#34: ミモザ、哺乳瓶、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

今週聞いたポッドキャストAdventures In Coffeeで、特別なフレーバーを持つコーヒーと農家のストーリー、どちらが消費者の選択により強い影響を与えるのかをテストするというエピソードがありました。コーヒーに詳しいわけではない一般的なコーヒードリンカーに対して、ホストの2人がそれぞれプレゼンを行い、どちらのコーヒーを選ぶのかというテストです。

一方のホストは、豊かなフレーバーを持つゲシャ種を選択。このコーヒーを焙煎したロースターからテイスティングノートを聞いてプレゼンし、産地情報などは一切伝えずに飲んでもらいました。もう一方のホストは、コロンビアのコーヒー(あえてカップスコアがそこまで高くないもの)を選択。農家から直接聞いたライフストーリーを中心に時間をかけて熱心にプレゼンしてから参加者にそのコーヒーを飲んでもらいました。

さあどっちが勝ったと思いますか?
テストに参加したコーヒードリンカーは、比較的あっさりとゲシャ種のコーヒーを選びました。理由は単純に、おいしかったから。

たしかに農家のストーリーには訴えかけるものがありましたし、知ることができてよかったとも思いました。ただ、直接農家の方と話をしたホストが感じた感情や繋がりまでは伝えきれなかったようです。この実験はあくまでひとつの例に過ぎませんが、消費者にコーヒーの背景にあるストーリーを伝えて共感してもらい、さらにそのコーヒーを選んでもらうことの難しさを物語っています。

コーヒーの世界には、まだ人の目や耳に届いていない大切な声や物語(今回のケースのような)、業界の課題など、伝えられるべきものが無数に存在します。そこにスポットライトを当てるのがStandartのミッションです。ポッドキャストでも語られていましたが、こういったストーリーに触れる機会を増やし、まずは興味のある人に知ってもらい、時間をかけて背景を伝えていくことで、コーヒーをもっと発展させて未来に繋げていくことができるのだと改めて感じました。

編集長 Toshi

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

Message

リーダーシップ/コミュニティ開発を通じ、コーヒー業界全体の女性のエンパワメントを図る非営利団体International Women’s Coffee Alliance (IWCA)。昨年12月、同団体は27個目の支部となるUS Women in Coffee Associationを設立。また先月にはCOE共同創設者兼ACE常任理事のSpindler氏をボードメンバーに迎い入れるなど、同団体の今後のさらなる飛躍に期待が高まります。

IWCAの大きな特徴は、生産国だけでなく消費国を含むコーヒー産業全体の女性のエンパワメントを志向する点。そのためIWCA各支部は、本部が定めた業務をただこなすのではなく、各ローカルコミュニティが直面する課題に対し、独自のイニシアチブと連携を行う地方分権体制で運営されていますBoss Barista#138の中で、IWCA副理事長Mansi Chokshiさんは、他地域での成功例や個人的利益ではなく、コミュニティ開発には「各コミュニティがどのような助けを必要としているのか」を知ることが不可欠であると語っています。過程のための過程ではなく、より良い未来の実現に向けた過程を歩むためには、常に当事者コミュニティの声に基づいた行動が問われているのです。

ちなみに今週の月曜、3月8日は、女性のエンパワメントとジェンダー平等に向けた活動を祝う「国際女性デー」でした。イタリアでは「ミモザの日」とも呼ばれ、男性が女性にミモザの花を渡す風習がある一方、近年では女性コミュニティの結束やリスペクトの意味を込め、女性同士でミモザの花を渡し合うことも。常に当事者の声が社会に反映されるジェンダー平等の未来こそ、ミモザの花言葉の1つである「思いやり」が咲き誇る社会なのだと感じてなりません。

 

所有から共有へ

AIを用いたコーヒーの品質評価・管理システムを開発するフードテック系スタートアップDemetriaが、約3億円の資金調達に成功。同システムの仕組みは、まずポータブル赤外線センサーを使ってコーヒー生豆のサイズや外形、色、含まれる有機物などを測定。その後AIを使って、収集したデータと人間のカッパーによる過去の官能評価とを照合することで、実際にカッピングせずとも生豆の品質を評価できるというもの。既にコロンビアでの試験運用に成功しているそうで、現在コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)と連携し、品質管理から適切な価格設定までを行うアプリの開発も進んでいます。

Demetriaが目指すのは「カッピング技術の民主化」です。現在は生産国のエクスポーターや消費国のインポーターで働く専門家(カッパー)が生豆の品質評価を行うのが一般的ですが、小規模農家の大半はカッピング技術を養うリソースを持ち合わせておらず、自分たちで品質を評価することが難しい状況にあります。しかし同システムを導入すれば、専門家と同じレベルで品質評価ができるようになり、将来的には生豆を販売する際の価格交渉の材料にも使えるようになるとのこと。

今回の事例は、かつての帝国主義的な「生産国」、「消費国」という枠組みに対し、テクノロジーの力によって産業構造の再構築化を図る動きであると捉えることができます。技術の発展を常に共有をベースに考える思考こそ、公正な世の実現には不可欠なのです。

 

その他の気になるニュース

▷ コーヒードキュメンタリーポッドキャストFilter Storiesが、計6エピソードからなるコーヒーの歴史にせまるシリーズ制作を発表。既にエピソード1は配信中、気になる方はこちらから

▷ ドバイに引き続きオマーンで、近年流行している哺乳瓶でのコーヒー提供を禁止へ。なんでも中東諸国のトレンドだそうで、禁止理由は感染防止以上に国の伝統や価値に反するからとのこと。

▷ カリフォルニア州南部のコーヒー生産が盛り上がりを見せています。昨年だとサン・ディエゴ産のゲシャ種が販売されており、生産チームを率いるのはなんと「I’m Yours」でお馴染みのシンガーJason Mraz

▷ お店にふと足を踏み入れると、お客さんは自分だけ。注文から料理完成までは45分、内20分はシェフが調理を中断しアニメを見る始末。しかし最終的には「接客には改善の余地有りだが、その可愛さがゆえにもう一度訪れたい」とのレビュー。果たしてそのお店とは?

