#9: 小さな行動がもたらす大きなインパクト

#9: 小さな行動がもたらす大きなインパクト

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

カリフォルニアのサンタクルーズ郡では現在、落雷が発端となった山火事が急速に拡大しています。日本のコーヒー業界からも様々な支援活動が行われた、オーストラリアで起きた山火事が記憶に新しいですが、COVID-19が蔓延する中での避難や消防活動は困難を極めている様子。サンタクルーズにあるCat & Cloudというロースターのポッドキャストで現在の様子を聞くことができます。日本にいると山火事がどんなものか想像がつきにくいのですが、実話を基に描かれた「オンリー・ザ・ブレイブ」という映画を観ると、その恐怖や現場で戦っている消防隊の姿を知ることができるのでおすすめです。

日本では、記録的な超大型の台風が沖縄地方に接近し、今日から明日にかけて九州や中国・四国に上陸または接近するとのこと。福岡在住の編集長のToshiも家で篭城中です。この他にも水害や熱波など、今年は踏んだり蹴ったりな年だと思っていましたが、まだまだ続きそうです。皆さんもなにかと気をつけてくださいね。

引き続き自宅にいる機会が増えている人も多いと思いますが、そんな方に朗報です。新潟にあるコーヒーとケーキのお店 THE COFFEE TABLEが、お店の定番焼き菓子バナナブレッドのレシピを動画で公開しています。お店のレシピを公開するのは、きっと勇気がいりますよね。ぜひこの機会に挑戦してみてください。

今週のStandart Japanは、記事の撮影や執筆・翻訳など、次号の制作業務を進めていました。近々久しぶりにインスタグラムでライブをやろうと思うので、Standart Japanのインスタグラムをチェックしていただけると嬉しいです。新しい誌面デザインについてや、皆さんのご質問などにお答えしたいと思っています!

Toshi & Atsushi

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

今バリスタに求められていること

The Weekend BrewではCOVID-19がコーヒー業界に及ぼしてきた影響について、これまでさまざまなニュースを取りあげて来ました。そのまとめとも呼べるような全体を俯瞰した記事がドリンクメディアimbibeに掲載されています。生産者からバリスタまでサプライチェーンのさまざまなポイントで働く人たちのインタビューを基にまとめられたこちらの記事。特に気になったのが、バリスタに求められるものの変化です。

病害虫の発生や紛争、不安定な政況といった問題と今回のパンデミックの大きな違いは生産国と消費国両方がほぼ同時期にダメージを受けているという点。生産国では労働力不足や物流の混乱といった課題に取り組みながら、どうにかコーヒーの収穫・販売を継続しようと努力が重ねられています。しかしどれだけ供給量が維持できても、消費量が落ち込んでしまっては単価も総売上も減少してしまいます。

とはいえ、世界中でリモートワークが推進されるなか、特に自宅外でのコーヒー消費量は減少傾向にあるというのはこれまでにもお伝えした通りです。この記事では、そんな状況の中消費量の減少幅を縮めるために、消費者と直に接するバリスタに求められることが変わりつつあると書かれています。具体的にはお客さんが安心感を持てる環境づくりや接客、物理的な距離を保ちつつできるだけ接触を減らすオペレーション、イレギュラーな事態に対応できる臨機応変さなどが挙げられています。さらに衛生に関する基礎的な知識や、自宅でのコーヒー消費量が増えるなかで抽出方法を教えるスキルなども今後さらに重要になってくるでしょう。

 

コーヒーで社会貢献活動

コーヒーを通じて社会に変化をもたらそうとする企業や組織が増えてきています。例えば、ロンドンを拠点とするChange Please。社会問題の解決を目的として収益事業に取り組む「ソーシャルエンタープライズ」の同社は、すべての利益をホームレスの支援に投じています。コーヒー1杯から生まれる利益は100%、ホームレスの人々がバリスタになるためのトレーニングや彼らにとってトレーニング後の職場となるコーヒーカートの購入・整備に使われているのだとか。

