オンラインプラットフォームTYPICAが見据える、誰もがダイレクトトレードする未来

オンラインプラットフォームTYPICAが見据える、誰もがダイレクトトレードする未来

世界中の生産者とロースターをつなぎ、麻袋一袋からダイレクトトレードができるオンラインプラットフォームTYPICA

Standart Japan15号をサポートしてくれた同社代表の山田 彩音さんに、TYPICAの目指す未来や、オンラインショッピング感覚でダイレクトトレードができるプラットフォームの使い方について聞きました。

 

山田さん、こんにちは! TYPICA2019年創業とかなりフレッシュな印象ですが、まずはプラットフォームの概要や誕生までの背景について教えていただけますか?

一言で説明すると、TYPICAはコーヒー農家とロースターの距離を縮め、ダイレクトトレードを実現するためのプラットフォームです。私自身かつて焙煎を仕事にしていたこともあり、生豆の取引に関してもっと改善できる点があるなとずっと感じていたんですよ。

例えば生産地の情報でいえば、インポーターさんから入手できるのは数枚の写真と数行の文章だけ、ということも珍しくありません。スペシャルティコーヒーのDNAの一部である「From seed to cup」というフレーズを考えると、それってどうなの? という気持ちを拭いきれませんでした。またサプライチェーンの透明性に関心を持っているロースターさんがダイレクトトレードをやろうと思っても、規模、ひいては金銭的な理由からなかなか実現できないというのが現実です。

そういったロースターとしての課題を解決するためにTYPICAは誕生しました。

 

実際にどういった仕組みを使って課題解決にあたっているんですか?

TYPICAには大きく3つの強みがあります。

まずはオンラインプラットフォームそのもの。ユーザーであるロースターは、生産者がアップロードした生豆のリストを閲覧し、サンプルを取り寄せることができるうえ、購入した豆のレビューを残す機能もあります。ちなみにレビューは生産者も閲覧できるようになっています。

ふたつめが透明性です。私たちは生豆がロースターの手元に届くまで関わった人たちや、価格の内訳を(TYPICAの報酬を含め)ロットごとに公開しています。だから自分が支払った価格のうちどのくらいが生産者の手に渡るのか、ということを一目で確認できます。

最後が物流です。一般的にダイレクトトレードする場合、その取引量はコンテナ単位(1ヵ国/18t300麻袋)が基本となりますが、TYPICAでは、1コンテナを複数ロースターがシェアリングすることにより、1ヵ国1麻袋(60kg)単位での取引を可能にしました。そのため、取り扱うオリジンの多いマイクロロースターさんでも、そのすべてをダイレクトトレードすることができます。また、日本に到着した生豆に何か問題があれば私たちが責任をもって補償しますし、倉庫保管や、後払いも可能です。これは細かな点に聞こえるかもしれませんが、マイクロロースターの方々にとってはとても重要だと考えています。

 
TYPICAユーザーの近藤 剛さん(FINETIME COFFEE ROASTERS、東京)

 

以下ではTYPICAのプラットフォームの一部をご紹介します。

ログイン後に表示されるダッシュボードの一番上にあるのが、今後の予定が掲載されたカレンダーです。「サンプルリクエスト受付期間」のスタートから数日後に「予約受付期間」が始まるので、この期間にロースターはサンプルの申請と注文を行えます。

サンプルリクエストや予約を受け付けているロットのリストは以下のように表示され、「コメント」欄にある吹き出しマークをクリックすると、すでにそのサンプルのカップをとった人たちのコメントを確認できます。

 

まだ画面はお見せできないのですが、発注画面では、FOB価格や輸送費用、私たちの手数料など何にいくらかかっているかが詳細に確認できるようになっていて、これは私たちが大事にしている透明性に大きく関わる箇所です。

ちょうど今週からプラットフォームでエチオピアのサンプルリクエスト受付を開始したので、こちらのページから登録いただき、まずはどんなプラットフォームであるか、またどんなコーヒーがあるかだけでも見ていただけると嬉しいです。

 

現在はどの生産国のコーヒーを取り扱っているんですか?

エチオピア、ニカラグア、グアテマラ、ペルー、ボリビア、ケニアの6か国のコーヒーを扱っています。年内には15カ国まで広がる予定で、参加農園の数も、まもなく500軒を超える見込みです。扱うコーヒーは親しみやすいボリュームロットから1kgあたり60ドルの希少なロット、またケニアのナチュラルや、特別な発酵手法を採用したロットまでさまざまで、あまり目にしないコーヒーであっても誰もがフェアに購入できます。

2025年までには30か国以上から多種多様なコーヒーをお届けできるよう、これからも精力的にネットワークを拡大していきます。


TYPICA参加農園のFinca Senda Salvaje(ボリビア)を営むカルメロさん一家

 

逆にお取引されているロースターの数はどのくらいですか?

日本国内でいうと、すでに全国400軒以上のロースターにご登録いただいています。中でも興味深いのは、ロースターさんの規模です。DISCOVERY 250gのナノロースターさんから、Loring 70kgのビッグロースターまで幅広くご利用いただいている現状に私たちも驚いています。また、現在ヨーロッパの一部地域のロースターにもアプローチしていて、より多種多様なロースターににTYPICAを使ってもらうという展望にワクワクしています。


TYPICAユーザーの鈴木清和さん(GLITCH COFFEE & ROASTERS、東京)

 

すでにロースター側も海外展開されているんですね! 昨年に入ってから精力的に日本全国でカッピングイベントを開催されていますが、特に印象に残っている回はありますか?

どれも印象深いので選ぶのが難しいですが、しいていえば今年に入ってから取り扱いはじめたボリビアのコーヒーをご紹介したときですかね。

私たちがカッピングイベントを開催するときは、いつも生産者の方にもオンラインで参加してもらって、直接参加者と質疑応答ができるようにしているんですよ。でもボリビアのカッピングツアーに参加してくれた生産者の方はTYPICAと出会うまで海外にコーヒーを輸出したことがなかったそうで、日本のコーヒー業界で働く皆さんに会えたこと、そしてコーヒーのフィードバックを直接もらえたことをとても喜んでくれていました。ロースターの方も、日本にいながら生産者の方と(スクリーン越しとはいえ)直接コミュニケーションをとれるという点をとても評価してくださっていました。


カッピングイベントの様子
 

またTYPICAは日本とオランダに拠点を構えていて、私は普段オランダにいるので、純粋に3つの国にいる人たちがコーヒーのために集まってお話するという体験自体、とても楽しかったです。

あと、これは事前には予想していなかったんですが、広島や仙台などでは私たちのカッピングツアーで出会った方たちがその後TYPICAのサンプルを使ったカッピング会や情報交換の場を自主的に開催されているというお話をうかがい、日本のコーヒーコミュニティにポジティブな変化をもたらす一助になっているのでは、と嬉しく感じています。


東京でのカッピングイベントの様子(山田さんはオランダから遠隔で参加)

 

—山田さん、ありがとうございました!