「生理とカフェ」アンケート結果

「生理とカフェ」アンケート結果

2022年にスコットランドが生理用品の無償提供を法制化するなど、生理の平等化や生理に対する偏見をなくす動きは徐々に生まれつつも、まだまだ国内外を問わず議論が足りていないのではないかと私たちは考えています。

そこでStandart Japan第23号では、「生理とカフェ」で生理のある人に対してカフェが担える役割について取り上げました。さらにこの重要なトピックに関して引き続き業界全体で考えていくため、カフェと生理用品にまつわるアンケート調査を実施しました。

調査期間:2023年 4月 25日 ~ 5月 24日

回答数: 199 件

本調査は、公共の場、とりわけコーヒーショップで生理中の人が直面する問題への理解を深めるとともに、広く生理一般についての話のハードルを下げ、偏見を減らすことを目的に実施しました。

ジェンダーを問わず多くの方からご回答をいただき、ありがとうございました。より心地良いコーヒーコミュニティが構築できるよう、以下の調査結果をご覧いただけたら幸いです。

また今回のアンケート結果をもとに、「生理とカフェ」の著者クロエ・スカイ・ワイザーさんにお話を伺いました。その様子をまとめた記事をStandart Communityで公開しています。こちらもぜひご覧ください。

    

  

カフェ利用者の回答

  

   

 

今回の調査から、急に生理用品が必要になった経験のある方が多くいることが分かりました。トイレに生理用品が置いてあったら、緊急時に非常に助かる、というコメントもたくさんお寄せいただきました。

一方で、生理用品にかかる費用をカフェが負担することに疑問があるとの声も多数上がりました。こうした支援は事業者ではなく、行政が行うべき、また無料より原価分の支払いがあっても良い、というご意見もありました。

カフェがどの程度の役割を担うべきかについては著者との対談でも取り上げました。Standart Communityのオンライン記事もぜひあわせてご覧ください。

 

   

 

近年、月経カップやサニタリーショーツなど、生理用品の種類が増え、環境へ配慮したものも多数あります。こうした製品のカフェへの設置は現実的ではないかもしれませんが、認知度を上げてほしいという声もありました。

 

生理用品が男女兼用のトイレに設置されることへの抵抗はあまりない人が多い一方で、いたずらされるのではないか、衛生管理が十分になされるのか、と不安の声も聞かれました。衛生環境が整ったトイレがあると、生理時に抱く不快感を少しでも軽減できるかもしれません。

また、「生理用品が必要なら従業員に遠慮なく声をかけて下さい」と書かれた張り紙を見かけるものの、その瞬間に必要なのでできればトイレに設置してくれるとありがたい、というご意見もありました。

 

カフェの従業員・オーナーの回答

   

紙ナプキンとタンポン、両方を設置しているお店が多数ありました。

多くの生理用品には「軽い日」「普通の日」「多い日」「昼用」「夜用」など様々なサイズ(吸水量が異なる)があります。とあるお店では、様々なサイズを用意しているそうです。

例えば、「緊急時の使用を想定しているなら普通の日用、など生理用品を置く目的によって提供するサイズは異なります。どのサイズを選んだら良いか迷ったら、設置目的と合わせてご家族や周りの生理のある方々に聞いてみてください。

  

「生理とカフェ」や今回のアンケートを受けて、生理について考えるようになったというコメントをカフェオーナーの方々から多数いただきました。中には生理用品を設置されたというご報告も! お客様からは好評の反面、どのような容器に入れるべきかなど、新たな疑問も浮かんできたそう。

また、生理用品の設置は、そのカフェの特色、ブランドを構成する要素になり得るのでは、というご意見もありました。

 

 生理中の労働について

  

  

これまでにカフェで働いたことがある方の中には、忙しさのあまり生理用品を変えられず、服を汚してしまうのではないかと不安を抱えながら勤務時間を過ごした人もいるそうです。

こうした不安な状況に直面しても、周囲に助けを求められないという回答も多数ありました。その背景には、「女性は体調が不安定」と一括りに捉えられてしまうことを忌避するケースや、具体的に何が辛いのか、どういうサポートが必要なのかが上手く伝えられないという課題を抱えている場合もあるようです。

また、今回のアンケートで、生理休暇の制度が整っている企業があることがわかりました。こうした制度がある企業では、取得実績を重ねることが重要だと感じます。実際に生理休暇を取得したことがある方は、ぜひ私たちに教えてください。

 

 最後に

今回のアンケートを通じて、生理に関する考え方や感覚、さらには生理のある人が感じるサイクルごとの苦痛には、かなりの個人差があることに改めて気づかされました。そして、多くの方が毎月何らかの不調を感じているにもかかわらず、生理は組織ではなく、個人が解決すべき問題として認識されている場合が多いようです。

その理由は、長年この話題がタブー視されてきたからではないかと感じます。そのことを象徴するかのように、今回「気軽に話ができる環境ができていることに新鮮さを感じています」という感想をいただきました。

生理がタブー視されてきたからこそ、正しい情報が十分に広まっていないとも考えられます。例えば、多くの人がPMS(月経前症候群)に悩む傍ら、生理を経験した人からでさえPMSについて理解をえられず、症状に苦しみながら働いた経験がある方もいました。

個人差のある問題ではありますが、個人差があるからこそ、それぞれの人が感じる苦痛が少しでも和らぐようなホスピタリティをカフェで受けられたら、その人にとっては間違いなく忘れられない体験になるのではないかと、今回のアンケート結果を見て感じました。

改めまして、今回のアンケートにご回答くださった皆さん、貴重なご意見・お感想をお聞かせいただき本当にありがとうございました。