おはようございます。今週はどんな一週間でしたか?
さて今週は、Standart Japan最新号(22号)がリリースされました!2022年の最後となる号です。
3か月ごとに出来上がるSatndartは私にとって一年の時の流れを教えてくれるカレンダーのようなもので、毎号季節を感じさせてくれます。毎年、手元に4冊の雑誌が残り、一年という長いようで短い時間の記憶を留めてくれているようです。モノとして存在する紙媒体のいいところだなと個人的には思っています。(これから30、40号と続いた時に本棚をどうするか問題はさておき……)
今号のキーワードは「鍼灸」、「シンセサイザー」、「コーヒー」。国内消費に支えられ他の生産国とは異なる道のりをたどってきたタイや、常に現場に立ちコーヒーの新たな可能性を探るCOFFEE BASE牧野 広志さんの物語、電子音楽のパイオニアでグラミー賞にも幾度となくノミネートされた作曲家スザンヌ・チアーニさんのインタビューなどを取り上げています。
特集記事は、気候変動によりますますその重要性が高まる種苗セクターの実態に迫る「サステナビリティの種蒔き」。気温上昇やそれに伴う病害虫によるコーヒー生産へのダメージを防ぐためには農法の改善だけでなく、それぞれの生産地域にあった品種の採用が欠かせません。しかし植え替えに要する時間や、各品種や種苗に関する情報へのアクセシビリティの問題などから改善は遅々として進んでいないのが現状。そこで改めて種苗セクターの重要性について理解を深め、現在どのような対策がとられようとしているのかを明らかにしていきます。これまで、種苗という角度からサステナビリティを考えていく記事はあまりなかったのではないでしょうか。私自身、学びの多い記事になりました。
付録のサンプルコーヒーは、2013年にスタートしたインド発のスペシャルティコーヒーブランド、ブルートーカイです。昨年から日本でも展開し始めていて、今後新しいコーヒーカルチャーを日本にもたらしてくれるのではと楽しみにしています。今回はインド南部のカルナタカ州チクマガルール地域にあるケレハカルエステートで収穫されたコーヒーを、現地で焙煎して届けてくれました。Strangler Natural Processと呼ばれる農園独自に開発されたプロセスを使用して精製されています。楽しみですね。コーヒーの詳細はこちらに掲載しているので気になる方はご覧ください。
そしていつものように、最新号をチラッと覗き見しちゃいましょう。その他の記事については、ブログをチェックしてみてくださいね!

それでは今週も良い週末を。
編集長 Toshi
This Week in Coffee
世界のコーヒーニュース
効率性のメトリクス
先日コーヒーメディア「Fresh Cup Magazine」が、コーヒーショップにおける効率性についての記事を公開しました。バリスタの業務は、まさにマルチタスクそのもの。ドリンクを作りながら新たに来店したお客さんを対応し、エスプレッソの抽出を片目でチェックしながらミルクをスチーム。手が空いたら備品を補充し、おまけに清掃まで、とカウンターの向こう側では常に複数のタスクが飛び交っています。そんなコーヒーショップにおける効率性、またその改善の方法とは一体どのようなものなのでしょうか。
まず「効率性」の大前提として強調されているのが、おいしいコーヒーを”適切な”時間で提供するということ。つまり、単純なドリンク作りの速さだけでは効率性を計れないということです。バリスタにとっては、例えばピーク時も心身ともにお客さんを迎える準備ができていると感じられることが重要で、お客さんにとってはドリンクの待ち時間への妥当性を感じられるかが大切であるとのこと。それを踏まえて同記事では、オーダーから提供までにお客さんとの会話が生まれやすい店のレイアウトを整えることで、提供時間は変わらずともサービスの魅力が高まる (効率性が上がる) といった事例が紹介されています。ほかにもQRメニューの導入による(主観的な)待ち時間の短縮、ピークタイムを事前に把握した上で、熟練度も含めて適切な人員配置ができているかなど、技術的な側面以外における効率性の改善の可能性が示されています。