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

CORSICA COFFEE DEVELOPMENT 
香川

「なるべく手を加えず、できるだけ損なわないように」をコンセプトに、香川県高松市で2011年にオープンしたスペシャルティコーヒーのお店。スペシャルティコーヒーのさらなる普及を目指して、CAMPFIREにてクラウドファンディングにも挑戦中

生産者:
カミーロ・メリサルデ(サンチュアリオ農園)

生産地域:
コロンビア カウカ県ポパヤン(地図

品種:
イエローブルボン

精製方法:
ブラックライムハニー(ハニープロセスにモストジュースと呼ばれるコーヒーチェリーの果汁を加えて嫌気性発酵させた農園独自の生産処理です)

テイスティングノート:
ライムシロップ、オレンジピール、ブライトシトリック、ハニー、ロング&スイートアフターテイスト、スムース

編集長のコメント:
エキゾチックという言葉が、ここまでしっくりくるコーヒーがあっただろうかというくらい、どこか異国の地を感じさせてくれるコーヒー。いやむしろ、コーヒーというよりもうこれは強烈なハーブやスパイス、そしてフルーツ感のあるティーなのかもしれません。昔イスタンブールで飲んだフレッシュでフレーバー豊かなブラックティーが、フラッシュバックのように頭に流れ込んできました。香りからフレーバーまで一貫して強く感じたのはレモングラス。そして八角のようなニュアンスも。鮮やかな酸味と強い甘さが絶妙にバランスを取り合っていて、いやらしさのない個性が見事としか言いようがありません。後味を表現する言葉がずっと思いつかずもやもやしていたのですが、今このコメントを書いている最中に降りてきました。これはモヒートだ! 


Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

LOCKET
Instagramインタビュー

LOCKETは、企画・取材・執筆・撮影・編集・流通を一人で行う編集者 内田洋介さんが発行する独立系旅雑誌(デザインはYunosukeさん)。「姿なき価値観、主観的な真実を追いかける」とウェブサイトにあるように、ページを開けば、内田さんと共に旅に出ているような感覚にさせてくれます。最新号の4号はコーラ特集で、コーラを切り口に旅や文化、思想や歴史までも読み解いていく構成に思わずページをめくる手にも力が入りました。写真も秀逸で、全編に渡ってフィルム写真が使われていて、まるでその現場にいるような気持ちにさせてくれます。グラフィックデザインや紙質もインディペンデント雑誌ならではの遊び心があり、手間隙もかかっているのが伺えます。例えば最新号では、表紙に謄写版の手法で赤いインクを使ったコーラのイラストをひとつひとつ手作業で刷っていたり。同じ独立系媒体を発行するものとしてただただリスペクトするばかりです。バックナンバーは売り切れているみたいなので、クラフトコーラの作り手のインタビューや自家製コーラレシピなども載っている最新号、ぜひ書店やネットでチェックしてみてください。海外へ気軽にいくことができなくなった今だからこそ、旅をテーマとしたLOCKETのような雑誌が世界と自身を繋げ、内にこもりがちな気持ちを外へと誘ってくれます。コーヒーもそうですが、コーラほど世界中で味を共有できるものってなかなかないかもしれません。


Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

成沢 勇佑

Single O Japan バリスタトレーナー。すごく気に入ってるカセットプレーヤーで音楽を聞くことが好き。

セットアップ:
抽出器具:AeroPress - invert style
豆量:12g
湯量:200g
挽き目:wilfa「aeropress」
抽出温度:沸騰してから5分ほど経過したものを使用
抽出時間:3分前後

手順:

  1. 100gまでお湯をいれて5回攪拌
  2. 1分経ったら200gまでお湯をいれて5回攪拌、フィルターをつける
  3. 2分経ったらフィルターを外して、上の茶色い泡を取り除く
  4. 再びフィルターをしてひっくりかえして3分までに押し切る

      一言:
      今回は僕が自宅でコーヒーを淹れるときのレシピを紹介させていただきました。 現在Tasting Barは休業中で直接皆様にコーヒーを提供する機会はありませんが、私たちのコーヒーパートナーの方々のもとで飲めますし、オンラインショップも営業していますのでもしよかったら見てみて下さい!


       

      今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?

      大阪にあるLilo Coffee Roastersの中村 圭太さんが、インスタライブで第15号を紹介してくれていました! 去年スタートし、Standart Japan編集部もいつも楽しみにしている中村さんのインスタライブ。それぞれの号の内容やご自身のStandartの楽しみ方などを、いつもノーカットとは思えない滑らかなトークで発信してくれています。アーカイブはYouTubeで視聴できるので、こちらもぜひ。

      バックナンバーを含め、The Weekend Brewの感想やコメントはぜひ #standartjapan のハッシュタグと共にシェアをお願いします! 質問はメールでお待ちしております。またお友達やご家族など、The Weekend Brew を一緒に楽しんでもらえそうな方にこのメールを転送していただけると嬉しいです。

      Standart JapanのウェブサイトInstagramFacebookもぜひチェックしてみてくださいね。

      今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第15号スポンサーの 兼松株式会社、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業Paradise Coffee RoastersPrana ChaiTypicaのサポートでお届けしました。

      LOVE & COFFEE✌️
      Standart Japan
      (執筆・編集:Takaya & Atsushi)

      #34: ミモザ、哺乳瓶、コーヒー

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