#29: It’s Coffee O’clock

#29: It’s Coffee O’clock

おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?

コーヒーのマーケティングをテーマとしたポッドキャストシリーズIn Good Tasteの中で、哲学を学ぶ人がこのところ増えているという話がありました。マーケティングやHRのようなブランドのメッセージを発信する立場にいる人は、エシカルコンパス(倫理基準)が求められ、それには哲学的思考が役に立つからだそう。これはパーパスドリブンなブランドを求める消費傾向の表れなのかもしれません。数日前にあった、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の女性差別的な発言は、このエシカルコンパスが性別や年代、国や文化などによって大きく異なっていることを物語っています。

コーヒーの話に戻すと、発酵デザイナーのLucia Solisさんが倫理観に関する問題提起を行った別のポッドキャストでのお話が印象に残っています。Luciaさんがルワンダで関わったある案件では、元々ナチュラルプロセスのコーヒーを作るためにパティオでの乾燥に24日間かけていたところ、タンク内で酵母発酵させることで、似たフレーバーを持つウォッシュトプロセスのコーヒーを34時間で作れるようになったそうです。これを聞いたホストが、「でもタンクで作ったというより、パティオで乾燥させたと言った方がロマンチック(マーケティング的に)ですよね」という場面がありました。でもそれはなぜなのか? そこには植民地主義的な搾取の構造が見え隠れしています。こういった場面ひとつひとつに疑問を持てるかどうか。哲学的な思考が求められる機会は今後も増えていきそうです。


編集長 Toshi

 

 

This Week in Coffee 
世界のコーヒーニュース

コーヒーなう

「今日は何時にコーヒーを飲もうかな〜」とニヤケながら悩む毎日。しかしこちらの記事によると、私たちのコーヒータイムには「適切な」時間帯があるのだとか。
 
臨床心理士Breus氏によると、私たちのクロノタイプ(朝方夜型などの時間的特性)はこちらの診断クイズによって、イルカ(不眠症傾向) 、ライオン(朝方)、オオカミ(夜型)、クマ(その他大勢)の4つに分類が可能だそう。その上で理想の睡眠習慣には、カフェイン摂取をタイプ毎の適切な時間内に行うべきであると語られています。問題はこの「適切な」コーヒータイムが、最もラッキーなクマ型でも午前10時からの2時間、イルカ型だと午前9時30分からたった15分間であることに加え、タイプに関係なく「1日約240ml以上、起床後最低90分間および午後2時以降のコーヒー摂取を控えるべき」との指摘には、お馴染みSprudgeも「これは暴力だ」の一言。賛否両論が飛び交うコーヒーと健康の議論ですが、白熱する戦いはこれからも続きそうです。
 
この議論からも私たちの世界の捉え方そのものが、眼前の現実を創り出しているのだと感じます。例えば著書『珈琲の世界史』によると、今日親しまれる 「コーヒーブレイク」は第二次世界大戦後に消費離れを防ぐべく米国コーヒー局が作った宣伝文句であったことや、節分の恵方巻きが某コンビニエンスストアによって広められたという話からも、私たちは言葉を通じて新たな現実(文化)を生み出していると言えるような気がします。そう考えると今この瞬間は世界の誰かのコーヒータイム。つまり何時であってもあなたのコーヒータイムは、いつも誰かと一緒なのです。:)

 

ねぇねぇ、聞いてよ。

「人々はいろんな思いを抱えてカフェを訪れる。いつもはコーヒーに何も入れないあの人が、ほんの少しの砂糖を、最後の一口に加えていた。『ほろ苦い出来事でもあったのかな』そうやって根拠もないのに想像してしまうのは、自分の悪い癖だろうか」。インドネシアのインディーゲームスタジオToge Productionが昨年発表した『Coffee Talk』は、そんな 「多種多様な」事情をもつ登場人物とコーヒーを通じて会話を楽しむノベルゲーム。
 
ストーリーの舞台は夜のシアトル。主人公であるあなたが営む夜の喫茶店「Coffee Talk」を訪れるのは、人間だけでなくシアトルに住むエルフやオーク、人魚、その他多くの種族たち。お客さんの要望に応えながらあなたが届けるあたたかな飲み物が、彼らの抱える思いと人生にそっと寄り添い、ストーリーが展開されていきます。なんでも同ゲーム内のファンタジー要素は、人種的ステレオタイプや偏見などの文化的多様性を描く際に生じる問題を「ファンタジー」という設定で示すためなのだそう。
 
このゲームの主題が「くつろぎ」と表現されるように、1話が約15分~30分区切りであることや、オーダーミスをしてもお客さんが怒らないという特徴からも、寝る前の絵本のような感覚で楽しめるとのこと。The Guardianのお墨付き任天堂UKのツイートRed Bullの2020インディーゲームリスト入りに見られる通り、業界からも高い評価を得ており、日本語版サイトも完備。クロノタイプや夜のカフェインが気になる方、新たな「夜のコーヒー習慣」を試してみては、いかがでしょうか。

 