一見ネガティブな印象を受けやすい待ち時間も、そこで育まれる会話や居心地の良さによって、180度異なる解釈になり得るということ。カフェの機械化が進む中、効率性は速さと費用対効果に重きが置かれがちですが、改めてコーヒーショップにおける効率性とはなんなのか、その原点に立ち返る重要性を感じました。
気になるニュース
▷ ハワイ農業研究所に、さび病対策として約2億円の助成金が授与されました。2020年に州内で初めて発見され、昨年には主要な島々でも感染事例が確認されているコーヒーさび病。今回の資金提供元の一つである米国農務省は、昨年ハワイ州とプエルトルコでのコーヒーさび病対策に約7億円の公的資金も投入しています。
▷ 米国・ABCニュースによるドキュメンタリーシリーズ「Impact X Nightline」で、レインフォレスト・アライアンス認証付農園での児童労働の実態についてのエピソードが公開されました。認証獲得によって問題が覆い隠される・恒久化してしまうという、認証システムのリスクについて指摘されています。
▷ ドイツのバリスタチャンピオンシップに出場したポシエッチャさんが、オーツミルクを使用したため失格に。プレゼン中、動物性ミルクしか認めないルールに対して抗議の声を挙げる様子も記録されています。競技会と植物性ミルクの関係については以前のニュースレターをチェック。
▷ ブルーボトルがインスタントコーヒー仕様のクラフトエスプレッソを発売。成長が見込まれるインスタント・おうちコーヒー市場に対応して開発された同商品には、店舗で提供されるエスプレッソと同じ豆が使用されているとのこと。お値段は15杯分で3,700円。
▷ ジェームズ・ホフマン先生の探究心は、とうとうコーヒーを揚げる段階に達したようです。コーヒーを揚げると豆がハゼないなど、科学的な興味深さもさることながら、正直「フライドコーヒー」をグラインドした後のコマンダンテの油汚れが1番気になる……
物足りないあなたへ
ヴァ―ヴ・コーヒー・ロースターズがモバイルオーダーアプリの導入へ。サウジコーヒーカンパニーが、国産コーヒーの生産量を5年以内に700%増加を目指す発表。トーゴ共和国で第一回アフリカ・ユースバリスタチャンピオンシップが開催予定です。
What We're Drinking
今週のコーヒー
ナカムラコーヒーロースターs 新潟(地図)
生豆にストレスを与えることなく焙煎することで素材のポテンシャルを引き出し、風味や甘さ、質感などの豊かなコーヒーに仕上げています。様々な味わいを持つコーヒーとその多様性を楽しんで頂きたいと願うとともに、コーヒーが持つ無限の可能性を広げていきたいと考えています。
生産者: オスカー・フェルナンド・エルナンデ
生産地域:コロンビア ウィラ県ピッタリート・ブルセラス(地図)
品種:カトゥーラ、コロンビア
精製方法:ウォッシュト
テイスティングノート:プラム、ピーチ、赤葡萄、丸みのある口当たり、クリーミーなボディ
編集長のコメント:
挽いた豆がお湯と触れて香ってくる香りは、幼少のころよく遊んでいた家の裏山にある森を思い出させてくれました。フカフカの土や草木や竹林、そしてどこからともなく香ってくる甘みを帯びた空気。なんか心地よい感じで、ワクワクするような気分に。ちょうどいい温度になったコーヒーを口に運びます。スーッと入っていく飲み口で綺麗な酸が印象的。べっこう飴のような甘さとフローラルなニュアンスを感じ、弾むような酸とのバランスでロゼワインを彷彿とさせてくれます。飲み終えた後には少しマカデミアナッツのようなほっこり感も。プリティなコーヒーで、愛くるしさがあります。出会ったばっかりなのに、一瞬で懐に入ってくるようなフレンドリーで親近感抜群の「あの人」みたいなコーヒーでした。飲み終えた後に名残惜しく感じてすぐ2杯目に手が伸びちゃいますよ!ごちそうさまでした!
