#128: カレンダー、アンソロジー、コーヒー

#128: カレンダー、アンソロジー、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

数年前から積読していたライフシフトという本を、昨年の暮れ頃にふと手に取り読んでみました。なんで買ったのかも思い出せなかったのですが、読んでみるととても引き込まれ、続編があるのを知りすぐにそちらも購入。昨年末あたりから少しずつ読み進めていました。

先日ようやく読了したのですが、長寿時代の生き方や働き方を考える上でとても参考になる良書でした。自分にとってまさに今読んでおきたかった本で、線や折り目でいっぱいに(そう、本のページを折る人です😗)。自身の未来を考える上での一つのきっかけになりますし、私のように子を持つ親にとっては、自分自身が生きてきた時代とは価値観や生き方が全く異なる時代を子が歩んでいくということを理解する一助になりそうです。ぜひご興味ある方は手に取ってみることをお勧めします。

以前どこかで、積読は自分が知りたいことや学びたいことを映す鏡だという話を聞いたことがありますが、改めて自宅の小さな本棚にある積読コーナーを眺めてみると、どこでいつ買ったのかも思い出せないような、ジャンルもバラバラの本がたくさんありました。自分の頭の中をさらけ出しているような恥ずかしさがありますが、見方を変えてみると、まるで過去の自分からの贈り物のようだなと感じます。皆さんは積読してますか?

さて、話は変わって、今週のStandartはいよいよ次号のリリース準備の大詰めでした。コーヒー豆も税関に到着したようで、輸入手続きを進めているところです。来週のニュースレターではリリースのご案内ができそうです。楽しみにしていてくださいね!

そして最後に、Atsushiが今週末から取材でエチオピアを訪問しています。今はまだおそらく移動中ですが、インターネット環境に不自由がなければ、インスタグラムなどで現地の様子などを少しお届けできたらいいなと思っています。エチオピア、いいなぁ。

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi

 

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

スポットライトが生み出す影

ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)、それは世界最高峰のバリスタたちが磨き上げた技術を披露する晴れ舞台であり、コーヒー業界の未来が生まれる場所。しかし私たちは、輝かしい競技会に潜む影の側面にも、光を当てることができているでしょうか。パーフェクト・デイリー・グラインドのこちらの記事では、競技会における経済的排他性について、個人・地域の双方の視点からの考察が展開されています。

競技会参加にかかるあらゆる費用は、出場者個人が負担します。飛行機代や滞在費はもちろん、専属コーチによるトレーニング費用や関係者の出張費、競技用のコーヒー豆やミルク、(エスプレッソマシンとグラインダーを除く)機材の手配といったさまざまな負担が、競技者個人の肩にのしかかるのです。スポンサーからの援助を受けられる一部のバリスタを除き、多額な費用を賄うために、貯金を切り崩したり、クレジットカードや借入金に頼ったりと、リスクの高い選択を迫られるケースも珍しくありません。また上記費用は出場者が代表する国や地域の経済状況にかかわらず、全ての出場者が”平等”に負担しなければなりません。しかし世界大会の開催地は西欧圏に偏っているため、コーヒー生産地域など低所得国のバリスタの負担は相対的に大きくなります。さらに出場機会が男性バリスタに偏っているという構造的なジェンダー問題、使用言語が英語に限られるという言語面での障壁など、競技会のステージに至るまでには、何層にも及ぶ機会の不平等が生じていることは明らかだと言えます

本記事では、生産国や低所得国での積極的な競技会開催を促すことや、バリスタの専門性の認知拡大とスポンサーシップの拡充、ビザ手続き等のサポート体制といった改善策が提示されています。舞台に至るまでの機会の不平等に目を向けること、それこそが競技会、ひいてはコーヒー業界の輝かしい未来に必要なのではないでしょうか。

 

気になるニュース

▷  2023年8月から2024年にかけて、ロブスタ種を中心にグローバル市場におけるさらなるコーヒー在庫の圧迫が見込まれています世界的なロブスタ種の需要増加に反して、ここ3年のブラジルの収量減少、過去10年で最低と予想されるインドネシアのロブスタ種の不作などが要因として挙げられています。

▷ コーヒー生産地域における安全な飲み水・衛生環境の確保に取り組む「プロジェクト・ウォーターフォール」が、世界水の日(3/23)にチャリティウォークイベントをロンドンで開催予定。日本からは、こちらのページを通じて寄付の形で参加できます。