その他の気になるニュース

▷ 英国が今年一月よりICO(国際コーヒー機関)に参加。コーヒー輸入量世界第10位を誇る同国の参加が持続可能にどのような影響をもたらすのか、要チェックです。

▷ バージニア工科大学が、コーヒーフィルターを3枚重ねるとマスクとして一定の有効性を発揮するという研究結果を発表。「Filter Virus, Not People」ですね。

▷ 「Go and Drink Coffee (コーヒーを飲みに行こう)」を合言葉に夜間外出禁止令への反対暴動が企てられていたオランダ・ライデン市内で、警察が無料コーヒーと紅茶を片手に対話を促し暴動を未然に防いだとの報告が。

▷ 毎年2月の黒人歴史月間(Black History Month)を祝い、米国のコーヒーショップPhoenix Coffee Co.が世界中の黒人バリスタを対象とした無料バーチャルイベント「The Black Barista Throwdown」を開催。視聴者は同ショップのインスタグラムのストーリーより投票に参加できます。

▷ 英国のデザイナーが布団を出ずとも朝一番にコーヒーを楽しめるコーヒーマシン付き目覚まし時計を開発。2色のカラー展開に加え、USB充電口や牛乳用ミニ冷蔵庫内臓の優れもの。臨床心理士の意見が気にならない方、購入はこちらから。

 

 

What We're Drinking
今週のコーヒー

 

YUKIHIRA COFFEE
山形

フルーツ大国「山形県」にある小さな町「中山町」。採れたての新鮮で美味しいフルーツを日常的に味わえる土地だからこそ、スペシャルティコーヒーの味覚体験を受け入れやすい土壌が築かれていると信じつつ、小さな町からコーヒーを通じて世界を刺激する!という強い想いを胸に、コーヒーの多彩な甘さ、酸味、香りを届けています。

生産者:
小規模農家 EDN Ethiopian Coffee

生産地域:
エチオピア ゲデオ地区ゲルシ(地図

品種:
原種

精製方法:
ウォッシュト

テイスティングノート:
レモングラスやジャスミンの香りとアプリコットの甘さを思わせる印象。最後まで続くフレーバーがとても心地よいです。

編集長のコメント:

わずかにすみれのようなフローラルな芳香があり、甘さの奥にフルーツ感を感じる香りが焼き上がったブルーベリーパイのよう。上質な酸味と甘みのバランスが素晴らしく、レモンキャンディやレモンシロップのようなフレーバーが魅力的です。とろっとした口当たりと調和のあるフレーバーのおかげか、まるでふわりと柔らかい衣に包んでくれるような感覚がありました。エチオピアのコーヒーって何でこんなにプリティなんだ!と思わずにはいられない一杯でした。

 


Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート

Small Pleasures | The School of Life
ウェブサイト

先日本屋を訪れたときにたまたま見つけた一冊。人はなにかと「大きな幸せ」を目指し、その陰で焦燥感に駆られたり、消耗したりするもの。でも実は日常生活は「小さな幸せ」で溢れているんだ、ということをこの本は教えてくれます。実際に本の中では50個を超える小さな幸せが紹介されていて、その対象は「独りで過ごすホテルでの夜」や「日曜の朝」、さらに「日光浴」や「古い石壁」など日常の一コマから行為、身の回りにあるものまでさまざま。ショートストーリーのような日記のような、肩の力が抜けた解説文兼エッセーもその魅力です。パンデミックの影響で行動範囲は未だ限定されていますが、裏を返せば今は普段あまり気を配らない身近な環境を見つめ直すチャンス。この本が周りを見る目を養う一助になるかもしれませんよ。


Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ 

 

福富 真麻

小学校教員を10年務めたのちメルボルンへ。コーヒー文化に魅了され、現地でバリスタとしてのキャリアをスタート。 現在は地元神戸にてパートナーと coffee up! を営む。ハマっている事はIllustratorいじり。

セットアップ:
抽出器具:Hario V60 プラスチック
豆量:15g
湯量:210g
挽き目:中挽き
抽出温度:93℃
抽出時間:2:00


手順:
ペーパーリンス無し、サーバーを温める
70gを3回注ぐ。 (1投目のみ30秒待ち、あとは落ちきる少し前のタイミングで注ぎ足す)
2分以内の落ちきりを目指す

ポイント:
しっかりめのナチュラルやアナエロビック系など印象の強い豆を、1杯楽しむのにオススメのレシピです。 誰でも再現しやすいレシピかと思います。太く、がしがし注いでください!

一言:
皆様はこの1年“コーヒーショップの価値"をどのように考えましたか。 1杯のコーヒーに付加価値を生み出すコーヒーショップの存在は、これからの時代、決してAIにも取って変われない財産だと思います。 同時に、バリスタもそうあるために一層努めなければならないと思っています。 そうやって、品質良く温かいコーヒー文化を育んでいく一端を担っていきたいです。

 

 

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今週の Weekend Brew は Standart Japan 第14号スポンサーの Victoria Arduino x トーエイ工業、パートナーの MiiR JapanBarista Hustle JapanSucafina のサポートでお届けしました。

LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan 
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)