What's New in the Community?
Standart Communityで起きていること
今週のStandartコミュニティでは、手回し焙煎機を使用した家庭での焙煎時(シナモン〜ミディアムロースト)にチャフが残ってしまう原因や、そもそもチャフが剥がれる要因について質問が投げかけられました。ロースターの方々からは、豆の精製方法の違い、乾燥や膨張の関係性、豆に与えられるカロリー量といった可能性が挙げられ、それらの意見をもとにMiyashitaさんが検証を実施したところ、豆に与えられるカロリーとそれに起因する膨張具合が原因ではないか、という分析結果を共有してくださいました。普段カジュアルに語られる場の少ない焙煎についての会話はとても興味深く、何より検証・分析の具体性は本当に勉強になりました!
※Standart Japan定期購読者の皆さんにはCommunityへの招待状をメールでお送りしています。まだの方はぜひご参加ください!
Inspiration
おすすめの本、映画、音楽、アート
Timeshifter
先日ニュースレター『Dense Discovery』で紹介されていた、時差ぼけ改善アプリ。フライトスケジュール、普段の就寝・起床時間、年齢といった情報を入れると、なんと旅行先の時間にスムーズに対応するためのフライト前後の4〜5日間のスケジュールを教えてくれる優れもの。しかも陽の光を浴びる時間やカフェインの推奨摂取タイミングまでもが示されており非常にありがたい機能ばかりです。実際『Dense Discovery』のパブリッシャーは、「到着後翌日には現地時間に適応できた」とコメントしており、そのポテンシャルの高さが伺えます。(試しに架空のパリ旅行を予定して情報を入力したところ、自分が朝方か夜型かなどの前提に基づいて実現性の高いスケジュールが提示されました)
以前だと、海外旅行には時差ぼけは付きものなので、現地のコーヒーショップを訪れるという名目で、多めのカフェイン摂取で無理やり身体を馴染ませていましたが、次回は無理し過ぎずにアプリを試してみたいと思います。無料版があるので、近々海外旅行の予定がある方は是非体験談をお聞かせください。
Brewing with…
あの人のコーヒーレシピ
柿崎 貴道 カキザキ タカミチ aka やまちゃん
1972年香川県小豆島生まれ。高校卒業後に島を離れ、東京都の水産試験場に就職。奥多摩でヤマメやイワナなどの川の魚の研究。その後、小笠原父島でマグロやウミガメ、サンゴなどの海洋生物の研究を行う。そこで出会った大自然とカヤックに心動かされ、2004年故郷の小豆島にUターンしカヤックガイドとなる。ガイドをしながら6年かけて海辺の古民家を改修し、2014年にカフェ「タコのまくら」を開業。2017年にガイドを引退し、カフェの人となり、料理と手廻しの珈琲焙煎を始める。2019年コロナ禍をきっかけに、夫婦2人でできることをと、ランチ営業をやめ、私が珈琲、妻がお菓子を担当し、カフェを「珈琲とおやつ タコのまくら」とし再始動する。珈琲は600gと1kgの2つの手廻し焙煎機でコツコツ焙煎したものをゆっくりネルドリップし、飲んでほっと一息つけるような、そんな珈琲を提供している。
5 questions
今気になっている問いは?
「人生で出会う人や出来事は必然?」
これまでの人生においてあの人にあそこで出会っていなければ、あの時これをしていなければ、こんな人生になっていなかっただろうなと思うことが多々あるのですが、妻が最近興味を持っているインド占星術によると、人生は生まれた時から死ぬまで星によって決められていて、その中で自分が動かせることは少ないんだとか。例えると東京から大阪までの新幹線に乗るのは決まっているんだけど、車内で寝てるか、駅弁食べるか、本を読むか、途中下車するかくらいはその人の自由という感じらしい。もし、そうだとしたら毎日楽しいことをしたり、会いたい人に会ったほうがいいなと再認識しました。珈琲の仕事をやることも決まっていたんでしょうね。
お気に入りの場所は?
