#129: 消炎効果、レイオフ、コーヒー

#129: 消炎効果、レイオフ、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

今週は嬉しいお知らせ! 2023年のスタートを飾る最新号のStandart Japan 第23号が出来上がりました!! 継続して雑誌を発行しながら、こうして新しい年をまた迎えることができ本当に嬉しく思います。

私の元には、印刷会社からひと足先に最新号が届きました。ページをめくると、目に飛び込んでくるビジュアルのパワフルなエネルギーに圧倒されます。画面で見ていたものに命が宿るような感動がありました。楽しめないページは1ページもないはず。気持ちのうんと入った最新号、早く皆さんの元へお届けしたいです。

今回は、人間味や思いやりを感じられるインタビューやストーリー、そして様々な問いを投げかけてくれる記事などが満載です。

オリジン記事では、コンゴ民主共和国を特集しています。生豆インポーターであるThis Side UpのLennart Clerkxさんが、天然資源に恵まれつつもそのせいで国内外の権力闘争に翻弄されてきた同国のコーヒー事情を語ってくれました。

企業や組織のリーダーにスポットライトを当てるシリーズ記事「ボスでいるということ」は、筋金入りのコーヒーギークからも尊敬を集め、今や世界有数の農園主として知られるAida Batlleさん。これまでのキャリアを形成してきた出来事や選択、そしてその過程で学んだ教訓を綴ってくれた記事は読み応え抜群です。

インタビュー記事では、カフェオーナーを支えるスペシャリストとしての技術者を体現するR&D Espresso Labの本田 心さんにお話を聞きました。業界でのキャリアを考えていく上でもきっとインスピレーションを与えてくれるはず。Meet Your BaristaならぬMeet Your Technicianをお楽しみください。

特集記事では、普段何気なく使う「価値」という言葉を、コーヒーの文脈から見直します。品質や希少性や新規性、感情的な繋がりなど、コーヒーの価値を定める要素は数多くありますが、一体それはどのようなプロセスを経て価格へと換算されているのでしょうか? そもそも何に価値があるかは誰が、何を根拠に決めているのでしょうか? 「客観的」とされる情報に隠れた主観性、恣意性をコーヒーの価値から明らかにしていきます。

そして付録のサンプルコーヒーは、韓国の老舗スペシャルティブランドFritz Coffee(フリッツコーヒー)。エンリケ・フェルフィーノ氏が生産する、ニカラグアのフィンカ・アウロラ農園のコーヒーを読者の皆さんに準備してくれました! カーボンニュートラルの農園で栽培されたパライネマ種をお楽しみください。コーヒーの詳細はこちらに掲載しているので気になる方はご覧ください。

そしていつものように、最新号をチラッと覗き見しちゃいましょう。その他の記事については、ブログをチェックしてみてくださいね

発送は来週中頃、8~10日あたりを予定しています。楽しみにしていてください!!

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

開くことで、生まれる連帯

先日ザ・ガーディアンの記事で、スターバックスが2020年に開始したNPOとのパートナーシッププログラムについて紹介されていました。このプログラムは、路上生活者への訪問支援を行うNPO団体と連携し、特にホームレス人口の多いエリアの店舗を、ソーシャルワーカーが支援活動の拠点として巡回するというもの。営利企業が福祉サービスのハブとしての役割を担い、セクターを超えたコミュニティの連携が生まれている興味深い事例です。

ホームレス人口の増加が大きな社会課題となっている米国では、スターバックスや公共図書館といった施設が、路上生活者の生活インフラとしての役割(トイレ利用や一時的な冬の寒さをしのぐ場など)を担っている場合も少なくありません。その結果、従業員がソーシャルワーカーとしての業務を求められることも多く業務圧迫やメンタル面での負担増加が課題として挙げられていました。スターバックスはこの問題の改善に向け、店舗を”閉ざす”のではなく、むしろコミュニティに”開く"ことで、バリスタの負担軽減だけでなく、コミュニティへの社会的価値の創出を図ったというわけです。現在同プログラムは、全米8都市、125店舗まで展開され、これまでに約23,000人の路上生活者が物資提供や福祉サービスを享受したと報告されています。

