「まだ気づいていない好き」が見つかるPostCoffee。

「まだ気づいていない好き」が見つかるPostCoffee。

2019年にベータ版を、2020年パンデミックが世界中を襲ったタイミングで正式版をリリースしたPostCoffee。“おうちコーヒー”の需要拡大に沿って急成長を遂げた同社はどんな軌跡をたどり、これからどこに向かっていくのでしょうか。

 

手段としての進学、カフェ

ネットバブルの時代に思春期を迎え、高校在学中からフリーランスのウェブデザイナーとして活動していたPostCoffee代表の下村 領さんは、当時メディアを賑わせていた起業家の姿を見ながら、いつか自分も……と思いを募らせていました。大学進学と同時に故郷の鹿児島県を離れ上京するも、その目的は学業ではなかったといいます。

「東京に行けばウェブ制作やデザインの仕事を本格化できると確信していました。でも高校卒業後に手ぶらで上京、というわけにもいかず、親を説得するための手段として大学進学を選びました」

進学から2年が経つと当初の目論見通り、学業から離れてHERETICを設立。それから16年もの間、上場企業を含むさまざまなブランドに、ウェブ制作やオンラインマーケティングの戦略策定・実施などのサービスを提供していました。「缶コーヒーばかり飲む”自称コーヒー好き”だった」とおどける下村さんは、渋谷区富ヶ谷にあったオフィスの周辺で次々に開店するカフェを訪れるようになり、そこでスペシャルティコーヒーに出会います。

それまでは「コーヒー」という単一のラベルで捉えていたものが、幅も厚みもあるものだと気づき始めるや否や、自宅やオフィスでも自分で豆からコーヒーを淹れるようになっていきました。

「一旦のめり込むと時間もお金も妥協しない」という下村さんは、当時日本では取り扱いがなかったオランダのメーカー、キースファンデルヴェステンのエスプレッソマシンを個人で輸入し、オフィスを改装しカフェ兼コワーキングスペースのMAKERS COFFEEをオープンします。「以前の自分のようにコーヒーを画一的に捉えている人がコーヒーの楽しさに気づける場を作ることが目的でした」。そこで現在も付き合いのある、コーヒーのプロたちと出会いますが、カフェは3年ほどの営業期間の果てに閉めることを決断します。

「ビジネスとして利益を生み出してはいましたが、ウェブのスピード感に慣れていた私にとって、アイディアを形にするまで、そしてお客さんからの反応を得るまでの期間がとてつもなく長く、もどかしさを感じていました」

それまでに培ってきたデザインやテクノロジー、マーケティングのノウハウを活かし、おいしいコーヒーをより多くの人に、よりスピーディーに届けるためにはどうすればいいのか——たどり着いたのがコーヒーを定期便のかたちで届けるPostCoffeeのアイディアでした。

  

変化を味方につける

「2019年にβ版としてリリースしたアプリは、現在とは少し違ってスペシャルティコーヒーをできるだけ手軽にオンライン購入できる、コーヒー版Amazon Dash(ボタン式の小型専用デバイスでネット注文できるサービス)のような存在を目指していました」と当時を振り返る下村さん。しかし1年足らずで方針転換を余儀なくされます。「ECやスペシャルティコーヒーに興味がある人には好評でしたが、やがてカフェインを摂取するために缶コーヒーを飲みまくっていた以前の私のような人には、リーチできないとわかりました」

PostCoffee創業のきっかけを改めて振り返るなかで浮かび上がってきたのは、コーヒーそのもののおいしさだけでなく、「コーヒーがある生活」で感じた喜びだったと下村さんは言います。

「コーヒーを淹れる習慣ができたおかげで、心の余裕が生まれたり、趣味のキャンプの時間がさらに充実したりと毎日の生活が底上げされたような感覚があったのを思い出し、自分がスペシャルティコーヒーの販売を通じて人に届けようとしていたのはこの感覚だったのだと再認識しました」

コーヒーに詳しくない人でも好きなコーヒーにすぐに出会えるよう、専用のアプリからブラウザへと舞台を広げ、30万通りの組み合わせからその人にあったコーヒーを提案できるコーヒー診断機能を導入し、2020年2月に正式版をリリース。

奇しくもリリースと時を同じくして新型コロナウイルスが猛威を振るい、2か月後には首都圏を中心に緊急事態宣言が発令されました。日本中の誰もがライフスタイルや働き方の急激な変化を強いられるなか、少しでも生活の質の維持・向上を応援ができないかと考えたPostCoffeeチームは、コーヒーボックス1,000箱の無料配布を決めます。

「当時の従業員は私を入れて4人、そこにアルバイトのスタッフが数名という体制だったので、正直自分たちの首を絞めるだけでした。でも今振り返っても、あのタイミングしかなかったと胸を張って言える挑戦でした」

無料配布が奏功し数々のメディアに取り上げられ、コーヒーのサブスクリプションサービスという概念、そしてPostCoffeeの名が知られるようになっていきます。  

 

変化の源泉となる

正式版のリリースから1年が経過する頃には、β版と比較してユーザー数は25倍、コーヒー診断の利用回数は30万回以上と右肩上がりの成長をとげたように映りますが、ここで再びPostCoffeeは新たな領域に踏み出します。

それまで自社焙煎のコーヒーを販売していたかれらの次の挑戦は、国内のロースターから購入した焙煎豆の販売——そのきっかけはユーザーの声でした。

「ユーザーアンケートから他のロースターのコーヒーも飲んでみたい、という声が多数聞かれたのが発端です。そこで顔見知りのロースターに話を聞いてみたところ、自分たちでECや定期便に取り組んでいながらもあまり数が伸びず、発送準備に時間と労力がとられて困っているお店が少なくないと分かりました。それならPostCoffeeのプラットフォームと顧客基盤を使ってもらえばいいのではないかと考え、EC部門を2021年にスタートさせます」

一見、PostCoffeeにはメリットがあまりないように見えるこの挑戦の狙いについて、下村さんは次のように説明します。

「ロースターは競合ではなく協同相手、なぜならまだスペシャルティコーヒーの市場はまだまだ小さいからです。他ブランドと手を組めば、ユーザーにとっては触れられるコーヒーの幅が広がるし、私たちとしてはPostCoffee全体としての体験が向上するので実は三方良しなんですよ」

次なる目標に見据えているのが、オフラインへの進出です。日本の食品・飲料のEC化率は未だ4%未満といわれ(経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書」)、今後はコーヒーイベントの開催や百貨店をはじめとする商業施設へのポップアップ出店などを計画しているそうです。

「どこかに常設店舗を置くよりも、飛び道具的にオフラインの場に進出してPostCoffeeのことを知ってもらうことに注力していきます」——そこまで広さ、規模にこだわる理由はなんなのでしょう?

「究極的には『PostCoffeeを利用している自分』を好きになってもらいたいんです。何かに興味を持つこと、自分の”好き”を知ることって回り回って自分自身への自信に繋がると私は考えています。そうやってコーヒーを通じて生活を、人生を豊かにすることがPostCoffeeの狙いなんです。生産地からコーヒー業界を変えようとする人がいれば、焙煎から、抽出から同じ山頂を目指す人もいる。PostCoffeeはそれぞれのプロと手を組みながら、消費のあり方を変えることでコーヒー業界にポジティブな変化をもたらしていきたいです」

この記事は、Standart Japan第25号のスポンサー、PostCoffee の提供でお届けしました。

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