「小豆島霊場42番札所 西之滝龍水寺」
小豆島には四国88ヶ所と同じように島の中に88ヶ所の札所があります。西之滝はその札所の中でもちょっと特殊で、山岳霊場と呼ばれる切り立った岩場の山にあるお寺です。
そこからは穏やかな瀬戸内の海と島々、青い空に浮かぶ雲、行きかう大小さまざまな船、とても美しい風景を見ることができます。そして、本堂からつづく岩穴の奥には龍が祀られていて静謐な空気が漂よっています。隣接する護摩堂ではお不動様への焚き木祈祷も行ってもらえ、癒しとエネルギーを頂ける、私にとってとても大切な場所です。カフェからも遠くに見え、いつも山の上から僕らを守ってくれてるんだなと思います。
譲れないこだわりは?
「カツオのたたきは高知で食べる」
これはいけるかなと思ってスーパーで買うと、おいしくなくて必ずがっかりしてしまう。やっぱりカツオのたたきはとれたて新鮮、身の部分が虹色に輝いているくらいじゃないとダメです。好きな食べ物は「高知で食べるカツオのたたき」、嫌いな食べ物は「スーパーのカツオのたたき」です。(たぶん高知以外でも、スーパーでも、おいしいカツオのたたきはあると思いますが・・・
今誰と一緒にコーヒーを飲みたい?
「もうすぐ4歳になる息子と」
毎朝珈琲を飲んでいると手廻しミルやハンドドリップに興味深々な息子。やらせてやらせてとせがんできます(気が向いた時だけですが)。最近はできたての珈琲とハチミツをつかって、ミルクたっぷりのカフェオレを作ってあげると喜んで飲んでいます。いつか息子がドリップした珈琲を飲んでみたいですね。
最近、何に感動した?
「3年ぶりに秋祭りが開催されたこと」
小豆島では10月に島の5か所の神社で太鼓祭りが開催されます。それぞれの神社ごとに赤い布団のような飾りを乗せた大きな太鼓台(中に子どもが乗っていて太鼓をたたいている)が10台以上集結。大勢の島の男たちが「えいしゃーしゃーげ」という掛け声とともに持ち上げ、揺さぶり、時には横倒しにしたり、大いに盛り上がります。コロナ禍で2年間開催されていなかったのですが、今年は規模を小さくして3か所で開催されました。私が住んでいる地域は、うちの地域の1台だけが町内を練り歩き、最後に神主さんにご祈祷してもらうというだけのほんの小さな祭りでしたが、久しぶりの太鼓を見るために家の前に出てきた地元の人の笑顔や後ろをついてくる子どもたちの楽しそうな笑い声を聴いていると「あー。これだよな」と嬉しくなりました。
Fancy a refill?
編集後記
高校から大学入学くらいにかけてガレージロックやパンクをよく聴いていた頃、スリーター・キニーというワシントン発のバンドに出会いました。
先日、彼女たちのアルバム『Dig Me Out』をセイント・ヴィンセントやウィルコ、リンダリンダズなど複数のアーティストがカバーした『Dig Me In』がリリースされたのでチェックしてみたところ、カバーアートのスタイルに見覚えが。

調べてみると、Standart Japan第18号「僕の周りのジェンダーギャップ」のイラストを制作してくれたクリスティーナ・ダウラさんによるものでした。
米国で90年代初頭に生まれたフェミニストパンクムーブメント「ライオットガール」の申し子と言われるスリーター・キニーのカバーをクリスティーナさんが手がけたという事実に円環が閉じるような、不思議な満足感を覚えました。
Atsushi
今週の The Weekend Brew はいかがでしたか?
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今週の The Weekend Brew は Standart Japan 第22号スポンサーのCROWD ROASTER、パートナーの Victoria Arduino x トーエイ工業、TYPICA、ETZINGER x BREWMATIC、Philocoffeaのサポートでお届けしました。
LOVE & COFFEE✌️
Standart Japan
(執筆・編集:Takaya & Atsushi)