっていますこちらはしっかり編集されていて見応えバッチリなので、コーヒーブレイクにぜひ。

最後に、今週のStandart Japanは、次号の校了が迫ってきたので、テキストをレイアウトに入れたドラフトを読み込んでいます。何度も読み返し、テキストからビジュアルまでを何度も調整していく、雑誌の制作で一番集中して机とパソコンに向かう期間です。(地味だしコーヒーはたくさんのむし、腰やお尻が痛くなります) その合間に、ニュースレターの100回目に備えて企画を考えたり、最新号をサブスクライバーの皆さんに発送したり、今年こそはということでStandartのチームギャザリング(メンバー全員が顔を合わせる機会)を予定して飛行機の予約などしたりと、濃い目の1週間でした。来週も続きそうです。

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi



 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

未熟さに宿る可能性

コーヒーを収穫するときは、コーヒーチェリーの熟度の見極めがピッカー(摘み手)の腕の見せ所と言われます。しかし個々のチェリーの成熟タイミングは異なるため、すべてを最適な熟度で収穫するのはほぼ不可能というのが現実。そこで未熟なコーヒーチェリーを活用するために、あるプロジェクが生まれました。

未熟なコーヒーチェリーから取りだした豆は渋みが強まりやすいという欠点を抱えているものの、チェリー自体は熟したチェリーよりも抗酸化物質を豊富に含んでおり、健康面でのメリットがあります。ブラジル在住の研究者ブレム氏は、大手アグリビジネス企業に協力を仰ぎながら、未熟なコーヒーチェリーについて5年間も研究を重ねた結果、未熟なチェリーから取りだしたコーヒー豆の品質を改善する、ポストハーベスト技術の開発に成功しました。これにより、課題であった渋みを抑えられ、中にはカッピングスコアが5点上がったコーヒーもあったそうです

単にコーヒーの風味を改善するだけでなく、抗酸化物質が豊富に含まれるという未熟なチェリーの特徴を活かし健康志向な消費者向けの商品として売り出すアイディアも生まれているよう。これまではお金につながりづらかった未熟なコーヒーチェリーの商品価値が向上し、最終的には農家の収入アップ、と新たな好循環が生まれる予感です。

 

気になるニュース

▷ 米・ワシントン州で、フードスタンドにも給排水設備の設置を義務づける新たな規制が導されましたが、突然のルール変更に見舞われた店舗運営者たちは、大規模な抗議活動を実施。最終的に、同州保健局はメニュー内容に応じて義務を免除する、規則改定を発表しました。

▷ パキスタン政府が、外貨準備高の減少を受けて、国民に紅茶の消費を抑えるよう呼びかけちなみにパキスタンは世界最大の紅茶の輸入国。幸か不幸かコーヒーはまだその対象になっていないようです。

▷ コーヒーの出がらしと植物性素材でできたリユーザブルカップ「The Kreis Cup」が、クラウドファンディングで目標額に到達軽くて丈夫なだけでなく、食洗機にも対応していることから、店舗での利用も想定されています。

▷ スターバックスが、従業員のメンタルヘルス悪化を理由に顧客以外のトイレ利用を再び禁止する可能性が浮上。2018年に、米・フィラデルフィアの店舗でトイレを使おうとした黒人男性2人が逮捕された事件以降、同社では商品を購入しない人でもトイレ利用を認めていました。

▷ オールインワンの情報管理ツール「Notion」が、NYにーヒーカートを期間限定出店。企業とユーザーが交流する場にもコーヒーは必須かも?

物足りないあなたへ

FellowがシリーズBラウンドで約40億円の資金調達に成功。米・シアトルの観光名所スペースニードルが、ロゴの盗用をめぐって地元コーヒーチェーンを告訴。Weekenders Coffeeがホストとなり、京都・廣誠院にてコーヒーセレモニ (コーヒーのお茶会)が開催予定です。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

ROLE PLAYING COFFEE. 佐賀(地図

佐賀駅のすぐそばにある、オレンジ色が印象的なコーヒスタンド・ロースター。自家焙煎の珈琲は浅煎りだけではなく、深煎り珈琲も人気で地方の方はもちろん、県外からの来客も多く『佐賀のコーヒーロースターも良いところがある。』そう思って頂けるように、日々美味しい珈琲を求めています。オープン3年目となる2022年は、世界チャンピョンバリスタのコンサルも導入し、全国のコーヒーラバー達へ、佐賀にも美味しいコーヒーロースターがある事を広めるため活動しています。

 

生産者 Y.C.F.C.U. (Yirgacheffe coffee Farmers Coop.Union)

生産地域エチオピア 南部諸民族州ゲデオ県 イルガチェフェ (地図

品種エチオピア原種

精製方法
ナチュラル

テイスティングノート
アプリコット、ブルーベリー、プラム、ストーンフルーツ、ブライトアシディティ、クリーン、ティーライク。ナチュラルらしいアプリコットやブルーベリーのようフルーティーさ、ストーンフルーツを思わせる甘さ、質感。そして温度帯が下がるにつれて感じる、紅茶のような風味で楽しませてくれる。そんな印象を持った珈琲です。

編集長のコメント:

