カフェインレスコーヒーに適した焙煎・抽出とは?

カフェインレスコーヒーに適した焙煎・抽出とは?

生まれ変わったStandart Japanが徐々に皆さんにお手元にも届きはじめたようで、新しいデザインやコンテンツについて皆さんがどう感じているかチームStandartも興味津々です👀

今回はそんなリデザイン後の1冊目となるStandart Japan第13号のパートナーを務めてくれたSwiss Waterをご紹介します。独自技術の「Swiss Waterプロセス」を使い、カフェインレス・スペシャルティコーヒーを提供している同社。その仕組みや、カフェインレスコーヒーを焙煎・抽出する際の注意点などについて、Swiss WaterのマーケティングマネージャーPatricia Delgadilloさんに聞きました。

 

1. まずはSwiss Waterプロセス自体やその仕組みについて教えてください。

Swiss Waterプロセスは、化学薬品を一切使わずに純水を用いてコーヒーから丁寧にカフェインを取り除く独自の技術です。この製法を使えば、毎年少ししかとれない最高級のスペシャルティコーヒーであっても、繊細な風味はそのままで、安全にカフェインを除去できます。

工程としては、まず コーヒーの水溶性成分からカフェインを除去したグリーン・コーヒー・エクストラクト(Green Coffee Extract: GCE)に生豆を漬けることで、浸透圧によって生豆中のカフェインをGCE内に移動させます。

次に、カフェインを吸収したGCEが活性炭フィルターを通ると、フィルターがGCE内のカフェインを吸着します。活性炭フィルターはその後加熱炉へと送られ、カフェインを取り除いた後に再利用されます。こうして浄化されたGCEは再度生豆が入ったタンクへと送られていきます。これを繰り返し、生豆のカフェイン含有率が0.1%に達した段階で乾燥工程へと移ります。

 

2. カフェインレスコーヒーを焙煎する際の注意点は何かありますか? 

Swiss Waterプロセスでカフェインを除去した生豆は、通常のカフェインを含むものと同じように焙煎できます。唯一と言える違いは、表面の色が通常のコーヒーよりも少し暗くなりやすいという点です。そのため焙煎中の表面の色だけでなく、焙煎後の豆を挽いた状態の色もカフェインありの同じコーヒーと比較するようにすると良いでしょう。色に加え、焙煎中は質感や香りの観察も忘れずに。

“普通”のコーヒーのように、カフェインレスコーヒーも焙煎中に体積が増え、徐々に見た目にも変化が出てきます。チャージ温度は190-205度をおすすめしていて、これは普通のコーヒーと同程度から少し低いくらいです。焙煎時の注意点をまとめると以下の通りです。

  • 焙煎中のカフェインレス生豆の温度は、普通のコーヒーと同じようなグラフを描くようにしましょう。そのために焙煎機の温度やエアフローを調節して、いつものプロファイルをなぞれるようにします。
  • 1ハゼのタイミングは普通のコーヒーとほぼ変わりませんが、トータルの焙煎時間はカフェインレスだと少し短くなる場合が多いです。
  • カフェインレスコーヒーは色づきやすいため、表面の色の変化だけで焙煎度合いを判断してしまうと、アンダーディベロップメントに陥ってしまう可能性があります。普通のコーヒーとの比較には、粉の状態で色を比較することをおすすめします。

全体としては焙煎時間やプロファイルに違いはほとんどないはずですが、1ハゼ後の変化はカフェインレスコーヒーの方が早くなる傾向にあります。

 

3. 抽出時の注意点についてはどうでしょう?

検証の際にはコーヒーを少し多めに使うのをおすすめします。もしくは、普通のコーヒーと同量の場合と、少し多めにした場合で比較するのも有効でしょう。

コーヒーにはさまざまな水溶性・非水溶性成分が含まれていて、お湯に水溶性成分が溶け出すことであの風味が引き出されます。カフェインも水溶性成分のひとつですが、カフェインレスコーヒーにはカフェインが含まれていないため、普通のコーヒーよりも水溶性成分が少ないことになります。なので普通のコーヒーと同じレシピだと抽出されたコーヒーは「弱く」なりがちです。そのためコーヒーの量を増やしたり、挽き目を細かくしたりして調整してみてください。

カフェインがないことで、TDS (Total Dissolved Solids:総溶解固形物)にも影響が出てきます。そのため、たとえ抽出されたコーヒーはおいしくてもTDSは理想的な値とマッチしない場合があります。TDSや収率をチェックするのはとても大切なことですが、普通のコーヒーとは値が変わってくるかもしれないということを覚えておいてください。

参考までに以下におすすめのレシピをご紹介しますね。

ドリップ
Chemex
コーヒー:45 g
湯量:700mL

Hario V60
コーヒー:23 g
湯量:330mL

エスプレッソ
ブリューレシオ:1:2
抽出時間:20秒

抽出について、詳しくはこちらのページをチェックしてみてください。

 

4. カフェインレスコーヒー市場の現状について教えてください。

カフェインレス・スペシャルティコーヒーの消費量は、ここ数年の間にこれまでにないほどのスピードで伸びています。アメリカを例にとれば、普通のコーヒーの消費量は2.2%のペースで増加しているのに対し、カフェインレスは7.3%も増えています。これはカフェインレスコーヒーだけでなく、特に高品質なカフェインレスの需要が増えていることの表れです。

いつもは普通のコーヒーを飲んでいる人でも、体調や時期によってカフェインを控えようと考えることがあると思います。つまりSwiss Waterプロセスのコーヒーは、カフェインをとれない、もしくはとりたくないという人だけのためのものではなく、すべての人に新しい選択肢を提供するためのものだといえます。

 

5. 日本のマーケットについてはいかがでしょう?

私たちが見る限り、日本のカフェインレス市場も拡大傾向にあるようです。ロースターやカフェなど私たちの顧客も、ディカフェを導入することで夕方から夜にかけての売上が伸びたと言います。スーパーやコンビニでもディカフェ商品(特にRTD:缶やペットボトルなどに入ったコーヒー飲料)を見かけることが増えました。

Nikkei Asian Reviewに最近掲載された記事にも、カフェイン摂取量を減らそうと考えている健康志向の消費者の間でカフェインレスコーヒーの消費量が増えていると書かれていました。つまり消費パターンに変化が起きつつあるのです。業界もその変化に気づき、もっとカフェインレスの選択肢、なかでも高品質なカフェインレスコーヒーを提供していかなければならないという気運が高まっています。

「ニューノーマル」な社会では自宅で働く人たちも多くいるため、これもカフェインレスコーヒーにとってはチャンスだと捉えています。カフェインを含む飲料の選択肢は数えきれないほどありますが、体調や生活リズムの観点からカフェインレスという選択肢を選ぶ人も増えているようです。

 

5. Swiss Waterプロセスを導入するにはどうすればいいですか?

まずは info@swisswater.com までご連絡ください(英語・日本語どちらでもOK)。また日本語のウェブサイトでは、Swiss Waterプロセスや弊社のサービスについてご覧いただけます。

 

——Patricia さんありがとうございました!Swiss Waterの独自技術についてはStandart Japan第9号に詳細が掲載されているのでこちらも是非チェックしてみてください。