#123: 不動産、仙草、コーヒー

#123: 不動産、仙草、コーヒー

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

今週は、火曜日にStandart Communityでオンラインイベントを開催しました。Goodman Roasterの伊藤 篤臣さんをお招きし、コーヒーショップの開業・独立についてお話しを伺ったのですが、それがとても楽しかった! 欲を言えばもっとお話を聞きたかったし、より多くの方がリアルタイムでいろんな質問をすることができたらよかったなぁと感じています。

伊藤さんの台北での起業話、戦略的なビジネスの方法、バリスタのあるべき姿や生存戦略など、ためになるお話しばかりでした。特に印象に残ったのは、「お客さんは好きなお店を応援するために何ができるか?」という質問に対しての伊藤さんの回答。てっきりもっとコーヒーを日常的に飲んでください、という答えが返ってくるのかなと思っていたら、「感謝の気持ちをぜひバリスタに伝えてください。」というものでした。「おいしかったよ」「ありがとう」など一言でも十分で、声をかけてもらった人の1日はおそらくハッピーになるし、モチベーションアップにもつながります。これはコーヒーショップに限ったことじゃないはずですよね。そのたった一言で、誰かの一日をパッと明るくできる力を自分が持っていると思うと、どこかスーパーパワーを持ったヒーローになった気にさえなります日頃から愛のあるコミュニケーションをもっと意識しないといけないと改めて感じた時間になりました。この場を借りて、伊藤さん、そしてご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!

さて今年もいよいよ年の瀬が近づいてきました。そして今年も始まりました、Annual Sprudgie AwardアメリカのコーヒーニュースサイトSPRUDGEが毎年開催しているコーヒー界のアカデミーアワード(ish)です。今年が14回目となりました。今年活躍した生産者やロースター、新しい製品や取り組み、書籍や記事などを称える賞で、審査はコーヒーラバー達の投票によって決まります。

Standartは今年もBest Coffee Book/Magazineのカテゴリーでノミネートされています。ノミネートいただいた皆さん、ありがとうございました!また、Standart Japan 20号で掲載した“Decolonizing The History of Coffee”(コーヒーの歴史の脱植民地化)がBest Coffee Writingのカテゴリーでノミネートされています。さらには、Notable Coffee Producerのカテゴリーで最新号22号の付録コーヒーを生産したインドのプラノイ・ティパイヤ氏ら(Kerehakluエステート)もノミネートされていますよ。

日本からもLeaves Coffee Roasters、Lilo Coffee 、Cafe Imperfect Omotesandoがそれぞれ異なるカテゴリーでノミネートされています。アワードを盛り上げる意味でも、ぜひいろんな方に参加してもらいたいです。皆さんの清き一票をお願いできると嬉しいです!投票は上記のリンク先から可能です!

ノミネートされているお店や製品、人や取り組みなどを見るだけでも今年の振り返りやトレンドの把握にもなります。よければぜひ!

それでは今週も良い週末を。

編集長 Toshi

  

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

官能評価のグローカル化

先日ASEANコーヒー協会 (ACF) が、東南アジア産コーヒー専用の官能評価ツール「フレーバースフィア」を発表しました。「コーヒーの官能評価における共通言語」を掲げる従来のフレーバーホイールに対抗し、ASEANという地域性に特化した点が大きな特徴と言えます。世界のコーヒー供給量の約33%を担う、東南アジア産コーヒーの業界内の地位向上を目指しローンチに至ったそうです。

今日親しまれるフレーバーホイールは業界の「共通言語」とされる一方、米国中心の表現に偏っているという文化的バイアスが指摘されていました。しかしフレーバースフィアの場合は、「共通言語」の範囲を狭めることで、各生産地域に根ざした官能表現を尊重していると言えます。具体的には、フルーティ/トロピカル、フローラルといった東南アジア産コーヒーの代表的なフレーバー表現を増強。さらにフレーバーホイールにはなかった地域特有のフレーバー表現も追加しています。見てみると、「仙草ゼリー」と呼ばれる中華圏・東南アジア諸国で親しまれるゼリー状のお菓子が追加されるなど、現地の食文化がかい見えて非常に興味深いです。

