SYU・HA・RI マルシア・ヨーコ・シモサカが語る、生豆買い付け時にカッパーが果たす役割

SYU・HA・RI マルシア・ヨーコ・シモサカが語る、生豆買い付け時にカッパーが果たす役割

信頼できる『生産者』にフォーカスを当ててその土地でしか生まれない唯一無二の味を買い付け、それぞれのストーリーを持つグリーンコーヒーを日本のロースターへと届けるSYUHARI

Standart Japan25号のパートナーを務めてくれた同社のチームメンバーで、今年のワールドバリスタチャンピオンに輝いたブラジル代表のBoram Umさんのコーチも務めたマルシア・ヨーコ・シモサカさんにカッパーとしてのご自身の役割、そしてSYUHARIの買い付けについてお話を聞きました。

 

これまでのご経歴、現在のお仕事、そしてSYUHARIではどのような役割を担われているかなど、ご自身について教えてください。 

私は日本でも知名度が高いシモサカ農園の子女として生まれ、大学卒業後からコーヒーに携わるようになり、この業界に入ってかれこれ15年以上になります。有名なコーヒー農家をルーツに持つものの、私は生産者としてではなく父の営むコーヒー農業のコンサルティング会社でコーヒーキャリアをスタートさせました。

父の会社では品質管理であるカッピングに初めて触れ、一杯のコーヒーが一人の生産者と世界をつなぐことの素晴らしさを実感し、コーヒーの生産国と消費国との真のつながりを作るため、カッピングについてさらに学び、理解しようと決めました。

父の会社を辞めた後は、ブラジルのコーヒー関連会社で講師として働き、その後SYUHARIに入社するまでの5年間、「コーヒーハンター」でお馴染みの川島 良彰氏のアシスタントを務めました。現在はSYUHARIで働きながら、2023年のワールドバリスタチャンピオンのBoram UmとともにブラジルのFazenda Umでも働いています。

私のSYUHARIでの役割は生産者とロースターを繋ぐことです。私自身の夢を日々実現できるこの仕事は、本当に素晴らしい仕事だと感じています。

 

マルシアさんはSYUHARIにとって欠かすことのできない存在だと伺っています。SYUHARIチームに参加しようと決意された背景にはどのような思いがあったのでしょうか?

弊社代表の辻本とは2018年にブラジルで開催されたWorld Coffee In Good Spirits Championshipの日本代表のサポートチームのメンバーとして初めて会いました。

厳しいトレーニングの最中、私たちはお互いのキャリアや夢、将来について語り合い、非常に刺激的な時間を過ごしました。彼は日本へグリーンコーヒーを輸入する会社を作ることが夢なのだと、その時に話してくれました。まだ無名でも高品質のコーヒーを生産している生産者に、日本のコーヒー市場に参入するチャンスを作り、また中小規模のロースターに良質なコーヒーが買える機会を作るんだと。

その時彼は、将来的に会社を設立する時は必ず私に連絡すると言ったんです。そして確かパンデミックの渦中だったと記憶しています、約束通り辻本から私宛にメッセージが届き、「グリーンコーヒーをインポートする準備ができたから、今すぐにでも始めよう」と言われました。私はその場で迷うことなく彼と仕事することを決め、はじめはブローカーとして、そして昨年からはチームの一員としてのオファーを正式にもらい、現在はSYUHARIチームのメンバーとして働いています。

 

ブラジルや中米でのコーヒー買い付けに同行されているそうですね。買い付けの際はカッパーとしてどういったことを心掛けていますか?

カッピングは、生産者とバイヤーの双方にとって非常にセンシティブな時間です。ですので、私の仕事は両者にとって透明で最適な環境を作ることです。生産者はバイヤーに自分が作った最高のコーヒーを見せ、バイヤーは自分のコーヒーショップやロースターで使用したいコーヒーを買う。

それを念頭に置いた上での私のカッパーとしての仕事は、ディフェクト(欠点)のあるコーヒーカップや、バイヤーが好まなくてもエキゾチックで素敵なコーヒーがあれば、それをしっかりと指摘することです。どのロースターも自分たちの個性を出したいので、どうしても個人の好みが反映されがちです。コーヒーの酸味自体を好む人もいれば、フルーティーなフレーバーを好む人もいるといったように。ふるいから落とされてしまったコーヒーは決して質が良くなかったわけではなく、単に好みではなかっただけということなんですよ。

そして生産者に対しても、日本のバイヤーがどのようなマインドを持っているかを伝えるようにしています。ご存知かどうかわかりませんが、コーヒー生産者にとって日本のバイヤーは世界でも最も厳しい顧客なんです。

 

 

コーヒーの買い付けにおけるゴールはどこにあると思いますか?

信頼できる生産者からコーヒーを買い、バイヤーも喜んでお客さんに販売する。コーヒーの買い付けは、コーヒーの価値あるサイクルを生み出すことそのものです。

生産者側からすれば、自分の仕事を知り、その仕事に価値を与えてくれる人にコーヒーを販売できることに満足できるでしょうし、バイヤー側からすれば、インポーター・ロースターにそのコーヒーを提供することで生産者のストーリーをより明確に伝えることができ、コーヒー販売への情熱を高めることができます。

私たちの仕事のゴールはこの価値あるサイクルを作り出すことだと思っています。

 

直近では今年のワールドバリスタチャンピオンに輝いたBoram Umさんのコーチもされたそうですね。グリーンバイヤーやカッパーとしてもご活躍されるマルシアさんがコーチとしてチームに加わることで、どのような点でメリットがあったと思われますか?

この質問はチャンピオン自身に聞いた方がいいでしょうね()

ですが経験のあるカップテイスターとして、またグリーンコーヒーのテイスターとしては、数ある選択肢から彼の選び得るコーヒーに異なる視点を与え、コンペティションコーヒーが持つあらゆる可能性を探求できるようサポートできたのではないでしょうか。

 

カッパー、バイヤー、競技会の審査員、コーチなど、川上から川下まで幅広いコーヒーシーンに携わるマルシアさんが考える、コーヒープロフェショナルに必要なマインドを教えてください。 

コーヒーは誰にでも楽しめる嗜好品ですが、同時に競争が激しいのも事実です。コーヒー業界では誰にでも自分の目標を達成するチャンスがありますが、集中力、一貫性、そしてオープンマインドでなければなりません。

SYUHARIには、このような価値観が芯の部分にあると私は感じています。私たちは自分たちがすべきことをしっかりと理解し、毎年異なるコーヒーを探し続け、様々な生産者にそれぞれが生産したコーヒーを世界に紹介する機会を与えます。常に新しいコーヒーとの出会いに対してオープンマインドであることが重要なんです。

この記事は、Standart Japan第25号のパートナーSYU・HA・RIの提供でお届けしました。