また、コーヒー豆の販売を通じて継続的なチャリティ・支援活動を行うコーヒーロースターもあります。コーヒーの売り上げの一部を小児ホスピスへ寄付しているシドニーのコーヒーロースターSeven Miles の取り組みや、人種差別や暴力の被害にあった少年少女を支援するNPO団体と協力して、社会にポジティブな変化をもたらそうとしているフロリダのロースターBold Bean Coffee Roastersの取り組みなど、コーヒーショップによる新しい地域貢献の可能性に気づかせてくれます。

上記以外にも、シングルマザーの就職支援、自殺防止とメンタルヘルス教育、動物福祉などにフォーカスした社会貢献に軸を置くコーヒー事業もこちらの記事で紹介されています。毎日飲んでいるコーヒーをどこで飲むのか、そしてどこから買うのか。この小さな選択が、世界を変える力を持っているのかもしれません。

 

その他の気になるニュース

▷ ワールドコーヒーリサーチ(WCR)の初代CEO Timothy Schilling氏が、SCAサステイナビリティアワードを受賞。WCRの結成時の話や歴史、課題、そして現在進めているエスプレッソに適した生豆を生産国で評価するプロトコルの開発についてインタビューに答えています。

▷ 米国のコーヒーサブスクリプションサービス Tradeが900万ドル(約9億5千万円)の資金を調達。国内約60軒のロースターから購入する豆を選べるサービスで、2018年からこれまでに100万個のコーヒーバッグを販売。この半年でさらに100万個の販売を予測しています。

▷ シンガポール・スペシャルティコーヒー協会がバーチャルオークションの開催を決定。アジアと中東から200人ほどの入札者がオンラインで集まり、12の異なる国々の生産者45人によって生産されたスペシャルティコーヒー(56ロット)が競売にかけられます。

▷ コーヒー農家のフードセキュリティ問題に取り組むFood 4 Farmersが、クラウドファンディングプラットフォームのGrow Ahead と共に、コロンビア・グアテマラ・ニカラグアの原住民と女性からなる農業組合を支援する3つのクラウドファンディングを開始

▷ 夏の夜の暑さを吹き飛ばすホラーなショートストーリー「The Panel」。 The Chocolate BaristaのMichelle Johnsonが人種差別をテーマに、稲川 淳二ばりの背筋の凍る怪談を披露します。記事ポッドキャストどちらでも楽しめますよ。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

フジヤマコーヒーロースターズ 
山口

「本当に美味しいコーヒーをもっと日常に」をスローガンに、スペシャルティコーヒーのみを取り扱う、山口県を愛する夫婦が営むコーヒー屋さん。ロースターの藤山 博康さんはJCRC全国入賞、バリスタの藤山 舞さんはJBrCの全国入賞の経験を持つ。山口県柳井市に2店舗を展開中。

生産者:
Irmas Pereira農園 Maria Valéria e Maria Rogéria Pereira (マリア・ヴァレーリア&マリア・ペレイラ姉妹)

生産地域:
ブラジル・Carmo de Minas, Minas Gerais(地図


品種:
Gesha

精製方法:
ナチュラル

テイスティングノート:
穏やかで、優しいライムやマスカットを思わせる風味 まろやかな口当たりで、冷めても甘さが持続します。

編集長のコメント:
お湯を注ぐと、閉じ込められていたバニラの樽香やホワイトチョコのような香りが立ち上り、鼻から体全体をめぐるような感覚がありました。一口含むと、本当に柔らかい丸みを帯びた味がじわじわと広がり、ずっと続いていくような長く甘い余韻が楽しめます。温かいうちは少しコーラのようなニュアンスも。ごほうびすぎる一杯でした。農園の様子をYoutubeで見つけました。


Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

映画「Baristas」 - Rock Baijnauth
視聴レビュー

2015年にリリースされたドキュメンタリーフィルム「Barista」の続編となる「Baristas」。前作ではアメリカ・バリスタ・チャンピオンシップに挑戦する5人のバリスタ達を追ったものでしたが、今作の舞台はワールド・バリスタ・チャンピオンシップ。2017年にソウルで開催された大会に挑戦した各国の代表4名、Kyle Ramage (アメリカ)、 鈴木 樹(日本)、Chloe J. Nattrass (ドイツ)、Niall Wynn (アイルランド)にフォーカスを当てています。丸山珈琲の鈴木 樹さんがほぼ主役と言っても過言ではないくらいの構成となっていて、日本のコーヒーファンなら冒頭からテンションが上がりまくるはず。かなりポップにまとまっていてテンポもよく、一人一人の感情やストーリーが絡み合って最後の大会のシーンに繋がっていく構成は見応えバッチリ。決勝の会場で実際に競技を見ていたこともあり、まるでその場にいるかのような興奮が蘇りました。あらゆるものを犠牲にしてパッションを追い求めるバリスタたちの葛藤や強い意志は、観た後に必ず何か熱いものを心に残してくれるはずです。 — Toshi 



はじめての短歌 - 穂村 弘
Amazon

もともとサラリーマンと歌人という二足の草鞋を履いていた穂村弘さんによる1冊。一般の人が作った短歌と、それを”改悪”したものを並べ、なぜ前者が歌として優れているかを解説するという構成で書かれているのですが、タイトルが良い意味でミスリーディング。そもそも僕は、短歌に興味を持ってその概要を学ぼうとこの本を購入したんですが、正直短歌というフォーマットよりも言葉に関する考え方や、現代社会における価値基準についてなどもっと広い範囲の学びがありました。特に感銘を受けたのが、「生きのびること」と「生きる」ことを分ける彼の考え方です。すごくおおざっぱに言うと、お金のように誰にとっても価値があるものは「生きのびる」ためのものであり、そうではないものが「生きる」ためのもの、そして良い歌とは生きている人の息吹が感じられるものだというのが彼の主張です。主体に注目すると、生きのびるための活動の主体(例:仕事上の役職)は代替できるけど、生きる活動の主体(例:夫)は代替できない、そして誰もがその両方の立場で二重生活を送っていると彼は言います。ビジネスの場では客観性や効率が求められる場面が多いことから、つい私生活にもそのような考えが浸食しがちですが、この本を読むと「分かりづらい」ことや「無駄」なことへの見方が変わるかもしれません。 — Atsushi


Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

柴田 圭介

北海道札幌市にあるSalvador Coffeeのオーナーバリスタ。コーヒーの面白さを常に全力で伝えている。北海道のクラフトビールにハマり、自身のコーヒーとコラボしたビールをいつか飲んでみたいと思っている。

セットアップ:
抽出器具:Aeropress
豆量:22g
湯量:78g (加水あり)
挽き目:細挽き(深煎りは中挽き)
湯温:98度(沸騰直後)
抽出時間:40秒(浸漬30秒・プレス10秒)


手順:

  1. 約78gのお湯を先入れ(インバート推奨)
  2. 粉を入れ、キャップをしてタイマースタート
  3. 約20秒本体をぐるぐる回して中身を攪拌
  4. 一気にPRESS!
  5. 好みの濃度になるまで加水してください

      ポイント:
      アウトドアだとスケールが無いこともありますよね。豆は事前に計って小分けにしておき、チャンバー内に収納するとスマートです。チャンバーをセットして④の下辺に合わせた時、AeroとPressの間が湯量78gラインです。先入れのお湯が抜けないよう、インバートで抽出しましょう。

      一言:
      氷点下30度の雪上で飲むコーヒーは極上の美味しさです!でも、寒さで死んじゃうかと思った!ぜひ札幌・Salvador Coffeeの豆で、アウトドアエアロプレスを楽しんでみてくださーい!


      今週のThe Weekend Brew はいかがでしたか?

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      今週の Weekend Brew は Standart Japan 第13号スポンサーの Daterra、パートナーのトーエイ工業Swiss WaterDepartment of Brewlogy のサポートでお届けしました。

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      Standart Japan