このツールを開発したACFの公式研究機関は現在、ASEAN地域のコーヒーに特化した焙煎、グラインド、カッピング基準の開発を進めており、今回のフレーバースフィアは同プロジェクト内で集まったデータから作成されたそうです。生産地域に根ざしたコーヒーの味わい方が広がることで、一杯のカップが内包するコーヒーの旅路がさらに深まる予感です。

※フレーバースフィアは、こちらのページから必要事項を記入すれば無料でダウンロードできます。

 

気になるニュース

▷  昨年EUで検討されていた、森林破壊に繋がるコモディティ商品の輸入を禁止する法案が正式に可決されました。今後、牛肉やココア、コーヒーといった対象商品の輸入時に、その商品が森林破壊を引き起こしていないことを証明する文書が求められるようになります。一方、保護対象となる「森林」、「先住民」の定義が限定的であるという批判の声も上がっています。

▷ ダブリンのコーヒーブランド3FEが、リユーザブルなコーヒーバック「ポカ」を発売。コーヒーバッグ界のキープカップを目指して開発されたそうで、同商品を持参するとコーヒー豆を10%オフで購入できるそう。

▷ Z 世代によるコールドべバレッジおよびRTD飲料の収益が、今後5年間にわたるコーヒー産業の主な成長要因になる見込みです。ちなみに、今年韓国のスターバックスにおける注文の約75%がコールドべバレッジだったと報告されています。

▷ 中国のコーヒー市場では、電気自動車メーカーや健康食品ブランド、住宅情報サイトなど異業種からの参入が加速している模様。参入方法も出資や新ブランド設立、既存店舗を活用した展開など多種多様です。

▷ イーロン・マスク率いるツイッターが、来年1/17に本社備品のオンラインオークションを開催予定。備品リストには、ラ・マルゾッコのエスプレッソマシンも!(開始価格約3,380円)。落札報告のツイートお待ちしてます。

物足りないあなたへ

ラバッツァが、ディズニーランド・パリの公式コーヒーパートナーに。スターバックスが、ブロックチェーンベースのロイヤルティプログラム「スターバックスオデッセイ」のベータ版をローンチ。コーヒーに含まれるコーヒー酸(カフェ酸)が、半導体デバイスの性能向上をもたらすという研究結果が発表されました。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

OTOMONI COFFEE 三重地図

オトモニコーヒーは『暮らしのお供に』をコンセプトに自宅の納屋から始まりました。お店の名前の通り、お客さんの暮らしのお供になってほしいという意味ですが、生業として自分の暮らしの一部として焙煎しながら暮らすという自分とコーヒーの関係性という意味合いもあります。そんなコーヒー豆を通してそれを必要としてくれる人との繋がりを作って行けたらきっと楽しい事になると思っています。今はケーキ作りの大好きな嫁と二人のお店になりエアコン完備の立派なお店(小さいですけどw)になり豆だけでなく、お菓子やドリンクなどもあるロースターカフェとして営業しています。

 

生産者 Rumukia Coop

生産地域ケニア ニエリ郡キアワムルル(地図

品種SL28, SL34, Batian

精製方法ウォッシュト

テイスティングノート
プラム、オレンジ、ブラックティ、スウィート

編集長のコメント:

お湯を注ぐとシナモンを含む数種類のスパイスを軽く炒ったような香ばしいスパイスの香りが鼻先をかすめます。いつもこのお湯を注いだ後の待ち遠しい時間が好きです。準備ができ一口目を口に運ぶと、感じたのは柑橘。いくつか柑橘系の果実をごちゃ混ぜにしたような味わいで、ケニア特有のジューシーさを感じます。黒糖のような甘さを感じるため、バランスよく柑橘フレーバーが口の中で広がっていくのが特徴的です。黒糖やラム酒、ブラックティは個人的に味わいの系統が似ていると思っていて、このコーヒーにもこの三つの要素を感じました。ブラックティを飲むときにも感じますが、後味が綺麗に終わりあまり後を引かない印象。ただ、ジーンと続く甘さが口の中に残って心地よさを演出してくれます。とてもクリーンで透明感のあるコーヒーです。冒頭に感じていた果実感は、ドライフルーツのような味わいに口の中で変化していって、フレーバーの複雑性を増していきます。クリスマスが近いせいなのか、なんとなくホットワインも連想させてくれるコーヒーだなぁと感じました。ごちそうさまでした!