▷ 30周年を迎えるラバッツァのカレンダープロジェクト今年はインクルージョンとリスペクトをテーマに、カフェという空間を切り口に人々のストーリーや人間の感情の豊かさに焦点を当てています。ビハインド・ザ・シーンやインタビュー映像など、ウェブページは見応え抜群です。

▷ コーヒーフォトグラファー・フィルムメーカーのルシア・バウォットさんが、コロンビアの女性生産者62名の生活とストーリーを紡いだアンソロジー『We Belong』を2023年発売予定。

▷ ハリウッド俳優のシルベスター・スタローンがRTDコーヒーブランド「タイガー・アイ・コーヒー」をローンチ。かつて「ロッキー3』の撮影期間中、彼は一日25ものコーヒーを飲んでいたそうです……!

物足りないあなたへ

以前紹介したタイガー魔法瓶のサイフォン型コーヒーマシンが、来月21日に国内でも発売2022年世界バリスタチャンピオンのアンソニー・ダグラスさんがラマルゾッコのグローバルアンバサダーに就任スウェーデンのセブンイレブン90店舗のコーヒーマシンに、オーツミルクが導入されました。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

imm coffee&roastery 山口地図

山口県、日本三名橋の錦帯橋からすぐの焙煎所です。岩国市は米軍基地の街でもあり朝方はアメリカ人、昼すぎから観光客や地元の人達が交わり賑わいます。オランダの焙煎機GIESENを使用し浅煎り、中煎りをメインにトラディショナルな深煎りもラインナップしてます。

 

生産者 フェルナンド・リマ

農園:サンタエレナ農園

生産地域エルサルバドル アワチャパン県アパネカ=イラマテペック山脈(地図

品種ブルボン(樹齢100年以上)

精製方法イーストアナエロビック

テイスティングノート
バニラ、ハチミツ、ストーンフルーツ、巨峰、ベリー、タンニン

編集長のコメント:

樹齢100年以上のコーヒーノキから収穫されたマイクロロット。いったいどんな味がするのかと、ワクワクしながらテイスティングの準備を進めました。少し落ち着いたような味わいなのかなと思いきや、口に入れた瞬間に広がったのはライムと砂糖を混ぜたようなモヒートチックな味わい。ジューシーな甘みも特徴的で、伸びのある旨みがギューンと押し寄せます。抑えられた酸味に蜂蜜やマスカット、桃などのエッセンスも感じます。白ワインのゲヴュルツトラミネールの面影を覚えました。あぁ〜素敵〜、なんて言いながら二口三口とすすっていくと、妙に慣れ親しんだ香りが鼻に抜けていくのを感じました。あれ、なんだっけこれ?と思いながらもう一口….…思い出しました。昔からある、あの赤いさくらんぼの缶詰を開けた時の香り。濃縮された甘い空気がむわっと上がってくるような感覚。長い年月を経た木から収穫されたチェリーたちは、エキゾチックでエレガント、そして最後にキュートなコーヒーに変身しました。とってもおいしかったです!ごちそうさまでした。飲んでみたい方はこちらから

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

今週のStandart Communityでは、家庭用ドリップポットについての質問が投げかけられました。日々新たな商品が登場する中、特にコーヒーラバーの方々の実際の使用感や使用シーンについての意見・コメントはとても参考になるものばかり。パンデミック以降のアウトドア需要の高まりも含め、人々がコーヒーギアに求める要素の変遷も気になる話題です。

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

OUT OF SIGHT!!! vol.2

カルチャーを切り口に世界のインディペンデントな「人・もの・こと」を紐解く、京都を拠点に活動するWebマガジンANTENNAが発行する雑誌OUT OF SIGHT!!!の第2号。創刊号は京都と音楽をテーマとしていて、今号のテーマはアジア×映画。いわゆるよくある映画特集をした雑誌とはまったく異なり、編集長の堤 大樹さんが誌面冒頭でおっしゃっている「映画をテーマにした、アジアの見取り図」という言葉がまさにしっくりときます。とにかく、記事毎のトピックが幅広く、とても興味深い。カンフーアクションや特撮、ホラーやドキュメンタリーなどの映画ジャンルで語る記事があったかと思えば、フェミニズムやマスキュリニティ、政治やビジネス、ポスターデザインや各国の歴史、映画祭やコミュニティといった観点からも話が広がっていきます。映画には各国の(監督の)文化背景が色こく反映されていて、映画を見ることは異国の文化を知る行為でもあります。これまで映画は旅をすることに似ているなと感じていたのですが、この雑誌を読んでなおさらその感覚が強くなりました。また、「アジアの映画と、その湿度」とサブタイトルが付いているのも頷けるほどに、「湿度」というもう一つのテーマがこの雑誌に異国の空気感を纏わせています。アジアのいくつかの国がベースになったフォトエッセーが掲載されていて、今は真冬なのにアジアの熱気や湿気が写真や文章から滲み出てくるようです。小学校の頃にカンフー映画にどハマりしていたのもあってか、個人的にはもうたまらない面白さ。観れてなかった映画やまた観たい映画がたくさん見つかって、この一冊のおかげで相当長く楽しめそうです。