しかし、昨年同社はバリスタの安全性確保やメンタルヘルス問題を理由に16店舗を閉鎖していることからも、非常に複雑な社会課題であることは明らかです。全ての企業・団体が社会的価値に軸を置きながら、コミュニティの一員としてより良いあり方を模索していくことが必要とされています。

 

気になるニュース

▷  コーヒースタートアップとして過去最大の資金調達に成功した、冷凍コーヒーキューブ「カムティア」ですが、実は昨年2回の非公表のレイオフや経営体制の大型変更を行っていようです。既存のマーケティング戦略から脱却できず、新規開拓の難航やコストカットによる社内環境の悪化、CEOへの不信といった悪循環に陥っているとの報告も。

▷ ポートランド発のスタンプタウン・コーヒーロースターズが、日本の京都店舗を含む全10店舗でオーツミルクのデフォルト提供開始ブルーボトルに引き続き、業界としてプラントベースへの移行を大きく推し進める動きです。

▷ 生豆商社「カフェインポート」が、アナエロビック・ファーメンテーションへの理解を促すショートムービーを公開。実は舞台であるコスタリカのラ・チュメカ・マイクロミル、マルティンさんのアナエロビックナチュラルのコーヒーを、以前の「What's We Are Drinking」でご紹介させてもらっていました!

▷ デルタ航空のプレミアムキャビンで、エスプレッソマティーニの提供が開始。同社はその他に、女性生産者を支援するワイン、プラントミートを使用した料理など、高品質かつ社会的バリューの高い商品/メニューの導入も推し進めているようです。

▷ 最新の研究で、コーヒーにミルクを入れると消炎作用が増幅する可能性が示唆されました。免疫細胞を用いた実験では、コーヒーに含まれるポリフェノールに牛乳内のアミノ酸を加えた結果、ポリフェノール単体と比較して約2倍の消炎効果が見られたとのこと。コーヒーとミルクの相性は、科学的にもお墨付きかも?

物足りないあなたへ

韓国のコーヒー豆輸入量が過去最大を記録気候変動とコーヒー生産の未来をテーマとするライブイベントが、YouTubeプレミアム上で開催予定(日本時間2/8 11:30pm〜)。プラウド・メアリー・コーヒーの米国店舗で、昨年度のベストオブパナマが数量限定で提供予定お値段は一杯150ドル(約19,600円)で、限定22杯の提供だそうです。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

東珈琲店 広島地図

東珈琲店は古から海の交易の要所として栄えた「鞆の浦」を有する広島県福山市に店舗を構える”アジア”に特化したスペシャルティコーヒー専門店です。

 

生産者 天空農園

生産地域中国 雲南省 保山市 ルジャンバ(地図

品種カティモール

精製方法嫌気性発酵ダブルファーメンテーション

テイスティングノート
味わいはベリー感とブランデー、梅やレーズンを感じさせます。さらに少し深煎りにすることによってより深みのある珈琲としての味わいの中でお酒感を表現しました。

編集長のコメント:

約1年とちょっとぶりの中国のコーヒー。以前と同じ、雲南省保山市潞江垻 (ルジャンバ)の天空農園のものでした。嫌気性発酵のコーヒーは、いつもだいたい主張が強いものが多く、豆を挽いた時からその前のめりな存在感を感じることがあるのですが、こちらはずいぶんとおしとやかな印象。豆を挽くと、記憶の中にある誰かが前を横切った後、ふわりと香る香水の残り香を感じました。どこか切ない雰囲気。一口含むと、まずその濃厚な甘さに驚きます。ミネラル感のある黒糖のような甘さ。そして丸みのある質感を感じ、柔らかく広がっていく凝縮された果実味は、黒くテラテラと光るプルーンを彷彿とさせてくれます。質感や甘さが混ざり合い、ラム酒のような味わいにも感じます。液体がゴクリと喉を過ぎると、後から押し寄せてきたのは濃いめのブラックティー。そしてスーッと鼻腔に上がっていく金木犀のような香り。そうか、あの香りは君だったのか。飲み終わりがとても心地よく、長い余韻に浸れます。ムードを感じさせてくれる素晴らしいコーヒー。ごちそうさまでした。飲んでみたい方はこちらから

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

今週のStandart Communityでは、ブッククラブの企画についての意見共有が行われました。コメントやスタンプでの反応も多く、今月を目処に一度試しに実施できればと考えています!楽しみです!

