#11: 変わらないことのリスク

#11: 変わらないことのリスク

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

先日、10代の若者たちがクリエイティブの原点に出会い学ぶことを目的とした学び舎「GAKU」が運営するポッドキャストにお招きいただいて、10代の起業家たちと第15代ワールドバリスタチャンピオンの井崎英典さんと一緒に、コーヒーをテーマにディスカッションする機会がありました。

オンラインで焙煎した豆を販売しながら、若者の場づくりをするユースブランドを立ち上げた高校生。そして、若者向けのフードカルチャーマガジンを紙媒体で出版している19歳。自分のやりたいことに突き進む彼らの発する言葉や意見がひとつひとつ新鮮に感じ、1時間半ほどの収録はだんだん加熱していった会話であっという間に終わってしまいました。

彼らに共通して言えたのは、周りに同じような考えを持つ仲間や道を示してくれる少し大人の先輩がいたり、自分が好きなカルチャーに没頭して、ありとあらゆる情報を吸収して、様々な可能性を模索し続ける環境を自ら作っていること。多くを気づかせてもらった時間になりました。(長く喋りすぎちゃったのか)収録は前半と後半に分かれていて、今週に前半が公開されました。後半はまた来週。お時間ある方はぜひ聞いてみてください!

今週のStandart Japanは、先週に引き続き校正業務に没頭していました。紙媒体は印刷してしまうと後から直すことができないので、何度も何度も見返します。それでもタイポなどが見つかるんですが。いよいよ次号の校了まであと一ヶ月ほど。この時期になってくると印刷会社に連絡をとってスケジュールを伝えたり、誌面のデザインについて社内での打ち合わせなどが増えてきます。今号や以前の号をまだ読んだことがない方は、ぜひチェックしてみてくださいね。

Toshi & Atsushi

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

コーヒー社会起業家がビジネス界のノーベル賞を受賞

コーヒー栽培を通してフィリピンの先住民や紛争地域に住む人々の生活改善に貢献したとして、Coffee for Peaceの創業者Felicitas Bautista Pantojaさんが、2020 Oslo Business for Peace Awardを受賞しました。

世界中で活躍する起業家の中から、経済的な成長と社会問題の解決において素晴らしい功績を残した人たちを称え、「ビジネス界のノーベル賞」と呼ばれることもあるOslo Business for Peace Award(過去の受賞者リストにはTeslaの創業者イーロン・マスクの名前も)。Coffee for Peaceは郊外に住む先住民や移民、紛争地域に住む人々が貧困を脱出するための手段としてコーヒー栽培を広めており、2008年の誕生からこれまでに880人もの人々が持続的な生活を送れるようになりました。

Pantojaさんは移民農家と地元住民の紛争調停に取り組む中で、たとえ敵対する人同士であっても、コーヒーを片手にゆっくり話し合うことで平和的に問題が解決できると気づき、それがCoffee for Peaceの設立に繋がったと言います。

 

コーヒー消費国の夏

今夏、Black Lives MatterやCOVID-19のパンデミックをきっかけとして、アメリカを中心にホスピタリティ業界の新たな課題が浮き彫りになりました。

こちらのSprudgeの記事は、Gorge Floydさんらの死に端を発したBLM運動の盛り上がりやそのコーヒー業界へのインパクト、さらにはCOVID-19の影響で営業の縮小や停止を余儀なくされたブランド、仕事を失った人たちの話題を中心に、今年の夏を振り返りながらコーヒー業界が抱える社会的な問題を指摘しています。

その一方で、これまでWeekend Brewでご紹介したGetchusomegearのように、クリエイティブな解決策も徐々に生まれ始めています。#mettoo運動を契機として性差別の問題が広く議論されるようになった通り、課題があるとを認めることは解決への第一歩と考えることができるのです。明るみになった数々の事件や問題をもって今年の夏が「審判の時」になったと考えるのではなく、数年後、2020年は良い変化のきっかけになったと振り返られるよう、個々人に何ができるのかを考えなければいけません。

 

その他の気になるニュース

▷ 生産者にとってさび病よりも怖い存在とさえ言われるコーヒーノミキクイムシ(Coffee Borer Beelte:CBB)が2010年のハワイ島、2014年のオアフ島、2016年のマウイ島に続き、ハワイ最大のコーヒー生産地カウアイ島で発見されました

▷ 長年不妊に悩まされていた、アメリカのオクラホマ州でカフェを経営するカップルが、出展していたファーマーズマーケットでの会話をきっかけに養子を迎えることになりました。このカップルは現在、妊婦や不妊に悩む人たちを支援する地元の非営利団体Charis Centerへの寄付金を募っています。


▷ スペインのコーヒー企業Cafés Novellが、100%堆肥化するパッケージに入ったコーヒーをイギリスで発売。同社は2億円近い投資の末に、このパッケージや同じ特徴を持つカプセルに入ったコーヒーを「no waste」ラインとして打ち出しています。

▷ スペシャルティコーヒー協会のボードメンバーVava Angwenyiさんが、同組織にはびこる差別や女性蔑視、いじめの慣習を批判する公開書簡をMediumに掲載。その中でケニヤ出身の彼女は、SCAでは西欧諸国の利益が優先され、自らの声がかきけされそうになったこともあると語っています。

▷ 7月頃から収穫がスタートしたブラジルでは、輸出用コンテナの不足などを原因に物流に遅延が発生し、収穫・精製後のコーヒー豆を保管する場所がなくなりつつあります。農家から輸出業者が購入した豆は、運ばれたトラックに載ったまま何日も積荷をおろせずにいるとのこと。