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

吉松 優衣 ヨシマツ ユイ 

1991年生まれ。30歳で脱サラし、独学で焙煎を一年間勉強。昨年末にコーヒーギフト専門店をオープンスタバ店員時代にコーヒーの奥深さに触れたこと、幼い頃から手作りのプレゼントが好きだったことが、贈ることに特化したコーヒーの原点です。焙煎機はaillio bullet。趣味はK-POPとLINEマンガ。

5 questions

今気になっている問いは?

「老後、どこで暮らしているか」
転勤や転職でさまざまな土地に住み、暮らすごとにその街を好きになってきました。そうやって老後もまたいつか、今とは違う街にいるんだと思います。そこでどんな暮らしができるのか気になると同時に、その街が人生で最も好きな場所になるんだろうなと確信しています

お気に入りの場所は?

「自宅のベランダ」
6畳あるベランダに人工芝を敷いて中古のソファを置き、お気に入りの空間を作りました。ぼーっとコーヒーを飲んだり本を読んだり、デジタルデトックスできる心地の良い場所です。

譲れないこだわりは?

「ベジファースト」
食事の一口目は野菜から。お菓子を食べる前はアーモンドを数粒。血糖値の上昇を緩めるために始めたベジファーストですが、今では「いただきます」の言葉と同じくらい当たり前の存在です。カレーは福神漬けから、ショートケーキは苺から食べます。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

「天国のおばあちゃん」
初めて焙煎をしたとき、一番に飲んでほしいと思い浮かんだのが祖母でした。家族の中で誰よりもコーヒーが好きだった祖母。子どもの頃にお別れしたので、一緒にコーヒーを楽しむことができませんでした。自分で焙煎した深煎りのエルサルバドルを一緒に飲み、なんでもない話をたくさんしたいです。

最近、何に感動した?

「初めて自分の商品を買ってもらったこと」
昨年末、My Dearie COFFEEとして初めてコーヒーギフトの販売をしました。ありがたいことに完売し、嬉しいお声をたくさんいただきました。みなさんから感想や写真をいただく度に、大人になってこんなにも胸が熱くなる瞬間があるんだなぁと感動しました。

 

Fancy a refill?
編集後記 

先日、奥渋谷の本屋SPBSの15周年企画の一つとして催された、校正者牟田都子さんのトークイベントに参加。「本屋の歩き方・本の選び方」をテーマに、牟田さんの溢れ出る書物への想いを伺いながら、タモリ倶楽部のようにSPBS内の本棚を巡ったり、参加者と共に本のエピソードを共有したりと、本好きにはたまらないイベントでした。

「旅行先で出会った本は必ず買う。なぜならその本を読みたい自分は、今しかいないから。」という牟田さんの言葉が特に印象的で、昔見かけたことのあるタイトルでも、その日、その本屋で、その棚での出会いは、まさに一期一会。本屋という空間で買いたい本を選ぶ、あの”積極的受け身”とも言える姿勢は、もしかすると自分が世界に開かれている瞬間なのかもしれないとこの言葉を聞いて感じました。積読に幸あれ。

余談ですが、先日黒鳥社が配信を開始した、”これから読む本が一番面白い” をコンセプトに本屋を訪れる企画「黒鳥本屋探訪もオススメです。コーヒーのおともに是非。

Takaya

 


今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?

バックナンバーを含め、The Weekend Brewの感想やコメントはぜひ #standartjapan のハッシュタグと共にシェアをお願いします! 質問はメールでお待ちしております。またお友達やご家族など、The Weekend Brew を一緒に楽しんでもらえそうな方にこのメールを転送していただけると嬉しいです。

Standart JapanのウェブサイトInstagramFacebookもぜひチェックしてみてくださいね。

今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第22号スポンサーのCROWD ROASTER、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAETZINGER x BREWMATICPhilocoffeaのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)