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

VERSE

年始に台北を訪れた際に、本屋Bleu&Bookでおすすめされた台湾発のカルチャー雑誌。タイトルの『VERSE』には、サビの盛り上がりを演出する導入(バース)のように文化の基盤を気づく存在として。またそれぞれの記事で語られた言葉や声が、雑誌を通してひとつの”詩(バース)”を構成するように、という思いが込められています。本誌は創業時から一貫して「わたしたちの時代の文化メディア」の実践を掲げており、毎号のテーマも、ベジタリアン、PODCAST、ポストジェンダーなど、現代の台湾文化を読み解く興味深いトピックばかり。残念ながら、全編中国語がゆえに中身を読むことは叶いませんが、ニューアル後の直近5号ほどは、表紙がイラスト/写真バージョンで選択できる仕様になっているほか、冊子に同封される台湾内の小さな町のガイドブックなど、隔月発行とは思えないほどのこだわりも満載です。もし読まれた方がいたら、是非感想教えてください!

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

河内 友孝 aka. とも/Tomo 

初めまして ^_^ 現在ベルリンのコーヒー屋でバリスタをしている友です。日本の大学を卒業後、ドイツで暮らし始めて8年。いくつかのお店で経験を積みつつ、スペシャルティコーヒーの中での自分の道を模索中。趣味はコーヒー屋巡りと、最近始めたイラスト。

5 questions

今気になっている問いは?

「主観と客観」

コーヒーも含め 好みやセンスは人それぞれ。自分が好きな味や いいと思うものが、他の人にとってもいいとは限らない。 バリスタとして、お客さんや周りのコーヒー業界の人と話していると、そんなことをつくづく考えさせられます。

お気に入りの場所は?

「今、居る場所」

そう考えるようになったきっかけは、ある友人の言葉。ドイツへ移住してきて数年が経って、そのまま残るか日本へ帰るか迷っている時でした。その人がふっと口にした「今居るところで、楽しい時間とか好きなことを沢山見つけられるといいね」。だから今は、今住んでいるベルリンという街が、僕の周りにいてくれる人や風景も含めてお気に入りです。

譲れないこだわりは?

「緑と黒」

昔は、時期によって好みの色がころころ変わっていたんですが、ここ数年はこの二色が僕のテーマカラーです。服や靴、小物、そしてもちろんコーヒー器具。僕の暮らしには緑と黒が溢れています。好きな色が自分の中で決まってから、物を選ぶ際の迷いが少なく、生き方がシンプルになる気がして、いいです🌿

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

「親友の Joe」

共にバリスタとして働いたこともあり、コーヒーやお店づくり、人生について語り合った時間は今までのトータルで一番長いと思います。ただ、彼がコーヒーとは違う道を選んだことと、僕が違う街に引っ越したことをきっかけに、最近会えていないので、今飲みながらゆっくり話したいです☕

最近のやらかしエピソードを教えてください

去年の12月に、約8年ぶりの一時帰国をした時のエピソードがあります。久しぶりに会う家族や友達との時間や、東京や大阪のコーヒー巡りがあまりに楽しくて、エネルギーを使いすぎたのか、帰りのフライト予定前日にコロナにやられ、一週間のホテル療養になってしまったことです。

 

Fancy a refill?
編集後記 

現在エチオピアへの旅の途中のため、今週はお休み。エチオピアでの様子をInstagramのハイライトにまとめているので、よければチラ見してみてください

Atsushi​

 


今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?

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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第23号スポンサーのComandante、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAProbat x DKSHMiiROATSIDEのサポートでお届けしました

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)