先週に続きエチオピアです。お湯を注いだカッピングボールから香るのは、同じエチオピアでも全然違うアロマ。少し落ち着いた雰囲気で、どこか桃のような甘さを空気に感じます。一口啜ると、香りと共に桃のフレーバーが口に広がります。しっとりとした印象の味わいで、舌に馴染んでいくのがわかります。ブルーベリーのジューシーさ、甘さ、そして爽やかな酸を感じ、ふくよかなボディが全体のトーンをうまく包むようにまとめ上げていて、バランスがすこぶる良いです。山の中のフカフカの土を捲ると香ってくる、いい土の香りも後味に少しだけ感じました。すると、随分昔の記憶、福岡の糸島でブルーベリー狩りに行った時の土や木の香り、枝からコロリと取れた実を指先でつまみながら口に押し込み広がった味わいが、頭の後ろの方にふわり。落ち着いて飲めるとってもクリーンなナチュラルでした。ごちそうさまでした! ちなみにYCFCUは、変動するコーヒーの市場価格の安定や技術などの支援などを目的として2002年に誕生したコーヒー農業団体の組合だそうです。


Artists in Residence
Standartを彩るアーティストたち

アーティスト: 

リタ・ハーパー  ウェブサイトInstagram

プロフィール:

ジョージア州アトランタ出身のドキュメンタリーフォトグラファー兼フォトジャーナリスト。労働階級の黒人や有色人種をはじめ、社会から見過ごされやすい人々の物語を共有する機会を創ること。そしてその過程で美しく、生々しく、親しみやすく、それでいて魅惑的なアートの創作を目指す。

最新の掲載記事:

Standart Japan 第20号 「コーヒーを(再び)ブラックに」

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

40歳の解釈:ラダの場合

女優/脚本家/コメディアン/ラッパー/フィルルメーカーと、多彩なラダ・ブランクが自分の実人生をベースに架空のキャラクター「ラダ」を作りあげ、自ら演じた映画。ストーリーラインや解説などは、ここで書くよりも詳しくはこのリンク先の記事を読んでもらうとよく分かります。ラダはニューヨークに暮らす劇作家で、もうすぐ40歳になる黒人女性。昔は将来を熱望されていましたが、今はしがない演劇ワークショップの先生として働きながら、自分の作品を世に送り出したいと願っています。ですが人種の壁に阻まれ、うまく行かないことに憤りを感じたり、隠しきれないやるせない気持ちが画面を通じて伝わってきます。その気持ちを晴らすようにラップをするわけですが、40歳のシングル女性の視点で彼女の口から次々に吐き出されるバースは、どれもリアル。そしてコミカルかつシニカル。「FYOV(Find Your Own Voice)」ラストシーンでかまされるパンチラインにガツンときます。クライマックスまでアップダウンのあまりない淡々と進む映画ですが、白黒の映像の先に広がるNYの日常の景色と、HipHopのビートと、心地のいい映画でした。日曜の夜にぜひ。



Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

境 朱里 aka heyshuri

1991年大阪生まれ。20代前半は外資系アパレル販売員、20代後半からは新しい価値観を求めてコーヒーの道へ。コーヒーを通じたヒト・モノ・コトとの出逢いや可能性にすっかりハマり、2022年4月より自身のコーヒーショップ heys を大阪堀江にオープン。趣味は映画とコーヒーと料理。

5 questions

今気になっている問いは?

「人生とは。」
2022年は半年の間に大きな決断を2つもしたから。自分らしい道を選ぶことは時に大変なことだけど、自分の人生なので精一杯楽しみたい!せっかく生きているのなら損得よりも自分が好きなことや信じるものを大切にしたい。過去に病や辛いことをたくさん経験したので振り切って考えて決断できるのかも。一人間としての人生を考えるとき、”ジェンダーレス” や ”女性が働きやすい社会”その言葉自体に違和感を感じます。そしてその人らしく生きている人にとても魅力を感じます🌈

お気に入りの場所は?

「自宅の窓際」
最近引っ越した部屋の大きな窓の下のカウンターに腰掛けてコーヒーを飲みながら本を読んだり街を眺めるのが好き。
「heysのテラス席」
heysが併設しているワークスペースCUEにはテラス席があり、朝11時ごろに差し込む光が最高に気持ち良いです。隙あらば仕事してるフリして太陽を感じてます。笑
「Williamsburgの川沿い」
過去に旅行で行ったニューヨーク。マンハッタンに落ちる夕日をブルックリンのウィリアムズバーグの川沿いから眺めたのが(映画で何度も見ていた景色!)最高の思い出。今はドミノパークという公園になっているそうなのでまたゆっくり再訪したい。

譲れないこだわりは?

自分のごきげんを取るために身につけるものは昔からこだわります。カラフルなものや柄ものが好き(大阪人やからってことちゃうで!)。毎日着る服も着こなし方を変えて何年も愛用しているものが多いです。お気に入りはずっとKATE SPADE SATURDAY!
あと、パジャマは大体テロテロした素材の可愛いやつ。朝起きてブサイクな自分を誤魔化したくて。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

竹野内豊さん。やっぱり大槻一人さん。
冗談です。笑
仮想なら、天国にいるおじいちゃんと私が淹れたコーヒーを飲みたい。現実なら、コーヒーショップやカフェ、ジャンル問わず都市問わずお店を経営している先輩方とご一緒したいです!

とっておきのレシピは?

「餃子!」
豚ひき肉+パクチーの具材で、タレはラブパクで。マグロのたたき+大葉の具材で、タレはポン酢で。月に一度は包んでます。中華を食べた後のコーヒーって美味しいんですよね。

 

Fancy a refill?
編集後記 

二度寝した後にふと思ったのですが、休日って「休む日」と書くんですね。最近バタバタする日が続いてたので、ちょっと心に留めようと思います。

ちなみに休憩って、「身体を休める憩いのひととき」って書くのか、最高。

 

Takaya

 


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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第20号スポンサーのFAEMA、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAProbatセラード珈琲MiiRのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)