#22: 否定の奥にある肯定

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

タイミングというのは本当に不思議なもので、このところ改めて考えていた疑問の答えが目の前に突然現れるという出来事がありました。一昨日、世界各国の知識人によるスピーチ動画を配信しているアメリカの非営利団体TEDからオススメ動画をまとめたメールが届きました。特になんの意識をすることもなく開いたそのうちの1つが「ああ、こういうことだったのか」と個人的にスッとふに落ちるものでした。

それはジャーナリスト・ライターのEmily Esfahani Smithさんによる、人生には「幸福」以外にもっと大事なものがありますよという内容のスピーチ。彼女は「生きがい」がもっとも重要だということをこのスピーチの中で説いています。これだけ聞くと、何をいまさらと感じる方もいそうですが、研究結果を基に生きがいを得るために必要な4つの柱(結びつき、目的、超越、ストーリーテリング)についての説明があり、それが個人的にかなりしっくりときました。

「人生は単なる出来事の連続ではなく、自分の物語を編集して解釈し、(自分に対して)語り直すことができる」という、自分の考え方を変えるためにストーリーテリングの手法を使うことができるという新しい気づきもありました。日本語訳もあるので、気になる方はぜひ。

今週のStandart Japanは、最新号が到着した全国の皆さんから温かい声が届きハッピームード。全国発送が済むまではいつもどこか緊張感があるのですが、発送後の1週間は実は一番ほっとする時間かもしれません。

そしてその最新号のリリースに合わせて、12月15日に銀座 蔦屋書店にてオンラインのトークイベントを行います。Standartの編集部 Toshi & Atsushi(2人一緒にトークイベントに出るのは初めて!)が、創刊したばかりの独立系雑誌「IWAKAN」編集部のユリ・アボさんとジェレミー・ベンケムンさんと一緒に、ジェンダーやセクシュアリティの’当たり前’をテーマにお話します。参加者には、最新号の「ボスでいるということ」にも登場した堀口珈琲のコーヒーバッグがついてきますよ。コーヒー片手に皆さんと画面越しにお会いできるのを楽しみにしています。

編集長 Toshi

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

Where are you looking?

ヨーロッパ各地でコーヒーフェスティバルを主催するAllegraが「The future of espresso」と題されたシリーズ記事を公開中。そのうちのひとつで、2007年世界バリスタチャンピオン・コーヒーYouTuberのJames Hoffmannさんがエスプレッソマシンの未来について語っています。
 
この記事でも触れられているCounter Culture Coffeeのレポートによれば、1ポンドのコーヒーがエルサルバドルで栽培され、フィラデルフィアのカフェで提供されるまでに生み出されるCO2のうち、なんと80%以上がカフェで排出されているとのこと。その要因として十分な断熱処理がされていないボイラーを使ったエスプレッソマシンや、バッチブリュワーといった設備の「無駄」な電力使用が挙げられています。このような無駄は金銭的な影響をも及ぼすことから、今求められているのはそれを省くためのテクノロジーの活用だと彼は言います。
 
また最新のエスプレッソマシンが客寄せパンダの役割を担っていた時代は過去のものとなり、現在ではマシンを含めたコーヒー体験の 「一貫したストーリー」が求められていると主張するJamesさん。ある意味見た目は未だに重要なのですが、「美しいかどうか」ではなく「一貫しているかどうか」に消費者の目が向きつつあるという彼の指摘には納得するところがあります。
 
先日公開したStandart Japan第14号のスポンサーブログでは、Jamesさんが開発に携わったVictoria Arduinoの Eagle Oneをご紹介しています。彼の考えるエスプレッソマシンの未来が反映されたマシンとは?