 


What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること

 

今週のStandart Communityでは、メンバーのMurataさんがニュースレター#69の「What We Are Drinking」で紹介したLucent Coffeeを訪れたことを報告してくださいました。皇居ラン後にコーヒーショップで一息、最高ですね!The Weekend Brewが、こうして皆さんの生活の一部になってくださっているのが本当に嬉しいです。皆さんの今週の「What We Are Drinking」もぜひ教えてください!

※Standart Japan​定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!

 

Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

ethnidiving

友人が運営メンバーの一人を務めるZineプロジェクト。情報媒体としてではなく、小さな気づきで感性を揺らし人々を繋げる「感性共有媒体」であることを掲げ、毎号異なる地域をテーマに参加者を募りながら、一冊の紙媒体の製作を行います。

第二回の舞台は「金沢文庫/金沢八景」。イラストやエッセイ、写真に地形図など、さまざまな手法を用いてその土地の過去と現在を行き来するアプローチはさながら旅路のよう。執筆者のパーソナルな感覚を起点に描かれる記事たちを通じ、読み手は金沢地区との接点の有無にかかわらず、その土地の風景にきっと思いを馳せるはず。また冊子には付録のように地図が同封されていて、個人的には鎌倉時代と現在の地図を重ねられる仕様がツボでした。改めてモノを介したコミュニケーションには、形容し難い良さがあるなぁとしみじみ感じる読書体験。と同時に、来年は自分も何か形に残るモノを作る、と来年の抱負が密かに決まったのでした。同じ友人がパーソナリティの一人を務めるポッドキャスト「COMポスト資本主義」と併せて、おススメです。

 

Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

田村 明浩 aka ガブ 

新潟市で小さなコーヒー屋Yamanoshitacoffeeを営んでいる田村です。ワーキングホリデーでメルボルンにいた経験を活かし、スペシャルティコーヒーを新潟の皆さんにご紹介できとても嬉しく思います。コーヒー先進国であるオーストラリアに比べ、まだまだ発展途上の日本ですが、少しでも文化の成熟に寄与できるよう頑張ってまいりますので、皆様どうぞ宜しくお願いいたします!

5 questions

今気になっている問いは?

「健康」
コロナ禍で改めて自身の健康(食生活や運動)を考え始めました。

お気に入りの場所は?

「太陽の下」
リラックス効果と免疫力アップ。

譲れないこだわりは?

決して譲れないわけではないですが、前職の経験を活かし自分で髪切ってます。自分の時間を大切にしたいのと、リラックスもできるので2週に1回くらい整えてます。

今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?

1人の時間が好きなので、1人で飲みたいです。

あなたのギルティープレジャーを教えてください。

実はアニメが好きです。宇宙戦艦ヤマトなど。

 

Fancy a refill?
編集後記 

オランダから帰国して間もなく1年が経とうとしています。帰ってきて良かったなーと思うことの一つが、これまでオンラインでしか「会った」ことのなかった人と顔を合わせられること。

5年くらいフルリモートで働いていて感じるのが、オンラインだとどうしてもある目的を達成するために時間を費やすことになってしまうんですよね。会話が機能的になってしまうというか。でも(少なくとも僕は)、相手との関係性を深めるうえで無駄話が必要だと感じているので、無駄に時間をかけられる環境に喜びを感じています。

年末年始は次号の制作にあてられることになりそうですが、合間をぬって引き続き無駄を謳歌したいと思います。

Atsushi

 


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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第22号スポンサーのCROWD ROASTER、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業TYPICAETZINGER x BREWMATICPhilocoffeaのサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)