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

Niyol Coffee
福岡

「コーヒーはいつもあなたにそっと寄り添う優しい存在」と言う店主 越智大輔さんの言葉通り、地域に優しく寄り添う自家焙煎コーヒーショップ。喫茶・イベントスペースとして使われている地下フロアがユニークなこのお店は、店主の大好きなものであふれています。アメリカ先住民のナバホ語で「風」という意味がある店名の「NIYOL」のように、いい風が通る居心地バツグンな場所。

生産者:
Rosa Dimas Funes Macías

生産国:
ホンジュラス コマヤグア県 サン・セバスティアン市(地図

品種:
カトゥアイ

精製方法:
ナチュラル

テイスティングノート:
カカオ、プラム、アプリコット、赤ワイン。フレッシュな果実味と酸、チョコレートのような甘さのバランス、程よいナチュラル感が心地良いです。

編集長のコメント:
コーヒーの入ったカッピングボールにお湯を注ぐと、梅酒のような香りが立ち上がりました。一口含むと、花のブーケに顔を埋めるような感覚があったかと思うと同時に、コーヒーが果実であることを改めて思い出させてくれるほどのフルーツ感が押し寄せてきます。昔おばあちゃんが漬けた梅酒に入っていた梅をかじるような、甘くて優しい味がしました。


Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

 


小池健輔
InstagramYouTube

蚤の市などで手に入れたビンテージの写真を使ったコラージュ作品を制作しているアーティスト。人間の想像力や知覚をうまく利用した彼の作品はユーモアに溢れ、とにかく見ていて飽きません。小池健輔さんの面白いところは、1枚の写真を様々な形で分解して再構築することで完全に新しい視点や意味を持たせてしまうところ。このインタビューで語られている制作プロセスについてや、写真を点でとらえることで固定概念を捨ててクリエイティビティを発揮できるというお話は、アーティストの世界観はなんて面白いんだと思わざるにはいられません。InstagramやYoutubeで作品が見られるのでぜひ覗いてみてください。コラージュ好きは、きっとずっとみていられるはず。— Toshi 



'Focus' (live at the BET Awards 2018) - H.E.R.
YouTube

今年は結局、夏フェスにはひとつも参加せずに終わりそうということもあり、よくライブ動画を見ていました。その中で気になったのが、昨年グラミー賞2部門を受賞したR&BアーティストH.E.R.です。幼い頃から音楽に慣れ親しんでいた彼女は、子どもの頃から業界の注目を集め、2016年にセルフタイトルEP「H.E.R.」でデビュー。このアルバム自体は何度か聞いていたので曲は知っていたものの、ライブを観たことがなかった僕が一番驚いたのが、上のリンク先の動画にも出てくるギターソロです。振り返ってみると、音楽のジャンルがR&Bであること、アーティストがシンガーであること、女性であることなどから、本人がギターソロを(しかも渋いスタイルで)演奏するなんて予想していなかったんだと思います。少し調べてみたところ、彼女のギターソロはライブの欠かせない一幕としてファンも毎回楽しみにしているとのこと。これまで聞いた音楽や観たライブから偏見を作り上げていた自分に気づかされた瞬間でした。— Atsushi

 


Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

横山 史門

宮城県出身、27歳。スペインのバルセロナやドイツのハンブルクでバリスタとして働き、直近ではバルセロナのNømadで焙煎に取り組んでいる。最近ハマっているものは日本酒。 特に興味を持っているのが、無濾過や生酒のような自然の力の味を感じられる地酒。

セットアップ:
抽出器具:Aeropress
豆量:20g
湯量:220ml (100ml + 120ml)
挽き目:粗挽き
湯温:85℃(抽出用100ml), 90℃(後から加える120ml)
抽出時間:1:30〜1:45


手順:

  1. 豆20グラムを粗めに挽き、逆さに立てたAeropressの中に入れる
  2. 85℃に熱したお湯を100mlまで注ぎ、お湯とコーヒー豆が均等に触れるように軽くかきまわす
  3. 1:15になったらフィルター部分を取り付け、Aeropressをひっくり返してからカップの上に置き、15秒程度かけてゆっくりプレスする
  4. 抽出されたコーヒーに90℃に熱した綺麗なお湯を入れて完成

      ポイント:
      フィルターは二枚使用。焙煎度合や、コーヒー豆の特徴に応じて抽出に使う湯量を100ml-120mlで調節。後から注ぐ量もそれに応じて調節し、トータルが220mlになるようにする。抽出に使う温度も産地の特徴によって上下させる。フローラルなものは温度を下げ、チョコレートやナッツを思わせるものは温度を少しあげると、特徴が現れやすい。

      一言:
      スペインのコーヒー業界は同じ言語が使える中南米の国のコーヒーにすごく強く、マイクロロットのダイレクトトレードや、何年も直接農園の人たちとロースターが直接仕事をして、ビジネス以上の関係を築くことも珍しくないので、ぜひスペインに来た際や、スペインのロースターのコーヒーを飲むことがあったら、中南米のコーヒーをチョイスしていただければ嬉しいです。


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      今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第13号スポンサーの Daterra、パートナーのトーエイ工業Swiss WaterDepartment of Brewlogy のサポートでお届けしました。

      LOVE & COFFEE✌️
      Standart Japan