 

紡がれる文化

コロナ以前の2018年には、英国で年4%の店舗数増加が見られるなど、多くの人に愛される独立系コーヒーショップ。社会全体の消費傾向としても、スモール・独立系ビジネスのもたらす恩恵に注目が集まっています。

しかしここで浮かぶ疑問は「独立系(Independent)」とは何か、ということ。言葉の普及とは裏腹にその定義が説明されることはなく、「Starbucks」や「大手チェーン(Branded Chain)」の対義語としての意味合いがほとんど。この記事によると、「全てのカルチャーは再生産、否定、統合のプロセスによって生まれる」とされており、同理論に基づくと、Starbucksや大手チェーンという「メインストリームの否定(対抗)」そのものこそ、今日の「独立系」コーヒーショップの定義と言えそうです。

Standart Japan最新号の記事『焙煎が生み出す「色」』で触れているように、近年の浅煎りコーヒー文化が「深煎りの否定」という文脈の中で普及していることは明らかです。「独立系」を始めとする既存文化の否定(対抗)は、新たな文化を生み出すプロセスである一方、私たちが知識のアップデートを怠り、歴史を半永久的に否定してしまうと、否定に潜む偏見と新たな発展の可能性を見落とすこととなるのです。ここに単なる否定を超えた対抗意識と歴史的文脈の理解の必要性を感じます。これまで培われてきた歴史への深い理解と絶え間ない知識のアップデートによって、敬意をもって社会と向き合う。そんな姿勢こそが、新たなコーヒーカルチャーを紡いでいく私たち一人ひとりに問われているのかもしれません。

 

その他の気になるニュース

▷ SCAと非営利財団CSF (Coffee Science Foundation)はコーヒーデザイン企業Savor Brandsと提携し、パッケージがお家コーヒー体験に与える影響について2年にわたる共同研究を行うと発表

▷ Dunkin’ Donutsが米国・マサチューセッツ州でコロンビア産シングルオリジンコーヒーを発売へ。昨年人気だったオリジナルブレンドの香りが楽しめるクリスマス限定コーヒーキャンドルの販売も。

▷ Sprudgeエディターチーム選りすぐりのコーヒーギフトを集めたリストが公開。日本のOrigamiシリーズも堂々のリスト入り。コーヒーが大好きなあの人、そして自分のためのクリスマスプレゼントにいかがでしょうか。

▷ 低迷する市場価格に反し、気候変動、パンデミックなどの影響で増加する生産コストに悩むグアテマラ農家の様子をBloombergが伝えています。記録的な台風による被害もあり、生産コストの削減はしばらくのあいだ期待できない状況です。

▷ 普段は他人と服が被るとブルーな気分。でもその数が4人となれば……? イギリスのあるカフェでは黄色のジャケットを着た4人がたまたま同じ時間に来店。和やかムードに思わず集合写真をパシャり

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー


Gluck Coffee Spot
 
熊本

熊本城の麓にある城東町にて2017年にオープン。 Gluckは「幸せ」を意味する言葉です。一杯のスペシャルティコーヒーを通じて日常に「幸せ」を届けるという想いが込められています。コーヒーを農作物として捉え、作り手の個性を引き出せるような焙煎、抽出を心がけています。

生産者
リカルド・エルナンデス・ナランホ
生産地域
コスタリカ サンホセ州 タラス(地図
品種
ティピカ
精製方法
フリーウォッシュト
テイスティングノート
アールグレイ、キャンディ、ブラウンシュガー、アップル、ナッツ、ミルクチョコレート

 

Standartの感想:

懐かしさがフワッとこみ上げてくる干し梅のような香り。その香りに誘われてじわりと口の中が湿ってきます。個人的にティピカ種のコーヒーが大好きなんですが、待ってましたと言わんばかりのそのドンピシャをついてくる上品で繊細なフレーバー。木からもぎ取ったばかりのアセロラを口に放り込んでひと噛みした時のような、ジューシーさと柔らかい酸味と甘みが口の中で舌にそって伸びていきます。口に含んだ瞬間から体が欲っするような、なまめかしいコーヒーでした。

 


Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

Fuck You - Anette Sidor
視聴

男性と女性がどのようにあるべきで、どう行動し、どのような外見をすべきか。というジェンダー規範に中指を立てる、挑発的であり、様々な感情を掻き立てるフィルム 「Fuck You」。スウェーデン生まれのディレクターAnette Sidorによる作品です。個人的によく夜中にVimeoでショートフィルムを漁ることが多いのですが、タイトルとオープニングのスタイリッシュさに惹かれて観てみると、15分ほどのストーリーに凝縮されていたのは、現代社会が内包する女性らしさと男性らしさや、セクシャリティとパワーを問うAnette監督のメッセージでした。物語はティーンエイジの女の子が主役。周りの環境に順応しようと生きるも、ステレオタイプなジェンダー規範に違和感を感じていて、思い切って新しいことをしようとします。それが、万引きしてきたペニスバンドを装着するということ。(あれ、朝から刺激強すぎました?)彼女は女性的な印象を感じさせるキャラクターなんですが、ペニスバンドをつけることで男性性やそれに伴うパワーをまとうような感覚が湧いてきているのが画面を通じて伝わってきます。そして力を得たことで感じる感情がだんだんと快感のようなものに変わっていくような描写も。自分のアイデンティティや現在のジェンダー規範に向き合うこの経験を通じて彼女が変化する姿は、自分自身のセクシャリティや内面を改めて考える、もしくは考えていいんだと思わせてくれるきっかけになるはずです。若い時にこんな作品に出会っていればなと思うくらいメッセージ性が強く、心に残る作品でした。クリエイティブな作品を好きなだけ(無料で!)楽しめるVimeoは本当におすすめです。 - Toshi

COLORS
YouTube

色にまつわる記事が多く掲載されているStandart Japan第14号。そのお供にぴったりなのがYouTubeの音楽専門チャンネル「COLORS」です。各動画に収められているのは、一色に染まった背景をバックに、最小限の機材と共に自身の楽曲を演奏するアーティストの姿のみ。派手な演出や仕組みは一切ないものの、演奏を楽しむアーティストの表情や手足、体の動きに思わず目が釘付けになります(なので読みながらではなく、記事を読み終えた後の休憩中に観るのがおすすめ)。個人的なお気に入りは以下の3つ。

Papooz - Theatrical State of Mind 

Raveena - If Only

Masego - Navajo

- Atsushi

 


Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

石井 純平
aka J

北九州市小倉北区にあるCOFFEE BAR Jのバリスタ/バーテンダー。2019ジャパンコーヒーイングッドスピリッツファイナリスト。週2、3回サウナに通い、テントサウナを購入してプライベートサウナを建設中。

セットアップ:

抽出器具:ハリオ V60
豆量:70g
湯量:740g
挽き目:中挽き
抽出温度:常温
抽出時間:15分

手順:

・140gの常温の水で15分蒸らす
・蒸らした際に落ちたコーヒーは捨てる
・200gずつ3回に分けて注ぐ
・全て落ちきったらボトルに入れる

▷ 上記は時間をかけずにできる水出しコーヒーの抽出方法 
▷ 蒸らしの時に出る液体を捨てる理由は、お湯ではなく常温の水を使用してドリッパーで抽出する場合、最初の蒸らしで抽出される液体にえぐみがありすぎるため

おうちカクテルレシピ:

・(上記で)抽出した水出しコーヒー60ml
・米焼酎(SG Shochu KOME)20ml
・和梨1/4
・フレッシュレモンジュース1tsp
・シュガーシロップ1tsp
・エルダーフラワーリキュール10ml(または自家製コーヒーシロップ1tsp)

全てをミキサーにかけて氷を入れたお好みのグラスに注ぐ。
 

一言:

コーヒーやカクテルをただ楽しむだけでなく、様々なイベントや他のものと掛け合わせて体験していただけるように北九州で色々と活動しています。是非北九州に来られた際は遊びに来てください。サウナ前のコーヒーとサウナ後のコーヒーカクテルは最高です。

  

今週の Weekend Brew はいかがでしたか?

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今週の Weekend Brew は Standart Japan 第14号スポンサーの Victoria Arduinoトーエイ工業、パートナーの MiiR JapanBarista Hustle JapanSucafinaのサポートでお届けしました。


LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan 

(執筆・編集:Takaya & Atsushi)

#22: 否定の奥にある肯定

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